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定助!
君はいったい何を「賭ける」んだ?


#034 その男、常敏。





●今回のトビラ絵は、東方ファミリーの集合写真。アオリにも書いてる通り、#007でのリベンジ達成です。あの時は勝手にどっか出掛けていた常敏ですが、これでやっとこさ一家勢揃い。もっとも、花都(かあと)さんの存在は気になるところ。ここまで触れられないって事は、やっぱし常敏の身代わりになって「病気」で死んじゃったんかなあ?「病気」の進行速度には個人差があって、彼女は数年掛けて死んでいったとすれば……、常秀や大弥ちゃんが産まれてきても一応つじつまは合うしな。
ともあれ、常敏が中央にドンと座っているあたり、東方家にとって長男がいかに大切なのかが窺えますね。そして、個人的に注目なのは大弥ちゃんと密葉さん。密葉さんの首に大弥ちゃんが腕を回し、密葉さんはそんな大弥ちゃんの手をそっと握る。仲良しじゃん。密葉さんは今までまったくセリフも無いもんだから、クールで近寄り難い人物なのかなと想像してました。でも、ホントはそれなりに社交的で、家族ともうまくやってるのかな?
前回から家族の仲間入りを果たした岩助もちゃんといます。ただ、どうやら写真には写ってないっぽい(汗)。つるぎちゃんも、クッションなんかより岩助を抱いてやればいいのに。あと、さりげに虹村さんカワイイです。内心「東方家ブッ殺す」と思ってるんでしょうけど、それを微塵も感じさせない穏やかな表情。仕事人だね。


●さて、本編。今回の冒頭もまた、定助のモノローグによるあらすじ紹介です。親切だけど、コミックスで読むとちょっとくどくなりそうですね(汗)。でも、おさらいと思わせといて、さりげに新情報が紛れていたりもするので要注意。謎の「果実(フルーツ)」に含まれる栄養分が「病気」を治癒させる、との情報も今回ありますし。定助の推測とは言え、荒木先生的にはそーゆー設定なのかもしれません。
――今回の舞台は東方家。どうやら、夜露と戦い、常敏と会った日から一夜明けた模様。例によって、常秀が定助に絡んできます。康穂にトイレタンクの蓋で攻撃されたタンコブも治ったみたいで、気は確かな様子です(笑)。常敏からお土産にもらった伊勢エビのフィギュアを自慢しに来ました。しかし、定助が生きてるパラワンオオヒラタクワガタをもらった事にショック!ちなみに、大弥ちゃんはヤシの実で作った灰皿。鳩ねーちゃんは「青海亀」と書かれたTシャツ。しかも、文字も亀のイラストも赤いらしい。虹村さんはオスカー像。どんなチョイスだ(笑)。まさに「みやげ物」ならぬ「いやげ物」!
東南アジアに行ったはずなのに、これだけ統一感の無いフリーダムなお土産をセレクトする常敏って。いや……、ある意味、東南アジアらしいっちゃらしいのか。いずれにしても、常敏が海外旅行をしたという絶対確実な証拠はまだ何も無し。実は杜王町に潜んでいた……という可能性も否定は出来ません。


●定助は常敏とのコンタクトを図るべく、彼の部屋へ向かいます。せっかくクワガタをもらったので、その飼い方を聞きに行くという名目で。大弥ちゃんが連れて行こうとしたところ、常秀が代わりに定助をしぶしぶ案内。かわいい妹を嫌いな定助とくっ付けたくない、って事かな?そんな3人にはお構いなしに、鳩ねーちゃんは赤い字で「気合」と書かれた傘も見付け、マイペースに大爆笑してます。
常秀と共に、常敏の部屋に入る定助。部屋には夥しい数の昆虫標本。当の本人は、ブリキのロボットで遊んでいました。離れの地下室に置いてあったロボットやフィギュアも、常敏と関係があるんでしょうか?そして、常敏は開口一番、またもやお得意の相田みつを!意味不明でボー然とする常秀に対し、定助とは軽くハイタッチ。相田みつをネタは鉄板どころか、まだ家族にも浸透してないようです。割と最近ハマッたんかな?
常敏がクワガタのエサについて語っている最中、定助は思い返していました。つるぎちゃんから聞いた、常敏の「弱点」を。


●時間は昨日に遡ります。憲助さんとフルーツパーラーに行った後、定助は1人、「瞑想の松」の所へ。そこでは、つるぎちゃんが岩助と遊んでいました。4部の吉良が猫草にやってたみたく、寝ている岩助の鼻を指で塞いで怒らせたりしてる(笑)。そんなつるぎちゃんに、定助が迫ります。常敏のスタンド能力を話せ、と。
定助は知っている全てをつるぎちゃんに打ち明けます。フルーツパーラーで常敏に会った事。常敏が恐らく、「果実」の樹木が生えている場所を知っている事。そして、常敏は「病気」を治す方法を知っていながら、何故か家族にもそれを隠している事。
定助は常敏を追い込んで、彼がどこへ旅行していたのかを聞き出すつもりでした。しかも、これは憲助さんにも秘密の単独行動。定助は夜露との一件で、憲助さんが「良い人」であると確信した様子。素晴らしい家長で人格者。とは言え、憲助さんも人の親。もし自分の子の不利益が生じるとしたら、憲助さんは誰の味方をするのか?一族の宿願を果たすため、息子を問い詰める?それとも、「真実」を差し置いてでも息子を守る?親にとってどちらが重いのか予測できないので、定助はあえて憲助さんには何も話さずにいたのでした。
一方、つるぎちゃんは、「病気」を治すために平気で定助を売ろうとしていたほど。「果実」の秘密を、「真実」を、何が何でも知りたいはず。だからこその直接交渉。しかし、さすがのつるぎちゃんも父親を売るのは抵抗が強いようです。つるぎちゃんにとって、常敏は優しくて楽しい良い父親らしい。フルーツパーラーをオシャレにして発展させたのは、むしろ常敏の方との事で、父を慕って尊敬しているみたい。「果実」について秘密にしているのも、きっと自分のためを思っての事。そう信じたいつるぎちゃん。


●苦悩した末、つるぎちゃんは定助に「約束」を求めます。父を決して傷付けないと約束してくれるなら協力する、と。あくまで定助は、常敏に「果実」の在り処を喋らせるだけ。何があっても、絶対に常敏をスタンドで攻撃したりしない。それが「約束」です。定助は「自分も東方家の一員」という意識が芽生えたようで、東方家の血統に敬意を表し、「約束」を守る事を誓うのでした。やっぱ腹を割って憲助さんと話した事はデカかったですね。定助にも少しずつ「家族」や「帰る場所」が出来つつあるんだな、としみじみ。
それはさておき、つるぎちゃんが語る常敏の「弱点」とはクワガタ虫。常敏はつるぎちゃんよりも気持ちが子どもで、毎日が夏休みだと思っているタイプらしい(笑)。常識に縛られない、自由奔放な人なんでしょう。ある意味、純粋な人なんでしょう。そんな常敏だから……、プライドを傷付けられた時は、興奮して何でもさらけ出して喋ってしまうようです。そして、それを自分で「弱点」と思っていないところがまた「弱点」。付け入る隙はありそうです。
……で、具体的な作戦までつるぎちゃんが指南してくれました。それは、お互いのクワガタを戦わせるというもの。何のこっちゃって感じですが、つるぎちゃんは至って大マジ。つるぎちゃんの言う通りに1つずつ行動しないと、常敏は「無邪気な少年」から「抜け目ないビジネスマン」になってしまう。疑われずに、うまく常敏を乗せる事が大切なのです。


●そんなワケで、定助は作戦通り、常敏の部屋へやって来たのでした。クワガタの飼い方を聞きながら、自然に「常敏さんも生きているクワガタを飼ってるんですか?」と質問。常敏は自慢のコレクションを見せびらかしたいのか、快く飼育室に入れてくれました。所狭しと、いろんなクワガタが育てられています。常秀もクワガタ好きらしく、ギラファノコギリクワガタに大はしゃぎ。
常敏は得意気にクワガタトークを続けます。クワガタには他の虫と違って「知能」があり、自分の好みのタイプじゃないと絶対に交尾もしない。考えてる時間は最大45秒で、虫の脳ミソだからすぐに忘れる。それでも、間違いなく「知能」はある。「本能」だけでなく「知能」も駆使して戦う姿に惹かれるんでしょうかね?定助はそんな彼の心理を突き、何気な〜く「このクワガタなら、オレがもらったクワガタと戦わせても勝てそうだ」と挑発してみせます。しかし、焦りは禁物。すぐに無礼を謝り、あえて部屋を出て行こうとします。すると……、常敏の方から「じゃあ、試しに戦わせてみるか?」とのお誘いがッ!
そのお誘いにもすぐには乗らず、そっけなく一度断る定助。常敏は態度こそ冷静ですが、もう臨戦態勢。どうにか定助をその気にさせようとしています。問答無用でルールまで説明してるし。ここまで来たら、あとは一気に攻めるのみッ!大胆にも定助は、常敏に「賭け」の提案!常敏もノリノリで、カブト虫のヘラクレス・ヘラクレスを賭けてきました。単なる好奇心ではなく、常敏もいよいよ本気。自分のクワガタに「闘争心」を付けさせるため、巨大スズメ蜂のいる虫カゴの中へ投下。開戦し、しばし睨み合ったかと思いきや、スズメ蜂はあっさりクワガタのアゴに切り裂かれるのでした。定助も常秀も戦慄!そして、定助に「君は何を賭けるんだ?」と、不敵に問い掛ける常敏だったのでした。


●問題のバトルのルールはこんな感じです。基本的には相撲で、土俵はコルクを化学樹脂で固めたもの。直径は27.5cmで、周囲は「い草」材質。1ラウンドは45秒と、常敏が語るクワガタの思考限界時間に合わせています。先に土俵の外に出たら負け、空中に持ち上げられたら10カウントで負け、そして殺されたら負け。筆の刷毛でクワガタを興奮させる事はOKだが、直接触れる事はルール違反。対戦するクワガタは、双方共にパラワンオオヒラタクワガタとなっています。(常敏のクワガタの名は「P-36号」。36匹目のパラワン、って事でしょうか?)
つるぎちゃんが言うには、このクワガタ相撲で常敏に圧倒的に勝たなければダメ。とことん勝ちまくり、常敏のプライドをズタズタにして興奮させ、初めて「秘密」が漏れ得る。それはそれで、普通に殴るよりキツい仕打ちな気もするけどね……(汗)。無論、常敏自慢のアスリートたるクワガタ達に勝利する事は困難でしょう。まさしく、45秒間の「剣闘士の世界(グラディエーター)」!これをいかにして制するのか?
――やはり真っ向勝負で圧倒的勝利なんて無理ですよね。となれば、『ソフト&ウェット』の出番です。「しゃぼん玉」なら、大抵の事ならどうにかなります。刷毛の先に小さな小さな「しゃぼん玉」をこっそり付着させ、気付かれないように飛ばして、常敏のクワガタから「何か」を奪っちゃえばイイ!例えば……、常敏はクワガタに1ラウンド45秒の闘争心を覚えさせたワケですが、その「時間感覚」を奪ってしまえば、クワガタもメチャクチャな行動をするかも。それとも、もっと直接的に「知能」を奪うとか?「筋肉」「体重」「闘争心」の優れた者が、アスリートでありグラディエーターであるなら、そのどれかを奪ってしまえば楽勝?
それにしても……、こうして改めて見てみるに、クワガタを初め、昆虫のフォルムってなかなかイカしたデザインですね。一体、どんな激闘が繰り広げられるのか、どんなカッコイイ姿を拝ませてくれるのか、今から期待が高まります。


★今月は45ページ!うむ、面白かった!東方家の連中はみんな楽しいな。特に常秀は感情的で表情も豊かだから、やっぱなんか憎めない。いいアクセントになってます。先生にとっても動かしやすそうなヤツですし。
そして、クワガタ同士のバトルなんて、まさかの展開ですよ(笑)。何らかの方法で定助が勝ち続け、興奮した常敏がもう後に退けなくなったタイミングで、ズバリ「今回の旅行中、不思議なフルーツを見付けたはずだ。オレが勝ったら、その場所を話してもらう。」とでも持ち掛けるつもり?つーか、そもそも何も持ってない定助は、何を賭ける気なんでしょうかね?憲助さんからもらったお小遣いとか、何でも言う事に従うとか、そんなん?
作者コメントは「最近、旅行したくない気分。近所の散歩が一番。」との事。杜王町という小さな舞台で物語を作っているから、自らの行動範囲もご近所レベルになってしまうんでしょうか?それとも、逆に旅行しすぎて飽きちゃったとか?



(追記)
●本当に常敏がベトナムやフィリピンへ旅行していた場合について考えてみました。私は、杜王町にある「二本松」こそが謎の「果実」を実らせる樹木である、と勝手に予想しております。常敏のハンカチに染み付いた「果実」の匂いは、夜露が海底に落とした「果実」を回収したに過ぎない、とも。それが仮に正しかったとして、常敏がわざわざ東南アジアまで出掛ける理由は何なのか?
思いのほかクワガタの存在が物語に関わってきているので、その辺が微妙に怪しいと睨みました。常敏の旅行の目的はズバリ、「果実」が成る樹木を発見し得るクワガタを探してゲットする事だったのです。クワガタはその大部分の種類が東南アジアに分布しているらしいし、フィリピンは多くの島々からなる国でもあり、どっかの島で奇妙な固有種が生まれていても不思議じゃないはず!その名も「サティポロジア・クワガタ」。人知れず浮かぶ小さな孤島:サティポロジア島(※実在はしません)だけに生息する固有種。そのクワガタの成虫は、フルーツを一度食べると、そのフルーツの成る樹の樹液のみを生涯唯一の食糧とする習性があります。リンゴを最初に食べればリンゴの樹の樹液だけを、バナナを最初に食べればバナナの樹の樹液だけを、生涯食べ続けるのです。
常敏の狙いは、その独特な習性。サティポロジア・クワガタはその習性ゆえ、樹液を探して見付け出す力に長けています。自分の生涯・生命に関わる事だけに、樹液に限っては『キング・ナッシング』をも軽く凌駕する敏感さ。つまり、謎の「果実」を最初に食べさせる事さえ出来れば、あとはサティポロジア・クワガタが樹木まで案内してくれる、という寸法です。

常敏は昆虫マニアだったため、偶然にもサティポロジア・クワガタの存在を知り、その捕獲に乗り出したってワケですね。そして、苦労の甲斐あって、ついにサナギになる寸前の幼虫をゲット!あとはサナギから羽化するのを待ち、成虫になったらすぐに謎の「果実」を食べさせるのみッ!
……で、問題はもちろん、クワガタに食べさせるための「果実」そのものをどうやってゲットするか?これはシンプルに、「果実」を持っている夜露から奪い取る。これしかありません。東方邸やフルーツパーラーの設計を通じて知り合い、情報交換をする間柄にもなった夜露。しかし、肝心の「果実」を譲ってはくれないし、その樹木の在り処も決して教えてはくれない。グズグズしていたら、つるぎちゃんが「病気」に罹ってしまう。だからこそ常敏は、強行手段に出る事にしたのです。
夜露も常敏もお互いに、相手を利用するため、表面上だけの取り引きを交わしました。その取り引きの裏では、常敏は妻:密葉さんと結託し、定助の周りを監視する夜露を彼女に監視させ、自分に報告させていたのです。無論、夜露が定助と直接ぶつかり、海で死んでしまった事も監視&報告。夜露がつるぎちゃんと接触した時点で、定助を襲う時が近いと察した常敏は、前もって帰国して身を隠していたのです。そして夜露の死後、すぐさま動き出し、海から「果実」を回収ッ!抜け目のない、見事な手際です。


――こんな感じで、クワガタが重要な鍵となる展開を予想してみました。




(2014年7月19日)
(2014年7月20日:追記)




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