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勝手にやればいい…
どこにも意味なんて無い…


#060 池の辺に住む男 その②





●来年2017年は「ジョジョ」30周年というアニバーサリー・イヤー!しかも、奇しくも「ジョジョリオン」14巻刊行のタイミングで、「ジョジョ」シリーズ累計発行部数1億部突破との事!これは超めでたいッ!我が事のように嬉しい気持ちになります。そして、そんな記念すべき30周年の前祝いとでも言わんばかりに、今月のウルジャンの表紙も堂々と飾ってくれました。
スマホを片手に、カエルみたいなポーズでしゃがんでいる定助のイラストです。この顔や首の角度がまたセクシーでカッコイイ。どこか気だるげでありながらも、定助の強い意志を感じる、そんな姿ですね。彼の背景には、「Googleマップ」を思わせる、真上から見下ろした杜王町が描かれています。「ジョジョリオン」は「町」よりも「家」を描く事に主眼が置かれた作品ではありますが、こういう地図って見てるだけでもワクワクしてきますしね。4部アニメもクライマックスって時期でもあるんで、なおさら杜王町への愛着が湧いてきちゃうのです。
ダークパープルな定助に、ピンクの地面、薄オレンジ色の道路、紫やオレンジ色の家々に、グリーンの影。実にカラフルでポップな色使いです。そして、その中でアクセントとなっているのが『ソフト&ウェット』。青・赤・黄を基調とした信号機カラーで、町の安全と平和を守ってくれている……かのようにも見えてきます(笑)。30周年の幕開けを期待させるには充分な、最高にイカしたイラストでした。スゲー好きだよ、この絵。


●今回のトビラ絵は、こちらを指差して見下ろす定助。おおっ、なんか主人公っぽいっていうか、承太郎っぽいカッコ良さ!
背景にはヨーロッパ的デザインの建築物と、「ONE WAY」と書かれた標識が描かれています。「何が遮ろうとこの道を行く―」というアオリ文とも相まって……、決して後戻りなどせず、どんな敵や苦難をも打ち破って進み続ける定助の確固たる決意がビンビンに伝わってきました。


●さて、本編。前回の続きではなく、唐突な謎エピソードから。結論を言っちゃうと、これは前回登場した四肢の無い「岩人間」の過去のようです。私は勝手に「長老(仮)」なんて呼んじゃってましたが、ドロミテという名前らしい事も後に判明します。ですんで、今回からはさっそく本名で呼んでいきましょう。
ドロミテの若かりし頃の姿は、どことなくフーゴにも似たハンサム青年でした。林のそばの草原で、可愛い彼女とイチャつきながら読書を嗜むという、絵に描いたような優雅で紳士的な時の過ごし方!ただ、この彼女は目も虚ろで、行動もどこか普通じゃない。目が見えないのか、脳や精神に異常があるのか。しかし、ドロミテ青年はそんな彼女を愛していたようで、青い珊瑚礁に囲まれた島に流れ着いて2人きりで暮らしたいと夢想したりしています。(どうやら、小説「青い珊瑚礁」を読んでるって事らしいですね。)
ところが、彼は読書しながらついウトウトしてしまい、ふと目を覚ますと彼女の姿がどこにもない。離れた所に送電鉄塔があり、なんと彼女はそこに入り込んでしまっていたのです。このままでは危険な装置に触れ、高圧電流で死んでしまう!ドロミテ青年は鉄塔に猛ダッシュし、ギリギリで彼女をかばいました。でも、代わりに彼が感電ッ!「岩人間」だから辛うじて死なずに済んだのでしょうが、四肢はこの時に失ってしまった模様です。浅黒くボロボロの皮膚もこれが原因なのか。……そして彼女は、彼の末路を知ってか知らずか、無言で立ち上がり、そのままどこかへと去ってしまったのでした。
「ドロミテ」とはイタリアの地名にもあるので、彼は(戸籍上は)イタリア人なんでしょうかね?じゃあ、この過去エピソードの現場もイタリア?彼は随分と長生きしているものと思ってたけど、鉄塔で事故ってるって事はそこまでではないのかな?とは言え、ざっと調べてみたところによると、送電鉄塔が初めて日本に造られたのが1907年との事。一応、100年以上の歴史はあるっぽいので、ダモカン達よりよっぽど長生きしてるとしても不思議ではなさそう。


●その後、ドロミテがどんな人生を歩んで来たのかは不明です。しかし今、彼が日本の杜王町にいる事は事実。さらに、例の池のある神社は「六壁神社」らしい。この「六壁神社」は飛鳥時代、西暦667年から志波彦神(しわひこのかみ)を祀ってきた神社なのだそう。飛鳥時代と言えば、荒木先生が表紙イラストを描かれた「日本の歴史」第2巻。それにちなんだネタなのかな?つー事は、そのうち世界大戦後の昭和時代もストーリーに絡んできたりして。
ともあれ、その時代から変わらず神社が在り続けるように、彼もずっとこのまま変わらずこの場所に住み続けていられれば良い、と考えている様子。ダモカン達がいなくなってしまった事は寂しいけど、彼らが求めていた「金儲け」だの「社会への存在意義」だのにはまったく興味が無い。勝手にやってればいい、と。見た目の割には無欲で人畜無害にも思えるドロミテ。
しかし、常敏が彼に囁きます。たとえ「ロカカカ」を食ったところで、四肢を失った肉体では「等価交換」すら出来ず、四肢を取り戻す事も出来ない。だからダモカン達のやっていた事に興味が湧かなかったのでは、と。常敏はさらに、吉良と仗世文、そして定助の写メを見せ、「等価交換」には次なるステージがあった事を告げました。仗世文達が「接ぎ木」して育てた、言わば「ロカカカ改」とでも呼ぶべき新たな果実。その力さえ得られれば、自分の体内だけでの「等価交換」を超えた現象を起こせる。2人の人間を「融合」する事も容易い。
……何故かみんなして、「壁の目」の「等価交換」パワーについて触れないのが疑問ではあります。「壁の目」に埋まれば、四肢欠損だって何とでもなりそうなのに。もしかすると、「壁の目」は「岩人間」に対しては効力が弱まるみたいな制限・ルールがあったりするんでしょうか?


●「ロカカカ改」の存在を知り、ドロミテの心にもついに欲望の炎が燃え上がった様子。スタンドまで発現させて、すっかりやる気満々です。
そして、このスタンドがまたスゴかった!こんなデザインのスタンド、初めてですよ。今までのスタンドのどれともまったく似ていない。文章で説明するのも難しいけど……、ベースは人型ですが、その体表はあちこちにヒビが入っている。両腕は途中から切断されてて、そこから極小サイズの腕が生えてきてる。肩には大きな穴が空いてるっぽい。頭部は存在せず、背中に羽根らしき物が生えてる風にも、肩に大きな突起が生えてる風にも見える。両手足は鳥のそれに似た形状で、全身に骨を纏っている。頭が無い代わりなのか、股間部には何かの動物の頭蓋骨が配置されている。そんなデザインです。……うん、文章だけじゃ意味不明!
まぁ、とにかく一見の価値ありなヴィジョンですよ。私は「荒木先生はこんなデザインも描けるのか!」とちょっと感動さえ覚えたし、かなり異例で変則的なデザインがめっさ好みでした。


●ここで場面転換。前回の続きです。定助に手紙を渡した少年が、何故か再びフラフラと近付いて来る!定助の制止や質問も無視し、少年は無言で接近。しかも恐ろしい事に、バス停の案内板を避けるでもなくぶつかって、それでもなお定助に向かって来ようとし、何度も何度もぶつかり続けているのです。少年は血だらけになり、目玉も落ちて来そうな程に負傷しちゃってますよ。
ぶつかりまくった挙げ句、体勢を崩したおかげで案内板から体がズレ、その勢いのまま奇声を発して定助を襲撃ッ!しかし定助は、『ソフト&ウェット』で足払いをし、少年を転倒させる。軽やかな身のこなしです。もっとも、少年はそれでも執拗に定助に近付こうとして来る!そこに1台の車が通り掛かりました。危うく事故りそうになり、ドライバーのババアが「法律が許すならオメーらの命なんてどーでもいいけどさあッ」「あたしに轢き殺させる気ィッ!?」と怒鳴って来ます(笑)。
ところが、車にも構わずぶつかり続ける少年。車が汚れる事にお怒りのババアは、ウインドウを開けて少年に文句たれてます。う~む、逞しい。しかし、少年は僅かに開いたウインドウの隙間から体をねじ込ませ、ババアのおっぱいを掴みながら車内に無理矢理侵入!これにはさすがのババアも絶叫。定助は『ソフト&ウェット』の「しゃぼん玉」で、車内にあった缶コーヒーを少年にぶっかけ、ひるんだ隙にババアを救出しました。これがドロミテのスタンド能力ッ!まるで「屍生人(ゾンビ)」のようです。


●車外に出て来た少年。定助の姿を見失ってしまいました。すると、少年はその場に倒れ込んでしまったのです。道路のド真ん中で人が血だらけでブッ倒れているのだから、周囲は大騒ぎ。人々がどんどんやって来て、少年を介抱し始めました。
そんな様子を遠くから窺う定助。さっき少年から受け取った手紙も、「しゃぼん玉」の破裂で封を破き、中に入っていた物が「歯」である事を確認。この一連の謎の現象について、思案を重ねます。「歯」が石のようにも見えたのか、この敵が「岩人間」であるとまず仮定。ダモカンの仲間とは考えにくいし、子どもを利用するようなヤツは直ちに叩きのめしてやると誓いつつ……、この敵の目的を読み取ろうとします。
「ロカカカ改」の枝が欲しいだけなら、定助が見付けた後に狙えば良い。それとも、ダモカン達を始末した事への報復なのか?――この時、定助は閃きました。ポケットから取り出したのは、憲助さんから受け取ったケータイ。このケータイには、「植物鑑定人」の情報が入っている。恐らく、これが目的!ただ、このケータイの事を知っているのは、定助と憲助さんの2人だけのはず。一体、誰がどうやって知ったのか?花都さんの観察眼の鋭さを知らぬ定助にとって、全てが想定外です。


●とある建物の影に隠れていた定助に接近する物音。驚いて壁を見上げると、なんとさっきのババアが壁をよじ登って来ていたのです!少年と同じように、血まみれになって、奇声を発して。つまり、ドロミテのスタンド能力は「感染」するという事!
この能力は、ドロミテが触れた者に掛けられるのでしょう。それは、ドロミテの肉体の一部(歯や髪など)に触れても、その肉体の一部を包んだ物(手紙や袋など)に触れても、同様の効果を発揮。そして、「同じ物」に最初に触れた者が、次に触れた者を「ターゲット」として認識。ドロミテの命令を遂行する「追跡者」として、「ターゲット」をどこまでも追って来る。この時、「追跡者」の自我や知性は消え失せ、ロボットのように無感情に、「屍生人」のように凶暴に、ひたすら目的を達しようと行動し続ける。「追跡者」に触れた者にも能力は感染し、新たな「追跡者」となる。「追跡者」はどんどん増え続け、「ターゲット」は逃げ場を失う事となる。――こんな能力、なのかな?
だとしたら、恐らく次回はババアのみならず、少年を介抱した人々も定助のケータイを狙って来る事になるはずです。下手したら、もっと能力は広がって、町中に襲われるかも?実にホラーな能力だし、常敏の「オレひとりの力だけでは無理みたいなんでね…」というセリフにも納得。1人じゃ無理でも、何人・何十人・何百人なら無理じゃない。自分の手足が無いドロミテが、手足として動かせる「手下」「手先」を増やす能力って事。


★今月は45ページ!スタンドの恐怖描写はもちろんの事、ドロミテのキャラクター性も深まってきましたね。
気になってしまうのが、ドロミテのかつての恋人。彼女は何者なんだろう?別に何者でもなく、もう二度と描かれる事もないのかもしれません。ただ、あえて深読みし、色々と想像してみても面白そう。ドロミテが彼女に語った夢……、ある意味、1901年に杜王町に漂着した幼児とイメージが重なりません?そう考えると、あの幼児と彼女がどこか似てるようにも思えてくる。さすがに同一人物とするには無理があっても、あの幼児の母親が彼女だった……ってのは、意外とあり得たりして?彼女がおかしくなってたのも、息子と離れ離れになってしまった遭難事故か何かのせいとか?だとしたら、ドロミテが杜王町にいるのも偶然ではないのかもね。
作者コメントは「近所のオヤジで、くしゃみをする時の発音が「にゃんこちゃん」と聞こえる人がいる。つっこめない。」との事。随分とキュートなくしゃみですね(笑)。




(2016年12月17日)




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