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今までずっと
君たちのことは見ていて知っているし……
これからも見ているからな…


#026 地下室の住人





●今月はウルジャンの表紙を飾ってくれました!定助や康穂、憲助さん、鳩さんに大弥ちゃんが一列になってこちらに行進して来るかのような絵です。スタンドも『ソフト&ウェット』と『ペイズリー・パーク』、そして本体の常秀はいないけど『ナット・キング・コール』の姿まで。定助は2012年10月号の表紙と同じく半ズボンで、足取りも軽やかです。やがては彼らがこの絵のように、同じ方向を目指して共に進む時が訪れるんでしょうか?
トビラ絵は、この表紙イラストの連作となっています。ここでは、一行が海岸を行進中。常秀とつるぎちゃんも参加しています。ピンクの空、黄色い海、青い海岸。カラーリングも実に荒木チック!


●さて本編。東方家を上空から見た俯瞰図が描かれ、例の地下室に続く離れがコミックス2巻に書かれていた「別棟」である事が判明。その辺がハッキリしただけでも収穫です。常敏夫婦やつるぎちゃんも一応、みんなと一緒に本宅に住んでいるんでしょうね。
……で、その別棟の地下室に舞い戻ってきた康穂はと言うと、ぼんやりと寝っ転がってました。破れた服は新品に着替えたらしく、心の方もようやく落ち着いた様子。しかし、そんな康穂に抱き付き、必死に謝って許しを乞うつるぎちゃん。折り紙の本のキノコのページを開きつつ、「このキノコ 生きのこりィ」などとダジャレをかましてはいるものの、ダジャレはクセであって、謝罪自体は本心らしい。優しくて良い匂いのする康穂が好きで、ずっとそばにいてほしいあまり、スタンドを使ってしまったようです。気持ちは分からんでもないけど、常秀といい大弥ちゃんといいつるぎちゃんといい、つくづくストーカー気質の一族だな。
思いがけず、つるぎちゃんからスタンド能力の存在を聞かされた康穂。「壁の目」に近付くと目醒める事、人によってそれぞれ異なる能力がある事、スタンドとは「心の力」である事、康穂自身にもスタンドが宿っているかもしれない事……、などを教えられたのでした。そして、東方家の人々は、お互いそういう話はしないというのです。つまり、お互いにスタンド使いなのかどうか、どんな能力なのか、ほとんど知らないという事なのでしょう。情報の共有がなされていないという事は、各々の目的が一致するとは限らないという事でもあります。一族の繁栄以外の目的で動く者もいるのかもしれません。
ちなみに、つるぎちゃんのスタンド名は『ペーパー・ムーン』。映画「ペーパー・ムーン」の主題歌であり、ナット・キング・コールも歌った曲である「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン」が元ネタっぽい。


●かくして衝撃の真実を知った康穂の言葉は……、「そうなの…」。リアクション薄ッ!いろんな事が起こりすぎて疲労MAXみたい。つるぎちゃんはすでにスタンドを解除しており、もう自由に帰ってもいいとまで言ってるのに、康穂は構わず居座ってます。つるぎちゃんにも心理分析された通り、他人の顔が同じに見えるってのは自分にも原因があるんじゃないか、と感じている模様。なんか居心地の良いこの部屋で休んで、1人でゆっくり考えたい気分なんでしょう。
つるぎちゃんが部屋を出ようとすると、康穂はもう1つだけ質問します。この地下室は何なのか?ごく当然の疑問。つるぎちゃんは、他人に話しても意味がないとしながらも、康穂への謝罪も込めて説明してくれました。――東方家の長男は10歳になると必ず「病気」になる。この場所は、それを治すための建物。
東方家で最初に生まれた子どもだけが必ず、皮膚が石のようになる病気になってしまう。何百年も昔から代々そうだったらしく、これもやはり東方家の中で大っぴらに話題にはしない様子。長男の場合、この「病気」は10歳の時に発病し、かつては治す方法もなく死んでいくだけだった。そのため、次男が跡継ぎになったり、養子を迎えたりして、東方家は家を守ってきた。ただし、今は「病気」を治す方法が見付かり、その方法にはこの建物が必要。そーゆー事みたいです。「遺体」のパワーが強く遺っていて、それを利用するとか?あるいは、「壁の目」の融合を利用する?謎です。
つるぎちゃんも、女の子として育てられるしきたりを守ってはいるものの、それでも「病気」になるだろうと自覚していました。理那さんも恐らく東方家の長女で、長女の場合は大人になってから発病するのでしょう。康穂が思い出しているように、ホリーさんの症状もこの「病気」のせいなのかもしれません。もしこの「病気」が何らかの意志による現象だったとして、血そのもの以上に「東方家」という家に対しての「呪い」だったとしたら……、東方から離れた家(=ジョースター家・吉良家)の人間となっているホリーさんは、東方家の人間よりも症状が軽く済んでいる可能性もありそうです。
つーか、さりげな〜く新情報も混在してますよ。ホリーさんの脳は固くスカスカになっているとか、吉良吉影はそんなホリーさんを救おうとしていたとか。まあ、康穂の推測も込みなのかもしれないけど。でも、マジだったら、吉良は本当に家族には優しいヤツだったんですかねえ。


●定助の心配をしながらも、疲労し切った康穂は夢の中へ。すやすやと1人きりでお眠り中。
……と、そんな彼女のすぐそばに謎の人影がッ!壁と、ハンガーに掛けられた服の隙間に、いつの間にか潜んでいやがりました。そいつは、全身スタッズだらけの黒いファッションに身を包み、植物のツルのようなヘアバンドを被った、黒髪おかっぱの若い男ッ!イメージ的には、成長したつるぎちゃんって感じ。その上、トゲトゲの服に、「H」の文字が入ったバッヂまで付けているもんだから、こいつこそ東方常敏かとも思いましたが……、つるぎちゃん曰く、常敏はシンガポールに出掛けているとの事。しかも、後に明かされる名も、まったく違うものでした。
その「男」は、眠っている康穂を見下ろし、そっと囁きます。「柔らかくはないし、濡れてもいない」(『ソフト&ウェット』の逆?)、「辛いのより楽しい方がいいだろう?」と。すると、ディアボロにも似た光を湛える彼の両眼が割れ、その隙間と口の中からサランラップのような「膜」が出て来ました。そのラップを康穂の顔に被せて伸ばし、彼女の両手に固定。「男」はそのまま、コップの水をラップに垂れ流していきます。水はラップを伝って、何故か康穂の口の中へ流れ込み、康穂はビックリして目覚めるのでした。どんなにもがいてもラップはピッタリ張り付いて剥がれず、割ったコップの破片でも切れず、水も吐き出せず、苦しむ康穂。
この描写から察するに、「男」が指定した物質・概念だけを(一方通行的にであっても)通さないラップが、彼のスタンド能力なのでしょうか!?ラップは、「男」が囁いた通りの状態を保っているとも受け取れます。「柔らかくはない」が、ガラスでもカッターでもドリルでも切り裂けない、頑丈・頑強な状態に……、「濡れてもいない」が、水を吸収せずに透過させ、そのまま康穂に流れていく状態に……、「楽しい方がいい」が、楽しい事だけ弾いて、溺れる辛さ・苦しさだけを康穂に味わわせる状態に……、それぞれ繋がっているかのよう。隙間から突然現れたり不要なものだけ弾いたり、なんかいちいち大統領を彷彿とさせる能力ですね。大統領に子どもはいないにしても、何かしらの接点はあるのか?


●この「男」、何のために康穂を襲うのか!?その目的はどうやら、彼女のスタンドにあるみたいです。彼女を追い詰める事で、スタンドを出させようとしているっぽい。まるで形兆だな。「男」の目論見通り、康穂は自身の影から『ペイズリー・パーク』を発現!すかさず「男」は、スタンドのヴィジョンをうっすら出して『ペイズリー・パーク』を捕獲し、じっくり観察し始めました。
「男」の特技なのか……、スタンドを観察しただけで『ペイズリー・パーク』の大まかな特徴を掴んだ様子。遠隔操作タイプで、パワーは弱く、精密なコントロールは苦手、と。さらに、「地図」を連想させるデザインから、能力の方も予測しちゃいます。ただ、あくまで予測。「男」はスタンドの能力までは具体的には知りようがないって事ですね。『ヘブンズ・ドアー』のような能力ではないのです。
しかし、この「男」がスタンドというものに詳しく、それなりの愛着・愛情さえ抱いている事は伝わります。無意識的に動く『ペイズリー・パーク』を可愛く思い、なでなでしてあげながら、それでもなお追い込んでみせる!すると『ペイズリー・パーク』、定助の元へと移動し、さっき何故かあの場にいたつるぎちゃんに対する違和感に気付かせました。導かれるように、定助も東方家に戻って来るッ!康穂はもうすぐそこ!
――「男」はまったく動じる様子もなく、淡々と自己紹介を始めます。名前は八木山 夜露(やぎやま よつゆ)。年齢は28歳。職業は建築家。住んでいる所はひ・み・つ。まさか、ちゃっかりこの地下室に住んでいたり?目的は色々あるが、一番欲しいものは社会的名声。そして、その目的のため、定助に「記憶」は取り戻させず、吉良のようにもう一度死なせるつもりらしい。しかも、今までずっと定助や康穂達を見ていたし、これからも見ていると言う。意外に俗っぽい目的の割に、やけに核心に迫っている人物。どこか不自然な印象で、掴めない男です。


●謎の「男」夜露に対し、おとなしくやられてるほど康穂は弱い女じゃありません。なんと、つるぎちゃんの「折り紙」を逆に利用ッ!さっきつるぎちゃんが開いた折り紙の本、キノコの隣のページにはバナナの折り方が示されていました。康穂は折ったバナナを夜露の足元に置き、それによって彼を滑らせて転倒させたのです!どうやら、つるぎちゃんの触れた「折り紙」には『ペーパー・ムーン』の能力が宿り続け、誰が折っても能力を使う事が出来る模様。つまり、康穂が折ったバナナは「本物のバナナ」と同じ性質を与えられ、だからその皮で滑ってしまうワケです。こりゃ便利。
思わぬ反撃に驚いたのか、転倒した夜露は、またどこかへと姿を消してしまいました。あのラップは空間をも弾き、ある程度は自在に瞬間移動できたりするのかな。とは言え、夜露の能力は解除され、ようやくラップを破る事に成功。大量の水を吐き出し、セキ込む康穂。反撃はしたものの、やはりまだまだスタンド使いとしては未熟な康穂は、恐怖のあまり逃げ出します。知らない人間が東方家を出入りしている。一体、何者!?


★今月は45ページ!まさかの新キャラ登場に驚かされたし、大いに盛り上がりました。夜露、ホント何者なんだ?東方家とどんな関係があるんだろう?桜二郎戦にて定助の脳裏に過ぎった「記憶の男」も、この夜露も、東方家と手を組んで何かをやらかしてる感じ?漂流した「男の子」の子孫だとか、密葉さんの弟だとか、可能性はあれこれ考えられそう。夜露が建築家って設定も、あの地下室を造ったのが彼自身か、彼に連なる人間って事なのかもしれませんね。最終的には、「壁の目」の土地を使って、唯一無二の奇妙な家を造る建築家として名を残そうとしてるとか?う〜ん、予想のし甲斐があるね。
作者コメントは「どういうわけか分からないけど東大で講演したぞワハハハハ。」との事。チクショー!行きたかったなあ〜。抽選に外れてしまい、実に無念でした。この講演の様子、後で公式にまとめてほしいなあと願ってます。



(追記)
●新たな要素もだいぶ加わったところなので、ここらでまた改めて予想でもしてみたいと思います。例によって、長文になっちゃいますが(汗)。


@「男の子」はどうなったのか?
1901年11月、1人の幼い「男の子」が、どこからか杜王町の海岸に流れ着きました。全身ずぶ濡れの「男の子」は、ふらふらと導かれるように歩き出し、海岸近くにあった松の木の根本の「洞」に辿り着きます。そこには1つのスーツケースが置かれていました。そう……、そのケースの中には、ジョニィが持ち出した「聖なる遺体」が隠されていたのです。
すると、運命のいたずらか、「洞」が突然わずかに崩れ、その土は「男の子」とスーツケースに覆い被さってしまったのです!大きな泣き声を聞いた地元の漁師は、慌てて声の元へ。土に埋もれた「男の子」を発見し、救助したのでした。漁師はそのまま「男の子」を病院へと連れて行き、警察にも届け出る事となります。そして、漁師が「男の子」を連れて行ったのとすれ違うように、「洞」にジョニィがやって来たのです。彼が乗る馬車には、愛する妻:理那さんと、息子:ジョージの姿。こうして、ジョニィはスーツケースの中の「遺体」を使い、理那さんの「病気」を取り除こうとしました。しかし結果は、本編を読んでの通り。
実はこの時、すでに「遺体」は完全なる姿とパワーを失っていました。周辺の土地には古来より、土に埋もれたモノ同士を「融合」させる力があったのです。これにより、「遺体」と「男の子」は融合!つまり、ジョニィが使った時点の「遺体」は、その半分が「男の子」になっていたワケです。当然、本来の半分程度のパワーしか発揮できません。よりにもよって息子に「病気」が移動してしまったのも、そのパワーが弱まっていたせい。

……で、最後にはジョニィが自ら「病気」をおっかぶり、命を落としてしまいました。しかし、東方家の人々は、さぞかし驚いた事でしょう。何百年も昔から、一族の誰もが決して逃れる事の出来なかった「病気」が、理那の肉体から消え去ってしまっていたのですから。忌まわしき「病気」を治す方法が存在する。この事実。
東方家は、当事者である理那ジョージから、事の一部始終を根掘り葉掘り聞き出します。また、何故かアメリカ政府がやって来て回収して行ったスーツケースの中身も、トコトン調べ上げます。(「カツアゲロード」のジジイのおばあさんは、この調査に関わった人物だったのかもしれません。)さらに、それらの過程で、「男の子」の存在や「融合」の可能性も、東方家は突き止めてしまいました。
「遺体」そのものはアメリカから奪う事は不可能だが、「遺体」のパワーの半分は「男の子」に宿っている。そう結論付けた東方家は、身寄りのない「男の子」を引き取って育てるという形で、体良く「遺体」のパワーをゲットしたのです。その後、「男の子」は東方家の座敷牢に幽閉され、管理下・支配下に置かれてしまいました。やがて、世間からも存在を忘れ去られていったのです。


A定助の「正体」は何者なのか?
ご存知の通り、定助は「吉良吉影」「もう1人の人物」との融合体です。この「もう1人の人物」を「X」と仮称しましょう。「X」とは一体、何者なのか?やはりこれが当面、最大の謎。結論から言うと……、「X」こそが「男の子」の子孫なのです。
「男の子」に宿った「遺体」のパワーは、その子どもに移り渡っていくらしく、今なお子孫に受け継がれていました。東方家はどこからか「つがい」となる若い異性をさらって来て、子作りをさせていたのです。そして、今現在「遺体」のパワーを宿す者が「X」。「X」は先祖同様、生まれた時点ですぐに親からも隔離され、東方家の人間に密かに育てられます。自分の力の存在や使い方についても教わります。東方家が世界の全てであり、東方家の言葉こそが正義。何でも言う事に従う奴隷に、都合良く利用できる道具になるのです。
「X」の役目は、つるぎちゃんの「病気」を取り除く事。彼は生まれてからずっと、東方家の別棟の地下室で過ごしてきました。つるぎちゃんが10歳になり「病気」になったら、東方家はどこからか生贄を連れて来て、この別棟の他の部屋に閉じ込める予定。半分に弱まった「遺体」のパワーは、救いを求める者と最も近い場所にいる者へ「不幸」を移すのです。即ち、無関係の他人を犠牲にして、東方家は「病気」を克服するのです。

定助は自分の「過去」と「記憶」を追い求めているものの、残酷な事に、思い出す価値などほとんどありません。徐倫と出会う前のF・Fのような、機械のような記憶。彼の先祖である「男の子」も、ついに正体は分からずじまい。「つがい」とさせられた者達も、どこの誰なのか不明。
「X」のルーツは永遠の闇に葬られ、もはや存在しないも同然なのです。記憶があろうがなかろうが、彼は結局、何者でもないのです。本当の名前すら、元々ないのかもしれません。


B吉良吉影の目的は何だったのか?
吉良は桜二郎に自分の指を喰わせたサイコなヤツなんですが……、作中ではいつの間にやら、彼が家族を守るために行動していたかのように語られ出しています。なので、そーゆー前提で予想してみました。
彼は桜二郎が言う通りナルシストであり、母や妹といった身内にだけは優しい男だったのです。それは自分の血統への誇りを意味します。吉良は、自身に受け継がれるジョースターの血統を誇りに思っていたのです。一族に語り継がれるジョニィ・ジョースターの伝説。何を犠牲にしてでも家族を守り抜こうとした彼の生き様に憧れ、吉良もまた、そういう性格になっていきました。
しかしその一方で、吉良の体には東方の血も流れています。それゆえに、石のようになって死ぬ「病気」の宿命も背負っています。吉良は自身に流れるジョースターの血を誇りに思うのと同じくらい、東方の血を強く呪っていたのでした。東方の本家に比べれば弱まっているものの、やはり「病気」は東方の血を引く者に襲い掛かって来ます。母のホリーさんまでも、ついに「病気」に侵されてしまいました。

かつて吉良が、密かに東方家を探り回っていたのも、全ては「病気」を治す方法を見付けるため。ところが、東方家はどうやら、発病した「病気」をただ取り除いているだけらしい。吉良から言わせれば、そんなものは受け身の対応。問題を先送りにしているだけの曖昧な連中です。吉良が求めるものは、「病気」そのものの根絶。それでこそ、家族も自分も穏やかに暮らせるし、ジョニィも望んだであろう結末を迎えられるはず。
こうして吉良は、東方家の「病気」が始まった原因を探り続けます。紐解かれる東方家の過去、杜王町の歴史……。そんな中、別棟の地下室に侵入した吉良は、「X」と出会ったのでした。


C東方家の「病気」とは何なのか?
この「病気」こそが、東方家を蝕む「呪い」。事の発端は遥か昔。奈良時代から平安時代にかけてのお話。坂上田村麻呂が行なった蝦夷征伐(えみしせいばつ)により、今で言う「東北地方」が「日本」の支配下に置かれました。その際、幾度も争いが起こったワケですが……、自分達家族が生き残るために、多くの仲間を敵に売った裏切り者が蝦夷の中にいたのです。売られた者達はほとんどが殺され、裏切り者を恨み、憎み、呪い抜いて死んでいったのでした。裏切り者の一族は、蝦夷を意味する「東方(とうほう)」=「東方(ひがしかた)」という名を与えられ、周囲に蔑まれ嫌われ虐げられながらも生き抜きていきました。これが東方家のルーツ
東方家に裏切られて死んでいった者達の強い「呪い」の念は、幾重にも重なり凝り固まって、「土地」のエネルギーと結び付き、ついには具体的な力を持ち始めます。「呪い」は東方家の長子を襲い、その体を徐々に石のように固くしていく。祖先から受け継ぎ、愛する家族や仲間と共に守るべきだった自分達の土地。それをあっさり敵に明け渡し、仲間の命と一緒に売り払った憎き裏切り者を、土地そのものへと変えてしまうのです。この「呪い」で死んだ者は、死体も残らず、土塊となって崩れ去るだけ。
さらに恐ろしい事に、厳密に言うと、この「呪い」で死ぬ事はありません。土塊と化し、人間としては生きていなくても、そこに魂は宿り続けているのです。永遠に呪われ、苦しみ続けるのです。当時、東方家は土塊となった者を土葬で葬ってきました。そのため、「土塊」と「土地の土」は次第に混じり合っていきます。そして、土地そのものとなった者達の「道連れを増やしたい」という怨みなのか、「助けてほしい」という願いなのか……、いつしか、この呪われた土地には奇妙な力が宿り始めました。埋もれたモノ同士を混じり合わせる「融合」の力。これが「壁の目」のルーツ

しかし、東方家とて、ただ黙って滅ぼされるワケにはいきません。「呪い」の法則性や傾向を発見し、(有効かどうかはともかく)数々の対策を立ててきたのです。やけに子沢山な家系なのも、12歳になるまで長男を女の子として育てるのも、「呪い」に負ける事なく家を存続させるため。さらに、手段や方法を選ばずに家を大きくしていき、「呪い」から少しでも逃れようとしたのです。
時代が移り変わり、やがて東方家は地元の名士となっていきました。ただし、その繁栄の影では、東方家の踏み台とされた多くの人々の存在も。家が大きくなるにつれ、敵も増えていく。そんな罪深き一族が東方家なのです。

(ちなみに、つるぎちゃんが言うには、東方家の長子のみが「病気」になるとの事でした。でも、理那さんは1874年生まれで、その兄弟の常平(2代目憲助)は1872年生まれと、家系図には記されています。何故、長子でもない理那さんまで「病気」になってしまったのか?
まあ、単純に家系図の記載ミスなのかもしれません。あと考えられるとすれば、東方家から別の家に嫁いだり養子に行ったりすると、例外的に発病するケースもある……とか?東方家から逃れようとする者に、「呪い」がしつこく付き纏って、追い着いてしまう時があるって事ですね。要するに、理那さんは運が超悪かったワケです。)


D吉良と「X」はどういった経緯で「融合」したのか?
まず、桜二郎戦で定助は「記憶の男」を思い出したワケですが、実はこれ、吉良の記憶(=吉良の視点)です。だからこそ、「記憶の男」と一緒に、定助そっくりの男=「X」の姿も描かれているのです。つまり、吉良と「X」と「記憶の男」の3人があの時、「壁の目」にいたという事。戦っているような雰囲気は感じられないので、恐らく、全員が合意の上であの場に集合したのでしょう。シチュエーション的に考えて、吉良と「X」の融合直前というタイミングっぽく見えますね。
地下室で出会った吉良といろんな話をした「X」は、初めて自分の置かれた立場を知り、絶対者であった東方家を疑うようになりました。ついには、憲助の命令に逆らい、地下室を脱出!自分の意志で外の世界へと出て、吉良と行動を共にする事に決めたのです。吉良の願う「病気」そのものの根絶という目的に共感し、協力したいと思ったのです。
一方、吉良はその頃、桜二郎の『ファン・ファン・ファン』によって、自宅に監禁されてしまっていました。家族には優しい男でも、基本的にはイカれたサイコ野郎。他人の恨みを買いやすく、その復讐をされてしまったのです。しかし、わずかな隙をついて辛うじて脱出に成功!そして、帽子屋「SBR」で帽子を買い、手首に「本屋」のマークを書き、後の自分のための手掛かりを残しておきました。

かくして、3人は「壁の目」に集合!こんな重要な計画に関わる以上、「記憶の男」は吉良にとって信頼の置ける人物という事になります。それもそのはず。彼は、遠い遠い昔、東方家の祖先に裏切られた蝦夷の末裔だったのです。つまり、東方家に「呪い」をかけた存在。彼は吉良と接触し、互いの持つ情報を交換し合い、「東方家を滅ぼす手助けをしてくれれば、ジョースター家側の「呪い」は解く」と契約していました。目的はあくまで、東方家という「家」そのものの滅亡。
そのためには、「呪い」を取り除くパワーを持つ「遺体」(=「X」)が邪魔。と同時に、吉良からすれば、「遺体」はジョニィの形見にも等しいもの。ジョースター家である自分が受け継ぐのが相応しい。そう思っているのです。その両者を成立させるには、吉良自身が「X」と融合すれば良い。「記憶の男」も「遺体」には執着がなく、あっさり承諾。結局、無知なる「X」は、どこまでも他人に利用されるだけの運命でした。
「記憶の男」の知識と、吉良が東方家から得た情報を合わせると、「壁の目」の融合はコントロール可能である事が判明。どちらにどの要素を残すか・移すかを、ある程度は決められるのです。ただし、それには第三者の協力が不可欠であり、その意味でも「記憶の男」は重要なポジションでした。

こうして、吉良と「X」は融合!吉良は多くの人の恨みを買っている事もあり、「X」の肉体に吉良の要素を多く移動させた方が好都合。吉良の「遺伝子」の詰まったキンタマと、ジョースターの証である「星のアザ」、そして必要な記憶を、「X」の肉体へと移しました。逆に、「X」に宿る「遺体」の要素は、そのまま「X」の肉体に残します。
また、吉良の肉体には、東方家の要素を残したままに。こうする事で、吉良は忌まわしい東方の血の「呪い」から逃れる事が出来るのです。つまり、吉良の肉体には、互いの不要な要素が集まった状態。それを殺す事によって、吉良は社会的に死者となり、彼に恨みを持つ者の目も欺けます。そして、「X」の肉体に、吉良が持つジョースターの要素を移動させた存在が、今の「定助」。
しかし、それらと引き換えに、融合後は融合前の記憶を忘れてしまうというリスクもあったのでした。その記憶を完全に蘇らせる方法も、東方家は知っているのでしょう。


E他の人々の目的は何なのか?
憲助の目的は、やっぱり子孫繁栄。「遺体」のパワーを持つ者を幽閉し、「呪い」による「病気」を取り除き、家を守っていきたい。それだけです。そのために、「遺体」のパワーを受け継ぐ定助が必要。かと言って、吉良の記憶も「X」の記憶も蘇っては厄介です。定助の行動を監視しつつ、定助を自分の奴隷にする事がベスト。しかし、吉良との融合により、基本的な社会常識が備わってしまった彼を幽閉するのは簡単ではない。別のやり方で攻めないといけません。
家長である自分の命令を聞かせようとしたり、大弥ちゃんに「身も心も奴隷にしろ」と応援したり、学校に行きたがる定助の希望を叶えてやろうとしたりするのも、全ては定助の心を支配するためです。定助にとって、東方家が「絶対に裏切れない大切な存在」になってしまえば、自ずと東方家のために行動せざるを得ませんからね。その刷り込み(インプリンティング)の妨げになりかねないのが、康穂の存在でした。憲助が康穂を遠ざけたがるのも当然と言えます。

夜露の目的は、彼も言うように社会的名声。彼は「壁の目」の土を使った建築物を造ろうとしているのです。「壁の目」の土には、古来からの「呪い」によって「融合」の力が宿りました。そして1901年には、「遺体」の影響によって「スタンドを生み出す」という力まで与えられていたのです。彼が造りたいのは、超能力が目醒める家。そんなとんでもない家を日本中・世界中に建てられれば、「八木山夜露」の名は全世界に知れ渡る事でしょう。そうなった時のために、スタンドを体系化しておく必要もあります。だから彼は、様々なスタンドを観察し、研究したがっているワケです。
実は彼の父親も建築家で、現在の東方邸の設計をした人物でもあります。それゆえに、ふとしたキッカケで東方家の闇を知ってしまい、不可解な死を遂げました。その上、何故かどこからか根も葉もない誹謗中傷のウワサが流れ、父の名誉まで傷付けられました。そんな父の死の真相を追ううちに東方家に辿り着き、何でも「遮断」できる能力を発現したのです。ラップのどちらの面で何を「遮断」するかは自由に設定可能。光を「遮断」すれば姿を消す事が出来、空間を「遮断」すれば障害物を通り抜けて移動も出来る。そんな便利な能力を利用し、東方家を調べ上げたのでした。
東方家を皆殺しにする事は容易いけれど、そうする事で「呪い」が成就され、「壁の目」から「スタンド発現」の力まで消えてしまうかもしれません。だから、東方家は生かさず殺さず。そうなると、「呪い」を解く力になりかねない「遺体」のパワーを持つ定助が邪魔になってくるワケです。ヘタに記憶が蘇って、自分に宿る力を自覚されても面倒。定助は記憶がないうちに殺し、自分は世界に認められる。そうする事で、父の復讐も果たせる。そう信じているのです。

「記憶の男」の目的は、東方家という「家」そのものの滅亡……ではありません。実際のところ、そんな大昔の先祖の恨みなんて、彼にとってはどうでもいい。彼の真の目的は、愛する杜王町を世界の中心にする事。先祖の恨みはどうでもいいけれど、先祖が愛したこの土地に造られた杜王町を、彼もまた心から愛していました。自然と調和した美しい町並み。取っ付きにくいけど、根は温かな町の人達。この町の全てが好きだったのです。
ところが、そんな杜王町も大震災によって大きく傷付いてしまいました。もちろん、彼の心も大きく傷付いた事でしょう。しかし、震災がキッカケとなったのか、町には突如「壁の目」が隆起。彼はこれを、杜王町の意志であり、自分の使命と受け取ったのです。幸いにも、「呪い」の当事者の末裔である彼の家には、「壁の目」の知識も受け継がれていました。さらに、吉良や夜露とも接触し、彼らから情報も得られたのです。「壁の目」の力を完全に支配できれば、この世のあらゆる存在・要素を自由に「融合」し、新しいものを創り出す事が出来る。愛する杜王町を復興し、さらに発展させる事。そして、杜王町を中心とした新しい世界を築き上げる事。これこそが、彼の目的なのです。
吉良と「X」の融合は、吉良との契約通りに施しはしたものの、あくまで自分の最終目的を達成するための実験の1つ。ちっぽけな家の繁栄だの復讐だのは興味なく、定助に直接関与するつもりもありません。定助を東方家に送り込み、夜露に監視させながら、今後使えそうなデータを収集しているだけ。しかし、彼は「壁の目」を使った非道なる実験を繰り返し、町に恐怖を与えてしまう事でしょう。いずれは定助達と戦う運命のはず。



――と、こんな感じの予想です。何者でもない定助が、大切な人と歩む事で「何者か」になっていく物語にもなるのかもしれませんね。




(2013年11月17日)
(2013年11月23日:追記)




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