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あたし… 見たわ
あの子が門を動かしたッ!


#083 収穫へのカウントダウン





●今回のトビラ絵は、いくつものスタンドの手に掴まれ引っ張られる定助。『ソフト&ウェット』だけでなく、『ペイズリー・パーク』に『ナット・キング・コール』、さらには『ドギー・スタイル』にまで捕えられています。「新ロカカカ」の枝を巡る争奪戦さながらに、定助の中に眠る「何か」を奪い合う展開になったりするのかもしれませんね。


●羽先生を撃破し、ようやっと病院を脱出できた定助一行。ここでTG大学病院についての解説が入ります。1911年設立で、2009年に新しい建物になったそう。「ジョニィの死」と「幼児の漂着」が1901年の出来事なので、それから僅か10年後に出来た病院なんですね。さらに2009年と言えば、常敏が「岩人間」と手を結んで「ロカカカ」を密輸し始めた時期にも重なります。しかも、東方邸の新改築の時期とも。このTG大病院、そもそもの成り立ちからして、東方家や「岩人間」との因縁が強いんじゃないかって気がしてきます。今の建物を設計したのも夜露なのかな?
とにかくバカデカい病院である事は間違いなく、スタッフも設備も超充実している模様。……そんな事を、黄金色のランボルギーニの中で確認し合う3人。密葉さんは1人で帰宅。久々に出て来たランボルギーニですが、ちゃんと定助の所有になってて、運転は礼さんが担当しているみたいです(笑)。
産科診察室の奥に隠されたラボ、あの部屋を開錠した履歴は4名の医師だけ。整形外科・脳神経外科専門の羽伴毅、内科・消化器内科疾患専門の下里良、産科・不妊治療専門のプアー・トム、そして、89歳になるこの病院の医院長。見慣れぬ下里 良(しもさと りょう)という名前は、ゲ・リ・ラと読み換える事が出来ます。つまり、コイツはアーバン・ゲリラ。顔も見たまんまです。プアー・トムまで医者だったのにはビックリしました。名前を隠す気すら無ぇ。


医院長の存在は謎だらけで、『ペイズリー・パーク』でも顔写真さえ発見できていません。どうせ「岩人間」なのだから、89歳という年齢にも名前にも意味などありません。火事の時に救急車に乗っていたもう1人がこの医院長であるなら、きっとコイツが枝を持っているはず。医院長の顔写真を見付け出す事が先決。礼さんは、そう結論付けました。何と言うか……、立ち位置的には「パッショーネ」にとってのボスみたいなもんですね。一般人からすれば、正体不明すぎる人物。個人的には、「記憶の男」こそが医院長と予想しておきますぜ!
しかし康穂は、やっぱり礼さんの意見に異を唱えます。枝は東方邸にある、と。そんな彼女に、「出過ぎたマネはするな」と釘を刺す礼さん。さっきも康穂が、自分達の忠告を無視して密葉さんに深く関わってしまったため、状況が更にややこしくなってしまった。結局、定助達の手を煩わせる結果にもなったワケで、礼さんの康穂に対する評価はガタ落ちです。その上、ここまで来ると、康穂が語っていた「髪留め」の話も真実かどうか疑わしく思えてきた様子。親子間のストレスゆえの妄想だったのでは、って事ですね。ひどい話ですけど、康穂も康穂でれっきとした物的証拠を示せないなら、この疑いはなかなか晴れそうもありません。
余計な事をして惑わすな、と散々な言われようの康穂。定助も心情的には彼女の味方でしょうけど、意見としてはやはり礼さんに賛同。火事の時、なまじっか目の前に枝があったばっかりに、それこそが真実と信じ込んでしまっています。自分がこの目で見た出来事と、その場にいなかった者の推測とでは、そりゃあ前者を信じちゃいますよね。それでも、仮に常敏が犯人だったとしても、「岩人間」と繋がっているんなら、医院長を追えば常敏にもきっと辿り着くと、康穂をフォローする定助でした。つーか、ここまで完璧に騙し通せる『ペーパー・ムーン』って、つくづくヤバいスタンドですよ。


●自分を信じてもらえず、深く傷付いた康穂。そこへちょうど現れたのは透龍くんでした。タイミングのいいヤツ。彼は病院のバイトというだけでなく、医学生でもあるようです。定助との関係を改めて訊ねられ、康穂は寂しそうに「今はそういう話はしたくないの」と答えます。ところが、彼女の手は自然と透龍くんの手に重ねられていました。付き合ってた頃のクセだったんでしょう。彼が手を差し出すと、康穂はその手の上に黙って自分の手を置く。指まで絡んできています。自分の行動に気付いた康穂は慌てて手を離すものの、顔は真っ赤に染まっていました。
そんな透龍くんが去って行く姿を見掛け、定助も内心穏やかではない。唐突な元カレの登場に、明らかに不機嫌そうな顔です(笑)。「つまりィ~~~ やった仲かなぁ…?」と、定助を煽る礼さん。定助も眉間にシワを寄せ、すっかりジェラシー・フェイスになっちゃってますよ。透龍くんのおかげで康穂達を助けられたのだから、礼さん的にも特に怪しいとは思っていないようですが、急に現れたからには一応調べておくつもりみたい。
いや~、透龍くんグッジョブです。「ジョジョリオン」では、こーゆー展開を待ってました。定助と康穂の恋の障壁を。今までのまんまじゃ、一向に進展しなさそうでしたからね。お互いの感情を揺り動かし、乱しまくる、スパイス的な人物が現れた事は大きい。医学生の透龍くんこそが実は医院長、って展開でもいいんですけど、多分そうはならない気がしてます。彼は医院長でも「岩人間」でもスタンド使いですらもない、本当にただの一般人。「恋愛」という側面から新しい波を起こしてくれれば、それで彼の役割は十分なのです。


●さて、ここで場面は転換し、東方家へ。ソファーに寝そべって音楽聞きながら、ファッション雑誌を眺める鳩ねーちゃん。彼女が表紙を飾った、例の「TOP M」とかいう雑誌ですね。裏表紙も「SBR」という文字と一緒に彼女が写ってます。完全に鳩ねーちゃんの号!って感じ。同じ雑誌を何十冊も買ってて、未だに暇さえあれば見てるのかもしれませんな(笑)。自分大好きな能天気っぷりが伝わってきて、なんかジワジワ来る。
しかし、そんな彼女の耳に何者かの舌が迫る!その舌はネットリと耳を舐め上げ、鳩ねーちゃんも絶叫。迷わず常秀を犯人扱いしてますが、当の本人はのんきにお茶を飲んでスットボケてます。「あんたそのうち絶対にやらかして訴えられて逮捕されて借金かかえて落ちぶれるわッ!」と、実の弟に向かって言いたい放題(笑)。康穂を舐め回した前科があるし、鳩ねーちゃんの耳を舐めたのもつるぎちゃんかなと思ってたら、犯人はガチで常秀でした。『ナット・キング・コール』で切り離した舌で、舐めるイタズラをしてたんです。つるぎちゃんに舌をうっかり踏み付けられ、苦悶に喘ぐ常秀。何やってんだ、コイツ……。『ナット・キング・コール』もロクな使われ方しなくて不憫です。
どんなにシビアな状況になっても、東方家はいつもの東方家で安心しますね。大弥ちゃんもキュートで癒やされるぜ!


●台湾の阿里山の茶葉を淹れたからと、大弥ちゃんに憲助さんを呼んで来るように頼まれたつるぎちゃん。2階の書斎に向かいます。
そこで静かにモノローグで語られるのは、「スタンド能力」というものの存在について。―― スタンド能力とは、それぞれの心の形であり、心の在り方。コントロールする心の力。普段は心の奥に仕舞い、決して表面には現さず、話題にものぼらないもの。それは、たとえ一緒に暮らす家族の中であろうと、大好きな人の前であろうと。しかし、時に心は変化したりする。時には疲労を、時には老いを感じ……、あるいは間違った場所に足を踏み入れてしまった時には、しっかりと奥に仕舞い込んでいたはずのものが吹きこぼれてくる。その時は、自分で止めようと必死になっても、決して止める事は出来ない。コントロールも出来ない。行き着いて止まる所まで……。
何と言うか……、非常に意味深で不吉なモノローグです。この直後に語られるエピソードから考えても、つるぎちゃんのスタンド『ペーパー・ムーン』が暴走しちゃったように読み取れますね。今までずっと押し殺してきた不安やストレスが、あるキッカケで爆発し、それがスタンドと共に暴走!自分自身でももはやコントロール不能。ただでさえつるぎちゃんは「石化病」に怯えて生きてきたワケですし、誰にも内緒で父:常敏に加担し、「新ロカカカ」の実をゲットできるかどうかのギリギリの瀬戸際でもあるので、かなりデリケートになっている事でしょう。それだけにつるぎちゃんが抱える心の闇も深そう。


●書斎に着くと、つるぎちゃんは全身を震わせていました。部屋の床には、何やら黒い物体が置かれています。よく見れば、それは人間!それも、この部屋の主でもある憲助さん!憲助さんが血塗れになって倒れ、その体が黒いシーツか袋で包まれていたのです。そんな祖父の足を抱きかかえ、ズルズルとベランダの方へ引っ張るつるぎちゃん。何故、こんな事に?憲助さんは死んでしまったのか?憲助さんを埋めて隠そうとしているのか?つるぎちゃんは何を考えている?彼の胸中は闇に覆い隠され、読み解く事は出来ません。憲助さんの体から『ペーパー・ムーン』の折りガエルが出て来て、ピョンと跳ねました。この時点でなんと、「新ロカカカ」収穫まで あと0日 ― と0時間13分 ―
そこから時は遡り、7日前。「新ロカカカ」収穫まで、あと7日 ― と1時間02分 ―。ボーイスカウト的な親子の集まりを車から見つめる視線。グラサンを外したその顔は、密葉さんでした。鼻を失ったその顔にみんなギョッとしていますが、本人は至ってゴキゲン。野外活動から帰って来たつるぎちゃんと合流し、何気なくも微笑ましい会話をしています。色々と吹っ切れて、それなりに良き母親になった感じですね。
ところが、子ども達のリーダーを務める女性の先生が、つるぎちゃんの身に起きたトラブルについて話してきました。野外活動中、ミナちゃんという女の子と取り巻き2人が、つるぎちゃんにカラんで来たのです。おばあちゃんから聞いた「子供の死体の埋め方」を私達にも教えてと、からかってきたのです。つるぎちゃんは無言で睨み付けますが、その程度で彼女達は止まりません。その時、ミナちゃんの足元に大きなカエルが近付き、それにビックリした彼女が川に落ちて濡れちゃいました。トラブルとは、ただのそれだけ。でも恐らく、あのカエルは『ペーパー・ムーン』の能力で誤認させたんだろうな、とは思いますね。ちょっとした仕返しに。


●リーダーの話を聞き、密葉さんは不快感を露わにします。つるぎは何もしていない。20数年前の殺人事件も、東方家とは無関係。つるぎに祖母はいない。今後、その話題をして来たら絶対に許さない。……と。大人達は気を遣って、表面的には普通に接するところを、子どもはやはり正直で残酷ですね。こんなんじゃあ、つるぎちゃんの心も休まる時が無いな。ある意味、これもまた、見知らぬ先祖の因縁で子孫が襲われる恐ろしさと言えるでしょう。先祖の罪まで子孫は受け継ぐのか?
家に帰ろうとする密葉さんとつるぎちゃん。しかし、ここで事件が発生です。なんとミナちゃんが校門に挟まれ、意識不明の大怪我をしてしまったのです。しかし、重い鉄門が勝手に閉じるはずはない。誰かが鉄門を押してミナちゃんを挟んだのです。そして、ミナちゃんの取り巻きの子が、つるぎちゃんが門を動かしたという目撃情報を語ったのです。それを聞き、「何言ってるの?」「おまえ…!」と、焦りと怒りの言葉を吐き出す密葉さん。「新ロカカカ」収穫まで、あと7日 ― と0時間44分 ―
つるぎちゃんが、父や祖母とまったく同じ道を辿り始めているのがヤバイですね。まるっきり過去の再現ですよ。東方家はボーイスカウトにも呪われてんのか?門を押したのが、本当につるぎちゃんなのかも謎ですね。実は取り巻きの子が犯人で、つるぎちゃんに罪を擦り付けようとしているのかもしれません。真実がどちらであれ、つるぎちゃんは、東方家は、これで孤立せざるを得ない。「新ロカカカ」だけじゃなく花都さんの事件もあるから、憲助さんはつるぎちゃんを問い詰めたんでしょう。そこでとうとうストレスMAXになってプッツンし、リミッターが外れて『ペーパー・ムーン』が暴走。こうして衝動的に、憲助さんを死亡 or 大怪我させるという結末を迎えてしまったのかな。闇も業も深い一族だよなぁ。


★今月は45ページ!うん、ショッキングな内容でめっちゃ面白かったです。このしっとりじっとりとした空気感、まさしく「ジョジョリオン」。大胆な絵画表現と、繊細な心理表現。少しずつ少しずつ、でも確実に、謎の中心に迫っている物語構成。今回の話を楽しく読めない人は、根本的に「ジョジョリオン」とは合わないタイプだと断言してもいいぐらい。もう先が気になってしょうがないってのに、来月号は休載でした!しかし、この休載にもきっと意味があるんでしょうし、また予想や考察でもしながら2ヶ月待ちましょう。
なんとなくですが、つるぎちゃんと康穂が手を組むって展開もあり得そう。つるぎちゃんがもし濡れ衣を着せられたのだとしたら、「信じてもらえなかった」という点で康穂と同じ。そんな心の穴を埋め合うように2人が一緒になり、康穂は初めて定助の敵に回るワケです。「新ロカカカ」争奪戦は、各々の目的・手段・思惑・立場・心情がグチャグチャに絡み合った、かつてなく複雑な関係性に発展していくかもしれません。
作者コメントは「左手の薬指を蜂に刺される初夢を見た。これは幸運なのかやばいのか。」との事。軽く調べてみたところ、蜂に刺される夢ってのは何らかの転機や警告を暗示しているらしいです。たかが夢とは言えど、ちょっぴり心配ではあるので、十分にお気を付けください。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 2月号(2019年)
314ページ


今月は透龍くんに心揺れる康穂のこの表情です。恋する乙女チックな、い~~い顔してますよ。自分の行動や感情に戸惑いを隠せない目線。紅潮した頬と、切なげな吐息。覚悟を決めた戦士の顔とは正反対の、19歳の普通の女の子の顔。すんごい可愛いです。定助、透龍くん、常秀……、彼女の心は果たしてどちらに向かう!?




(2019年1月19日)




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