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すまない
どうかオレを許してくれ


#052 信頼





●今回のトビラ絵は、ダモカン・夜露・愛唱の「岩人間」トリオ!前回の仗世文&吉良のトビラ絵と対になってるワケですな。ダモカン、見事にセンターを張ってますよ。でも髪が髪がーッ!(笑)
こうやって敵陣営がまとめて描かれると、なんか新鮮でイイですね。しかも、すでに敗れ去ったヤツらもいるってのがまたイイ。使い捨てじゃなく、ちゃんとキャラ1人1人が深く描写されてて嬉しいです。エイ・フェックス兄弟がハブられてるのはかわいそうですけど。


●今回は丸々、過去編の続きです。愛唱から「ロカカカ」の枝を盗んだまでは良かったものの、とうとう「岩人間」達に見付かり、ヨット上で追い詰められる仗世文&吉良。ダモカンは拷問器具として利用するため、千円札を無言で折り畳んでいます。彼の向こう側に高く長くそびえるは「壁の目」。その目が見つめるものは、果たしてどんな光景か?
ドロドロに溶かされ、まったく身動きも取れない2人。ダモカンは躊躇う事もなく、吉良の右脇腹を千円札で切り取ってしまいました。そこには、吉良のスマホが。「JOSEPHMI」という文字がデコられた仗世文のケータイまで押収。ところが、それらを調べてみても、「ロカカカ」に繋がる情報は一切無し。2人は用心深く行動していたのだから当然でしょう。しかし、そんなクソ生意気な態度が、かえってダモカンを怒らせてしまいました。
激昂してケータイを仗世文に投げ付けるッ!さらに、千円札で仗世文の足をも切り裂いていくッ!絶叫する仗世文!ケータイとスマホが海に落ち、ようやくダモカンも冷静さを取り戻します。……そして、2人に悪魔の取り引きを持ち掛けるのでした。


●ダモカンが提案した取り引きとは……、「ロカカカ」の栽培場所を先に喋った方を許し、残った方を殺す……というもの。その2つこそ、彼がここに来た目的なのです。なんてえげつない行為ッ!ジョニィに取り引きを持ち掛けた大統領さえも霞んじゃいそうな程のえげつなさです。
ダモカンとしては、「ロカカカ」を盗まれた事実に6ヶ月も気付けずにいた自分自身に対し、反省もしてるし責任も感じているらしい。だから、1人は許す事にしたようです。きっと、それはそれでウソではないんでしょうが……、助かりたい一心で相手を裏切り、出し抜き、醜く罵り合う様を嘲笑ってやりたいって気持ちも多分にありそう。そうやって、傷付けられたプライドを癒やそうとしてるのかも。なんたるゲスで傲慢な男ッ!
ホリーはもう「ロカカカ」を食う事もない。ホリーはお前の母親じゃない。こうなってはもはや、命を賭ける意味も無くなったんじゃないのか?――ダモカンは、仗世文のこめかみに千円札を突き立てながら、静かに語り掛けます。さらに、「君の方を助けたい」「そして、安心して家に帰るんだ」などと、子どもを諭すように優しい言葉まで囁く。そんな悪魔の誘惑に、仗世文の心は傾き始めていくのでした。


●仗世文の脳裏に過ぎるのは、幼い頃の記憶。海で溺れた時、海中から見えた母の姿。海に飲み込まれる自分を、黙って見つめる冷たい目。そして、岩場に消える母の影。……あの時の絶望がまざまざと蘇ります。
仗世文は大粒の涙を流しながら、全てを諦めてしまいました。オレはいつも見捨てられてきた。いつだって、誰も気にも留めない。ずいぶん努力はしたが、いつもその繰り返しだ。やっぱり見捨てられる。それなら、自分から「見捨てる」のも同じか……。あまりにも深い心の傷。これまでの彼の人生が、決して明るく順風満帆なものではなかった事が窺えます。誰かのために行動する事も、懸命に努力する事も、正しく生きようとする事も、他人を信じる事も、自分の幸せを願う事も、全ては無駄だった。そんな自己否定・自己喪失の「呪い」に陥ってしまうのでした。切ないですね。
今にも「ロカカカ」の在り処を吐いてしまいそうな仗世文に、吉良は思い掛けない言葉を告げます。「仲間が来る」「おまえは先に逃げろ」、と。これには誰もが耳を疑いますが、吉良は至って大マジ。「おまえらは必ず殺す」「絶対に追いつめる」「大年寺山愛唱も始末する」「他にいるならそいつらもだ」「「継ぎ木」の場所を喋れだと?逆だよッ!」「おまえらの「フルーツ」は全部オレたちがいただくッ!」 このヘビーすぎる状況で、なんてタフなセリフ!己の野心を諦めない強い眼差しが最高にカッコイイ。


●吉良の言葉はただのハッタリと決め付けるダモカンでしたが、そこへフラフラやって来たのは作並カレラ。のんきな顔して、仗世文を呼んでます。(しかも、ロクに接した事もないクセに、すでに「セッちゃん」呼ばわり。)彼女の手には、さっき海に落ちたはずの仗世文のケータイが。驚いた夜露は、すかさず『アイ・アム・ア・ロック』でカレラを押さえ付けるのでした。突然の出来事にカレラも悲鳴。
そして吉良は、仗世文に詫びの言葉を告げます。「すまなかったな、仗世文……」「オレがいろいろなことにおまえを巻き込んでしまった」「おまえは何も悪くない」、と。まるで遺言のように。……その時、カレラの髪の毛の中から『シアーハートアタック』が2体出現ッ!恐らく、吉良は『シアーハートアタック』をこっそり海に放ち、どうにか仗世文のケータイに絡み付いて、カレラの元にまで運んでいたのでしょう。ダモカンから離れるにつれ、ドロドロだった『シアーハートアタック』も元に戻っていき、カレラの髪に隠れたんです。そんな事など露知らず、カレラは仗世文のケータイを拾い、仗世文からのラブ・コールと都合良く解釈してやって来た……ってトコかな。
気付いた時にはすでに遅し。『シアーハートアタック』は大爆発を起こし、ダモカンと夜露はブッ飛ばされて大ダメージ!途中で吉良の真意に勘付き、爆発に備えていたであろう仗世文は、その隙にまんまと逃亡!まさに、起死回生の一手!……んっ?でも、カレラは?まさか死んじゃった??えっ?


●大爆発を起こした杜王港から北の地点。仗世文は吉良を抱えながら、そこの海岸に辛くも泳ぎ着きました。しかし、吉良の瞳にもはや光はなく、仗世文の呼び掛けにも何の反応も示しません。何も応えてはくれない吉良に、それでも仗世文は話し掛け続けます。さっき、吉良を裏切って喋ろうとしていた事を泣きながら懺悔し、謝り、許しを乞うのでした。
そして、仗世文は辿り着きました。「ロカカカ」の隠し場所に!そこは東方家に程近い、海岸沿いの林の樹。2つの「ロカカカ」の実が、豊かに実っています。収穫は1週間後の予定だったが、すでに充分に熟しているはず。「実」を1つ枝からもぐと、仗世文はそれを吉良に食べさせようとするのでした。そう、「ロカカカ」さえ食べればケガだって治せる。ただ、意識のない吉良には、「ロカカカ」を食べるような力すら残ってはいません。
『クレイジー・D』なら一発なのになあ〜〜と、もどかしい気持ちにもさせられます。仗助と仗世文、似たような存在のはずなのに、誰かを救う事がこんなにも困難だとは。


●一方、杜王港では。取り逃がしてしまった仗世文達への殺意を募らせるダモカン。しかし、この大爆発で港にはパトカーやら救急車やら消防車やらが詰め掛け中。人の目に付く行動は危険という事で、夜露はダモカンを制止します。夜露がダモカンを「田最さん」呼びしてるのが面白いね。「タモさん」みたいな。やっぱダモカン、「岩人間」の中でも年長者で、みんなから一目置かれる存在なのかも。
夜露の制止で我に返ったのか、ダモカンは冷静に指示を出します。「ロカカカ」の事はもう、無かった事として考える。優先順位は変わり、吉良と仗世文の殺害こそが最優先事項。ここら辺の海流は北に流れており、恐らく「恋人岬」から「ヒョウガラ列岩」周辺の海岸に上陸するはず。まさに、そのものズバリ当たっています。……っていうか、「動かない」シリーズの杜王町だけでなく、こっちの杜王町にも「ヒョウガラ列岩」がある事が判明!これまた「密漁」の歴史がある模様です(笑)。
ともかく、愛唱エイ・フェックス兄弟も召集し、そこら一帯を捜させる事に。駅や病院に通じる交通も見張らせるようです。いよいよ大事になってきたぞ。そして、ダモカンの推理はなおも冴え渡る!吉良の負傷を治すために、2人は「ロカカカ」を食いに向かうかもしれない。「ロカカカ」の事は考えず、2人の追跡と始末だけを考えて動けば、自ずと「ロカカカ」にも辿り着ける。完璧だな。言う通り、物事は複合的って事ですね。


●カレラは生きていました!髪の毛は爆発で焼け切れてしまい、チリチリのショートカットになっちゃっていますが、大きなケガもない様子。「岩人間」に見付からぬよう、海に漂うガタクタに紛れ、身を隠していました。ガタガタ震え、涙まで流す姿にはちょっと同情。とばっちりもいいトコです。彼女が死なないよう爆発力を巧く調節してくれたのかもしれんけど、これじゃあ吉良を大っ嫌いになっても致し方ない(笑)。……短くなっちゃった髪は、あとで『ラブラブデラックス』で伸ばしたのかな?
――その頃、仗世文は必死に吉良に「ロカカカ」を食わせようとしていました。しかし、どれだけ呼び掛けても懇願しても、やはり吉良はピクリとも動かない。それでも、仗世文は希望を捨てませんでした。ホリーさんと吉良、二度も救われた命です。自分だけの命じゃないのです。ヨットで「岩人間」達にタンカを切った吉良にも負けない程の強い眼差しで、仗世文は心を決めるッ!スタンドを発現し、無数の「しゃぼん玉」で「ロカカカ」を細かく刻んで吸い上げ、それらを吉良の口内へと運ぶッ!ついに「ロカカカ」を食べた吉良、体が激しく痙攣し出します。崩壊しつつあるものの『キラークイーン』も見えている以上、まだギリギリ生きてはいるっぽい。果たして、「ロカカカ」の効果は!?
ちなみに、仗世文のスタンドも『ソフト&ウェット』でした。結局、名前は同じで、見た目もほとんど一緒。能力も、言い回しの違い程度のもん?最大の相違点は、「しゃぼん玉」の星マークですね。まあ、定助は自分のスタンドの事だけは覚えていたんだから、ほとんど同じでもおかしくはない。ただ、想像以上に『キラークイーン』成分は薄かったみたいです。いや……、もしかすると「ロカカカ」による「等価交換」で、吉良はケガが治る代わりにスタンドを失うって事もあり得ます。だとしたら、「融合」したのに『ソフト&ウェット』のままだったのも頷ける。


★今月は47ページ!正直に言いますと、今月号は読むのがちょっと緊張しました。一連の過去編の出来は、この「ジョジョリオン」という作品自体の評価をも左右しかねないからです。これまでの部以上に「謎」で引っ張っているストーリー展開なので、その謎の「答え」がショボかったり矛盾したりすれば致命的。そう思ってました。……でも、違いました。仗世文と吉良の言動、強烈に心を揺さぶられました。キャラクターの感情がビンビン伝わり、テーマ性が一貫しているなら、マンガは「ジョジョ」はやっぱり面白い!整合性なんてこっちでこじつけてみせるから、荒木先生はこのまま描きたいものを描き続けてくれッ!迷いなくそう思えるくらい、今月号は最高でした。サブタイトルが「信頼」ってのもまた泣けるよ。
作者コメントは「編集長がゴルフを始めたら、仕事的にちょっとやらしい風を感じる。」との事。ぬぬっ?ウルジャン編集長さん、ゴルフを始めたんでしょうか?
さて、来月号は表紙&巻頭カラー!その上、同日発売の「ミラクルジャンプ」でも、なんと描き下ろし表紙&荒木先生インタビューという豪華仕様!4部アニメもいよいよスタート間近ですし、今年もお楽しみがいっぱいでございます。でも、これでミラジャンの描き下ろし表紙イラストが4部アニメだったらズッコケるぞ。「荒木先生の描き下ろし」とは一言も書いてないからなぁ〜。(ウルジャン公式サイトを見たら、荒木先生の描き下ろしと明記されてました。やった!)




(2016年3月19日)




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