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地獄を観に行くのは
てめーだけにしてろッ!


#056 ミラグロマン その1





●今月のウルジャンは「ジョジョリオン」が表紙ッ!予想はしていましたが、やっぱりコミックス13巻の表紙イラストの連作になっています。
立ち上がってポーズを決めつつ、遠くを見つめる定助。自分の正体「吉良吉影」であり「空条仗世文」であるという真実を確信したからか……、心なし、いつもより自信に満ちた朗らかな表情にも見えます。さらに、両手の指の形は4部の吉良『キラークイーン』を思わせ、ベルトのバックルは「J」「O」が重なったデザイン。やっとこさ定助の存在の地盤が固まった、そんな気さえします。
また、彼の背後には『ソフト&ウェット』が隠れていました。背景と同じ模様を身に纏い、見事に保護色になっています。まるで空間が歪んでいるかのよう。のっぺりとした『ソフト&ウェット』だからこそのフィット感です。ついでに言うと、2人の精神が混じり合うスタンドが2色に分かれているってのは、実に意味深。あの過去編を経た今、いろんなものに「意味」を感じてしまいますね。
そして、定助のピンクに、『ソフト&ウェット』と背景の水色ボーダー。荒木先生が言う「無敵の組み合わせ」が美しく映えています。サマーシーズンの到来を実感させる、お楽しみがいっぱいなイラストでした。


●今回のトビラ絵は、海岸の草原で食卓を囲む東方家の人々。定助に憲助さん、常敏、鳩ねーちゃん、常秀、大弥ちゃん、つるぎちゃんに加え、虹村さんと岩助もいます。そして定助の隣には、前回、衝撃の登場を果たした花都さんの姿まで!
しかし、気になるのは密葉さんがいない点。花都さんの帰還により、嫁と姑のバトルでも繰り広げられるんでしょうか?それとも、この絵は密葉さんが撮った写真っていう体(てい)なんでしょうか?そもそも、こんな楽しげなシチュエーションなのに、誰1人として笑顔を浮かべていないってのが、ちょいと怖い。さすがは謎を食む家族、まだまだキナ臭く不穏な空気に満ちております。


●冒頭は定助のモノローグ。長かったダモカン戦を経て、とうとう自分の正体を掴む事が出来ました。自分は、誰も捜す者のいない「空条仗世文」と、ホリーの息子「吉良吉影」とが「等価交換」して生まれた存在。その2人がどんな出自で、どんな人生を歩んできたのか?それはまだ詳細不明ですが、きっといつか知る時も訪れる事でしょう。

――さて、本編。いよいよ定助が「仗世文の家」か「杜王スタジアム」にでも乗り込むのか……と思いきや、今回は常秀メインです。先月号の次回予告はマジだったか〜。しかも、最後のページで判明する事なんですが、前・後編の短いエピソードらしい。実際、読み切り短編のような雰囲気が漂う内容になっており、ちょっとした番外編・箸休め的な回になりそうな感じです。まあ、そう思わせといて、「カツアゲロード」みたく超重要な展開に持って行く可能性もありますが。
このエピソードは、花都さんが東方家に帰宅する2週間ほど前の話。正確な時期はまだハッキリ分かりません。憲助さんは常秀に「もう大学2年だろ?」って言ってますけど、康穂が第2話で「大学1年生」って言ってたしなあ。ダモカン戦からいきなり半年以上も経過したとは考えにくい。単なる憲助さんの勘違いか……、10月になり、入学からちょうど半年経ったから「もうじき2年生になる歳だろ?」って意味で言ったのか……。様子見が必要でしょうが、とりあえず今のところはダモカン戦から1〜2週間後くらいの時期と捉えておきます。


アイドル「菜々美レナ」ちゃんの大ファンである常秀。S市で行われる握手会に参戦し、グッズもいっぱい買いたいらしく、憲助さんにお小遣いをせびっています。大学生にもなって親のスネをかじってばかりの息子に説教する憲助さんでしたが、常秀には何の効果も無し(笑)。渋々、お小遣いを渡すのでした。
握手会当日。菜々美レナちゃんとは無事に握手できたようで、常秀はご満悦。デレデレしながらも、指のスベスベさも可愛さも康穂の次と言ってるあたりはさすがです(笑)。そして、グッズ購入にやって来ました。う〜む……、それにしても、「ジョジョ」でアイドルの握手会やグッズショップが描かれるとは……。スゴい時代になったもんだぜ。しかも、常秀だと違和感ゼロってのがまたスゴいぜ。
どれを買おうかと考え中だったところに、1人の男性が割り込んで来て、お先にグッズを購入。文句を言ってはみたものの、男性は会計も済ませて、さっさと立ち去っちゃいました。ムッとしながらグッズを選び直していると、その男性が忘れて行ったらしいサイフを発見!買い物も打ち切って、速やかにトイレへ直行!中身を確認すると、2千円ちょっとの現金とキャッシュカードが。それらを頂戴し、サイフはゴミ箱にポイ捨て。躊躇いのない鮮やかなその手口、やり慣れてやがるな。ホントにこいつ、カネに関して卑し過ぎだろ。康穂よりカレラの方が相性良さそうだぞ。
さらに、キャッシュカードの暗証番号を推理。もしあの男性が菜々美レナちゃんのマジファンなら……と考え、彼女の誕生日や身長の数字を疑います。しかし、案外シンプルに「菜々美レナ」で「7307」かもと試してみると、なんとこれがビンゴ。あっさり50万円の引き出しに成功したのでした。その上、監視カメラ対策として、頭にタオルを巻いて顔を隠す周到ぶり。そして、カードは割ってゴミ箱へ。こんな才能だけは見事に開花させてやがります。皆さんもサイフの置き忘れには注意し、暗証番号はバレにくい番号にしときましょう!


●常秀はさっそく、その50万でお買い物。ゲスい笑顔で、欲しかった高級腕時計を購入決定です。ところが、店員さんは何故か急に平謝り。なんでも、表面ガラスにかすかなキズが付いていたとかで、新品を入荷してから交換するとの事。50万も一旦返金されました。ここで常秀、ある事に気付きます。そそくさと店を出て、再びトイレへ直行!返金されたカネを数え直してみると、やっぱり1万円多かったのです。
ゴキゲンな常秀は、次は映画館へ。隣にウザいヤツが座るとイヤだから、9席も買って、真ん中の席でふんぞり返って映画鑑賞。その帰り、半券で引けるクジでジョニー・デップのフィギュアが当たり、それを見ていたマニアに3万円で譲るのでした。レストランで食事をしても、料理に髪の毛が入っていて、慰謝料までもらっちゃいました。この時点で相当ヤバい予感がしますが、アホな常秀は「金運」「オレの実力」などと浮かれまくり(笑)。
アホっぷりは留まるところを知らず、今度はキャバクラへGO!ナッツを胸元へ目掛けて投げ、おっぱいの谷間に挟まった女の子だけをはべらせます。常秀は爆乳派らしく、胸の小さい女の子はお呼びじゃない模様。そして、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。「オレの哲学は貯金をしない事」などとノリノリで語ってますよ。そんな調子コキまくりの常秀に対し、終始真顔の女の子達が実に面白い(笑)。


●……で、ページをめくると、そこには怖いお兄さん達に囲まれて座る、神妙な顔した常秀の姿。アホだ(笑)。金粉入りシャンパンなんかで豪遊しちゃったもんだから、締めて54万円の請求です。
でも、問題はそこじゃありませんでした。この店はボッタクリでも何でもなく、正当な請求をしているだけ。そして、常秀もカネは支払った。問題は……、「常秀がどこでこの現金を手に入れたのか?」という点でした。なんのこっちゃって感じの常秀ですが、キャバのオーナーは焦った表情で激怒!「オレがこの「現金」をうっかり受け取るとでも思ったか?」「オレは「ミラグロマン」の事はとっくに知ってるんだよ」、と。オーナーは、54万円を返金するだけでなく、利子まで付けて常秀に渡してしまいました。さっきの時計屋も同じって事かな。
さらに「地獄を観に行くのはてめーだけにしてろッ!」と、怯えるように叫び、常秀を追い返します。エレベーターに押し込め、二度とこの店に来ないように痛め付けようとまでして来ます。もっとも、それは『ナット・キング・コール』の能力で余裕の回避。発現シーンが普通にカッコイイのと、能力をすっかり使いこなしてるのが、なんかイラッとしますが(笑)。とにかく、どうにかお店から脱出!
ところが、常秀のリュックには、オーナー達が入れたと思われる黒いバッグが。開けてみると、なんと中身は札束の山5千万円以上はあるッ!この期に及んで、常秀はまだ自分の「幸運」と信じているようで、ビックリしながらもグフフ笑い。でも、この謎の現象はまだまだ終わりません。自販機でジュースを買ったら、何故かお釣りが異常に出て来たのです。一体、常秀に次々と起こっている出来事は何なんでしょうか?――後編へ続く!


●オーナーが言うには、この現象は「ミラグロマン」なる者が関係しているらしい。一応、自分なりに調べてみましたが、元ネタは洋楽関係ではなさげ。「ミラグロ (Milagro)」とは、スペイン語で「奇跡」の意。つまり、英語で「ミラクル (Miracle)」です。関係あるか分からないけど、アメリカの映画に「ミラグロ/奇跡の地」というタイトルの作品もあるみたい。また、「ミラグロ」というブランドもありました。レザーアイテムを取り扱う、バッグやサイフ等のブランド。うん、なんとなくコレっぽい気がする。
じゃあ、その「ミラグロマン」とは何者なんでしょうか?人物なのか、スタンドなのか、はたまた未知の生物なのか?超シンプルに考えると……、最初のキッカケとも言える、アイドルグッズの店で割り込んで来た男性のスタンド能力なのかも。彼のサイフから盗んだカネは、他のカネも強く引き寄せ、どんどん大金に膨れ上がっていく。そして、そのカネを持つ者が生涯で稼ぎ得る限界の金額にまで達する。要するに、一生分のカネを一度に手に入れられる奇跡。そうとも知らずに、バカみたいに豪遊して浪費しまくると、後の祭り。カネはもう1円たりとも一生手に入らず、無駄遣いを後悔して、この世の地獄へと堕ちていく。……とかね。単に、その大金が一気に借金になっちゃっても恐ろしそう。
「ミラグロマン」からのカネを受け取ってしまった者は、利子を付けて返金しないと、自分がその力に取り込まれてしまうワケです。「ババ抜き」のジョーカーのように、大金を押し付け合う事になるのです。「SBR」の「シュガー・マウンテンの泉」の試練とは違った形で、おカネの怖さが描かれるんでしょうかね。
……あるいは、実は割り込んで来た男性すら被害者で、本体はアイドルの菜々美レナちゃんだったりして。握手をした者に能力が発動。ヲタから大金をせしめるために目醒めた、エグすぎる能力なのです。解除するためには、彼女のCDやグッズにその大金全てをつぎ込まなければならない、とか。「ミラグロマン」とは、彼女にとっての「おサイフ男」って意味。「A●B48」などの商法に対する、荒木先生なりの疑問や警鐘をサスペンスにして皮肉ったエピソードっつー事ですな(笑)。


★今月は46ページ!スゲー面白かったです!やっぱ常秀は唯一無二のいいキャラですね〜。コイツが動いてるのを見てるだけで笑えてくる。ここまで欲望に素直なアホだと、もういっそ清々しいな。定助の「仲間」や「友達」にはならず、ずっと純粋なる「トラブルメーカー」ってポジションのままでも良いのかも。
作者コメントは「担当さんが変わりました。よろしくお願いします!」との事。新たな担当さんが荒木先生に新たな刺激を与え、より良い作品作りに貢献してくださるよう、私も祈っております。頑張ってください。




(2016年7月16日)




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