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この気持ち……
………定助に会いたい…
…なんとかしてあげたい


#010 東方大弥の異常な愛情B





●トビラ絵は、定助と大弥ちゃんのザ・ニューカップル。大弥ちゃんが後ろから定助にまとわり付き、お互いの頬をくっ付けてます。彼女の左手は、定助のセーラー服の中へと忍び込まれ、ちょっぴりエッチなイメージも。そして、何故か2人して歯を見せています。「ねえねえ、見て見てェ〜ン。あたしの歯並びキレイでしょ?」「オレェ……」とでも言っているのでしょうかね?こうやって仲良く密着してる2人を見ると、意外とお似合い??


●冒頭は、定助によるこれまでのあらすじ。最近はこれが多いですね。まあ、話の要点が分かりやすいし、ここから読み始める新規読者には親切な構成。つーか、それはいいけど、大弥ちゃんの部屋も外から丸見えになってますよ。さっきの2人の情事も、彼女のお着替えも、誰かに見られちゃってる可能性は否定できないな。カーテンかブラインドでも閉めとけばいのに。
さて、そんな危機的状況にある定助に救いの女神が降臨ッ!東方家の門の前に現れたのは、我らが康穂ちゃん!監視カメラに用心しつつ、奥の様子を窺っています。そして、彼女の中にある確かな想い。定助に会いたい。定助は悪い人ではない。自分の「生まれ」すら知らない彼を手伝ってあげたい。そう強く想います。胸をドキドキさせ、顔も赤らめておりますよ。今はまだハッキリとした形を持たないのかもしれませんが、定助と康穂の間には、お互いを必要とし、求め合う感情が生まれています。
すると、そこにいきなり大弥ちゃんが登場ッ!お着替えを終えて、チャリに乗っての御登場です。彼女は何も言いませんが、康穂に気付いているのかいないのか?まるで見せ付けてやるかのように、そこへ定助を呼びます。とってもキュートな笑顔で定助に手を振る康穂。しかし、康穂の記憶を失った定助は訝しげな表情。そんな定助の不自然な反応に、大弥ちゃんも気付く。康穂は、自分の存在が彼女にバレないようにと、すかさず身を隠します。しかし、自分の事を「知らない人」「ただの通行人」と評する定助の声を聞いて大ショック!でも、ここで怒ったり悲しんだりせず、定助に何かヤバイ事が起こっていると直感できる康穂は素晴らしい。「定助は悪い人ではない」「定助は自分を傷付けたりしない」という事を信じているんでしょう。いい女だぜ。


●定助と大弥ちゃんは、チャリに2人乗りして買い物に出掛けるつもりらしい。危険を心配する定助に対し、彼女は余裕たっぷり。そんな会話の中、こっそりと近付けられた定助の影も難なく避けちゃいます。定助の次なる策は、「しゃぼん玉」による音トリック。「しゃぼん玉」に閉じ込めた「自分の声」を彼女の耳元で聞かせる事により、自分がまだチャリの後ろに乗っているものと錯覚させる。定助本人はすでに木の枝にぶら下がっており、その影を彼女の方向に伸ばす。「しゃぼん玉」に閉じ込めた時は聞こえないくらいの囁き声だったのに、割れたらある程度の声量になっていた事から、「しゃぼん玉」の中で奪ったエネルギーを増幅する事も可能なのかも?ともあれ、シンプルだけど見事な作戦です。
ところが、大弥ちゃんはすぐに違和感に気付きました。どうして自分の体に腕を回してくれないのか?それとも、腕を他の事に使っている?……次の瞬間、定助の耳の穴から「駒」が飛び出します。彼女に怪しまれただけで、「記憶」を奪われてますよ。だんだんと条件が緩くなっていっている気もしますが、「記憶」を奪われる度に抵抗力が弱まってしまっているのかもしれません。奪われた「記憶」、それはなんと『ソフト&ウェット』の「記憶」!『ホワイトスネイク』のようにスタンド自体を奪う事は出来ないけど、自分のスタンドの存在そのものを忘れてしまうのです。事実上、スタンドを奪われたも同然。大弥ちゃんもレアな「記憶」をGETできて大喜び。
「記憶」や「思い出」は、生きるエネルギー。大事な「記憶」を根こそぎ持って行かれた定助……、全身の力が抜け、息を荒げています。これでもはや、定助を守ってくれるものは何もない。この世で大弥ちゃん1人だけ。「あたしのこと好き?」との質問にも、軽く「うん」と答える定助でした。定助、陥落か……!?


●不意に聞こえてくるケータイの着信音。その音は大弥ちゃんのケータイ。でも、彼女の部屋からではない。すると、定助が静かに口を開きます。「公正さがルール」と言うのなら、正直に言うだけ。彼女のケータイは、やはり定助が隠していたのです。隠した理由も忘れているけど、誰か大切な人に電話した気もするけど、定助が隠した。それが事実。
その告白に、大弥ちゃんブチ切れ!「駒」を思いっ切り地面に叩き付けるッ!『ソフト&ウェット』の「駒」にヒビが入り、同時に定助の目にも傷が付けられていきます。スタンドそのものではなくても、「記憶」は定助のエネルギー。それを破壊する事は、肉体にも影響を与えてしまう模様。定助が電話する相手なんて、康穂しかいません。自分がいる目の前で、他の女に助けを求めるという行為に、大弥ちゃんの怒りは爆発。もし康穂からの電話だったら、奪った「駒」を破壊して、永遠に「記憶」を消し去ってやろうと決心しました。そして実際、その電話の主は康穂なのです。最大のピンチ!
買い物は中止となり、家の中に戻ります。ケータイは冷蔵庫の中に隠されていました。大弥ちゃんに命じられるまま、取り出したケータイを床に置き、冷蔵庫の扉を閉める定助。彼女が電話に出ると、そこから聞こえてきたのは康穂の声!完璧にキレた大弥ちゃん。でも、「康穂を巻き込んだ事」に対してもキレてるっぽいのが気になるところ。単なる嫉妬心だけでなく、大切だという人を自ら危険に晒す安直な行為への憤りも含まれているのでしょうか?複雑な乙女心?


●大弥ちゃんが怒りに身を任せ、「駒」を叩き壊そうと振り上げるッ!しかし、なんとこの時点で、彼女は定助の影を踏んでいたのです。さっき閉められたはずの冷蔵庫の扉が、開きっぱなしになっていたのです。奪われた「記憶」が、全て定助に戻るッ!定助は、スタンドの「記憶」を奪われてしまう事をも想定。大弥ちゃんのお着替えを待っている間に、あらかじめ罠を仕掛けていたのでした。冷蔵庫の扉を閉める「音」を「しゃぼん玉」に閉じ込めておき、それが割れれば、彼女は扉が閉じたと思い込む。そうすれば、冷蔵庫の中の照明が作り出す影を踏んでしまうはず。仕掛けた罠の存在自体を忘れているため、当然、定助の言動にも不自然さはありません。大弥ちゃんはまんまと油断させられてしまったのです。一か八かの賭けに、定助は勝ったッ!
思わぬ敗北に大弥ちゃんは慌てふためき、泣き出しちゃいました。しかし彼女は、どうやら憲助の命令で襲って来たワケではない様子。父親の考えは知らないとの事。定助は彼女の言葉を信じ、康穂にも改めて電話で挨拶。自分の事をちゃんと憶えていて、いつもの通りの定助に、康穂も安心した事でしょう。ただ結局、大弥ちゃん自身は、定助の「失われた記憶」の手掛かりを持っていなかったっぽいな。
「謎のマーク」の記憶も取り戻した事だし、さっそく定助は例の2階へと向かいます。そんな定助に、大弥ちゃんが泣きながら問い掛けます。「あたしのこと、今のでもう嫌いになったァ…?」と。とっても不安げに怯える大弥ちゃん。定助は「大嫌い」と答えながらも、彼女のウソをつかない正直なところは美しい点だ、とフォロー。そして、これから好きになってほしければ……と取り引きを持ちかけ、ちゃっかり彼女のケータイを頂戴し、2階に侵入する事も秘密にさせちゃいました。オマケに、ほっぺにキスまでサービス。乙女の純真を弄ぶ、天然のプレイボーイですな(笑)。恐ろしい程に要領のいい男です。これで東方家での心強い味方を手に入れましたね。ただ、どうしてそこまで大弥ちゃんが定助に固執するのか?その理由は明らかになるのかな?


●2人一緒に2階へ侵入。大弥ちゃん曰く、2階は憲助の書斎らしい。「謎のマーク」は出版社のマークだとか。書斎を見渡し、そのマークが刻まれている1冊の本を発見します。その本のタイトルは……、なんと「スティール・ボール・ラン・レース全記録」ッ!その著者は、初代「東方 憲助」ッ!今回はこんないいトコで終わっちゃいましたが、こいつはまさに衝撃的展開です。まさか「SBR」が「ジョジョリオン」の物語に深く関わってこようとは。てっきり舞台設定の下地や裏側って程度の扱いで、「ジョジョリオン」はまったく異なる展開を見せてくれるものと思っていたんですが。
まず、「SBR」に登場したノリスケ・ヒガシカタが初代「東方 憲助」で間違いないでしょう。親父さんは4代目ですからね。初代の名を受け継いだだけ。で、その初代憲助さんが、恐らく自分の体験したレースを自伝として書き遺したものが、この本と考えられます。いや……、「全記録」とまで謳ってますから、レース後に色々と調査・分析したりして、ガチであのレースの全てが記されているのかもしれません。そして、その記録の中に、親父さんの目的も隠されているはず。いくつか考えてみました。

@「聖なる遺体」
すぐに思い浮かぶものは、やっぱしこれ。親父さんも「遺体」を探しているのかも。「遺体」を手に入れた者は、全ての幸福を得る事が出来る。そのために、ファニー・ヴァレンタイン大統領はこのレースを利用し、レース参加者のごく一部もその激しい争奪戦で多くの血を流した。そんなような事が記録されているのでしょうか?ジョニィやスティール夫妻のその後なんかも書かれていても不思議じゃありません。
A「悪魔の手のひら」
「遺体」と無関係の事柄ではありませんが、「壁の目」ともなんか似ている感じがします。どちらもスタンドを目醒めさせる場所。実はほぼ同一のものなのかもしれません。もし初代憲助さんがスタンドの事まで書き記していたとしたら、大弥ちゃんがスタンドに目醒めると共に、親父さんは初代の記録に間違いがなかった事も知るワケです。そして、「悪魔の手のひら」を利用して、何かをやらかそうと画策。
もしかすると、「壁の目」の隆起自体が親父さんの仕業だったり?大震災の日の深夜に隆起させたのも、震災の影響と世間に思わせるためのカモフラージュ?
B「別の世界」
ファニー・ヴァレンタイン大統領のスタンド『D4C』が自由に行き来していた「隣りの世界」。親父さんは、この次元の扉を開こうとしているのかも。異次元の存在だけなら、たとえばジョニィから聞いたとか、ニュージャージーの線路脇にディエゴらしき首なし切断死体が転がっていたのに、最初はディエゴがレースに優勝していた事実とか、そういった情報から辿り着けなくもない。
C「Dio」
上記Bにも関連しますが、ディエゴ・ブランドーという男の才能と異常性と壮絶な人生。そんなDioの力を、もしくはDioの血統を今の世に蘇らせる事で、親父さんは何かを得ようと企んでいるとか?ディエゴに殺される事のなかった父親ダリオ、彼の血を継ぐ者がどこかにいるとも考えられます。
D「ポコロコの幸運」
初代憲助さんは、たびたびポコロコと一緒に走っている姿が描かれました。たまたまレースが接戦になっていただけかもしれませんが、ジャイロとジョニィのように、ある程度の協力関係を結んでいた可能性もあります。そうだとしたら、彼の持つ50億人に1人の幸運を幾度も目の当たりにしたはず。最終的にはレースに優勝。「幸運」の持つ力の凄まじさ。
また、ポコロコのスタンドの特殊性も気になっていました。期間限定の能力なんて、他に例がありません。もしかすると、人から人へと、移り渡っていく存在なのかも?親父さんは、その「幸福」の力を我がものとし、永遠に自分に固定しようとしている?
Eその他
ネアポリス王国やツェペリ一族、鉄球技術に関わる何かだったり?そもそも、「SBR」の物語では描かれる事のなかった、まったくの新事実が隠されている事もあり得ます。個人的には、それを望んでいます。今さら前の部と同じ事を繰り返したってしょうがないし。
初代憲助さんが2つのヘソを持っていた事実と、定助が4つの金玉を持っている事実の関係が判明するのかも。東方家か杜王町に伝わる、「何か」と「何か」を融合させる……とか、魂を操る……とか、そういう秘術みたいなもの。その秘術の実行に、例の「マーク」が必要だとか?

――こんな内容の本が普通に流通しているのでしょうかね?だとしても、トンデモ本的な扱いを受けてそう(笑)。自分の御先祖様が遺した古い記録を、親父さんがちゃんと読める形に自費出版したってだけかもしれません。


★今月は47ページ!実に面白かったです。康穂も大弥ちゃんもかわいいし、『エコーズ ACT1』的な駆け引きもグッド。何より、ラストに驚かされました。親父さんの目的と、「マーク」の意味。気になりますね。前にも予想で書いたけど、親父さんの奥さん(大弥ちゃん達の母親)に関わる事ではないかな、と思っています。すでに亡くなっていて、愛する奥さんを求めるあまり、手段を選ばずに蘇らせようとしている……とか?大弥ちゃんの持っている「駒」にも、母親から貰った大切な「記憶」があるのかも。そして、定助の記憶に過ぎった男は何者なのか?出版社の人間だったりするのか?吉良との接点は?……月並みですが、謎が謎を呼ぶ展開としか表現しようがないですね。
作者コメントは「人形浄瑠璃の文楽を鑑賞。人形が意外と大きくてびっくりした。」との事。荒木先生はホントにいろんな事を積極的にやってますよね〜。旅行にインタビュー、パーティーに芸術鑑賞。その意欲、見習いたいものです。
次号は表紙&巻頭カラー!さらに描き下ろしイラスト使用のブックカバーが付録です。いや〜、楽しみッ!




(2012年3月20日)




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