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真の「幸せ」って 考えたことあるぅ?
本当の「幸せ」を……


#008 東方大弥の異常な愛情@





トビラ絵は、リビングの床に仰向けに寝そべる大弥ちゃん。そんな彼女を見下ろすようにして、定助の両足も見えますね。愛らしい彼女の手には、チェスの駒らしき物がそっと握られています。見れば、その駒には例のマークが刻まれているではありませんか。そう、吉良の死体の手首や、東方家の2階への階段の手すりにあったマークです。これはまた、何とも意味深。そんなワケで、今回はまさにこの「駒」と「マーク」のお話となります。


●謎のスタンドの謎の攻撃(?)によって、大弥ちゃんの左太ももには大きな負傷がッ!血は噴き出し、骨まで丸見えとなり、焼けるような音や煙まで描かれています。このダメージ、前回の彼女のセリフにもあった「地雷」と関係がありそう。定助は大慌てで、他の家族の姿や電話の在り処を探します。しかし、どちらも見当たらない!大怪我を負った大弥ちゃんを心配してか、定助は彼女を抱きかかえました。
すると、その時!唐突に定助は、この家の手すりに刻まれたものと同じマークが、吉良の手首にもあった事を思い出したのでした。桜二郎の時といい、定助の記憶は窮地に追い詰められないと蘇らないようですな(笑)。マークの意味は分からないが、きっと東方家と吉良は何か関係があるに違いない。そう確信する定助。
定助がふと我に返ると、なんと大弥ちゃんの足の負傷は綺麗サッパリ無くなっていました。あれ?彼女の太ももをなでたり、彼女の体勢を変えたりしてみても、やっぱりどこにも怪我はありません。しかし、あれは確かに起こった出来事のはず。彼女に詰め寄る定助。大弥ちゃんはマイペースそのものですが、一連の出来事はやはり彼女も認識している様子。親切に説明してくれました。


●大弥ちゃん曰く、「公正さこそルール」「ルールこそパワー」。負い目や引け目のなさこそが「強さ」です。だから彼女は、あえてルールを正々堂々と明かしてくれました。ミラションのような卑怯な自滅タイプとは違い、リンゴォやアクセルみたいな精神性ですね。「彼女に気を遣わせてはいけない」、それがルール。そのルールを破った定助はどうなってしまうのか?それを教えてくれるかように、定助の左目の奥からチェスの駒が出現!目玉を押しのけ、駒が体外に出て来て、やがて落っこちました。その駒を拾う大弥ちゃん。駒にはトビラ絵と同様に、例のマークが描かれています。
そして彼女は、拾った駒を手に、近くにあるチェス盤へと歩いて行きます。盤上には、他にもいくつかの駒が配置されていました。それぞれ、花や自転車、猫などの姿が映り込んでいます。ここまで読めば大体の想像は付くでしょうが、やはりこれは「記憶」の形。彼女は他人の記憶をチェスの駒の形にして、奪い取る事が出来るのです。彼女は駒に触れば、その「記憶」を見れるっぽい。当然、奪われた方は、取られた記憶を思い出す事など出来ません。定助もマークに関する記憶が一切失われてしまいました。『ホワイトスネイク』の簡易版みたいなスタンドですねえ。それにしても、ただでさえ記憶喪失の上に、もっと記憶を奪われるなんて……。つくづく定助も災難です(笑)。
大弥ちゃんの説明はまだ続き、自分には「スタンド」という特殊能力がある事を告げます。今更ですが、物語中で初めて「スタンド」ってワードが使われましたね。彼女は2歳か3歳の頃、家の近くの断層で転んだんだそうです。それが原因で視力は弱くなったけど、その代わり、この能力が目醒めたとの事。桜二郎と同じく、まだ隆起していない「壁の目」の影響を受けた模様。親父さんが言ってた「生まれつき視力が弱い」ってのは、真実ではなかったんですね。気になるスタンド名は、『カリフォルニア・キング・ベッド』ちゃん。リアーナという歌手の曲名です。「イエス」とは関係ないのか。


『カリフォルニア・キング・ベッド』ちゃんは、ルールを破った者の「記憶」を1つだけ奪える。いろんな人の記憶を集める彼女の目的とは?……大弥ちゃんが語る、真の「幸せ」。それは、「思い出」を誰かと共有する事。1人じゃなく、誰かと一緒に行った場所。一緒に見たもの。一緒に聞いたこと。一緒に食べた物。一緒に考えたこと。一緒にやった事。それが本当の「幸せ」。だから、他人の「思い出」を奪う事で、「思い出」を共有する。それこそが彼女の目的だったのです。
でも、やっぱ「記憶」を奪い取ったところで、「思い出」を共有した事にはならんでしょう。そもそも奪われた方は忘れちゃってるんだし、映像を「見る」だけと実際に「体験する」のとじゃ大違いだろうし。目が不自由なために、お互いに気を遣い合って、誰かと「思い出」を作る事なんて出来ずにいたのかな……。なんか悲しいですね。「ジョジョリオン」が完結する頃には、彼女がいろんな友達と大切な思い出を作れているであろう事を祈ります。
駒を破壊したり失くしたりすれば、その「記憶」は永遠に消滅してしまう。奪われた「記憶」を取り返す方法はたった1つ。自分の影を彼女に踏ませる事。それもまたルール。ただし、彼女は物の配置や太陽の位置などなど、全てを把握しちゃっているのです。いつ、どこに、どんな影が出来るのか?それも知り尽くしているのです。彼女に影を踏ませる事は、とてつもなく難しいミッション!下手を打てば、どんどん「記憶」を奪われていき、「記憶」を取り戻さなければならない事さえも忘れてしまうかも。


●場面は変わって、自宅に帰った康穂ちゃん。一軒家ではなく、アパート的な家っぽいですね。パッと見、日本に見えないなあ(笑)。散らかった部屋の中、ソファの横で爆睡する彼女の母親。広瀬 鈴世(すずよ)という名の、44歳です。アバズレビッチな母親らしく、胸元のキスマークを発見すると、康穂は泣き出してしまいました。父親はいないのかな?4部の康一くんがあまりにごく普通の家庭だっただけに、康穂の不遇な家庭環境には驚きました。彼女もまた、定助と同じ。どこへ行けばいいのかも、自分が何者なのかも分からない。常秀や大弥ちゃんもそんな想いを抱えていそうです。「呪い」とは、この事なのかもしれません。「自分」を見失い、「自分」が定まらない。それを共に助け合い、共に「自分」を見出し、定めていくのが「定助」の役目なのでしょうか。
家を飛び出そうとする康穂の目に、1通の封筒が止まります。なんと彼女、「吉良の髪の毛」と「定助の口の中の粘膜」をサンプルに、とある調査会社にDNA検査を依頼していたのです。警察には頼ってられず、自分のバイト代をはたいて依頼したみたい。行動力あるな。吉良と定助に何らかの血縁関係があったりしないものかと思っての事だったのですが、検査結果は「95.8%の確率で同一人物」。まあ、読者的には想定の範囲内であり、別段驚くに値しない情報ですが、裏付けが取れてスッキリした感じ。ところが、康穂はこのふざけた結果に怒り心頭。抗議して、代金を返してもらおうと息巻いております。
すると、彼女はある事実に気付くのでした。彼女は吉良の死体を写メで撮っていたようで。よくやるな〜、って感じですけど(笑)。とにかく、ここで彼女も吉良の手首にあるマークを発見するのでした。幼馴染みで昔から遊びに行っている東方家にも、同じマークがある事にも辿り着きます。最近になって付けられたものではないって事か。そして、どうやら手すりだけでなく、2階の床やドア、机の脚なんかにも刻まれているようです。吉良と定助と東方家を結ぶものは、謎のマーク。康穂ならばきっと、東方家に忍び込み、また一波乱起こしてくれるでしょう。彼女の活躍、期待してますよ。
それにしても、「ジョジョリオン」は肉体に付けられた「印」がキーワードの1つなのかな?定助の星のアザ、そこに刻まれた謎の歯形。『ファン・ファン・ファン』の両手両足4点の「印」。吉良の死体の「印」。さらには、康穂の母さんのキスマーク。星のアザはジョジョファンにとっちゃ、言わば希望の象徴です。しかし、それ以外の「印」はどれも不吉の象徴となっています。「呪い」を目に見える形にしたのが、これらの「印」??


●場面は再び東方家。大弥ちゃんは買い物に出掛けたいようで、着替えを定助に手伝ってもらおうとしています。それだけ見れば、うらやましいハーレム状態なんでしょうが、現実はヘヴィすぎる。定助はいよいよ覚悟を決め、この影踏みゲームに挑む事に。彼女はきっと、定助の「記憶」のさらなる手掛かりも持っている。奪われた「記憶」以上に取り戻そうと決意!いきなり定助を好き好き言ってるし、もしかしたら大弥ちゃんは過去に定助と出逢っていて、すでにいくつかの「記憶」を失敬してたりして??
クローゼットで服や持ち物を選んでいる大弥ちゃん。ここの照明を利用できると思い立った定助は、『ソフト&ウェット』でライトのスイッチ音を奪います。音もなく、照明を消す。それにより、影も大弥ちゃんのそばまで伸びる。あともうちょっとで届く。僅かに体を移動させる定助。ところが、彼女は何もかもお見通しでした。心眼でも会得してんのかってくらいの凄まじき知覚能力!定助の不自然な移動、照明を消した場合の影の位置。全てドンピシャで正解です。定助もドッキドキで冷や汗ダラダラ(笑)。大弥ちゃんはダメ押しで、スイッチのON・OFFを確認しようとしてきます。
もし企みがバレちゃったら、定助は彼女に余計な気を遣わせた事になる。まあ、不自然な行動を気取られた時点で、気を遣わせてしまってるんでしょうけど。とにかく、このままでは「記憶」がもっと奪われてしまう事は必至!ヤバいぞ、定助!でも、お気楽な一読者としては、ルールがハッキリしたゲーム上での戦いは、様々な駆け引きが繰り広げられそうで楽しみです。買い物に出掛けるとしたら、不確定要素も増え、大弥ちゃんの隙も増える気がするけど……。大弥ちゃんはそんな想像をも上回りそう。


★今月は47ページ!大弥ちゃんがキュートです。歪んだ愛情が狂気となって襲って来るってのは、由花子さんやグェスなんかを彷彿させますね。ただ、『カリフォルニア・キング・ベッド』ちゃんの能力は、未だ未知数。正直、最初の足の負傷の理由が今イチ分からない。「記憶」を奪う能力とうまく繋がらないっていうか。例えば……、「記憶」を奪うためには、その都度、直に触れないといけないのだとしたら?大弥ちゃんを抱きかかえた途端、定助はマークの記憶が蘇っていました。奪う「記憶」を明確な形にするため、ぼんやりしていた部分も強引に引き出され、クッキリ鮮明になるのかも。大弥の負傷は、心配して彼女に近付き、触れさせるためのエサであり罠……とか?今回は特に痛がってもいなかったし。前回の悲鳴と涙も演技か?
そして、定助もスタンド使いである事を大弥ちゃんに告げた人物とは?親父さんなのか、それとも他の誰かなのか?一体、誰がいつどこでそれを知ったというのでしょうか?不気味な影を背後に感じます。その辺の情報も、大弥ちゃんから得られるのでしょうかね?
作者コメントは「ジョギングシューズが、走ってる時に左右同時に壊れました。同時ってすごくない?」との事。確かにすごい。新手のスタンド使いの仕業か、よっぽど左右均等に力が入っていたのか。荒木先生は日常生活からして奇妙ですね。
付録として、、「ジョジョ」25周年記念特大ポスターも付いてきました。朝日新聞に描き下ろされた歴代ジョジョのラフ画です。この絵も超カッコイイんだけど、やっぱり渋谷駅前の「Q FRONT」壁面に飾られた絵が良かったな。あの絵をもっと間近でデッカく見たかった。



(追記)
●大弥ちゃんの「影踏ませ」、果たして攻略法はあるのでしょうか?……いや、攻略しなくちゃ始まらない!そもそも、影とは「光」「遮蔽物」があって出来るもの。そして、彼女は「場所」「時間」も把握し、光の角度や遮蔽物の位置を正確に認識。それらの情報を元に、影の位置と長さをピタリと推測できるってワケです。彼女に影を踏ませたいのならば、これらの要素を、彼女に誤認させれば良いのです。
『ソフト&ウェット』を使う事を前提とすると……、例えば、遮蔽物の「色」を奪って透明にし、遮られていた自分の影を大弥ちゃんの方に伸ばしちゃう……とか。あるいは、地面や遮蔽物の「形」を奪って変形させ、影の伸びる方向を変える……とか。また「摩擦」を奪って、遮蔽物を自在にツルツル移動させ、影の位置を読みにくくさせる事も出来そうです。
大弥ちゃん側に「しゃぼん玉」を使うとすれば、狙うは時計ですかね。彼女の目が見えないため、触って時間を確認する立体的な時計になっています。とすると、この時計の、針の進む「速さ」だとか「リズム」だとかを奪えば、正確な時間が読めなくなるはず。時計の「硬さ」を奪ってフニャフニャにし、触っても意味がなくなるって状態にしても良さそう。本当に彼女自身に使うなら、彼女の「触覚」を奪えば、時計をいくら触っても何も感じられなくなるでしょう。


●次回は、定助がいきなり康穂に関する「記憶」を奪われる予感。で、2人で買い物に出掛けたところ、康穂にバッタリ。しかし、康穂の事をすっかり忘れている定助は、彼女にそっけない態度を取ってしまい、康穂も大ショック!何とか「影踏ませ」に成功し、記憶を取り戻せても、微妙に気まずい空気になっちゃいそう。定助を巡っての、康穂と大弥ちゃんの三角関係??
ところが、問題はそれだけではなかったのです。大弥ちゃんから取り戻した「記憶」の中に、あるはずのない異常な記憶が混じっていたのです。それはなんと、殺人の記憶。確かに人を殺したという思い出が、定助の心に蘇ります。自分が人殺しであった事に衝撃を受け、困惑する定助。……しかし、実はこれは吉良吉影の記憶だったのです。定助と吉良は、ほぼ同一人物。そのため、「吉良の記憶」も定助に戻って行ったという事です。今回描かれたチェスの「駒」は5つ。定助が奪われた「マーク」の記憶(ナイト)に、「お花畑」(ルーク)と「自転車」(ビショップ)、それに「ニャンコちゃん」の記憶(キング)。残る1つ、クイーンの「駒」が吉良の記憶です。
つまり、大弥ちゃんは吉良と知り合いだったって事。例の謎のマークが示す通り、吉良と東方家には何らかの関係がある模様。出会って間もないはずの定助に対し、妙に好意を持って接する大弥ちゃんに違和感がありましたが、彼女が好きなのは吉良なのかもしれませんね。定助の中の「吉良」を好いているだけ?……どういう繋がりがあったのかは知りませんが、吉良はたまに東方家を訪れていたのでしょう。その時、吉良は大弥ちゃんの持つスタンド能力に気付きます。彼女にとって、初めて出逢った同じ能力を持つ者。目が見えないために引き篭もりがちで、他人に心を閉ざしていた彼女でしたが、すっかり吉良になついてしまいます。で、吉良はそんな彼女を利用しようとしたのです。
吉良は桜二郎の時と同様に、大弥ちゃんも言葉巧みに洗脳。他人の「記憶」を奪う事こそ自分の幸福、と信じるようになってしまいました。吉良は、自分の性癖や犯罪を知ってしまった者の「記憶」を、彼女に奪わせたのです。それらの「駒」はすぐに破壊され、永遠に失われました。そうして吉良の手助けをする代わりに、彼女は大好きな吉良の「記憶」を1つだけもらったのです。それが残り1つの「駒」であり、定助に戻る事になる殺人の記憶。定助は取り戻した「吉良の記憶」と、大弥ちゃんの話から、さらなる手掛かりを追う事となるでしょう。
ちなみに、桜二郎が持っていた吉良の写真。あれを撮ったのは東方憲助です。前回、やたらと写真を撮ってたのは布石ですな。何らかの目的で、吉良と親父さんは行動を共にし、「壁の目」を訪れていました。定助の記憶に過ぎった謎の男も一緒だったかもしれません。その時、写真好きな親父さんはいつものように撮影しまくり。そして、その写真は吉良にプレゼント。でも結局、それは吉良の部屋に現れた桜二郎に回収されてしまう事になったってワケですね。



(もっと追記)
●大弥ちゃんの『カリフォルニア・キング・ベッド』ちゃんについて。大弥ちゃんの気を遣わせてしまうと、大事な記憶を1つ、チェスの「駒」にされて奪われる。その時、大弥ちゃんが何故か負傷する。奪われた記憶を取り返すには、自分の「影」を大弥ちゃんに(一定時間)踏ませなければならない。これがルールです。……しかし、どうにもスッキリしませんでした。各々の要素がまるでチグハグで、まったくまとまりがないように感じられたからです。でも、だからと言って思考停止するワケにはいきません。多少強引であっても、まとめてやろうじゃないかと。
大弥ちゃんにとっての、そしてこのスタンド能力にとってのキーワード。それは「形」です。目が見えないからこそ、彼女はハッキリとした「形」あるものに安心を感じるのでしょう。だから彼女の能力は、「形」のないものに「形」を与えているのです。
まず、能力の発動条件は、大弥ちゃんに気を遣わせること。もっと厳密に言うなら、不自然な言動により、彼女を不快にさせてしまうこと。彼女に不要な負担を掛けてしまうこと。不自然さは人間関係を壊す「地雷」だと、彼女は言っていました。彼女の能力は、その「地雷」を爆発させてしまうのです。そして、彼女の肉体は大きく負傷!これは本物の怪我ではなく、不自然さという「地雷」によって傷付いた、彼女の心の「形」を投影したもの。相手を心配させて触れさせるための罠かも……と前に書きましたが、あるいは、相手に「あなたはあたしをこんなに傷付けたのよ」と見せつけ、もう傷付けたくないと思わせるための過剰なアピールなのかもしれません。
記憶をチェスの「駒」にするのも、記憶に「形」を与えているって事。では、どうしてチェスの「駒」なのか?単純に、大弥ちゃんがチェスを趣味にしているって可能性もあります。チェスに愛着があるのなら、「駒」にするのも自然でしょう。増してや、チェスの「駒」はそれぞれ「形」が明確で、遊ぶにも飾るにも持ち運びするにもちょうどいい大きさ。しかも、壊れにくく、失くしにくい。そういう意味でも、彼女にとって都合が良かったのかもしれません。
では、能力の解除条件である「影」を踏ませる行為はどうでしょうか?「影」には、明確に固定された「形」はありません。時間や状況によって変化し続ける、不安定なものです。ある意味、彼女にとって好ましくないものとも言えます。彼女が最も嫌う事(=気を遣わせる事)をしたペナルティとして、彼女が最も望むもの(=記憶)を奪われてしまう。逆に……、彼女に気付かれる事なく、彼女の好まないもの(=影)を触れさせる行為は、完全に彼女を上回ったって事になるでしょう。そのご褒美として、奪われたものが返却される、と。
もしくは、「影」とはその人の一部と解釈する事も出来ます。「三尺下がって師の影を踏まず」ということわざにもあるように、元来、人の影を踏むという行為は失礼に当たります。「ジョジョ」では、ワムウが自分の影の中に入ったカーズを反射的に攻撃していましたし、『ブラック・サバス』は影からその人の魂やスタンドを引きずり出していました。つまり、影を踏むって事は、その人を足蹴にする事と同義。大切な思い出を共有する資格が失われる行為と、大弥ちゃんが受け取っているのかもしれません。公正さやルールにこだわったりと、彼女は彼女なりの礼節を重んじているんでしょうしね。
――そんな風に考えてみると、『カリフォルニア・キング・ベッド』ちゃんのヴィジョンも意味深に見えてきます。バラバラに散っていきそうなそれぞれのパーツが、弱々しいロープで辛うじて繋がって「形」を保っている。危ういバランスの、大弥ちゃんの心の「形」なのです。




(2012年1月18日)
(2012年1月21日:追記)
(2012年1月23日:もっと追記)




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