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あたし 強くなる

誓うよ…… そうなりたい


#013 ”その年わたしに起こった      不条理な出来事”





●今回のトビラ絵は、巨大な「溶岩」を中心に5方向に並び立つチーム5人。ドラゴナ、パコ、ウサギ先輩はそれぞれ明後日の方向を向いてますが、ジョディオとチャーミング・マンはしっかり読者の方を見てくれてますね。ジョディオはいつものハンズアップポーズ、チャーミング・マンはポッケに手を突っ込んで。チャーミング・マンが仲間に加わったという事実には、未だに不思議な感覚になります。「ホントにいるよ~」みたいな、新鮮な驚きと奇妙な喜び。オーバーオール姿もあってか、6部でF・Fが仲間になった時にも近い印象を受けますね。
ちなみに、前回は「チャーミングマン」だったのが今回は「チャーミング・マン」表記になっていましたんで、とりあえずそちらに合わせます。個人的には、「チャーミングマン」の方が「えっ!それ名前なん?」感が強くて好きだったんですけど。そのうち「チャーミング」か「マン」、どっちかで呼ばれたりするのかな?


●さて、今回はジョースター兄弟の過去のエピソードから。今から4年前の出来事。大勢の人々がマスクもせずに密集してるので、新型コロナ騒ぎが起こる前でしょうね。恐らく、作中の「今」は連載スタートした2023年で、その4年前の2019年なんじゃないかと推測します。新型コロナの最初の報道があったのは2019年11月なので、何ら問題はありません。ごくごく普通の「日常」を描くために、そして第1話との整合性のために、4年前という時代を設定したんだろうなと思われます。
体育の授業中、プールでバレーボールを楽しむ生徒達。14歳のドラゴナがそこにいました。今と変わらぬ褐色の肌と、(こういう言い方すると角が立ちそうだけど)女性的なイメージを漂わせつつも……、顔立ちにはまだ幼さを残し、ファッションもまだ女の子していないようで、他の男子と同じように上半身は素っ裸。同じチームの可愛い女の子に言われた通り、ボールを打ってパスすると、その子の頬にボールが命中。そんな軽いミスにもみんなで笑い合って愉快な雰囲気だったんですが、いかにも「ジョジョ」らしく、彼女は突然ブチギレます(笑)。ボールをドラゴナの顔面に投げ付け、ひどい言葉を投げ掛ける。さらには、帰りのスクールバスの中でも彼女に絡まれ、イジメられまくっていました。彼女の両親は学校に多額の寄付をしており、バス会社も仕切っているらしく、先生もバスの運転手も誰も何も言えない状態。この性悪クズ女がァァ~~……ッ!
なお、先生曰く、ドラゴナはニュージャージーからハワイに転校して来たばかりとの事。あ、そうなんだ?そんな最近、ハワイに来たんだね。もっと昔からいたものとばかり思っていたから意外でした。……ってか先生、クズ女のゴタゴタを露骨に避けて、ドラゴナの事も「ドラゴミ君」とか呼んでやがる。この忖度無能教師がァァ~~……ッ!


●クズ女の、ドラゴナへのイジメはヒートアップする一方。ドラゴナがナヨナヨしていて気に喰わないのか、チンチンやタマタマを見せろと言い出したり、ビューラーで乳首を挟んだり、セクハラやりたい放題!なんか、リアルに「イヤなヤツ」だなぁ。周囲の連中の反応も含め、本当にこういうのありそう。
すると、バスの屋根の隙間から水滴が1滴、クズ女のおでこにしたたり落ちました。そこに現れたのが、当時11歳だった頃のジョディオ。ちっこくて可愛らしいけど、発する不穏な空気は今と変わらない。クズ女はジョディオにまで悪口を叩きますが、さっき落ちて来た水滴が突如、まぶたを貫きます。そう、『ノーヴェンバー・レイン』の「雨粒」だったのです。冒頭でのモノローグを読んだ感じ、たぶん、これがジョディオにとってスタンドに目醒めた瞬間。兄への深い愛情と、兄を傷付ける者への強い憎悪ゆえだったんですね。実にジョディオらしい。
ジョディオはドラゴナに「(あいつからのイジメは)長いの?」と訊ねますが、ドラゴナは適当にはぐらかしています。でも、転校して来たばかりなのに「長い」ってのもおかしいよね。まぁ、3~4ヶ月くらい前に越して来て、1~2ヶ月くらい毎日のようにイジメられてたとしたら、十分「長い」か。そもそも、イジメられている者にとっちゃ、長さなんて関係なく心には深い傷が刻まれてしまうワケで。ドラゴナも、表面上は何でもないように振る舞ってても、夜には延々うなされて苦しんでいました。そんな兄の姿に、ジョディオは何を思う?


●恐らくその翌日、スクールバスには例のクズ女。ジョディオは『ノーヴェンバー・レイン』をさっそく駆使して、「雨粒」でバスのドアや窓を封鎖し、なんと放火しちゃいました!車内は阿鼻叫喚の地獄絵図。ジョディオがあらかじめ仕込んでおいたであろう燃料にも引火し、バスはますます大炎上!クズ女のみならず、他の生徒や先生も巻き込んじゃってます。兄をイジメていたクズ女も、それを知りながら助けてくれないヤツらも、ジョディオからすれば全員例外なく同罪。燃やして灰にして当然のゴミ共なんでしょう。燃え上がるバスを眺めながら、のんびり水を飲んでるジョディオ。魔少年すぎるッ!
ところが、バスの中に1羽のインコを発見。バスに乗ってた生徒の1人が飼っていた小鳥です。それを見たジョディオ、すぐさま車内に「大雨」を降らせて消火。幸い、焼け死んだ人はおらず、20人ほどヤケドで入院しちゃったぐらいの被害で済みましたが……、ジョディオにとっては「無関係のインコの命まで奪うのはかわいそう」というだけの話だったんでしょうね。インコがいなけりゃ、間違いなく躊躇いなく皆殺ししてたはず。正直、想像していた以上にブッ飛んだヤベぇサイコパスっぷり。まぁ、あのジョニィの血を引いてて、しかも「ディオ」の名を冠してるとあったら、さもありなんって気持ちにもなりますけど(笑)。でも、そんなジョディオが好きよ。
そのまた翌日。兄のドラゴナだけは弟の性質や行動をお見通しのようで、「あんた 病気だよ」 「病院へ行くべき」なんてごもっともな事を言い放ちます。ただ、それでもドラゴナ、昨晩は本当に安心してぐっすり眠れたようです。自分でも気付かないうちに、心が死にかけていた。魂が壊れたら、きっと元には戻らない。……「イジメ」というものの本質を捉えた言葉ですよね。たとえ命を落とさなくても、体に傷が無くっても、人の尊厳を殺す行為。「誇り」を重んずる作風の荒木先生にとっては、尚のこと許せない卑劣な行為のはず。ジョディオのしでかした事は確かに異常でイカレてますが、兄のためだけに行動し、兄の尊厳を取り戻してくれた。ドラゴナはそんな弟に感謝し、「あたし 強くなる」と誓うのでした。そして、この2人だけの秘密が、あれほどに2人を強固に結び付けているんだなという事もよ~く理解できました。
ここでドラゴナもついにスタンド発現!乳首の傷を『スムース・オペレイターズ』がスプーンに「スライド」させ、スプーンは割れて壊れる。自分の傷さえも武器にする、ドラゴナの心の強さ!


●その年に起こった出来事は、「理不尽」であり「不条理」。善悪も、生まれた環境も、いかなる理由とも無関係に、意味もなくそれは起こる。自分には責任がないのに、最も重要な出来事として襲って来る。でも、そこには「不条理」のために壊されてしまう心が在る。ジョディオは、その事が許せない。では、その「許せない」という心ごと破壊されて、全てを諦めるしかないというのか?
バス放火事件から数ヶ月後……、なんとジョディオ達の父親が保険会社をクビになり、ハワイから出て行ってしまいました。例のクズ女の親が圧力を掛けたのか、バス会社に対する保険金が本来の10倍もの金額になり、その支払いを認めた父親の責任って事になったらしい。もともと夫婦仲がギクシャクしていたので、母:バーバラ・アンさんも夫に付いて行く事が出来ず。以降、彼女が夜遅くまで働くようになり、子育ての苦労も加わって病弱になっていった模様。電話料金や納税も滞って、その弱った臭いを嗅ぎ付けたギャング達が近寄って来る。どんどん泥沼です。
ジョディオは、いつも「なぜ」……と考えていました。兄のためにした行為の影響が、回り回って家族をバラバラにしちゃっているんだから当然です。しかも結局、金持ちが偉そうにのさばる構図は何も変わってない。なんか、ジョディオが「メカニズム」にこだわる理由が分かって来た気がしますね。根源にあるものは「不条理」への怒り、なんですね。「大富豪」になりたいというよりも、「不条理」に負けたくないっていうか。この世の「メカニズム」の頂点に立てば、自ずと大金だって手に入るし、「理不尽」も「不条理」もブチ壊せると信じているっていうか。やっぱ近年の「ジョジョ」は、コイツをブッ倒せば解決っていう具体的な「悪」や「敵」ではなく、個人の意思ではどうにもならない巨大な「流れ」や「巡り合わせ」そのものを相手にしているんだな。「ジョジョリオン」では「厄災」としてモロに描かれていましたし、「SBR」にまで遡れば、ジャイロにとっての「祖国」だってそうですよね。何も知らないマルコを有罪にし、死刑に処さねばならない祖国の「社会」そのものに、ジャイロは「納得」するため立ち向かっていたんですから。きっとジョディオは、「理不尽」や「不条理」さえも組み込んだ「メカニズム」を手に入れたいんだな。


●ところで、ジョディオ達の父親は何者なのかと思ってましたが、ごく普通の男性っぽいです。子ども達に別段嫌われてるワケでもないし、多少ギクシャクしてたにしても、バーバラさんと決定的な仲違いがあったワケでもない。会社をクビにさえならなきゃ、家族ともなんとかやっていけてたのかもしれません。ディエゴの子孫だとか、そーゆー「いかにも」な設定は特になさげです。
ちょっぴり残念ではあるものの、まぁ、それもいいかなと。主人公の名前が非常に重要な「ジョジョ」という作品において、「ディオ」という特別すぎる言葉を含んだ名前を持つジョディオ。血縁上・因縁上の繋がりが無くても、「ディオ」という響きたったそれだけで、全てを屈服させるパワーがあります。仮にも「ジョースター」でありながら、カネのために罪を犯し、麻薬密売や殺人への抵抗も無く、手段を問わずにひたすら高みを目指していくという「ディオ」的な人物像も、名前のパワーで納得させられちゃいますね。
ついでに言うなら、「ドラゴナ」もイニシャル「D」って事で、「DIO (ディオ)」に通ずる部分があります。やはりジョディオの兄だから、多少なりと似た性質は持ってるでしょうし、その名が意味する「龍 (ドラゴン)」も遥かな高みへと飛んで行く存在。非常に象徴的です。そんなドラゴナ、「強くなる」と誓って数ヶ月後、前よりファッションが女の子っぽくなってますね。きっとイジメられないように周囲に溶け込もうとして、自分の心を偽って、好きでもない服を着ていたんでしょうけれど……、だんだん少しずつ、自分の心に従う強さを身に付けてきたようです。その名に相応しい強さを。


●ジョディオ達がギャングに絡まれているところにメリル・メイが現れ、声を掛けて来て、助けてくれました。メリル・メイは兄弟の存在も、彼らの家庭の事情も知った上で、2人を誘います。どうやらここからWIN-WINの関係が始まったらしい。第1話では、11歳になったジョディオが近所の人に誘われてパシリをやらされたと語られていましたが、もしかしたら実はこれ、メリル・メイからの試験だったのかもしれません。この時、ジョディオの仕事が信用されたから、ここで初めてメリル・メイが救いの道を示してくれたのかもしれません。「儲からなきゃ誘わない」って言ってるしね。ともあれ、メリル・メイはジョースター家にとっての恩人でもあるワケか。
―― かくして、時間は「今」に戻り、謎の「溶岩」を見つめるメリル・メイ。外で待ってたチャーミング・マンを店内に招き入れ、第1話と同じようにケータイの電源を切るように急かします。他の4人も「切って♪」「切って♪」と合いの手(笑)。このノリに内心ちょっと困惑してるっぽくも見えるチャーミング・マンが面白い。
ジョディオが耳打ちしてドラゴナが話し始めます。自分達がここにいるのは所詮、カネ儲けのため。でも、チャーミング・マンは「弟」のためにここにいる。仲間に入れたい、と。「弟を想う兄」の気持ちが、ジョースター兄弟には痛いほど理解できるんでしょうね。今回の過去エピソードを知った上だと、余計にそう感じます。力になれる事があるなら迷わずしてあげたい、そう思ってるはず。さっきガチで殺しに掛かって来た相手なのに、優しいよねぇ。


●パコに促され、チャーミング・マンはメリル・メイに「溶岩」の事をあれこれ伝えます。
フアラライ山の西の斜面の「溶岩チューブ」から、この「溶岩」は流れ落ちて来た。それを偶然発見した露伴は、その特性を知りたがって実験していた。わざわざハワイ島に別荘を買い、日本から高価な美術品を持ち込み、金・銀・ダイヤモンドを使って調べていた。広大な場所だから、露伴が見付けた「溶岩」は2個だけだったが、1個は(ジョディオに)破壊されて今は無い。山の上の方を探せれば、もっと大きい物も在るはず。しかし、そこは「HOWLER (ハウラー)」という会社が所有している、立入禁止の土地。そこを調べようとすると、なぜか社会的な邪魔が入ってしまう。世の中全体が捜索を妨害してくる。―― と。
ほええ~……、初めて知る情報も多いな。仲間で良かった、チャーミング・マン!「キング・クリムゾン」に「The Howler」って曲があるし、「HOWLER」という名の海外バンドもあるみたいなので、それらが元ネタなんでしょうかね。その会社もまたキナ臭いな。社会的な邪魔が入る事を、ウサギ先輩が「不条理」と称していましたけど、もちろんジョディオもピクリと反応。でもコレって、「デッカい溶岩」のパワーのせいじゃないっスか?「デッカい溶岩」が土地の所有者である「HOWLER」を守ろうとして、捜索を妨害してる。だとすると、ちっこい「溶岩」なんかとはパワーがダンチだし、「溶岩」の真のパワーはまさしく「不条理」すら組み込んだ「メカニズム」って事になる。絶対に手に入れたいもんですよね。
チャーミング・マンの話を整理し、メリル・メイは「良し(グッド)!」と。この「溶岩」が、カネの流れの「システム」になると判断しました。そこですかさず次なるミッション!インフラ整備の会社「HOWLER」が所有する、あらゆる「権利」を丸ごといただいちゃおう!預金口座も土地も会社も全部、奪い取る!大胆不敵が過ぎるミッションですが、一切の遠慮も慈悲も無い、欲望丸出しの清々しいクズっぷりにワクワクゾクゾクさせられます。権利書とかに「溶岩」を近付けに行けばオッケー!これまた面白くなってきたぜッ!
メリル・メイの見積もりでは、恐らく500億ドル以上の価値が手に入るはず。1ドル=ざっくり150円として、総額7兆5千億円……ッ!!?80%をメリル・メイがゲットして、チーム5人の取り分は20%、1人頭4%。金額にして400億ドルがメリル・メイで、残りの100億ドルを5人で山分け。そうすりゃ、1人頭20億ドルでしょ?つまり……、1人で3千億円!?うわあ……、現実味が無い。ケタが違い過ぎるゥゥ……。


★今月は45ページ!前半はジョースター兄弟のルーツに触れてしんみりし、後半は一気に飛躍する新ミッションに燃え、盛りだくさんの回でした。面白かった!メリル・メイも相変わらずの有能さと底知れなさ、強烈なインパクトで、キャラとしてめっちゃ魅力的。どこまで信頼して良いのか未知数ですが……、ジョディオの目的からしたら、少なくとも、いつかは立場を逆転させなきゃいけない相手でもあるでしょう。気になる新ミッションの方は、チャーミング・マンの能力があれば潜入自体は余裕でしょうけど、金額が金額ですから、相手の守りもより強固になるに違いない。一体、どんな敵が登場して、どんな展開になるんだろ?早く続きが読みたい!
作者コメントは「花粉症、去年デビューしたんだけど今年はなんかそうでもない。もしかして俺、花粉症じゃないのかな。」との事。う~む、荒木先生は謎の塊ですねぇ(笑)。でも、大した事がないのなら何よりです。まさか先生、あっさり花粉症をも克服!?
次号は「ジョジョランズ」がカラーで表紙を飾ってくれる上に、なんと待望の「岸辺露伴は動かない」短編小説集の第5弾が付録になるらしい!「ジョジョランズ」3巻も小説「無限の王」の単行本も発売されるしで、4月はお楽しみがいっぱいです。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 4月号(2024年)
304ページ


今月は、メリル・メイの話を揃って聞くチーム5人。前回の5人のバックショットと対照的なコマになっております。
やっぱね~、仲間が増えるって嬉しいのよね。今までいなかったヤツがそこにいる、っていう感動よ。チャーミング・マンを迎えた新生チーム、しかもチャーミング・マンが真ん中に陣取って(笑)。彼が加入した事で、チームにどんな変化が起こるのかな?アバッキオみたいなクールな大人枠になって、暴走しそうな危うい4人を程良く引き締めてくれるのかな?これからの期待が膨らむ1コマでした。




(2024年3月19日)




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