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ホリーさん! 豆銑さん!
枝は誰にも渡さない…!
逃がさない… くらえ!


#075 プアー・トムとオゾン・ベイビー その④





●今回のトビラ絵は、地球らしきデカい球体にもたれ掛かる定助と『ソフト&ウェット』。最高にカッコ良く美しい絵です。これ、カラーで観てみたいなあ。電子書籍のカラー版はいずれ刊行されるにしても、やっぱ荒木先生のカラーでもね。
しかし、地球がこうして描かれるという事は……、アオリにも書いている通り、定助達と「岩人間」の「ロカカカ」を巡る争いは世界そのものを変えるかもしれない戦いって事でもあるのでしょう。「枝」が誰の手に渡るか。それは今後の世界の行く末さえ決定づけてしまう、重大な分かれ目と言えるはずです。


●冒頭は、礼さんの過去が語られました。彼の両親は果樹園を経営していたらしく、その栽培方法も独特なものであったようです。育てた梨も高い評価を得て、8,000万円も売り上げたとの事。ところが、同業者達に栽培方法がバレ、しかもそいつらはヤバいスジの連中と繋がっており、なんと果樹園が襲撃されてしまいます。追い詰められた豆銑家は、とうとう果樹園を手放すほか無くなったのでした。いつの世も、他人を妬んで足を引っ張る事しかしないロクデナシがいるものです。
もともと気難しい性分で人間嫌いだった礼さん。両親の失敗を許せず、運命を呪い、果樹栽培には適さない高度1,200mのスキー場に1人で住み始めたらしい。……で、彼が17歳の時、高原で栽培したイチゴが初めて売れました。買い手は、「東方フルーツパーラー」。それ以降、彼は憲助さんのためだけに、果樹の栽培と研究に専念するようになった模様。礼さんにとって憲助さんは、初めて自分の価値を認めてくれた存在なのでしょう。「呪い」に囚われていた彼に「救い」を齎してくれたのが憲助さんだったのでしょう。
なるほど、礼さんという人物の深い部分が垣間見えた気がしますね。そんな大切な人の頼みなら聞こうとするだろうし、命すら懸けても不思議じゃありません。


●炎上する東方家果樹園。東方邸内では、鳩ねーちゃんと大弥ちゃんのみならず、やはり憲助さんも常秀も虹村さんも「加圧」によって倒れています。そんな中、定助・礼さん VS プアー・トムの戦況を伺う常敏・つるぎちゃん父子。正に三つ巴の戦い
礼さんは自身の腕を解いたワイヤーで、プアー・トムを縛り上げます。ついさっきまで、日当たりの良い部屋でオンナとぬくぬく過ごしていたプアー・トムですが、果樹園に火をつけられたからには話は別。リスクは覚悟の上でここまで来たし、絶対に「枝」を手に入れようと執念を燃やしまくります。すると突如として、礼さんの顔面が腹部が、えぐれるようにめりこんで変形ッ!
……常敏が土に埋めたミニチュアハウスはプアー・トム自身が掘り起こしており、そのため、『オゾン・ベイビー』の能力もフルパワーになったようです。埋めている状態だと、効果は弱いけど自動操縦が可能。埋めていない状態ならば、直接操作しなければいけないけど効果は最大になる。能力射程は半径100mで変わりない。要するにこんな感じみたい。今、プアー・トムと礼さんはワイヤーによって触れ合っています。つまり、礼さんの「加圧」は急激に進行ッ!顔や腹だけじゃなく、全身くまなくガンガンに圧され潰されていきます!もはや21気圧なんて生易しいレベルじゃなさそう。
冒頭の過去エピソードも相まって、めっちゃ不吉な展開になってきました。ガチで礼さんが殺されかねないよー。


●ワイヤーでギッチギチに締め上げられているプアー・トムも、まだ頚椎は折られていない。このままでは、礼さんの体の方が先に潰されてしまう。
そんな大ピンチに動いたのは定助!複数の「しゃぼん玉」に何かを封じ込め、プアー・トムに発射!それは、イチイの果実でした。東方家果樹園には神事にも用いられるイチイの樹木が植えられており、その種子には猛毒がある事を、つい先刻、礼さんに教えてもらっていた様子。もし「ロカカカ」の枝をイチイの樹木に「接ぎ木」していたら、毒で食べられなくなっていたかもしれないワケです。礼さんは「幸運」と評していますけど、農学部だった仗世文なら、ちゃんと分かってイチイを避けたんじゃないかなとも思いますね。
「しゃぼん玉」が割れると、急激な「減圧」によって種子も砕け割れ、毒汁が染み出します。それをすかさず礼さんがワイヤーでキャッチし、そのままプアー・トムの口に配達!強引に飲み込ませたのでした。礼さん曰く、「イチイは猛毒1位」(ダジャレかよ)。「セイヨウイチイ」の種はアガサ・クリスティーの毒殺トリックにも使われた程。その毒が体内に入ると、消化器官から吸収されて心臓に送られます。そして、血圧は測定不能になり、激しいケイレンを引き起こし、内臓組織はズタズタになるとの事。そんな大型の家畜も死ぬ毒を、プアー・トムに飲ませてやったのです!
人間とは異なる肉体を持つ「岩人間」にどこまで効くのかは知りませんが、タダで済むはずも無し。ここにマンゴーもあったら、アレルギーを起こしてやる事も出来たんですけどね(笑)。


●プアー・トムはおもむろにナイフを取り出すものの、礼さんにあっさり弾き飛ばされます。こうなっては、礼さんが「加圧」で潰れるのが早いか、プアー・トムの心臓に「毒」が回るのが早いか。そんなギリギリのせめぎ合いになりそう。
……と思いきや、プアー・トムの狙いは別にあったのです!ナイフでワイヤーを切ろうとしたのではありませんでした。必要なのは鞘(さや)の方。鞘でワイヤーを挟む事で、『オゾン・ベイビー』の「結界」を新たに作り出したのです。つまり、「結界」2つ分のダブル「加圧」が礼さんを襲う事にッ!とうとう礼さんの肉体は限界を迎え、ワイヤーも力を失い、全身が崩れるように解けていくのでした。その様子を盗み見ていた常敏も、礼さんの敗北を悟ります。しまいには「しゃぼん玉」まで割れ、地獄の如き「気圧差」にも晒されてしまいました。無惨な姿で果てる礼さん。
「枝」を手にしたのは、プアー・トム!定助が後を追いますが、プアー・トムに近付く程に「加圧」は強くなるせいで、息も絶え絶え。そこに消防車救急車のサイレンが聞こえてきます。これでイチイの毒も解毒してもらえる、とプアー・トムは安堵。とは言え、まだ『オゾン・ベイビー』は絶賛発動中。車のドアや窓を閉じて半径100m以内に入ってしまえば、救急車の車内にも「加圧」は襲うのです。これは大変よろしくない。
しかも、プアー・トムは気になるセリフも吐いていました。「あいつら仲間だからなあ……」と。ん……?仲間……?どーゆー事?もしかして、「医者」として人間社会に紛れ込んでいる「岩人間」の仲間達の事を指しているんでしょうか?まぁ、実際、「岩人間」が普通に人間の病院で診てもらったら、ちょっと騒ぎになるかもしれないしね。うまくごまかして「岩人間」の存在を秘匿できるような、「岩人間」サイドの医者が何人も必要だろうし。そんな仲間が今、東方家に近付いているのか。うっかり「加圧」しちゃったら、そりゃマズいっスよね。ひょっとすると、ラスボス的存在が満を持して登場する可能性もありますが、「新ロカカカ」収穫まで2日以上も残っているのです。ここはまだ時期尚早かな?


●ついに毒が回って来ちゃったらしく、プアー・トムの体調悪化。自分の腕が何本にも見えるわ、吐き気もするわで、気分最悪です。その上、「枝」をゲットして逃げ切ってさえしまえばスタンドも解除してやるっつーのに、定助がしつこく追って来る始末。
しかし、能力が消え去り、「気圧」が戻るまでおとなしく休んでいるなど、定助に出来るワケがありません。「枝」を手に入れる事は、今の定助の生きる意味にも等しい。むざむざチャンスを見逃し、敗北したままただ生き永らえる事に意味は無いのです。「枝」は誰にも渡さない。そんな確固たる決意を秘めた「しゃぼん玉」が放たれるッ!それは、「しゃぼん玉」を「しゃぼん玉」で幾重にもくるんだミルフィーユ状の「しゃぼん玉」。中には何かが入っています。
プアー・トムが避けても、外側の「しゃぼん玉」が割れ、そこから空気が放出されて軌道修正。まるで『キラークイーン』&『ストレイ・キャット』の「空気爆弾」のよう。前方からは消防車と救急車が迫り、後方からは「しゃぼん玉」が迫る!プアー・トム、絶体絶命の極限状態であります。


●……にしても、「しゃぼん玉」の中には何が入ってるんでしょうか?私は「つるぎちゃんの折り紙」、と予想しときます。しかも、灯油がたっぷり染み込んで、『スピード・キング』の「熱」を宿している「折り紙」。これは恐らく、常敏からの助け舟。最後の力を振り絞っての行動。常敏としても、自分を騙した「岩人間」なんかには絶対「枝」は渡せないでしょうから。
あの「しゃぼん玉」は、プアー・トムに近付けば「加圧」されて割れ、空気が漏れて、スピードを増しつつ軌道が変わります。それでも、ちゃんとプアー・トムに再び近付く軌道になるのは、中の「折り紙」がプアー・トムを追跡しようと働いているからなのです。つるぎちゃんが何とかスタンドを保ってくれてるおかげで、「自動追尾弾」的な効果を発揮できているのです。ただ、この攻撃だけでは不完全。さっさと『オゾン・ベイビー』を解除すれば、プアー・トムは逃げ切る事が出来ちゃうので。
そもそもプアー・トムは、解毒してもらうために、早く能力を解除したいと思っています。それならば、定助がさらにやるべき事は「能力を解除したらヤバい」一手。そうする事で、能力を解除しようがしまいが関係ない「詰み」に追い込めるワケです。そのために定助は、「しゃぼん玉」の強度をあらかじめ調整。能力が解除された時、その「気圧」の変化によって自動的に全部割れるように作ったのです。「しゃぼん玉」が全部割れたら、「折り紙」がプアー・トムに落ち、常敏が点火!一気に燃え上がります。そうなると当然、消防車や救急車に助けを求めるでしょうけど、そこは『ペーパー・ムーン』発動。やって来る消防車や救急車が「しゃぼん玉」に見えるようにしちゃうんです。全身焼け爛れながら、せっかく救助に来た者達からも逃げ、自滅する事になるでしょう。
プアー・トムはもはや、「毒」で死ぬか「火」で死ぬか、自分の死に方を選択する事しか出来ないってワケ。この土壇場の瀬戸際で、定助&常敏&つるぎちゃんのコンビネーション・アタックが見事に炸裂するのです!


★今月は45ページ!今月もめちゃめちゃ面白かったです。礼さんのキャラがますます立ってきたので、何とか無事でいてほしい。スタンドも解除されてなさげですし、信じたいところ。全身をワイヤー状にして「気圧」の影響を最小限にし、服だけ残して辛うじて地中に逃れた……とかさ。こんな気になるところで、来月は休載ですよ……。さすがにコミックス2巻発売までは「岸辺露伴は動かない」の新作は無いでしょうし、原画展に向けての絵を描いたりするのかな?あるいは、完全新作読み切りでも執筆するんでしょうか?「ジョジョリオン」の展開も、荒木先生の動向も、気になりまくりです。
作者コメントは「ホタルイカのパスタはニンニクを刻むのでなくすって入れたらうまかったー!!」との事。荒木先生の手作りパスタ、一度だけでも口にしてみたい。
あと、「岸辺露伴は動かない」短編小説集が、マジで新作収録で発売される事になりました。「岸辺露伴は叫ばない」「岸辺露伴は戯れない」にタイトルを変えて。う~む、タイトルまで変えなくてもいいのに。せっかく「動かない」シリーズの論法で書かれた作品達なんだから。タイトルが違うんなら、きっと露伴の行動だって変わっていただろうしね。出来れば、主題は「動かない」にして、変えたタイトルは副題って事にしてほしいな。とにかく、発売を楽しみにしてます。




(2018年4月19日)




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