TOP  <<#005 戻る #007>>



あんた
『吉良吉影』じゃあなかったのか…


#006 キラ・ヨシカゲ





●トビラ絵は、「操り師」のスタンド紹介!これといった説明もなく、もう当たり前のように「スタンド」という用語が使われてます。まあ、物語中で今後、「スタンドとは何なのか?」と再解釈されるのかもしれませんが。「ジョジョリオン」から読み始めた人には不親切設計ですな。
スタンド名は『ファン・ファン・ファン』。ちょいと調べてみると、これは「ザ・ビーチ・ボーイズ」の曲名のようです。その全体像は、前回ラストで描かれたデザインとは随分と違ってました。前回は普通の人型スタンドとして、両手両足が備わっていたんですけどね。どうやら荒木先生の気が変わったらしく、大幅にデザイン変更。イメージ的には『グレイトフル・デッド』に近い。「4点」を取るという能力に沿って、腕代わりに4本の触手が伸び、動かす必要すらない下半身は小さな球根みたいな形になってます。
その部最初の敵スタンドの割にちょっと特殊なタイプでしたが、能力的には分かりやすく、イメージもしやすかったのではないかと思います。デザインの方もなかなかユニークで面白いですね。


●ついに上階の男=「操り師」を捕えた吉良くん。完全に能力も解除され、手足の「印」は消え去った!室内に放り投げられた「操り師」は、ベランダの毒ヘビにビビッて、ヘビを外にポイ捨て。なんつー近所迷惑な……。「操り師」のジャケットの内ポケットには、予想通り血清がありました。毒に侵されたとは思えない動きの吉良くんではありましたが、とにかくこれで解毒も完了ッ!
改めて「操り師」への質問タイムです。「オレは誰なんだ?」と訊ねる吉良くん。ところが、「操り師」は脅えるだけで答えない。しかも、さりげなく手を動かすもんだから、吉良くんはお怒りに。質問は拷問に変わっちゃいました。吉良くんは康穂に別の方向を向かせ、その隙に「操り師」を蹴り上げるッ!康穂には出来るだけショッキングなシーンを見せないように、という紳士な配慮なんでしょう。子どものように純粋で天然で、どこかのんきで優しい吉良くん。しかし、子どものような残酷さも合わせ持ち、やる時はやるしたたかな性格のようです。まあ、本気で殺されかけた上、康穂まで傷付けられたんだから、これぐらいは当然か。
しかし、「操り師」が手を動かしていたのには理由があって。反撃する気などとっくになく、ただ「手」を確認したいだけだったのです。なんとこの部屋にオブジェとして飾られていた手首の彫刻、これは吉良吉影自身の「手の型」だったのです。「操り師」が言うには、吉良吉影はナルシストな野郎らしく、自分の美しい手を彫刻としていた模様。吉良くんの手と比べてみると、全然違う形でした。これで、吉良くんは吉良吉影ではないと証明されたのです。


拷問タイムはまだまだ続きます。でも、なんかお互いに混乱し、話が噛み合ってません。話をまとめると、204号室は吉良吉影の部屋。吉良くんは吉良吉影ではなく、「操り師」も吉良吉影ではない。裸の女の子を204号室に拉致・監禁したのは「操り師」だけど、「操り師」自身は上階の住人である。「操り師」は、吉良くんが吉良吉影と勘違いし、攻撃してきていた。――こういう事みたい。何故かややこしい事になっちゃってるようです。
このままではラチが開かず、ボコられる一方なので、「操り師」は一目瞭然な証拠物件を提出。それは写真でした。そこに写っているものは、1人の若い男性の姿。吉良くんと同じセーラー服を着こなし、黒く鋭い眼光を瞳に湛える男。その背後には「壁の目」が不気味に佇んでいます。誰が何のために撮ったのかは分かりませんが、この写真の男こそが吉良吉影ッ!
「操り師」はこの吉良吉影に恨みがあり、彼の部屋の真上の部屋を計画的に借りていたのです。吉良吉影を傷付けて「4点」を奪うために、部屋中に罠を仕掛けた。全てを吉良吉影の犯行に見せかけるために、女の子を拉致し、凌辱的な写真も撮った。ところが、部屋に帰って来たのは吉良吉影ではなく、吉良くんだったのです。手も前歯も年齢も違うのに、でもどこか2人は似ている。吉良くんは半分くらい吉良吉影に似ている。だからこそ、「操り師」は吉良くんを吉良吉影と勘違いしてしまったのでした。増して、吉良吉影と同じ服まで着ていたら、見間違えるのも仕方ない。
う〜む、意味深な話ですね。正直、そこまで2人の顔立ちが似ているようには見えませんけど、パッと見の印象や雰囲気みたいなものが近いのかもしれません。いや、ルックスがどうこうよりも、魂の形が似ているとか?ブチャラティがドッピオとトリッシュを見間違えたように。


●「操り師」が、吉良吉影について語り出しました。「操り師」の本名は、笹目 桜二郎(ささめ おうじろう)。22歳のサーファーらしい。実家は、やがて「壁の目」となる場所に建っていたとの事。やはり「壁の目」こそが、スタンド使いを生み出す原因となっているのは確実っぽいですね。生まれ付いてのスタンド使いというよりは、「壁の目」の影響下にずっといたため、幼い頃にスタンドが発現したと考えるべきか。
2008年の夏、桜二郎は海辺で遊んでいました。ナンパした女の子に『ファン・ファン・ファン』を使って、溺れかけさせていたみたいです。なるほど。水面と水中なら、真上と真下の関係になれますからね。サーファーという設定も活きてきます。イヤガラセをする程度で、殺したりはしていないようですが、なんとも陰険なヤツです。せっかく持っている能力があるのだから、それを使って優越感に浸りたいって気持ちなのかな?彼自身が言うように、大した意味もない「遊び」に過ぎない行為。でも、そんな行為を悪意も殺意もなく、ごく自然にやっちゃってる辺りが危険ですね。
そんな時、吉良吉影はいきなり桜二郎の背後に立っていた。吉良吉影は現在29歳で、職業は船医。だからセーラー服を着ているのでしょう。そんな彼となんとなく仲良くなったものの、桜二郎は直感的に「コイツは殺人を犯している」と思った様子。そして案の定、吉良吉影はスタンド使いらしく、桜二郎の能力も見えていたのでした。4部の吉良吉影よりも華奢で病的な印象があり、得体の知れない不気味さがかなり強いですね。


●吉良吉影という男は、物事の境界線を重要視しているようです。そして、その境界線が曖昧なヤツは「男」ではない、と。要は、白黒ハッキリ決めたい性格なのでしょう。その彼自身の「基準」を満たさない者に対しては、容赦がない。
漁師は海の男。歯医者は陸の男。なら、サーファーである桜二郎はどっちなのか?陸でバイトをし、海辺の波打ち際で遊ぶ桜二郎。吉良吉影の基準からすると、かなり曖昧で気に入らない模様。そんな桜二郎に、吉良吉影はずっとずっと延々となじり続けたそうです。そして、酒やドラッグもやっていたせいもあって、やがて桜二郎は意識朦朧となり、なんと自分自身の指を10本食ってしまったと言うのです!吉良吉影が夜中中、「お前は男のフリをしているだけだ。本当に男なら、朝方に指を食って証明してみろ。」などと延々言い続けた結果、マジで実行しちゃったようなのです!ワケの分からん話ですが、これが吉良吉影のスタンド能力の一端なのでしょうか?「言葉」や「言霊」を操って洗脳しちゃう能力、みたいな?
ともかく、そんな吉良吉影に恨みを抱き、桜二郎は復讐を誓ったのでした。吉良吉影だけでなく、自分自身も許せない。なんとしてでも吉良吉影を「支配」して、この恨みを晴らしたい。これで桜二郎の行動の動機がハッキリしましたね。充分に悪人ではあるものの、理解できなくもないし、あんま憎めない。どうせなら、たまに登場して情報提供してくれる、玉美っぽいポジションに落ち着いてもいいかも。
あ、そうそう。町の背景にコンビニ「オーソン」が描かれていて、ちょっと嬉しくなりました。「ドゥ・マゴ」とかもあるのかな?


●裸の女の子は、さっさと逃げてしまってました。彼女も恐らく、吉良くんと吉良吉影の区別も付かないのでしょう。これ以上、妙な事に関わらせず、東京に帰してあげた方が良さそうですね。しかし、3日前以前に彼女と一緒に監禁されていたのは、結局のところ、誰だったのか?吉良くんかもしれないし、吉良吉影なのかもしれない。明かされるのかすら不明ですが、謎はまだまだ残ってます。
吉良くんは康穂にも訊ねます。何故、ここに戻って来てくれたのか?……彼女にも明確な理由や根拠があったワケではありません。ただ、昔飼っていた犬にどこか似ている事。そして、康穂が知る吉良くんに、この部屋は似合わないと感じた事。まったく論理的じゃなく、あやふやな答えです。それでも、康穂は自分の感覚に従い、吉良くんを信じる事を選んだのです。これには吉良くんも感動したでしょう。なかなか出来る事じゃありません。さすが「広瀬」の名を持つだけの事はありますね。
桜二郎を蹴っ飛ばして気絶させると、吉良くんは威勢良く部屋を出て行きます。次に向かう場所は、すべての「原点」。この物語の始まりの場所。康穂は吉良吉影の写真の中に、吉良くんが埋まっていた場所が写っている事に気付いたのです。水の湧き出る穴。『ソフト&ウェット』で穴から「水」を奪い、穴の中を探るッ!すると、そこにあったものは、なんと吉良吉影の死体だったのです!警察や救急に通報し、吉良吉影の死体は検死が行なわれる事に。その結果、DNAも指紋も歯型もすべて吉良吉影本人と一致。死因は心筋梗塞。死後推定3日。外傷はないが、埋められていたという事件性はある。つまり、康穂が吉良くんを見付けた時、吉良吉影はそこにいたのです。衝撃的事実!
そして、さらなる衝撃が我々読者を襲います。なんと、吉良吉影の死体には「精巣」が無かったというのです。切り取られたとか手術したとかではなく、初めから存在しないかのようにツルッと無かった、と。キンタマの無い吉良吉影の死体、キンタマが4つある吉良くん。これは一体……!?無言でたそがれる吉良くんの姿が、なんとも言えない男の渋さと寂寥感を抱かせてくれますね。正体はまったくの謎ですが、カッコイイなあ。


●写真に写る吉良吉影と、吉良くんの記憶に過ぎる謎の男。この2人は別人と考えるべきなんでしょうね。もし同一人物だったら、吉良くんがもっと驚くはずだし。しかし、まったくの無関係と考える事も出来そうにありません。協力者なのか、はたまた敵同士なのか?
シンプルに予想すれば、吉良吉影のキンタマは、吉良くんの股間へ移ったと見るのが自然。吉良吉影はナルシストなので、自分が老いたり死んだりするのが許せない。吉良吉影は今まで、いろんな人間を殺し、多くの人間の恨みを買ってきた。だから、キンタマ移植を実行し、社会的に自分を死人にしてトンズラした。キンタマ移植を行なうと、移植先の心身は徐々に吉良吉影に浸食されてしまう。吉良くんと吉良吉影がどこか似ているのはそのせい。時間が経つに連れ、徐々に吉良吉影の部分が色濃くなっていく。やがては、完全に吉良吉影の意識と、新しい美しい肉体を持った別人となってしまう。それこそ、吉良くんが、そして杜王町が掛けられたおぞましい「呪い」
そのキンタマ移植を可能にするのが、未知なるスタンド能力。吉良吉影自身のものか、「記憶の男」のものかは謎。いずれにせよ、キンタマと共に吉良吉影の「魂」をも移植するのが、このスタンドの能力。吉良くんは不幸にも、吉良吉影の「基準」を満たし、次なる自分の「器」として選ばれてしまった。つまり、倒すべき敵は、自分の中にいる。
――こんな感じでしょうか?吉良くんの記憶が失われたのも、吉良くんと吉良吉影を合わせた新しい人間になるため、過去の記憶が追いやられてしまったとか?そうなると、『ソフト&ウェット』が本当に吉良くん自身のスタンドなのかどうかも疑問視しなければならないかも。このキンタマ問題に関しては、もっと予想を煮詰める必要がありますね。


●記憶もなく、身内もいない吉良くん。このままではどこかの施設にもいられないらしい。ところが、そんな彼に後見人が出来ました。それは常秀の父親。つまり、吉良くんはこれから、身元が分かるまで東方家で生活する事になったのです。東方家は随分とカネ持ちな大家族みたいで、描かれているだけでも8人はいます。しかも、どいつもコイツもスタンドを使いそうな強烈なキャラばっか!父親以外はみんな兄弟姉妹なのかな?常秀も無事に退院したようですけど、うまくやっていけるのかねえ?
そして、吉良くんにはようやく正式な仮名が付けられました!その名は、東方 定助(ひがしかた じょうすけ)!康穂の飼っていた犬の名前「ジョースケ」から、常秀の父親が軽いノリで命名したみたい。何一つ定まったものがなく、多くの人の助けを受ける彼には、ピッタリなネーミングかもしれません。今後は吉良くんを「定助」、吉良吉影を「吉良」と呼ぶ事とします。いや〜、これでやっとプロローグが終わったって感じですね。
ラスト2ページは、裸の女の子。三輪車で競走する子ども達が、勢い余ってゴミ箱にぶつかっちゃいました。すると、彼女はゴミ箱の中に隠れていたようで、ヨロヨロしたかと思ったら大コケ&M字開脚。子ども達にえっちな大サービス(笑)。せめて吉良の服でも何でも着て行けば良かったのに。果たして、素っ裸のこんな状態で東京に戻れるのやら……。いっそ定助達と友達になってもいいんだけど。そんなこんなで、TO BE CONTINUED


★今月は49ページ!誰も殺される事なく、平和に戦いが終わって一安心でした。杜王町では、あんまり殺人なんて起こってほしくないですからね。それでも、謎が解けたと思ったら、新たな謎が渦を巻き……、ますます目の離せない展開に。面白かったです!今後は吉良に恨みを持つ連中が、勘違いで定助に襲い掛かり、定助はそれをあえて迎え討ち、自分の情報を得ようとする……のかな。今回、康穂の足にも噛まれた痕が描かれていたので、彼女にもスタンドが発現するのがほぼ確定。常秀と康穂のスタンドは一体、どんな能力なんでしょうか?定助の頼もしい仲間になってほしいものです。
それにしても、「SBR」も「ジョジョリオン」も、6部までの「ジョジョ」では出来なかった展開続きですね。第1話でジョジョが登場しない「SBR」に、ジョジョの身元が不明の「ジョジョリオン」。第1話でジョジョの名前をドガンと打ち上げていた6部までとは、明らかに異なります。舞台となる世界も変わったから、見せ方も変えてきているのでしょうね。第9部があったら、今度はどんなジョジョで、どういう第1話になるんだろう?
また、定助の新生活も楽しみです。クセ者だらけっぽい東方家の中に、定助がどう馴染んでいくのか?だんだんと定助にとっても大切な「家族」になっていくのかな?もし定助がジョニィの子孫で、東方家がノリスケさんの末裔であるなら、「SBR」最終回の船での挨拶シーンもより感慨深いものになりそうです。
作者コメントは「スーパーカーのカレンダーを買った。運転もしないのに、自分でも「何故?」」との事。デザイン的に、荒木先生の心の琴線に触れるものがあったのでしょうか?それとも、「SBR」で馬ばっか描いてた反動?
来月号は「ジョジョリオン」が表紙&巻頭カラー!しかも、コミックスの別バージョンカバーも付録で付いてくるッ!こ、これはたまらん!



(がっつり追記)
定助は何故、記憶を失ったのか?吉良は何故、死んだのか?定助の記憶の中に過ぎった男は何者なのか?……それらの謎を解く鍵は、恐らく「壁の目」にこそあると思われます。定助と吉良が埋まっていた場所であり、全ての始まりの場所。吉良が何度も足を運んだであろう場所であり、何らかの「意味」がある場所。
「壁の目」とは一体、何なのか?今回はこれを考えてみたいと思います。以下、予想&妄想。


●「壁の目」とは、4部で言うところの「魂の通り道」。鈴美さんとアーノルドがいた、振り返ってはいけない小道のようなもの。あの世に通じる道であり、魂が浄化される場所、なのかもしれません。死者の魂が通り行き、「穢れ」「恨み」などを洗い落とされる霊的スポットなのです。本来ならば地中深くに眠っているはずが、しかし、大震災の日の深夜に突如として隆起。あの悲惨で衝撃的な出来事をフィクションの中にどれほど落とし込んで良いものか分かりませんし、不謹慎を承知の上であえて書かせていただきますが……、地域一帯であまりに多くの方々が一度に亡くなられたため、「壁の目」がパンク状態になって、地表にまで盛り上がって来てしまったと推測します。
そんな「壁の目」からは、洗い落とされた「呪い」のエネルギーが漏れ出てしまっています。地表に現れてからは、より濃度が濃くなっているでしょう。そのエネルギーに触れた者は、魂に強い刺激を受け、眠っている力を強引に呼び起こされてしまうのです。肉体の方にも影響を与え、まるで「歯形」のような円形の傷が付けられてしまいます。そうして呼び起こされた力が、スタンド能力。もともとスタンドは幽霊にも効果がある力ですし、生きている魂があの世の領域に近付いたために霊的な力が高まったというワケです。


●では、その「魂の通り道」を使って、吉良吉影は何をしようとしたのか?一言で言うなら、「転生」です。新たな人間に生まれ変わろうとしたのです。
吉良はナルシストな男。ただし、どうやら彼独自の美学を貫いているからこそ、のようです。自分自身が「美」の側に属していなければ気が済まない。その「美」の基準に達さず、「美」の境界線の向こう側に属する者に対しては、とことん軽蔑して辛辣に接する。逆に、自分と同じ「美」の側に属すると認めた者には、敬意と愛情を持って接するのかもしれません。そういう両極端な二面性を持つ人物のように思います。
そんな自分大好きな吉良が、どうしてわざわざ生まれ変わろうとしたのか?その主な理由として、彼の持つ奇妙な性癖があります。爪が異常に伸びる時期には、人を傷付けたい衝動に駆られるのです。恐らく、桜二郎もその犠牲者の1人。今月号の「おまえ個人に訊いてるんだ」のコマをよく見ると、吉良の左親指の爪がえらく伸びています。だからこそ、吉良は桜二郎に絡み、ひたすら追い込んで傷付けてみせたのでしょう。時には、行き過ぎて殺人を犯してしまった事もあったはず。そして、この性癖は生まれ付いてのもの。彼の部屋には、切った爪がビン詰めされていたワケですが、1980年代のものもありました。「ジョジョリオン」が2011年の物語だとすれば、29歳の吉良は1982年頃の生まれとなります。つまり、子どもの頃から自分の性癖を理解し、爪をコレクションしていたって事。
吉良の29年間の人生の中で、爪が伸びる時期が何度訪れたのかは分かりません。しかし、かなりの人数が彼に深い傷を負わされたに違いありません。そうなると、桜二郎のように吉良を憎悪する者が何人いたって不思議じゃない。吉良自身がその事実を明確に危険視したのは、桜二郎に監禁された時でした。彼は復讐に燃える桜二郎に一度は捕まり、それでも何とか脱出。その3日後に、定助が吉良と間違われて、桜二郎に囚われる事になります。ともかく、吉良にとっては、おちおち熟睡も出来ないヘビーな状況となっていました。だから、「吉良吉影」である事を捨て、新しい別の人間としての人生を始める事に決めたのです。
吉良からすれば、自我と美しさを保っていられれば、社会的に「吉良吉影」であり続ける事には執着なし。彼の「美」の基準を満たす者が選ばれ、吉良と1つになり、新しい人間に生まれ変わります。それを繰り返せば、もはや不老不死にも等しい。永遠の命と美、そして自身の性癖を満足させられる生活。これこそが、吉良の目的なんです。定助はたまたま吉良に選ばれてしまった、不運な人なのでしょう。


●吉良は具体的に、どのような方法で転生しようとしたのか?ここで「壁の目」が出て来ます。「壁の目」とは、死者の魂の通り道。魂が流れる場所。その流れを利用し、自分の魂を別の肉体に移動させたのです。もっとも、ただ魂を別の肉体に移すだけではなく、(一部であっても)美しい自分の肉体も含めて引き継ぎたい。それゆえ、吉良は自分のキンタマを、別の肉体と融合させました。キンタマは、DNA(言わば、自分の肉体の設計図)が詰まった精子を作り、貯蔵します。精神的なデータは魂が、肉体的なデータはキンタマ(精子)が受け持ち、「吉良吉影」という存在を次の「器」へと引き継がせるのです。
異なる2つの肉体と魂。それらを1つに融合し、定着させるためには「壁の目」の力が必要でした。定助と吉良が埋まっていたあのは、魂の流れの「行き止まり」。そこに定助を配置し、そのすぐ上流で吉良が仮死状態になれば、吉良の魂はそのまま定助の元へと流れ着きます。完全に死んではいない魂なので、定助の生きている肉体に入り込む事が出来るのです。こうして吉良は、強引に定助と融合。新しい人間になったので、吉良の記憶も定助の記憶も封印され、まっさらになっています。融合したばかりのため、吉良の魂も今は眠ってしまっている状態なんです。……が、吉良の魂や記憶は徐々に目醒め、やがては肉体を支配するでしょう。これぞ定助に掛けられた「呪い」
正確に言うなら、ジョースター(=定助の本来の姿)と吉良が融合した存在が「東方定助」。どちらにも似て、どちらとも違う人物。恐らく、桜二郎から逃げ出したのも、帽子屋「SBR」のおっさんが見たのも、吉良だったのだろうと思います。あまりに似ているせいで、おっさんも裸の女の子も桜二郎も、吉良と定助を同一人物と勘違いしてしまっただけ。まあ、半分は吉良である以上、決して間違いではありませんが。


●ただ、どうやってキンタマを物理的に移動させたのか?これが問題です。とりあえず2つの仮説を考えてみました。
1つ目は、吉良のスタンド能力説。先にも書きましたが、吉良のスタンドは「言葉」や「言霊」を操る能力だったりするかもしれません。純粋な話術のみで桜二郎を追い詰めたっていう方が凄みがあるとは思いますけど、まあ、可能性としてね。例えば……、「キンタマ」は「タマタマ」であり、「魂」や「霊」も「たま」と読みます。即ち、「タマタマ」=「霊魂」。よって、吉良の「霊魂」は「キンタマ」とイコールとなり、「壁の目」の魂の流れに乗って、キンタマも同時に移動する事が出来たのです。無茶な予想とお思いでしょう(笑)。でも、「吉良吉影」という名が4部の「吉良」と同姓同名である事も、「東方定助」という名が4部の「仗助」と同音異字である事も、この「言葉」を操る能力の暗示・布石だったとしたら……!?
2つ目は、『ソフト&ウェット』説。あの能力でなら、キンタマの1つや2つ、容易に奪える事でしょう。しかも、奪ったものを自分に「与える」という特性もあったとしたら、キンタマが2×2になって当然。今の定助は生まれ変わったばかりなので、スタンドも初期化され、「与える」特性も失われていると考えられます。吉良は定助を言葉巧みに脅し、自分のキンタマを奪い取らせたのです。その状態で転生を行なったため、新しい肉体もキンタマ2×2で固定された、と。
あるいは逆に、『ソフト&ウェット』が本来、吉良のスタンドだったという可能性もあります。奪う能力ってのも、主人公よりむしろ敵に似合う能力ですしね。その場合、吉良は定助から「肉体」を奪い取ってしまったのでしょう。ただし、1人の人間が2つの肉体を丸々同時に持てるはずもありません。定助の肉体を奪った代わりに、自分の肉体のほとんどは捨てざるを得ず。自前のキンタマを残すのがやっとでした。肉体を失った定助の魂も、転生時にあえて取り込んでしまいます。捨て去った吉良の肉体に入られても困るし、魂レベルで生まれ変わらなくては新しい人間になれない。新しい生活も得られない。そう考えたのです。


●そもそも、吉良はどうやって「壁の目」の秘密を知ったのか?そこに絡んでくるのが、例の「記憶の男」なのです。彼はなんと、吉良吉影の兄。名前はテキトーに「吉良吉光」とでも付けておきましょうか。彼もスタンド使いで、その能力ゆえに「壁の目」の秘密を知りました。モノの情報を読み取れるサイコメトリー的な能力なのかもしれないし、エネルギーの形や流れを捉える事が出来る能力だったりするのかもしれない。
彼は民俗学者で、杜王町の歴史や風土にも詳しい人物です。で、杜王町の伝承の中に、「壁の目」にまつわる事柄が書き記されていたのです。そこから興味を抱き、自分の能力によって、伝承が事実である事を確認。さらには大震災の影響で、思いがけず「壁の目」が地表に現れたもんだから大興奮。ますます血気盛んに研究を進めます。そんな折り、弟の吉影から切羽詰まった状況にある事を聞かされ、協力を依頼されました。いずれそうなるであろう事を予測し、用意していたのが「転生」計画。弟も助かるし、自分も「壁の目」の実験が出来るし、一石二鳥のアイディア。「壁の目」の魂の流れを読み、その流れの一部を意図的に変え、「行き止まり」を作ります。そこへ「器」として見繕っていた少年を連れて来て、準備万端。計画を実行したのです。
あの世への通り道である「壁の目」は、ある意味、この世とあの世の境界。鳥居が人の世と神の世を分ける結界や門であるように、この「壁の目」もまた、異なる世界への出入口なのです。そして彼は、「壁の目」の力を操作し、魂の流れをもっともっと根本から大きく変化させる事によって、この世の中にあの世を創り出そうとしているのです。地上に魂の終着点を設けてしまえば、自ずとそこにあの世が出来上がる。そうなれば、たとえ死んでも、魂は地上に居続ける事が出来る。死の恐怖などない、永遠の楽園です。それこそが彼の目的。
この世とあの世の理を捻じ曲げる事自体も危険ですが、さらに身近でヤバい事実がありました。「壁の目」を境界として、杜王町に天国地獄が創られようとしているのです。「壁の目」で清められた魂の行き着く先が天国となり、禊がれた「穢れ」や「恨み」などの「呪い」のエネルギーの行き場が地獄となるのです。このままでは杜王町が、魑魅魍魎の跋扈する異界と化してしまう!これぞ杜王町に掛けられた「呪い」



――長々と書いてしまいました。もともと4部は、死後の世界を舞台にするという構想があったくらいです。その構想の名残りが、鈴美さんや写真の親父といった幽霊になり、振り返ってはいけない小道になったものと思われます。また、死後の吉良を主人公にした短編「デッドマンズ・Q」も描かれていますし、「岸辺露伴は動かない 〜エピソード16:懺悔室〜」では悪霊による呪いも描かれていました。そういう意味で、4部や杜王町は「死後の世界」と切っても切れない縁があるワケです。
であれば……、世界は違えど、同じ杜王町を舞台とする8部「ジョジョリオン」でも、「死後の世界」が深く関わってくるかもしれません。そう考えて、予想&妄想を膨らませてみました。




(2011年11月21日)
(2011年12月6日:がっつり追記)




TOP  <<#005 戻る #007>>

inserted by FC2 system