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砂つぶ一個残さず頂くんだ
価値は500億ドル


#014 ハワイ州土地登記所





●今月のウルジャンの表紙を飾るのは、我らが「The JOJOLands」!例によって、コミックス3巻のカバーイラストの連作となっております。基本的な構図はそのままに、車に乗っている人物がパコからドラゴナになっていました。おおっ!このドラゴナの流し目、カッコ良くってセクシー!!カラーリングも、ビビッドなオレンジが目立っていた3巻とは異なり、こちらはやや落ち着いたムード。どっちもイイですねぇ。ジョディオの瞳の色が紅いのもCOOLです。
ちなみに、紙版と電子版とでは、付録の有無もあって表紙デザインが微妙に異なっています。電子版には「岸辺露伴は動かない」短編小説集が付かない分、表紙からもそのお知らせが削除されており、ジョディオの左手がちゃんと見えているんです。荒木先生の絵を楽しむ分には、電子版の方がお得ってワケですね。
今回のトビラ絵は、欲張りにもさらにもういっちょ連作でした(笑)。ここでは、車に乗っているのがチャーミング・マン!うほほ~っ、こう来ましたか!仲間が増えたって事実を実感できる、心憎い演出じゃありませんか。他の2作とは違い、こっちでは「雨」のような縦線が数本、車に重なるように引かれている点にも注目。新しい仲間への祝福と歓迎の雨、みたいにも見えてくる……かも?どうせなら、最初の登場人物紹介にも早くチャーミング・マンを加えてやってほしいところ。


●インフラ整備会社「HOWLER (ハウラー)」が所有する、あらゆる「権利」を奪い取れ!推定500億ドルという、ケタ違いのミッション始動!めっちゃテンション爆アゲな展開ですが……、まず冒頭は、シィイーンと静まり返った車内から。チーム5人が5人、思い思いの時間を過ごしています。ジョディオはゲーム、パコは行き先の見取り図チェック、ドラゴナはメイク、ウサギ先輩はハンバーガー食って、チャーミング・マンは水を飲んでる。会話ゼロ(笑)。友達同士の仲良し旅行じゃないからね。基本、目的や利害が一致してるだけの他人。そのドライな距離感も今ドキっぽくて、また良い。
チームのリーダー的存在なだけあって、パコってば意外と生真面目。ミッションについての情報を頭に入れ、みんなに声掛けして、いよいよ行動開始です。ドラゴナ、ウサギ先輩、チャーミング・マンの3人が車を降り、パコとジョディオは車でそのまま走り去って行きました。何やら大きな建物に入っていく3人。緊張でテンパッてるらしく、挙動不審なウサギ先輩。つまずいてコケてしまい、持っていた水やらカップ麺やらを全部ブチまけちゃった。そこへ警備員達がやって来る。いきなりピンチ!?


●ここで時間は少し戻り、メリル・メイからの指令!向かう場所は、州管轄の「土地登記所」との事。さらに、実行メンバーの3人と、見張り&後方支援の2人にチームを分けるよう指示。
そして、今回のミッションの肝と言える「土地」についても説明してくれます。ハワイの不動産には、「DEED (ディード)」という土地の譲渡証書があります。これは個人の財産としての権利の証明ではなく、単に「その土地を所有してもいいよ」という譲渡の証明に過ぎません。土地の売り買いってものは、この「DEED」をAさんからBさんに譲渡するという許可に過ぎないワケです。そして、「DEED」の原本は登記所で大切に保管されている。
この概念が理解できたか、5人に確認するメリル・メイですが……、当の5人はボヤーッとしてます(笑)。せいぜいチャーミング・マンは「まぁ、なんとなくは」って感じにも見えますけど、他の4人は口半開きで完璧に思考を放棄したマヌケ顔!チャーミング・マンが加わってくれて良かったね!とにかく、土地は「DEED」原本を持ってるヤツの物って事ね。
メリル・メイの授業はまだ続きます。紙幣なんて物は俯瞰して引いて見てみりゃ、ただのインクと紙切れ。これが交換によって、AさんからBさんへ移動する。この人間社会の「約束」、それこそがカネのシステムであり、「溶岩」が反応するのもまさにそこ。土地も同様。本来は誰の物でもないのに、人間が勝手に「所有」という約束事を作った。なるほどねぇ~。所有・交換・譲渡の「約束」によって、つまりは人間同士の「信用」や「繋がり」によって、初めてモノに社会的な「価値」が生まれるってワケね。そして「溶岩」は、その「価値」を感じ取って、山肌を覆っていくマグマのように「約束」を上書きしてしまう……って事なのか?
今回のミッションは、「DEED」原本に「溶岩」を触れさせる事!「HOWLER」が持つ土地を全て手に入れる!社会に繋がっているシステムである以上、中途半端に残しておくのは危険。砂粒1個残さず、全部奪い取れッ!……って、情け容赦が無さすぎる(笑)。ついでに言っとくと、「HOWLER」のロゴが、名前通り「遠吠えする狼」になっててオシャレです。


●最後にメリル・メイが付け加えます。まだ誰も「溶岩」を完全には理解していない。何が起こるか予測が付かないのだから用心しろ、と。防犯カメラの映像も指紋もDNAも、とにかく「登記所へ行った」という痕跡を残すな、と。目撃者の記憶に残る行動もNGだっつーのに、ウサギ先輩は早々にやらかしちゃった。
どうにか取り繕ったものの、ドラゴナは激怒(笑)。油断しまくり&余裕綽々なウサギ先輩に、さすがにチャーミング・マンもツッコミ入れてる。そんな自分のミスは置いといて、ドラゴナに作戦を確認するウサギ先輩。ミッション中だからか、本名呼びはやめて、また「ピンクちゃん」呼びに戻ってますね。ドラゴナは、ポケットから何かを取り出すと、チャーミング・マンに手渡します。それは、チャーミング・マンの写真が入った運転免許証。彼の証明写真を『スムース・オペレイターズ』で剥がし、別人の写真を貼り直していきます。チャーミング・マン自身も、スタンド能力でその別人の顔に変身。堂々と受付に、「DEED」の閲覧許可申請ッ!どうやらドラゴナ、ここに来るにあたって、いろんな身分証を山ほど持って来たみたい。これで無事、他人に成り済ませました。
「DEED」原本は、許可をもらえば誰でも閲覧可能らしく、受付のお姉さんが持って来てくれます。ただし、痕跡は残すな。『THE MATTEKUDASAI (ザ・マッテクダサイ)』で、防犯カメラの映像をフェイクに変える事がウサギ先輩の役目。でもコレ、露伴邸の時も思ったけど、オリジナルの映像もそのまま残るワケだから意味あるんかな?そもそもフェイク映像って、どこに保存されるんだろ?この場合、回線は共有する事になって、オリジナルと同じ所に一緒に保存される的な?う~ん、まぁ……、1つしかないはずの映像が「2つ存在する」という事実だけで、映像の「信用」をゼロにしてくれるって意味では有用なのかも。


●受付のお姉さんが戻って来ましたが、閲覧許可が出たのはデジタルデータのみ。予定外の事態!しかし、チャーミング・マンは焦らず交渉を進めます。まるで先生か何かのように振る舞い、学生(ウサギ先輩)の勉強のために、「紙」という歴史の本物に触れさせてあげたいと言い出しました。ウサギ先輩の圧倒的アホ面を見て、お姉さんも「ああ~、コイツは確かに勉強必要だわ」と思ったのか、上の人に相談。かくして、念願の原本が用意されたのでした!冷静な機転ッ!見事な演技力ッ!仲間で良かった、チャーミング・マン!
ハワイ島の「フアラライ山」だけでなく、オアフ島、マウイ島、カウアイ島にも土地を持つ「HOWLER」の原本は48枚にものぼります。ただ、実際に原本に触れる事は出来ず、めくるのはあくまでお姉さん。キッチリ手袋までして、かなり厳重な取り扱いです。自分達の指紋やDNAが紙に残らないなら、むしろちょうどいい。そう判断するドラゴナとウサギ先輩なんですけども……、ここ、流れ的に2人の会話シーンだと思うんで、「あたしたちの指紋やDNAが」ってセリフは「オレたち」に修正すべきかなと。集英社の方、万一これを読まれているようでしたら、コミックスでは直しておいてください(笑)。
学生のフリをして(ガチの学生だけど)、「フムフム」と原本を眺めるウサギ先輩の横に、ドラゴナが陣取ります。お姉さんがめくっていって重ねられた原本に、さりげな~く身を乗り出して「溶岩」を接触させていく。すると、いきなり「溶岩」がスマホのバイブ機能みたいにブルブル震え出しました!「土地」という途方もない「価値」を覚え、上書き終了した事を示しているのでしょうか?事実、原本は「溶岩」に引き寄せられて動き、ドラゴナが離れると原本もおとなしくなってます。


●ミッション完遂(コンプリート)ッ!すっかりゴキゲンな3人!『THE MATTEKUDASAI』も「あっ……、もう大丈夫です?」って感じに、チラッとこちらを見てから駆け寄って来てキュートです。それでも、「フアラライ山」の原本にもちゃんと触れたか念押ししてくるチャーミング・マン。決して浮かれすぎず、自分の目的や役目を見失わないところが頼もしく好感持てますね。さすがはチーム唯一の成人!
ところが、ここで異変発生。突然、ウサギ先輩が吐き気を催し、倒れてしまったのです。さっき食べた物じゃなく、謎の白濁した液体を吐きまくる。呼吸が出来なくなり、意識喪失!全身タイツをめくると、彼の首あたりの皮膚が、アザのような、あるいはのような、無数の奇妙な「何か」に覆われている事に気付きます。気色悪ッ!持病なのか、それとも薬物中毒の症状なのか?しかし、まだ知り合って数日のウサギ先輩の事情など誰も知りません。一瞬、もしや持病の苦痛を和らげるために薬物を使ってるのかな、などと考えちゃいましたが……、こんなタイミングで起こるって事は、何者かのスタンド攻撃による影響という可能性が一番高いでしょう。
「HOWLER」と登記所の関係者以外の閲覧者に対して発動する、粘液状の自動操縦型スタンド?閲覧した土地(にある土や岩石)と同じ「組成」に、肉体が変えられていく能力とか?要するに、閲覧者を「土地」そのものにしてしまう能力……とでも予想しておきますか。体が土砂になって崩壊して死ぬだけ。即ち、ウサギ先輩の体は48もの土地に分けられ、その姿を変えられつつあるって事。
救急車を呼ぼうとするドラゴナを、すかさずチャーミング・マンが制します。その通報から、閲覧がバレてしまうかもしれない。スタンド攻撃であるなら、なおさら救急車なんて無意味ですしね。そんなことをしてるうちに、とうとうウサギ先輩の呼吸は停止!しかも、戻って来たパコとジョディオは、みんなが寛いでるものと勘違い。あー、このノリがなんとも5部チックだなぁ(笑)。


★今月は41ページ!カラー表紙もあるからか、やや減ページではありますが、内容は非常に濃厚でした。ストーリーが動く時は、ページ数以上のボリューム感とワクワク感がありますよ。チームでの行動がマジで5部を思い起こさせるし、新メンバー:チャーミング・マンがチーム内での良いアクセントになってくれてるし、こいつらをただ見てるだけで楽しいんだよなぁ。とは言え、楽しいだけで終わるはずもなく。さっそくの危機的状況でございます。やはり「HOWLER」、一筋縄ではいかないか。
作者コメントは「伊勢神宮にお参り旅行に行ってきました。春の季節は気持ちがいいね。」との事。荒木先生、ホントあちこちお出掛けされてますねぇ。人生を楽しまれているようで、ファンとしても嬉しい限りです。こういった縁から、いつか伊勢神宮とのコラボとかもあったりしてね。
なんと、早くもミュージカル「ジョジョ」Blu-ray発売決定ッ!こいつは朗報ッ!発売日は未定ですが、ミュージカルの公式サイトによれば12月っぽい。これはマストでバイですな。同時に、再演決定の一報があったりしたら最高ですね。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 5月号(2024年)
212・213ページ


今月は、ミッション成功に歓喜する3人。セリフといい、ポーズといい、擬音といい、効果線といい、全てが一体となって生まれるゴキゲンなグルーヴ感!3人揃って足が地面に触れていないところがまた、ノリノリで勢いがあって笑っちゃいます。チーム内ではクールな大人枠であろうチャーミング・マンまでテンション上がってるのもポイント高い。こーゆーコマって、地味に荒木先生しか描けない気がするなあ。
それにしても……、なんか自分、やたらとチャーミング・マンを褒め称えてますね。俺って、自分が思ってる以上にチャーミング・マンが好きなの・か・も。




(追記)
「溶岩」の機能・特性について、改めて整理してみます。
今回、メリル・メイからも説明がありましたが……、どうやら「溶岩」は、人間同士の「約束」や「信用」、そういった「繋がり」によって生まれた「価値」を感じ取っている模様。そして、「溶岩」に触れた「価値ある物」の物理的な所有権を、「溶岩の持ち主」に上書きする。例え、物が「溶岩」から遠く離されたとしても……、人の「感情」や、あるいは「無意識」すらも利用し、人間同士の「繋がり」に乗せて、必ず再び手元へ引き寄せる。「溶岩」の力で重大なのは、人と人の「繋がり」に他なりません。
でも、自然物であるはずの「溶岩」が、なんで人間の都合なんかに反応しているんでしょうか?11話の追記でも書いたように、かつてイエス様がアメリカ大陸に渡る途中、ハワイに立ち寄った事があったのだとすれば……、あの「溶岩」が彼の聖なるパワーを宿した物なのだとすれば……、人の「繋がり」を大事に想う彼の気持ちが遺り続けていたとしても不思議じゃないはず。何にせよ、人間かそれに近い誰かしらの意思が介在している可能性は非常に高そうです。

そんで、コミックス3巻が発売された事で、「溶岩」についてさらなる疑問も生じてきました。例の高級腕時計の件です。ドラゴナがゲットした腕時計の値段が、コミックスでは8万ドルに修正・統一。ウルジャン掲載時は最初、10万ドルって事だったので、あの4本の中で最も高価な物だけを引き寄せてるのかなと思ったんですけど、その理屈が通らなくなっちゃったワケです。何せ、同じ8万ドルの腕時計がもう1本あったんですから。「溶岩」に触れさせた腕時計4本とも引き寄せなかったのは何故なのか?あの腕時計だけを引き寄せたのは何故なのか?
この問題を考える上で重要なヒントとしては、あの腕時計が巡り巡って戻って来た時、故障していたって点かもしれません。さんざんいろんな人に蹴っ飛ばされ、地面を滑りまくり、海に落ち、魚に食われ……、穢れて壊れてしまっていました。つまり、本来の8万ドルという値段よりも「価値」が下がった状態で戻って来た、って事です。しかも、30ドルとは言え、最終的にはわざわざカネを払って買い直す必要までありました。これって、ちょっと違和感。
結局のところ、あの「溶岩」は持ち主の「器」も計っている、と考えるのが一番しっくり来そうです。多くの人と出逢い、触れ合い、信頼し合い、「繋がり」を大切にする。そういう人物であれば、人との「縁」も滑らかな「円」となる事でしょう。「価値ある物」も、より穏やかで自然な流れの中に乗って、その「価値」を落とす事なく自分の元へと速やかに返って来るはず。今現在のドラゴナの「器」は、高額な腕時計4本をそのままいただけるレベルに達していないんです。恐らく、もう1本あった別の8万ドルの腕時計だと、さらにもっと「価値」が下がった状態で戻って来る結果になったのでしょう。あの4本のうち、最も高価な状態で手に入れられるのが、あの腕時計だったんです。それが、今のドラゴナがようやく得る事が出来る「価値」。……600万ドルのダイヤに関しては、あくまで元々「溶岩」に触れさせたのは露伴であって、ジョディオやドラゴナはそれを「承諾」の上で譲り受けている形なので、「価値」を落とさずに済んでいるのかも。
もしそうであるなら、「DEED」原本の方もかなりヤバい気がしてきます。腕時計ですらあの程度という「器」なのに、500億ドル相当の「価値」を引き寄せられるワケがない。500億ドルもの大金が欲しいのなら、その「価値」に見合うだけの相応しい人間に成長しなけりゃいけないのです。自分の「器」を弁えず、欲をかいた者には、「溶岩」が人間同士の「繋がり」を使って「災い」を運んで来たりするかもしれませんね。ウサギ先輩の症状も、実はそれだったり?


●呼吸が止まってしまったウサギ先輩ですが、これをすぐに助けられそうなのって、パコぐらいしか思い付きません。パコの『THE ハッスル』で、ウサギ先輩の「筋肉」を操作して、呼吸を無理矢理再開させるんです。
でも、果たして「寛いでる」なんて勘違いを解き、ウサギ先輩の元までパコを来させる事が出来るのかな?「ジョジョ」のセオリーとして、危機に直面している者達だけで解決するしかなく、助けが来てくれるなんて展開はあんま期待できんよねえ。




(2024年4月19日)
(2024年4月21日:追記)




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