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つまづいたっていいじゃないか……
人間だもの


#033 五代目





●今回のトビラ絵は、こちらを見つめる定助。その背景には、歴史を感じさせる古代オリンピックの絵が描かれています。
【「得る」ために、人は競う。】というアオリが示すように……、定助も「記憶」を取り戻したいのならば、「自分」を知りたいと願うのならば、多くの敵と競い争わねばならないのかもしれません。しかし、定助の場合、スポーツのレベルを超えてますからね。命懸けの戦いが手ぐすね引いて待っているんでしょうなあ。読者の私は、定助が勝利の栄光を手に入れられる事を祈るのみであります。


●さて、本編。冒頭4ページは、これまでのおさらいです。憲助さんとつるぎちゃんの紹介、夜露の顛末、そして定助自身の目的が、改めて明確にまとめられています。定助の片割れである「X」は、きっと東方家の「病気」を追って杜王町に来た人物のはず。「病気」には治療法があり、それをかつての自分が知っていたとするなら……、その治療法を追い求めれば自分の正体にも辿り着けるかもしれない。そして、その治療法の大きな手掛かりが謎の「果実(フルーツ)」。当然、物語の流れも、この「果実」の元へと動き出していきます。
――夜露との死闘から数時間後、憲助さんとつるぎちゃんは例の犬を捕獲しようと画策中。外にドッグフードを置き、木の枝とザルの超古典的トラップを仕掛けて、ターゲットの登場を待っているようです(笑)。「その犬、本当にいるんだろうな?」という憲助さんの質問に、「いるけどイヌッ!」と答えるつるぎちゃん。うむ、つるぎちゃんらしさが戻って来て嬉しいぜ。
一方、定助はそんな2人には構わず、愛しの康穂ちゃんの所へ。地下室へ向かう彼の手には「ごま蜜だんご」。康穂とイチャイチャしながら「ごま蜜だんご」を食べる妄想だけで、うっとりするほど癒やされちゃってます(笑)。……ところがッ!なんと康穂の姿はどこにもなし。また何者かにさらわれたのかと焦り、ベッドのマット下まで調べる定助が面白い。いやいや、そこで寝るのは定助くらいだよ。実は康穂、すでに目を覚ましており、憲助さんによって自宅へ帰されていたのでした。もしかしたら、「ごま蜜だんご」を買いに出掛けてる間にすれ違ってしまったのでしょうか?定助、未だ康穂には逢えず。現実は非情である。というか、荒木先生は意地悪である。


●この数時間の間に、憲助さんは早くも夜露について調べ上げた様子。さっそく死体を化学分析させ、その一方で彼の素性と戸籍を調査したらしい。さすが頼れる男、行動が迅速!それによると、ヤツは10年以上も前に「八木山夜露」という名の身寄りのない子どもを殺し、その戸籍を奪ってなり替わっていたとの事。本当の夜露くん、不憫だなあ。
この事は他言無用と憲助さんが念を押すと、ちょうどそこに例の犬が御登場。当たり前のように壁からズルズルと姿を現して来ました。この描写から察するに、この犬も「岩人間」ならぬ「岩ドッグ」と化しているんでしょうね。別の岩石と同化して溶け込み、その岩の内部をすり抜ける事も可能なのかな?犬は、ベッドの上に置きっぱなしになっていた謎の「果実」に噛み付くと、ムシャムシャ食い始めました。どうやら康穂、半分に切られた「果実」を置いて帰っちゃったみたい。でも、そんなせっかくの重要な手掛かりが食われちゃっては大変です。定助は大慌てで止めようとします。……しかし、犬が一心不乱に食い付いていたのは「ごま蜜だんご」だったのでした(笑)。犬をも夢中にさせるその美味さッ!
というワケで、あっさり「果実」ゲット!早ッ!憲助さんが見たところ、イチジクに似た匂いはするが、初めて見るフルーツとの事。実際に食べて確かめようとするつるぎちゃんを窘め、こんな「破片」なんかじゃなく「樹木」を見付ける必要がある、と断ずる憲助さん。まずはこの「果実」の種類と、どこで採れたかを突き止めるッ!


●素性を調べた際、夜露が最近、海外旅行をしたという記録はなかったらしい。そして、「果実」のこの新鮮さ。という事は、この「果実」が成る樹木は「日本のどこかにある」か、あるいは「海外にあるけど夜露以外の誰かが日本に最近持ち込んだ」かのどちらか。結局、この世界のどこかにある、としか言えない状態ですね。
しかし、調べる方法はまだまだあるのです。その1つが、『キング・ナッシング』!「果実」の「匂い」を『キング・ナッシング』に記憶させ、そこから「果実」全体や枝葉の形を予測し、パズルのピースで再現してみせる。やはりイチジクに近い「形」をしているものの、それだけでは正体は不明。ただ、この「果実」の「匂い」が『キング・ナッシング』の能力射程内に入ったなら、自動追跡をスタートするようです。攻撃力はないけど、便利なスタンドですね。
もう1つの調べる方法は、東方家がフルーツ屋であるという事実!駅前にある東方フルーツパーラーの事務所に、世界のあらゆる果樹の記録があるらしいのです。まずはそこに行って、調べる事となりました。
ちなみに、例の犬はつるぎちゃんの希望により、東方家で飼う事になりそう。名前もすでに付けた、とつるぎちゃん。その名は「岩助(いわすけ)」。無言のまま、ビミョ〜な表情になる定助と憲助さんに吹きました(笑)。
そんな岩助、になって睡眠中。つまり「果実」を食べても、「病気」は治るけど「岩体質」は治らないって事のようです。いや、「病気」が治る代わりに「岩人間」化する、という方が正しいのでしょうか?いずれにせよ、この「果実」だけでは、東方家に真の福音は訪れなさそうです。


●フルーツパーラーにやって来た定助と憲助さん。自分の仕事への誇りと自信に溢れた憲助さんは、ドヤ顔で定助にたっぷりフルーツ講座(笑)。どやっ!という擬音まで出るほどの、完璧なドヤ顔です。
お祝いのプレゼントはたくさんあるが、不幸があった時や病人のために贈れるものは花とフルーツだけ。フルーツとは特別なものらしい。また、この駅前界隈には一流ファッションブランド店が建ち並んでおり(帽子屋「SBR」もここにある)、そこで買い物を楽しんだ女性達が眺めの良いお店でCAFEタイムを過ごせるよう、人々の「流れ」を計算して設計したのが東方フルーツパーラーなのです。東方家は超一級品のフルーツしか扱わず、お店の1Fで売ってるフルーツが傷み始める直前に、2Fのフルーツパーラーでパフェとして提供。そんな商売の「流れ」も、憲助さんが巧みに作り上げたようです。
「果実」について調べる前に、パフェを食べる事にした2人。可愛らしく美しく、とっても甘くて美味しそうなメロンパフェ。しかし、そのグラスの形もまた、憲助さんが考えに考え抜いた形でした。メロンやクリーム、アイスにシャーベット、コーンビスケットなどが9つの層に重なるパフェですが、スプーンを引き上げて食べる動作によって、グラスの中で対流が生じ、層が混ざり始めるらしい。食べるごとに味がどんどん変化するため、女の子は最後まで味に驚いてパフェを楽しめる。そして、また食べたいと思って、家族や友達を連れて来てくれる。う〜ん、お見事。私もぜひ味わってみたいッ!
――で、このフルーツ講座で憲助さんは何を言いたかったのかというと……、全ての物事には自然な「流れ」があるという事。その「流れ」に逆らわなければ、必ず目標に辿り着ける。定助に「オレの家でそれを覚えろ」と諭す憲助さん、すげーカッコイイな。道に迷う若者を、厳しくも優しく導いてくれる大人って感じ。シブすぎんぜ。「流れ」を掴み、「流れ」に乗る力を、定助はやがて身に付けていくのでしょうか。


●フルーツ講座が終わったので、晴れてメロンパフェを食する定助。「こぼさないで食えよッ」「ウンウン」、どっかで見たやりとり(笑)。で、スキっ歯からブッチュウ――ッもお約束。口から飛び出たパフェが、通り掛かった人の靴に掛かってしまいました。その横では、憲助さんが長男:常敏からのメールを確認。なんと常敏が帰国しているらしい!
靴に付いたパフェをハンカチで拭き取る男性。その顔を見て、憲助さんも驚きます。つーか、我々読者にも見覚えがある風貌。なんかトゲトゲしい白い服に、顔の縦線。定助が東方家に引き取られる事になったシーンに描かれていた男。そう……、この人こそが東方 常敏!定助とは初対面に近いようなので、けっこう長く(数週間ほど)海外に行ってた模様です。
定助の謝罪の言葉にも反応なく、常敏は唐突に相田みつを氏の詩を語り出します。すると、憲助さんとハイテンションで笑い合い、再会を喜び合うのでした。てっきりシンガポールに行ってたものと思いきや、それは憲助さんの勘違いで、実際はベトナムとフィリピンに行ってたようです(おじいちゃん ぜんぜんチャウよ)。さらに、黄金色のランボルギーニを乗り回したり、体長11.2センチのパラワンオオヒラタクワガタを11万円で買って来たりと、なかなか掴めない人物っぽい。常秀と比べると友好的で物腰も柔らかですが、かなりクセが強そうな予感。
定助と挨拶を交わすと、いきなりクワガタをプレゼントしてくる常敏。定助もリアクションに困り、「飼い方も分からないし、お返しも出来ない」と遠回しにお断り。しかし常敏は、受け取ってくれない定助に一瞬だけ悲しそうな怒ってるような表情を浮かべると、すぐさま「腕時計と「鉄人28号」のソフビも付けよう!」と上機嫌に。なんとも不気味なプレゼント攻撃……。でも、憲助さんとはえらい仲良しみたいですね。それとも、憲助さんですら手に負えない性格だから、表面上テンションを合わせてるだけ??


●仲良く肩を組んで歩いて行く憲助さんと常敏。そんな憲助さんの体から、突然、ジグソーパズルのピースがッ!『キング・ナッシング』です。ピースは、さっきパフェを拭いた常敏のハンカチに集まり、一瞬だけ「果実」の形になったのでした。
つまり、常敏のハンカチには「果実」の「匂い」が微かに残っていたという事。常敏は「果実」の存在を知ってか知らずか、「果実」と接触していたという事。そして、それを『キング・ナッシング』が自動追跡したのです。露骨に怪しい人物となった常敏ですが、果たして彼は何をどこまで知っているのか?ついに現れた常敏によって、物語も大きく動き出しそうです。
順当に考えれば……、「果実」の成る樹木は海外にあり、常敏が夜露に「果実」を渡していたのかな?でも、「ジョジョリオン」の物語は杜王町の中だけで紡がれてほしいので、個人的には、前回の「聖書」を絡めた予想を推したいところ。(あの「果実」は「生命の実」であり、「知恵の実」も別に存在する。杜王町の海岸にある「二本松」こそ、その2つの実が成る樹木である。東方家は「エデンの園」である。……って予想。)


★今月は49ページ!最高でした。やっぱ各キャラが動いて会話してる日常風景が見られたってだけで楽しすぎ。夜露との戦いが長かった分、今回は良い骨休めになりました。第2話を彷彿とさせる、杜王町らしいまったり回でしたね。常敏の登場がどんな波乱を巻き起こすのかも要注目!彼の顔の縦線も、単なるメイクか傷か何かなのか、それとも「病気」か「岩人間」化の名残りとかなのか……。まあ、最後になると縦線も描き忘れてるけど(汗)。気になる点は多いです。
作者コメントは「スポーツ観戦は圧倒的に勝ってるのが好き。僅差だと同点になったらどうしようって心配。」との事。サッカーのワールドカップで大盛り上がりの日本、つーか世界ですが、荒木先生もドキドキハラハラして観戦してるんでしょうかね?



(追記)
●常敏のハンカチに何故、謎の「果実」の「匂い」が付着していたのか?この謎について考えてみましょう。
常敏がベトナムとフィリピンに出掛けていたのも、実はそこに「果実」の成る「樹木」があるからなのかもしれません。数週間に渡る探検でついに「果実」を発見したのであれば、ハンカチに「匂い」が付くのも自然な事。……しかし、また別の可能性も考えられます。ほんの数時間前、夜露と共に沈んだ「果実」を海から回収した、という可能性です。

今まで暗躍していた夜露が姿を現し、猛攻を仕掛けて来たのと、ほとんど同じタイミングで常敏が帰国したというのが、そもそも怪しい。完全に夜露と入れ替わる形での登場ですからね。見計らったかのようなタイミングで帰って来た常敏……、もし本当に見計らっていたとしたら?実は海外になど行ってはおらず、杜王町のどこかで密かに東方家と夜露の動向を窺っていたとしたら?
常敏と夜露が、裏で手を組んでいたというのはあり得る話だと思います。もっとも、夜露の目的が「東方家の富と繁栄を奪い取る事」である以上、真の「仲間」ではなかったでしょうけど。むしろ、常敏も常敏で、最初から夜露を利用して出し抜くつもりでいたのかも。恐らく、東方邸やフルーツパーラーの設計を依頼した時から、常敏と夜露は交友関係を築いていたのでしょう。その中で、スタンドや「壁の目」、「病気」、「岩人間」といったお互いの境遇を打ち明け合い、表向き協力し合う事にしたのです。
常敏は家族を溺愛し、家族を守るためなら平気で他人を犠牲に出来る性格、と勝手に予想しています。東方家は代々、「病気」になった長子の身代わりとして、家族の誰かが犠牲になってきました。つるぎちゃんが「病気」になった時には、憲助さんが身代わりになるつもりでいるようですが、常敏は家族を失う事だけは絶対にイヤ。「病気」を完全に克服するか、あるいは、他人を犠牲にするか。この2択しかないワケです。夜露の持つ「果実」が、「病気」を克服する重大な要素であるなら、常敏は何が何でもゲットしようとするはず。そのために、夜露と何らかの取り引きをしたのです(あくまで表向きの取り引き)。
……で、「仕事で海外出張」と家族も含めて夜露を欺き、夜露と定助をぶつけて、それを影から見物していた、と。ひょっとすると、妻である密葉さんが協力者で、彼らの争いの様子を常敏に逐一報告していたりして。結果的に夜露は定助に破れ、常敏はまんまと「果実」をゲット!仮に定助が破れたとしても、消耗した夜露に不意打ちで迫れば、殺して「果実」を奪えるという算段です。今後は常敏・密葉夫妻にスポットライトが当たるでしょう。


●もう1つ、「X」についての可能性も考えてみたいと思います。
東方家の離れの地下室に掛けてあったセーラー服や、つるぎちゃんの「早く帰っておいでよ」という定助に対するセリフから……、読者としては、あの地下室に定助の片割れ(恐らく、吉良ではなく「X」)が幽閉されていたのではないかと想像してしまうところです。しかし、それがミスリードである可能性も否定は出来ないでしょう。決定的な証拠は何もないのですから。

そもそもあの地下室は、夜露が仕事で使っていたという部屋。増してや、夜露の目的は「定助を地下室までおびき寄せる事」でした。そして、夜露はつるぎちゃんと取り引きを結んでいた。これらの事実から考えると……、全て夜露が仕掛けた罠という可能性は充分にあり得ると思います。
自分の正体や過去に繋がるかもしれないとなれば、定助は必ずそこへ向かうはず。思わせぶりな言葉で定助の意識をつるぎちゃんに向けさせ、そのつるぎちゃんが地下室に行ったら、定助はまんまとおびき出されてしまうでしょう。部屋に、自分が着ている物と同じセーラー服があるなら尚更です。第一、そこに大好きな康穂がいたのなら、絶対に行かざるを得ないし。夜露はそうして、逃げ場のない狭い地下室に定助をおびき寄せ、『アイ・アム・ア・ロック』の能力で殺す作戦だったのかもしれません。(作中では、憲助さんまで一緒に付いて来たため、止むを得ず作戦変更した?)
だとしたら、定助があの部屋自体に何の反応も見せなかったのも当然と言えます。彼と地下室に何の関係もなかったとすれば、そりゃあ反応のしようもない。失った記憶が喚起させられる事もありません。まあ、康穂とか「果実」とかに気を取られ、そこまで意識が回ってなかった可能性もあるけど。後で改めて地下室を訪れれば、何かしらの反応が起こったりするかも?



――そんな感じで、今回はちょっとひねくれた視点から、別の可能性を探ってみました。「あらゆる事を疑う」が座右の銘の荒木先生に倣い、私も色々と疑ってみちゃいました。



(もうちょっと追記)
●さて、幾分か唐突な登場にすら思えた「岩人間」の存在。今回はそんな「岩人間」について考えてみました。
まあ、いくら私が唐突に感じたとしても、荒木先生にとっては必然だったに違いありません。実際、東方家に伝わる石化の「病気」も、「岩人間」の布石だったんでしょうしね。そして、さらに遡ると、布石と思しき描写はまだあったのです。それが、第1話から描かれていた、「壁の目」の謎の「歯形」。……ズバリ、あの「歯形」は「岩人間」の歯形なのですッ!

前回の予想をそのまま活かすとすると……、2000年もの昔、イエス様が現在の杜王町を訪れた際、「二本松」は聖なるパワーを受けて「知恵の樹」と「生命の樹」になりました。「知恵の樹」に成る「知恵の実」を食べると、追い求めるものに辿り着くための深遠なる知恵と知識が得られ、それと引き替えに石化の「病気」の宿命を背負う。「生命の樹」に成る「生命の実」を食べると、あらゆる病気やケガも治ってしまうほどの強い生命力と不老長寿が得られ、それと引き替えに「岩人間」として生きる宿命を背負う。どちらも、その「果実」を食べた者を、「呪い」と引き替えに進化させる(=「神」の領域に近付ける)樹木なのです。
そして、「果実」を食べた者は、最終的には必ずその「果実」の成る樹の下(もと)へと還る事になっているワケです。個人の意思・感情を超え、「果実」によって進化した者だけが持つ本能・運命のようなもの。同種の聖なるパワーで互いに引き合っているのかもしれません。いずれにせよ……、石化の「病気」に罹った者も、「岩人間」と化した者も、やがては樹の下へ集う。最後は、自らその地中に埋まって、生物としての活動を停止してしまう。「二本松」周囲の土地は、イエス様の影響を受け、「等価交換」の力をも宿していました。この「等価交換」によって、地中に埋まった「発病者」も「岩人間」も、永遠の命と力を得る代わりに土地そのものと一体化してしまうのです。こうして、どんどん「発病者」と「岩人間」が土地と融合し連結し「塊」となったものが、今の「壁の目」なのです。
時は流れて1901年、ジョニィが持ち込んだ「遺体」の影響で、「壁の目」にはスタンド使いを生み出す力まで加わりました。「壁の目」と化した連中は、永遠の存在になってはいるものの、もはや真っ当な意識は失われているのでしょう。土地に踏み入った素質ある者に引かれ、衝動的に噛み付き(傍からは、地面や岩に躓いて傷付けたかのようにも見える)、そこから聖なるパワーを注入。その刺激により、噛まれた者からスタンド能力を引き出すのです。スタンド使いもまた、聖なるパワーで進化した生物。そういう意味では、「発病者」や「岩人間」と同類。仲間を増やす事で聖なるパワーを増幅させ、さらに「神」に近付こうとしているのか?

つまり、「壁の目」は「二本松」を中心とした聖地であり、それゆえに大昔から「岩人間」とも密接な関わりがあったという事です。
すでにスタンド使いだった吉良と「X」の融合体である定助にも「歯形」があった以上、彼は普通の人よりも遥かに強い素質と運命を持っているんでしょう。ただのスタンド使いにはない、特別な力も実は宿していたりするかも?


●「岩人間」のルーツと正体に続いて、お次は八木山夜露個人について。夜露は何故、あんなにも定助を憎悪していたんでしょうか?
定助の中の「X」に対し、夜露は「岩に生まれたのは貴様の方だ」と吐き捨てていました。「貴様の方」という事は、逆に、夜露の方は違うって事。「X」は生まれながらの「岩人間」、夜露は後天的な「岩人間」と推測できます。さらに、10年以上前、夜露は「八木山夜露」少年を殺害して戸籍を奪ったらしいので、この直前に「岩人間」になったと見るのが自然でしょう。ディアボロのように、元々の自分は死亡したものとして社会を欺き、別人になり替わったのです。
(ちなみに、わざわざ戸籍を奪わなければならなかったのなら、チンコで他人の肉体に取り憑くといった芸当は出来ないと見るべきでしょうね。個としての活動を停止した夜露のチンコも、すでに海流をも無視し、「壁の目」と引き合って融合しちゃったものと想像。)
ともあれ、そこまでして別人になり替わるからには……、恐らく夜露は、明確な目的意識を持って、あえて自ら「岩人間」になる事を選んだのだろうと思います。

一方、「岩人間」として生まれ育った「X」は、それゆえに自分の戸籍も家もなく、社会的には存在しない人間。だからこそ彼は、ごく普通の人間として生きる事を願って、杜王町までやって来たのです。まさに、夜露とは対極の存在と言えますね。「X」は「果実」や「壁の目」の力を完全に消し去る方法を知る唯一の存在でもあり、それを実行する事こそが目的。吉良との融合にしても、「岩人間」の本能を打ち消せるという面では、「X」にとっても都合が良かったのかもしれません。
夜露は逆に、「果実」や「壁の目」の力を利用して、さらなる進化を目指そうとしているワケです。(それまでの間に、人間としての豊かさ、人間としての生の証までも得ようとしているっぽい。なかなかの強欲ぶり。)当然、夜露にとって、この上なく邪魔で危険でイラつく存在ッ!2人がぶつかり合うのは必然です。

なお、生粋の「岩人間」である「X」は、「壁の目」(と融合した「岩人間」達)とも強く引かれ合っています。だから「壁の目」は、夜露に殺されかけた「X」と共鳴し、彼を守るために激しく隆起する事となりました。
それが「X」自身の意志による行動か、「壁の目」の意志による現象かはさておき……、「X」は誰よりも「壁の目」の力を具体的にコントロールできる存在でもあるのです。



(またしても追記)
●もう1週間ほどでウルジャンが発売されるというタイミングではありますが、懲りずにまたもや追記したいと思います。まずは虹村さんについて。
虹村さんは東方家の家政婦を務める、ホリーさんの娘であり吉良の妹。ジョースターの血を引く重要人物です。そんな彼女……、東方家に強い敵意を持ち、東方家の秘密を探るために潜り込んだ模様。で、敵意を持つに至った理由と、東方家の秘密の内容に関して考えてみました。

彼女は母:ホリーさんを守るため、決死の覚悟で定助と戦いました。また、「壁の目」の力を知ってはいるものの、あまり詳しくはなさそうです。「等価交換」というより単に「融合」と捉えているフシがありますし、そもそも彼女が「壁の目」の力を知ったのは震災後の事。つい最近まで何も知らなかったっぽい。これは恐らく、ジョースター家も東方家と同じように、石化の「病気」に罹ってしまう長子にしか一族の宿命を教えないでいたからなのでしょう。単独調査ゆえに情報不足で、そのせいで理解不足や誤解が生じていたとしても、彼女を責めるのは酷というもの。
さて、それでも虹村さんが東方家を「敵」と認識したのなら、相応の理由もあるはずです。……ここで忘れてはならないのは、東方家の歴史。つるぎちゃんが言うには、かつては「病気」を治す方法などなく、次男を跡継ぎにしたり養子をもらったりして家を繁栄させてきた、との事。しかし、今は治療法が見付かり、長子である憲助さんも常敏も現にピンピンしている、と。何百年も続く「病気」に対し、治療法が発見されるという劇的な変化が近年起こったのです。そう、その変化を齎したキッカケこそが「聖なる遺体」。1901年、ジョニィが持ち込んだ「遺体」の影響で、「壁の目」に「病気」をも「等価交換」できる力が宿ったという事です。
(そうだとしたら……、年代的に考えると、3代目憲助こと常照が「病気」を「等価交換」した最初の人物になりそう。そして、当代の憲助さんである常助と、その息子の常敏。まだこの3人しか「病気」の「等価交換」を行なった者は存在しないと思われます。)

ところが、ホリーさんは現在、「病気」になって入院している様子。このまま「病気」が進行すれば、やがては意識も記憶も失われ、肉体は石と化して死んでしまうでしょう。東方家だけが母を救える方法を知っているのに、何もせず見捨てた。元は同じ血を引く親戚・家族なのに、東方家は母を見捨てた。虹村さんからすれば、そう映ったのかもしれません。東方家の立場で見れば、「等価交換」はあくまで子孫繁栄のための手段。シビアでドライな話ですが、すでに子を産んだホリーさんを救う意味などないのです。「病気」を家族以外の他人に移す事も、一族の禁忌としており、なおさらホリーさんは救えない。
東方家が重んずるものは一族の掟・ならわし。虹村さんが重んずるものは母への愛情。そんな虚しいすれ違いがあり、虹村さんは東方家を憎むようになったのです。
(吉良は、妹の虹村さんの存在を東方家に隠していたようでした。それは、東方家に忍び込んで「病気」を治す方法を探った結果、妹に「病気」を移される危険性を早々に察知したからなのかもしれません。東方家が調子良く「ジョースター家も家族」などと言い出したら、虹村さんに「病気」を移しても一族の禁忌を破る事にはなりませんから。そう考えると、吉良は基本的にはちょっとアブないヤツだけど、母と妹にだけは優しい人物だったっぽいですね。)


●虹村さんが東方家に潜入したのは、東方家に伝わる「病気」を治す方法を掴むためです。母が死ぬ前に秘密を突き止め、自分が母を救う。それが彼女の目的。
しかし、「病気」を治す方法自体は、すでに我々読者には明かされていますね。離れの地下室は、「病気」を治すために造られた部屋。つるぎちゃんがそう語っていました。また、憲助さんが子どもの頃、母親に「病気」を移してもらったのも、「二本松」の根本の洞の中。この洞は、ジョニィが「遺体」を隠した場所です。恐らく、ジョニィが「遺体」を隠して以降、この「二本松」周囲の地下でのみ、「病気」の「等価交換」が可能になったのでしょう。「遺体」によって、「壁の目」が局地的にパワーアップしたワケです。
(1901年に初めて「壁の目」が出来たと考える事も可能でしょうけど、私は今のところ、「壁の目」自体はもっともっと遥か昔から存在していたと考えております。)

とは言え、これだけの秘密じゃ物足りないっつーか、あっさり突き止められそうで盛り上がりに欠けちゃうかも(笑)。なもんで、もうちょいツッコんでみました。
虹村さんとて、ただ「病気」を誰かに移動させる方法よりだったら、「病気」そのものを根絶する方法の方がありがたいはず。「果実」を探す定助達に協力する事も、やぶさかではないでしょう。そうなれば必然的に、「果実」との接点がある常敏との関わりも深くなる事でしょう。憲助さんに「果実」の心当たりがまったくない以上、常敏のみが知る秘密がありそうです。今後、虹村さんが追い求めるものは、常敏の秘密へとシフトしていくのです。
常敏が知る秘密。それは、東方家が「病気」によって呪われた経緯(いきさつ)。その全てを記した古文書。東方家の敷地内のどこかに埋められており、その場所への地図が東方家に隠されているのです。常敏はそれを偶然にも発見し、古文書を読んで東方家の歴史を知ったのです。その地図は、地下室に飾られていた車の写真(絵?)。昭和12年、3代目憲助と思われる人物のサインが書かれたアレです。額縁から外したら、裏側に暗号か炙り出しか何かで古文書の在り処が示されていた、と。
わざわざ隠されているくらいなので、その内容は家族にすら公にはしたくないもの。しかし、完全に葬り去る事も許されない、そんな東方家の罪と懺悔が記録されているのです。3代目憲助もかつて偶然見付け、あまりのショックに誰にも秘密にして隠し、地図だけ遺していったのです。そして、常敏もまた、誰にも知られないように隠した。その古文書にこそ、「呪い」を解くヒントが記されているに違いありません。
(東方家がフルーツ屋を始めたのは、実は謎の「果実」を見付け出して手に入れる目的があったからなのかも。初代憲助さんもやはり古文書を読んでおり、資金調達や人脈形成のために「SBR」レースに参加した?レースの最中も、あちこちでフルーツを探していた?)


●虹村さんの話はここまでにして、次は「記憶の男」についてです。
以前から予想していたように、彼はディエゴ・ブランドーの子孫……という事にしときます。「ジョジョリオン」のラスボス的存在は彼だと思ってるので。ついでに言うと、なんと彼こそが康穂の父親でもあります。登場人物全員が身内ってのも都合良すぎなんですけど、さんざん「運命」や「引力」を描いてきた「ジョジョ」ですしね。それもアリかな、と。ジョースターの血を継ぐ吉良と融合した定助と、Dioの血を継ぐ康穂が出逢い、恋に落ちる。めっちゃロマンティックじゃないですか(笑)。

そんな「記憶の男」の目的も改めて考えてみました。杜王町に「エデンの園」を創造し、自らが「神」の座に君臨する。それが彼の目的。
どうすれば、そんな事が実現できるのかと言うと……、「壁の目」を使うワケです。前述の通り、「壁の目」が「発病者」や「岩人間」の塊であったとして、さらに多くの人々を「壁の目」と融合させる事が、まず必要。「壁の目」をもっともっと広げて連結させ、最終的には杜王町をグルッと囲ってしまいます。「囲う」事で、地中に「埋める」事なく「等価交換」が可能になるのです。その段階まで達すると、「壁の目」の聖なるパワーも最大に高まります。
そこで行なうのが、究極の「等価交換」。この時、「壁の目」は内側と外側、2つの異なる世界・領域の境界となっています。「外側」のあらゆる幸福や繁栄を代価とし、「内側」に神の世界を創り出す。つまり、「内側」を天国にする代わりに、「外側」を地獄にしちゃうという事。そして、自分が「内側」の支配者となる。「岩人間」を増やすためにも、自身が「神」にまで進化するためにも、彼には「果実」が絶対必要なのです。だからこそ、「X」も吉良も利用しようとしたのでしょう。

それじゃあ、彼は何故、そんな大それた事を望んでいるのか?あのディエゴの子孫だから、支配欲・権力欲や上昇志向が凄まじいのかもしれません。
あるいは意外にも……、自分が何者か分からない、自分の進むべき道が見えない、そんな迷える人々の救世主になりたいという切なる想いがあったりして。「道」を指し示し、導く存在。それはある意味、康穂にも通じる部分がありますよね。案外、ここに至ってついに、「SBR」でホット・パンツがディエゴの父:ダリオの存在を教えていたエピソードとかも絡んできたりして??




(2014年6月19日)
(2014年6月22日:追記)
(2014年6月26日:もうちょっと追記)
(2014年7月12日:またしても追記)




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