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このスタンドは この能力は…!!


今まで… 軽く考えていた


#089 危険な追跡 その①





●今回のトビラ絵は、画面いっぱいの明負院長の後ろ姿。そして、その周りに漂う「しゃぼん玉」と、同じように浮かぶ主要人物達の視線が描かれた丸コマ。定助・康穂・礼さん・憲助さん・常敏・密葉さん・つるぎちゃんの7人です。「新ロカカカ」争奪戦に深く関わる人物達。今の状況を象徴する絵になってて、これはかなりカッコイイ。主人公の定助が一番のほほんとした顔してて、康穂が一番キリッとした表情なのも面白い(笑)。


●町中を走る複数のパトカー。いきなり物々しい雰囲気です。一方、東方家はのんびり優雅なムード。美味しそうなパンやパンケーキ、デザートなどがテーブルに並び、常秀・鳩ねーちゃん・大弥ちゃんがランチタイム。テーブルを囲って、3人ともメシ食いながらスマホ見てるだけなのが何とも現代的ですね(笑)。「ロレンチーニャ」にやられちゃいないかと心配になっちまいますが、常秀の見つめる天気予報では本日の天気 - 雨
憲助さんは、新聞「杜王新報」でニュースをチェック中。すると、そこに驚愕の記事が載っていました!なんと、定助らしき人物が、TG大学病院の駐車場での傷害致死事件の容疑者になっていたのです!防犯カメラの映像として、定助と礼さんの姿が思いっきり写ってるー!慌てる憲助さん、子ども達に定助の居場所を訊ねます。無論、知ってるワケもないでしょうけどね。
……そしてその傍ら、TV画面にはマコリンと桜二郎の怪死事件が放送中。それによると、マコリンの本名は「喜谷 真亜子」というらしい。「きたに まあこ」って読むのかな?なるほど、マコリンですね。彼女は44歳にして、資産200億円の大富豪。「晴天バーディーズ」オーナーであり、晴天ホールディングスのCEOでした。そんだけカネ持ってりゃ東方家の土地なんていらんだろうに、やっぱ欲は身を滅ぼすって事か。桜二郎はニュースでも「自称サーファー」扱いなのが笑えました。ただ、年齢が22歳に戻ってるので、コミックスでは23歳に修正しといてほしいですな。


●場面は変わり、ランボルギーニで逃亡生活中の定助&礼さん。康穂と別れた後、2人一緒に身を潜めていた模様。大怪我を負った礼さんの両脚もだいぶ治ってきています。「帯状」に解体した肉体……、ちぎれた部分はボンドやガムテープで補強!え、そんな工作レベルの処置でいいの?クワガタの時も、もげた脚をボンドでくっ付けてましたけど、生物の肉体を物みたいに大雑把に扱ってるよなぁ。こういう描写に加え、無関心な住人達や「岩人間」という存在など、血の通わない「無機質さ」が強調されているのが「ジョジョリオン」の特徴とも言えるかも。その異様さ、不気味さ、トコトン違和感や不安を煽ってきますね。
まぁ、それはさておき、食料や必要な物資は礼さんが1人で買い出しに行っている様子。容疑者の定助はひたすら車内に隠れているんでしょう。トイレは「しゃぼん玉」にしちゃえば済みそうだしな。……スマホやタブレットは完全に電源を切り、警察からの追跡を絶っていました。こちらからは一切連絡せず、康穂に自分達を見付けさせる作戦。何かと不自由な逃亡生活ですが、心なしか、定助と礼さんが前よりも仲良くなってる印象も受けます。定助が敬語を使わなくなってるから。


●その時、礼さんがふと視線を下ろすと、そこには街路樹の剪定作業員の姿。なんと、ランボルギーニは今、道路脇に植栽された街路樹の上に乗っかっている状態だったのです!大量の「しゃぼん玉」で浮かばせ、礼さんの「ワイヤー」で滑車でも使って引っ張り上げた……とか?何にせよ、これはスゴい絵ですね~。まさに「ジョジョ」って感じの、日常の中の非日常が溢れんばかり。金色で目立っちゃいそうですが、こんな大胆不敵で常識外の隠れ家、意外と盲点なのかも。
このまま剪定されたら、ランボルギーニも丸見えだし、通報もされてしまいかねません。ところが、この剪定作業員のおっちゃんと礼さんは親しい関係らしい。気軽に声を掛け、この樹の剪定を後回しにしてもらえるよう頼むと、おっちゃんもあっさり承諾。この異様な状況にも、特に驚きもせず。さらに、礼さんはおっちゃんに桃もお裾分け。いつも奥さんに渡してるようです。おっちゃんは喜んで去って行きました。これでこの場所はひとまず安全。
礼さんの新たな一面を見たって気分ですが、自分が仕事をしやすくするために必要な人達とは仲良く付き合ってるのかも。それに彼は、ただの人間嫌いではなく、自分が認めた相手にはちゃんと敬意を払います。あのおっちゃんも実は、剪定作業員として尊敬できるプロフェッショナルな人物なのかもしれません。そういう人とギブ・アンド・テイクでWin-Winの関係を築いて味方を作るのも、礼さんが優れた職人である由縁か。人間関係のトラブルで果樹園を失った両親を見てるだけに、その辺は特に細やかに気を使ってそう。


●さて、本題。明負院長の話です。院長のスタンド能力は、「追跡」すると攻撃がぶつかって来る能力。追跡しなくては「新ロカカカ」を見失う。しかし、追跡すれば攻撃される。この厄介極まるジレンマ、『チャリオッツ・レクイエム』や「緑色の赤ちゃん」にも似た難題と言えるでしょう。
さっきコンビニで買った新聞に、礼さんの気になる記事が載っていました。明日の10時、TG大学病院記念堂にて院長の講演会が催されるという記事。「追跡」ではなく「待ち伏せ」なら、院長の正体が掴めるかもしれない。なりすましの情報なんかじゃない、実物の顔が見られるかもしれない。閉塞した今の状況を打ち破れる、1つの光明が見えました。ちなみに、講演のテーマは「再生医療について」。具体的な事は伏せつつも、「ロカカカ」による「等価交換」の医療応用について語るんでしょうか?世界中から「岩人間」の精鋭達が集結してきたりして?この講演会自体が、「追跡者」をおびき寄せるための罠にもなってそうですし、不穏だなぁ。
……新聞にも桜二郎達の事件記事が載っており、定助はそれを発見。まさか「新ロカカカ」を巡って常敏と一戦交えていたなど知る由もなく、軽く流されちゃいましたが。こんな具合に、いつの間にか定助は、今や杜王町に起こる事件の中心人物になっております(笑)。


●「新ロカカカ」の果実収穫までのタイムリミットを確認すると、礼さん曰く「48時間」だそう。あと残り2日にまで時は迫りました。
……ん、あれっ?新聞記事によれば、明日の日付けが21日(たぶん10月)。定助達のTG大学病院での傷害致死事件が起きたのが19日。つまり、今日は20日という事。いやいや、こいつは明らかにおかしい。傷害致死事件は、収穫まであと6日の時点だったのだから、4日前じゃなければいけないはず。しかも、収穫まであと3日の時点で起きた桜二郎の死の翌日ですよ。なので、仮に19日を起点とするなら、本当は今日は23日でなきゃダメなんです。2011年10月23日はちょうど日曜日だから、昼間に常秀達が家で集合しててもおかしくありませんしね。これも桜二郎の年齢と一緒に、コミックスでの修正を切に望みます。新聞の「明日21日」って箇所を「明日24日」に直すだけでOKなんで!
ストーリー展開は荒木先生の思うままで良いとしても、こういう細かい時系列は編集なりアシなりがキッチリ管理しておいてほしいところ。こんなたかが一ファンごときにツッコまれないようにお願いします。


●果実収穫が近付いて来て、いよいよのんきこいてる場合じゃない。今日のうちに記念堂に忍び込んで「待ち伏せ」するつもりなのか、定助はもう出発する気満々です。
しかし、そんな定助の背後には、なんとあの院長のスタンドがッ!振り向きざまにオラオララッシュを繰り出すものの、振り向いた時には姿が消えていました。樹上から降り、臨戦態勢に入る定助達。近くに院長がいるのか?まだ「追跡」などしていないはずなのに?いろんな疑問が湧きますが、これはそんな甘っちょろいスタンド能力ではなかったのです。2人は講演会に行くと決めて、車を出ようとした。これだけでスタンドのスイッチが入ってしまうのです。「院長の正体を掴もう」という意志を持って動いた時点で「追跡」と見なされ、もうアウト。めっちゃ判定の厳しい、「追跡者」抹殺のための能力ッ!
またどこかから何かが「激突」してくる。周囲を警戒して逃げる2人。そこにちょうどパトカーが現れ、2人を呼び止めます。今度はパトカーがぶつかって来るのか……と思いきや、天気予報通り、雨が降ってきました。その雨粒が「激突」し、礼さんの手を貫く!同じように定助も負傷!恐るべき雨粒の散弾!無数の「しゃぼん玉」で壁を作ってガードするも、とても防ぎ切れません。これは「ロレンチーニャ」どころじゃないヤバさ……。自分達を追って来るパトカー内に避難する程です。
想像を超えた危険なスタンド。本体を倒さない限り勝てないかもしれないけど、そもそも近付く事が可能なのか?周囲の全て・世界の全てが障害となる、あまりに強すぎる能力。定助は、康穂が単独で院長の「追跡」をしてはいないか危惧するのでした。……というところで、次回へ続く。


●次回は康穂サイドの話が描かれると思われます。今頃、康穂と透龍くんは何をしているんでしょうか?康穂は「追跡」を始めてしまったんでしょうか?つーか、透龍くんは結局、定助の無実を証言してくれたのかな?どこまで信用できるのか灰色ですからね。証言してくれたからこそ、「容疑者」にされるまで4日は持ちこたえる事が出来たのかもしれないけども。
気になるのは、例の「思い出の場所」で会うって約束がどうなったのかって事。定助も盗み聞きしといて、それっきりなのか?でも、定助も康穂も、今はさすがにそれどころじゃないかー。「ジョジョリオン」でありがちなのが、「当面の目標」を果たす直前になって、それより重要な「別の目標」が出来、そのまま次の展開に移っちゃう事。それまでの目標がスルーされちゃうんですよね。定助が高校に通うって話も、「カツアゲロード」やつるぎちゃんのゴタゴタで忘れ去られたし。「杜王スタジアム」に行くって話も、突然のカレラの登場で流れていったし。康穂が「髪留め虫」の分析をするって話も、羽先生や密葉さんの件に巻き込まれてるうちに、分析したのかしてないのか分からない感じになってるし。他にもチョコチョコある。
そういう宙ぶらりんの気持ち悪さ、モヤモヤした感覚もまた、「ジョジョリオン」ならではと言えます。もしこれが意図的であるなら、多くの問題を放置してごまかしたままって状況自体が、我々の住む現代社会の皮肉や風刺にもなっていたりする……のかもしれません。


★今月は35ページ!ページ数は少なめですが、「追跡者」が「追跡」されるという奇妙なシチュエーションが実にエキサイティング。「いつ終わるの?」「ラスボスは誰なの?」っていう「結果」を急ぐ気持ちではなく、「寄り道」や「過程」をゆったり楽しむ余裕さえ持てれば、「ジョジョリオン」はこの上なく面白いサスペンスなんですよ。だからこそ、こうやって毎月1話1話読んでいく事がたまらなく好き。
作者コメントは「初めて東京タワーに上った。改めて都心のどこからでも見える塔って凄いな。」との事。先生が上京して30年くらいのはずですが、今まで上った事がなかったとは。逆に、どうして今になって上る事になったのか、その理由が知りたいですね。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 9月号(2019年)
310ページ


今月は、街路樹の上のランボルギーニ。簡易版ツリー・ハウスの出来上がり。礼さんはつくづく高い所に住むのが好きなんだな~(笑)。
鼻炉山のリフトハウス同様、当たり前の日常風景の中に溶け込む「異常」にグッと来るぜ。とんでもないインパクト。この絵はぜひ、カラー版でも早く観たい。




(2019年8月19日)




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