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そうだ
オレの「母親」だ


#058 母との出会い





●今回のトビラ絵は、定助の超ドアップ。両目の「つなぎ目」やスキっ歯は健在です。しかし、ダモカンとの戦いを経て、とうとう自分の正体を知る事が出来ました。自分は「吉良吉影」であり、「空条仗世文」でもある。この2人が繋がった存在が、今の自分自身。
己の「過去」と「今」を知った定助は、これからどんな「未来」へと進んで行くのか?最後まで見届けましょう!


●さて本編。今回のサブタイトルは「母との出会い」ですが、実はこれ、定助と東方4兄弟の双方に掛かっているダブル・ミーニング。2人の「母」の対比も素晴らしく、うまいサブタイだなぁ〜と感心させられました。

まず、1人目の「母」はホリーさん。――ダモカンの死後、定助は彼の住み家「ダモカンクリーニング店」を訪れていたようです。とりあえず、ダモカンが仗世文の戸籍を奪い、なりすまして生活していた事が明確に示されました。仗世文の行方を追っていたダモカンとしては、この行動は、どこかに潜む仗世文を炙り出すための「エサ」であり「罠」でもあったんでしょうな。また、ダモカンが使用していたらしいパソコンも描かれているので、そこから新たな情報もゲットできたかもしれません。
次に定助が向かった先は、TG大病院。そう、ホリーさんの病室です。ところが、ホリーさんはいつの間にか別の病室に移されていました。それも、設備はオンボロで、壁には蜘蛛の巣が張り、あちこちにホコリが溜まりまくりの劣悪な部屋。その上、当のホリーさんは、ベッドに縛り付けられて眠らされていました。両手は大きく腫れ上がり、包帯を巻いています。一体、何事?ドクターを掴まえ、説明を求める定助。
この時、ドクターは訊ねます。「あなたはご家族の方ですか?」、と。少しの沈黙の後、定助はハッキリと答えました。「そうだ」「オレの「母親」だ」、と。このシーン、なんかスッゲー感慨深かったし、感動さえ覚えましたよ。あれほど深い孤独に覆われていた定助が、自分を知っている人間はどこにもいないと思い込んでいた定助が、ホリーさんを「母」と呼んだんだもんなあ。ようやく自分が何者なのかを知った定助にとっては、これが初めての母との出会いと言えるのでしょう。


●あんまり定助が堂々と家族宣言するもんだから、ドクターもあっさり信じちゃった様子(まぁ、ウソではないけど)。事の経緯を教えてくれました。ホリーさんの治療は保険が効かないらしく、高額な医療費が掛かっていたのです。今までは吉良が支払っていたものの、その彼はもういない。つまり、治療費の滞納のため、マトモな治療もストップされてしまったという事。
ホリーさんの病状は最近急変し、自分の「両手」と「食べ物」の区別すら付かなくなっているらしい。そのため、彼女は自分の指を6本食べちゃったそう!すぐに吐き出させて縫合したから、一応、指はくっ付いたようですが……。桜二郎みたいにならなくて良かったけど、これはガチでやべえ事態。そもそも彼女の病気は現代医学の手に負えないものであり、治療もあくまで進行を遅らせるだけのもの。体もどんどん衰弱していくって言うし。3部のホリィさん同様、もはや一刻の猶予も無くなってきています。
吉良が支払っていた治療費は、たった1泊で12万円!3ヶ月もしないうちに1,000万飛んじゃうのか!吉良が背負っていたものの重さ、改めて実感させられますわ……。ホリーさんの状況を理解し、経済的負担というリアルな難問まで浮上し、定助は苦悩します。そして、何故か急にこみ上げてくる気持ち、溢れ出す涙。幸せのイメージ。母への想い。かつての記憶は無いけれど、それでも定助は、吉良と仗世文の心を確かに受け継いでいたのです。やるせなく切ない反面、定助にこういう想いが自然と湧き上がってくれる事が嬉しくもありますね。吉良と仗世文の「意志」と「行動」は、まだ途切れてはいない。滅びてはいない。


●ホリーさんの治療費をこれからは自分が支払う、と約束する定助。それでホリーさんは、以前の治療を再び受けられます。ただし、ホリーさんにこれ以上「悪い出来事」が何か起こったりしたら、理由がどうあれ絶対許さない……と、ドクターに警告(というか脅迫?)も。「彼女は幸せになるべき人だ」と、定助は堅く信じているのです。
しかし定助……、仗世文としての記憶も、吉良としての記憶も、自分には二度と戻らない事を予感してるっぽい。それでも、自分が「やるべき事」は分かっていて、それは「戻らない記憶」が存在した証明となっていくと言うのです。その「やるべき事」とは、どうやら「ロカカカ」を手に入れる事らしい。「一度手にした事があるから」と理由を述べてはいるものの、何のこっちゃ良く分からん(汗)。自分の中に吉良と仗世文の心が在るのなら……、その心に従って行動すれば、ホリーさんを想って自然と涙が溢れたのと同じように、自ずと「ロカカカ」にまた辿り着けるはずって意味なのか?憲助さんが前に話してくれた、自然な「流れ」ってヤツにも通じるし。それとも、もっと具体的な当てがあるのかな?
それに加え、やはり必要なものはカネ。大金を短期間のうちにゲットする手段はあるんでしょうか?「カツアゲロード」でカツアゲしまくるとか、『ミラグロマン』の「呪い」にあえて掛かるとか?でも、さすがに主人公らしくない行動ですね(笑)。それよりなら、「ロカカカ」売買で稼いだ「岩人間」達の財産を探し出し、奪い取るっていう方がマシかも。


●そして、2人目の「母」は花都さん。――場面は変わって、東方家のとある朝の風景。「何か」に気付いた大弥ちゃんが、家の中を歩き回ってます。ちゃんと礼儀正しく、みんなに挨拶も忘れません。鳩ねーちゃんも、ダモカンに裏切られた心の傷が少しは癒えてきたのか、笑顔で挨拶を返せるくらいにはなっている模様。憲助さんは、例の美木良介の「ロングブレスダイエット」をやってます。朝からゴキゲンだな!このノリノリっぷり、その後のテンションの落差もあって最高(笑)。
「ロングブレス」のDVDを探す憲助さんに、誰かがDVDを差し出して手渡してくれました。ご満悦の憲助さんでしたが……、なんと、それは花都さん!フツーに家にいて、ソファーでくつろいでる!常秀もこの時点で初めて彼女に気付いた様子。さっき大弥ちゃんが気付いた「何か」も、知らない女の人=花都さんの事だったのです。定助と虹村さんも含め、家族みんなの視線を集める花都さん。全員が呆然とする中、憲助さんは1人、やたらとビビリまくり。
どうやら、花都さんが刑務所行きとなって以降、東方家では彼女の存在はずっと隠されてきたみたいです。当時、まだ幼かった常秀と大弥ちゃんは、母親の事を憶えてもいない。しかも、母親は出て行ったきり死んだと聞かされていたそう。写真すら見せられていないため、面と向かっても母親だとは分からなかったのでした。
しかし花都さんは、愛する子ども達との再会を喜んでいます。1人ずつ声を掛け、想い出を噛み締めているかのよう。「東方家の女性は20歳までは巨乳だけど、その後、小さくなっていく」との事で、16歳で巨乳の大弥ちゃんは複雑な表情。常秀は、横っパゲをツッコまれてる(笑)。まあ、初期は横にも髪が生えてたから、定助への怒りと嫉妬を募らせてくうちにハゲただけなのかもしれません。鳩ねーちゃんは昔、「入」を「ヒト」と読んでいたらしく、昔から天然おバカ系だった事が窺えます。そんな些細なエピソードも、花都さんにとっては宝物なんでしょう。


●とは言え、突然すぎる花都さんの帰還に、みんな引き気味。彼女の家族への愛情とは反対に、家族達は彼女の存在を忘れたがっていたようで。あの鳩ねーちゃんまで、けっこう冷たい雰囲気を出しつつ、「あれ」「あの女」呼ばわりです。それもそのはず。……花都さんの罪状は殺人。しかも、他人様の子どもを殺したとの事。理由や成り行きはさておき、そんな暗黒な行為をやってのける呪われた人間と家族として仲良く……なんて、そりゃ無理だよなあ。恐怖なり軽蔑なりして当然。
もっとも、花都さん本人は、その殺人を「正しい事」と断言しています。東方フルーツパーラーが成功しているのも、そのおかげだと。家族を守りたい一心で、常敏の「石化病」の身代わりとして余所の子を利用しちゃったのか?それとも、その子どもが実はディオばりの邪悪で、殺さなくては東方家が危険だったとか?恐らく、真実を知れば、家族からも許してもらえるぐらいの事情があったんじゃないかとは思うんだけど。
ただ、自分を見捨てて刑務所に送り、しかも獄中で離婚までした憲助さんに対しては、相当の憤りを抱いている模様。人生を取り戻すためにも、カネで償ってもらう気満々でした。つーか、家族もカネも大事って事は、実質的に東方家を支配したいって事なのかな?現家長である憲助さんを降ろし、自分と固く結ばれた息子:常敏を新たな家長にさえすれば、それらが全て叶う気もします。


●まさか自分にママがいたとは、と驚きを隠せない大弥ちゃん。そんな愛娘を抱き締めようとする花都さんですが、常秀がそれを阻みます。イスを蹴って、そのイスの脚に花都さんをつまづかせて転ばせました。白々しく「注意してねェ――っ」などと声を掛け、さらに花都さんの衣服を「ネジ」でバラバラに!こんな使われ方ばっかりの『ナット・キング・コール』が不憫です。

「おやおやおやああっ!ケッコーあんた 巨乳じゃんかよォオオ――――ッ!」
「おまえ本当にオレの母ちゃんなのかッ!てめー吸わしてみろよッ!今からでもいいから それ吸わしてみろッ!」


常秀スゲーな!いろいろ振り切り過ぎだろ!ジョセフのリサリサ先生へのノゾキとか、早人の盗聴・盗撮とか、そんなん相手にならないね。これぞ真のゲス真の変態。前回、ちょっとは成長に期待できそうなムードだったけど、まったく成長してなくて逆に安心しました(笑)。……今の今まで自分を放っておいていた事に、ガキじみた怒りを感じていて、それゆえの意地悪なのかもしれませんが。


●衣服がはだけるのと一緒に、花都さんが持っていたカードも散らばってしまいました。なんか大事にしてそうなカードだし、「拾って」と懇願されたからなのか、意外と素直に常秀は拾おうとし始めます。やっぱ単に母ちゃんに構ってほしかっただけの寂しがり屋って事か?いや……、常秀なら、拾った上で返さない・破り捨てるって事もやりかねん。
しかし、常秀がカードをめくると、そこからイスが勢い良く飛び出してきたのです!イスの脚は常秀のアゴに直撃!鮮やかなる仕返しです。普通に、カードとカードの間に物を「収納」する能力……なのかな。常秀に「ナメたら只じゃあおかないッ!!」と怒鳴りつつも、息子や家族達への愛情を抱いている事も必死に訴える花都さん。涙ながらの力説ですが、みんなの視線は冷たいまま。結局、彼女は今日のところはホテルへ戻ってしまいました。
すると、入れ替わりで常敏が登場。大弥ちゃんが大慌てで説明するも、常敏は「知ってる」「オレが家に入れた」と平然な顔。それを見て、憲助さんは花都さんと常敏の繋がりを知り、不穏な空気を感じるのでした。花都さんの存在は、東方家の分裂を誘発しそうですね。波乱続きの東方家、果たしてどうなる?


★今月は41ページ!ややページ数は少ないけど、内容は非常に濃厚で面白かったです。心情の独白や会話が多いと読み応えがありますね。今回描かれた2人の「母」は、片や「聖母」、片や「悪女」って感じで対照的。でも、どちらも家族を愛している事は確かでしょうから、最後は2人ともに救いがあってほしい。
作者コメントは「9月22日から頒布される熊野本宮大社のお守りのイラストデザインを致しました。」との事。実は先日、熊野本宮に直接電話して確認したところ、9/22からって事は教えていただけました。なもんで、すでに熊野行きの準備は万端整っております。4年ぶりの熊野。ただ、唯一心配なのが天気でして。台風16号の野郎が着々と接近中なんですよね。ホント、イヤなタイミングとルートで来やがるよ。このファッキン台風を乗り超え、どうにかミッションを完遂したいです。




(2016年9月17日)




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