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あなたは
「吉良吉影」を殺したのか?


#027 疑惑の人々





●定助にとっても、康穂にとっても、あまりに長い1日が描かれてきたワケですが……。なんと今回は一気に場面が変わり、次の日の朝!依然、定助と康穂は出会えていないようです。荒木先s……、いや、運命はどこまで2人を邪魔するのか。定助ものんきに寝てる場合じゃねーぞ(汗)。
目を覚まし、モゾモゾと着替えをする定助。すると、窓から見えたのはつるぎちゃんの姿。パンや飲み物、フルーツなどを袋に詰め、どこかに運ぼうとしているようです。そんなつるぎちゃんの後を追おうと部屋を出ると、可愛い大弥ちゃんが抱き付いてきます。記憶がないのは気の毒だが、このリア充っぷりはけしからんぜッ!つーか大弥ちゃん、髪伸びた?つるぎちゃんの行く方向に何があるのか訊ねると、「崩れた離れがあって危ないし、ママに怒られるからつるぎちゃんが行くワケない」との答え。果たして密葉さんは何を思うのか……?
すると、憲助さんもご登場。学校はどうだったか訊かれ、定助は今さら自分が学校に行くつもりだった事を思い出す有り様(笑)。まあ、色々あったからねえ。常秀が話に割り込んで来て、「定助がバスケ部に入った」とか「昨日は康穂の家でラブラブだったぜ」とか、意味不明な事をのたまっています。後頭部には巨大なタンコブ。康穂にドツかれ、昨日の記憶が曖昧になってるっぽい。大弥ちゃんは「記憶喪失が2人になった」と無邪気に面白がってるけど、ちょっと怖いぞ(笑)。大丈夫か、常秀ッ!
昨日の記憶を思い出そうとブツブツつぶやく常秀に、鳩ねーちゃんは頭をなでながら優しい言葉を掛けてくれてます。たまに口喧嘩したりしてても、やっぱり仲はいいみたい。


●家族団欒のひと時……という隙を付き、定助はさりげなく外に出ます。崩れた離れの方を見ると、やはりそこへ向かおうとするつるぎちゃんを発見!どうやら東方家は一致団結しているのではなく、個人個人がそれぞれの目的のために行動している模様。つるぎちゃんに直接問い質し、康穂の事を聞き出すべく、定助は走り出す。
……と、定助の頭に何かがぶつかりました。何かと思えば、それは樹に実ったフルーツ。形から察するに、イチジクみたいです。イチジクに、星の形っぽく見える実の先端部。あまり深読みしすぎてもしょうがないけど、6部での「14の言葉」の1つ「イチジクのタルト」や、緑色の赤ちゃんが眠っていた「実」を彷彿させますね。Dioことディエゴと何らかの関係性があったりして?
定助を追って来たのか、いきなり後ろから憲助さんが現れ、声を掛けて来ます。ここは東方家の果樹園らしい。さすがフルーツ屋。――そして、ここから予想外の問答が繰り広げられました。康穂の身を案じているからこそなのか、定助はズバッと単刀直入に言います。「東方家は怪しい」と。「つるぎちゃんに尋問する」と。てっきり阻止してくるかと思いきや、「オレが代わりに何でも答えよう」と意外な返答。大事な孫を守りたいからなのか、急に協力的になって、あれこれ教えてくれちゃった!逆に言えば、定助に教えても構わない程度の情報でしかないって事なんでしょうけどね。


●定助の質問から、定助が知り得た情報と彼の現況を理解した憲助さん。そんな憲助さんが言うには……、まず彼が吉良吉影を殺したのではないという事。吉良を殺したいのなら、わざわざ定助を引き取ったりなどしない。ジョースター家も東方の血を継ぐ一族であり、同じ宿命を背負った者同士。だから、むしろ吉良の死を残念とすら思っている。それどころか、吉良は恐らく、あの「病」を治す方法を見付けていたはず。何らかの理由で、その「答え」を定助の中に残し、吉良は死んでいった。東方家にとって希望とも言うべきその「答え」に期待しているからこそ、定助を引き取った。そーゆー事らしい。
以前、憲助さんが定助に対し、「そのうち殺す」だの「記憶が蘇ることなどない」だの考えていたのも……、大弥ちゃんが定助とイチャついてるとこを目撃しちゃったせいでしょう。これは「娘の父親」としての本音。愛娘が男に汚されようとしているのだから、そりゃあ殺意をメラメラ燃やして当然(笑)。マジで殺すかどうかは別として、そのぐらい強力な怒りなのです。一方で、今月語ってくれた事柄は「一族の長」としての正論。同じ人物であっても、立ち位置が違えば印象だって変わるものです。


●唐突に核心に迫る展開に驚かされましたが、情報はさらに明かされていきました。
定助の中の「もう1人」が誰なのかは、憲助さんも知らない。そして、憲助さんがかつて「病」を克服できたのは、両親が死と引き換えに治療してくれたかららしい。詳細はプライバシーって事で秘密のようですが、今のところ「病」の治療は家族の命と引き換えなんですね。常敏の時は、母親の花都さんが命を張ったんでしょうか?いや……、そうだとすると、常秀や大弥ちゃんが生まれてこれないし。ヘタすりゃ、彼らが本当に憲助の子なのかどうかさえ疑わしくなっちゃいますね。ともあれ、家族を守るためなら、憲助さんも己の命を張る覚悟はあるようです。
そして、話はつるぎちゃんの話題に。康穂を巻き込んでいる可能性があるから尋問すると言う定助に、憲助さんはとぼけた答え。康穂の事もよく知らない風だし、つるぎちゃんの行動についても見当が付かないとの事。その上、憲助さんは定助と一緒につるぎちゃんの元へ行こうとする。でも、本当のところはどうなのか?こんなあやふやな態度じゃあ、まだ信用は出来ませんな。
定助はズバリ「あんたのスタンドは何だ?」と訊きます。さすがにギクッとする憲助さん。しかし、つるぎちゃんのスタンド能力を定助が正しく説明できている以上、つるぎちゃんが定助を攻撃したのは事実だと認識するのでした。ただ、憲助さんの驚くリアクションからは、つるぎちゃんが定助を襲った理由は本当に知らないのだろうと察する事が出来ます。何にせよ、憲助さんとしても、孫の行動と真意を確かめねばなりません。


●例の離れは、もともと果樹園の休憩所だったようです。また、以前は果樹の研究や保管のため、地下室も使用されていたとか。遊んではいけないと言い聞かせていたのに、ハッチには鍵も掛かっていたはずなのに、孫はこの地下にいる?一体、何のために?
不意に憲助さんは、自分のスタンドを発現!まるでジグソーパズルが集まって、人型のヴィジョンを形成しているかのような姿。憲助さん本体の肉体をもパズル化できるっぽくも見えます。物質をパズルのようにバラバラにしたり、別の形に組み替えたりできる『ベイビィ・フェイス(子)』的な能力なのかな?遠隔操作タイプという事だけは教えてくれましたが、それ以上はプライバシー。エロDVDの隠し場所を家族にだって言わないように、おケツの穴を他人に見せたりしないように、自分のスタンドも秘密にするべきものなのです。
その変なたとえと、チラッとだけであってもスタンドを見せてくれた事、そして何より、腹を割って話が出来た事。おかげで定助の心境にもちょっと変化があったみたいで、憲助さんへの警戒心や敵意は薄れた様子。やっぱコミュニケーションは大切だな。結局のところは利害関係であっても、今は憲助さんを信じてもいいと思えたのでしょう。うっすらと微笑みすら浮かべる定助でした。


●わだかまりが解けつつある定助と憲助さんの元に、新たな危機がッ!それは八木山夜露ッ!背後から手を伸ばしてきた夜露に、定助が気付いたのです。振り向いても誰もいない。穴を掘ったような痕跡もない。しかし、違和感は確かにある。
その違和感の原因は、植木鉢でした。植木鉢の位置がいつの間にか近付いてきていたのです!さらに、植木鉢は加速して2人に直撃ッ!砕けた破片すらもなお、2人の体を押し潰していく!これはどういう事なんでしょうか?何でも「遮断」できるラップが夜露のスタンドだとしたら、植木鉢の下にでもラップを敷き、その重さを「遮断」していたのかもしれません。そうすりゃ、簡単に移動させる事も出来ます。定助達にぶつけた後は、その破片ごとラップでくるんで締め付ければ、今の状況を作れるはず。
当の夜露は、ハッチの中から2人を覗き見ていました。「わざわざ2度も死にに来るとはな」的なセリフを吐いています。これは、さっそく夜露戦の開幕ですか?まさか憲助さんとの共闘とは、なかなか燃える展開かも!『チリ・ペッパー』っぽいポジションとして何度か相まみえる事になるのか、それともここであっさり倒されてしまうのか?気になります。


★今月は47ページ!かなり意外な展開が続き、目が離せません。想像していたよりも、憲助さんは定助の事を知らないっぽいし、それなりに信頼できそうな気もしますね。そして、吉良と東方家の関係性にしても、吉良の持つ秘密と思惑にしても、命と引き換えに「病」を治す方法にしても、地下室が造られ使われた理由にしても……、とにかく謎だらけ。だからこそ、予想や妄想が楽しめるワケですが。せっかく荒木先生が提示してくれた極上の謎、味わい尽くさなきゃあ損ってヤツですよ。
作者コメントは「この間、下仁田ネギを買いに行った時、あえて「下ネタねぎ下さい」と言ってみました。ワハハ!」との事。しょ、しょーもねえ〜〜……(笑)。店員さんの反応はどんなんだったんでしょうね?



(追記)
●2014年になりました。新たな年を迎えたという事で、新たな予想もしてみたいと思います。


@吉良吉影はなぜ死んだのか?
誰かに殺されたにせよ、自ら死んだにせよ、吉良にとって自身の死予定通りだったのではないかと推測できます。でなければ、定助にあんなに自分の手掛かりを遺してはいけないはず。定助が唯一身に付けていた帽子もそうですし、例の「本屋のマーク」に至っては、康穂が子どもの頃から東方家のあちこちに書かれていたくらいです。かなり長期的な計画であった可能性は充分にあると思います。
だとすると、吉良は融合後の自分が東方家に引き取られる事も予測していたのでしょう。また、自分のキンタマを丸ごと定助に遺している以上、自分の血統・遺伝子を遺したいとも考えているはずです。つまり、吉良は死ぬ気なんてさらさらなく、生きる気満々って事。生きて「病気」の宿命を克服するために、あえて一度死ななければならなかったのです。誰かのために希望を残した……なんて事ではなく、あくまで自分のために必要だっただけなのです。
そんな吉良にとって重要な事は、自分の記憶を取り戻す事。わざわざ一度死んで記憶を失ってまで融合し、東方家に行かなければならなかった理由。それはズバリ、東方家に記憶を取り戻す方法が存在するから……なのでしょう。要するに、誰がどう絡んでいたとしても、今のところは吉良の狙い通りに事が運んでいるって事ですね。


A「記憶を取り戻す方法」とは何なのか?
では、吉良が記憶を取り戻すには、何が必要なのでしょうか?それこそが、今回描かれていた東方家の果樹。あのイチジクの実なのです。
イチジクは「14の言葉」のみならず、聖書にもたびたび出て来ます。アダムとイヴが自分の陰部を隠すために使ったのはイチジクの葉ですし、腹減ったイエス様は実が生ってないイチジクの樹にイラついて「呪い」を掛けて枯れさせたらしいですし。また、「終末」や「再臨」の象徴としても扱われている模様。なんか意味深っぽくないですか?……前回#026でも書きましたが、私は、「病死」して土塊と化した東方の人間達が土地と混ざり合ったものが「壁の目」と予想しています。そんな土地で育ったイチジクは、まさに「呪い」の産物
ただ、単にイチジクを食べるだけであっさり記憶が取り戻せるなら、定助だって苦労はしません。恐らく、プラス「何か」が必要なはず。それこそが、「カツアゲロード」のイチョウ。そこに生る銀杏(ぎんなん)の実なのです。あのイチョウには、「遺体」のパワーとジョニィの愛が宿っています。「呪い」とは真逆の、まさに「祝福」の産物
この「イチジクの実」と「銀杏の実」を、「壁の目」で融合。それぞれ単体なら普通の果実ですが……、これら相反する物同士を混ぜ合わせる事で作られたザ・ニュー果実は、眠れる記憶を呼び起こすキッカケとなる刺激を生み出します。つまり、これを食する事で、失われた記憶が蘇るのです。

この事は、憲助さんでさえ知りません。知ってたら、とっくに定助に喰わせて、「病気」を治す方法を聞き出そうとしているでしょうしね。
いくら「壁の目」の力に詳しい東方家と言えど、さすがに人間の融合などという非人道的な所業には手を出しておらず、そのため知識も伝わっていないのかもしれません。吉良はその辺の倫理観など無視して、目的のために実験を繰り返し、この方法を見付け出したってワケです。「離れ」の地下室では果樹の研究も行われていたようですし、吉良が密かに定助へのヒントを遺している可能性もあります。
わざわざそこまで手の込んだ事をするのは……、例えば、樹から実を採って30分以内に食べないと効果が現れないとか何とか、そーゆー面倒な制限があるからなのかも。でなけりゃ、あらかじめ実を採って、あとで好きなタイミングで食えば良いだけですし。


B「病気を治す方法」とは何なのか?
これまた前回#026で書きましたが……、私は、定助の中の「もう1人」=「X」は漂着した赤ん坊の子孫であり、「遺体」のパワーを受け継ぐ者と予想しています。そして、東方家の「離れ」の地下室に代々幽閉されており、その「遺体」のパワーを利用されて、「病気」を移動させているというワケです。憲助さんの「病気」も、そうやって親に移動させ、身代わりになってもらったのでしょう。無関係の人間には移さず、家の中だけで解決させようとしている分、まだ良心的ですね。
(憲助さんは「X」について知っているはず。でも、プライバシー云々に関わって来るため、そこは定助に嘘をついたものと思われます。)
そして、吉良が発見したと思われる「病気」を治す方法とは?これは単純明快。吉良が記憶を取り戻せば、それでもう完成なのです。それは、「遺体」との融合。「病気」を取り除くパワーを持つ「遺体」そのものと融合してしまえば、「病気」になんて最初から罹らなくなるでしょう。そのために吉良は、「遺体」のパワーを受け継ぐ「X」と融合したのです。さらに、この「遺体」のパワーは子に移り渡っていくので、子孫も「病気」に罹らずに済みます。こうして、吉良家(ジョースター家)は「病気」を克服できるってワケです。

ただし、これでは東方家は「病気」を治す事が出来ません。吉良の記憶が蘇ったとしても、きっと「定助」はそれを良しとしないでしょう。
そこで、本当の本当に「病気」を根絶する方法を探し始めます。この「病気」が起こり出した理由、東方家と杜王町の過去、そこから生まれた「呪い」。定助は影の歴史を紐解き、真の原因を取り除く事で「病気」そのものを消滅させるのです。その旅路の中で、定助は自分が生まれた意味生きる目的を見付け出し、「帰る場所」を自ら築いていく事でしょう。それこそが、「呪い」を解く物語なのです。


――といった感じです。今年も荒木先生の提示する「謎」に挑戦しつつ、先生の足元にも及ばない楽しさを堪能したいと思います。




(2013年12月18日)
(2014年1月3日:追記)




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