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ただ… 気がかり…なのは…
姉をひとり 故郷に残して来た事だけだ
幸せになってほしい…
オレの祈りは… ……………それだけだ


#20 黄金の回転へ!





●トビラ絵はジャイロとジョニィ。ヴァルキリーに跨ったジョニィが笑みを浮かべています。ヴァルキリーには絶対に女性は乗せないし、他人をあまり乗せたがらなそうなジャイロですが、さすがにジョニィは別みたいですね。本編の状況が状況だけに、ジャイロの魂がジョニィへと託されていくようで不吉でしたが……。


●「黄金長方形」によって『タスク』が進化ッ!爪そのものの回転のみならず、今度は指を軸にしての回転もプラスされています。この時代にあったのかどうかは知りませんが、とにかくドリルのような回転となり、なんか見た目のカッコ良さも増しております。チュミーちゃんの見た目も変化。八頭身化するのかと危惧しましたけど、辛うじてカワイらしさは残っていました。不安げな表情もしておらず、瞳はしっかりと見開かれています。
この「黄金の回転」の威力たるや凄まじく、今までの数倍もの破壊力にパワーアップ。その強力なエネルギーゆえに1発発射したら爪の再生に時間が掛かってしまうのか、指1本につき1発限り(足の爪はダメ?)という制限が付いてしまったものの、これまでとはまったく異質の「回転」となっていました。なんと、たとえ狙いが外れてしまっても、その「弾痕」の中で「回転」は生きていて、数秒の間だけターゲットを自動追跡&狙撃するのです!まるで神の意志のように!これは「エネルギーやダメージの移動」であり、「最終奥儀」に非常に近い現象。スタンドの力を借りているとは言え、よくぞここまで生長したものです。今後もより深く「回転」を知っていく事で、『タスク』も「無限」・「神の力」に近付いていくのでしょう。


●サンドマンの本名はマジに「サウンドマン」でした。「何の冗談?」って感じのダジャレ的ネーミングですが、部族では「音」をかなでる者と呼ばれているとの事。白人の聞き間違えで「サンドマン」になったらしいけど、最初は思いっきり「砂男」と呼ばれていましたよね?……なんてツッコミも無粋か。彼が白人の味方をしていると怒った部族の人が、白人に間違えられた名を皮肉を込めて呼んでたら、みんなにもニックネームとして広まっちゃったとか?
そして、スタンド『イン・ア・サイレント・ウェイ』。本体と一緒にスタンド名まで微妙にチェンジ。アナスイに匹敵する、恐るべき設定変更野郎です。それはともかく、ついにスタンドの全体像が描かれました。ちょっと『クリーム』っぽい顔。胸に飾られたバラではフェルディナンド博士を思い出しました。でも、インディアンらしいデザインでかなりカッコイイです。これまた第1話でのヴィジョンと違ってますが、レースを通じて生長したとか好意的に解釈しておきましょう。砂を操っていたのも、砂に「音」を閉じ込めていたって事にしときます。
そんなサウンドマンの顔付きや態度には一切の迷いもなく、その鋭い眼には「漆黒の殺意」しか感じられません。鍛え上げられた肉体としなやかな動きが美しい。発生させた「音」を実体化して盾にしたり、最後の最後まで立ち向かって来たり、バトルでも彼は油断ならない脅威の敵でした。


●パワフル感・スピード感・緊張感に溢れる大迫力のバトル。そして、本当に最後の一騎打ち。爪がもう1発もなくなったジョニィは、なんとすでにジャイロのベルトのバックルからミニ鉄球を作り出していたのです。これは驚いた。木で彫像を作ったように、フツーに爪でガリガリ削って作っただけなんでしょうけど。でも、「弾痕」を鉄に移動させれば、鉄にはキレイな穴が開き、そこから鉄球を作る事も出来るでしょうね。ジャイロもあの現象を起こせるなら、そうやって無くなった鉄球を補充していたのかも?
ジョニィの眼にも、迷いや弱さは消え去っています。同じ方向へ走って「選手」として競ってきた相手と、今、互いに向かい合って「戦士」として殺し合う。ジョニィもサウンドマンも、誰にも譲れない想いが、命を失っても退けない理由があるのは変わりません。相手への同情や甘さが入り込む余地などなく、ただ自分の心と力をぶつけるのみ。
この戦いで生き残った者は、ジョニィでした。サウンドマンはジョニィに一歩及ばず……。砂粒ほどの後悔もなく死んでいく彼の本当の祈りは「姉の幸せ」、それだけでした。部族の土地を取り戻す事も大事だけど、ただ大好きなお姉ちゃんを守りたかっただけなんでしょう。ほとんど彼の内面が描かれなかったのが残念ですが、ここでようやく人間らしい言葉が聞けたのは救い。なまじ純粋で頭がいいばっかりに、ゴチャゴチャ複雑に考えて、自分の単純な願いすら見失ってしまっていたんですね。あまりに自分も他人も犠牲にし過ぎです。そんな彼の孤独な姿を見て、お姉ちゃんが喜ぶワケがありません。もっと早くに自分の気持ちに気付けていれば、たとえ土地を奪われたとしても、ずっとお姉ちゃんのそばにいてあげられたのに。お姉ちゃんもその方がよっぽど幸せだったろうに。切ないなあ……。ナイフが彼の墓標のように悲しく立っております。
一方、ジョニィは忌まわしい記憶をついに乗り越え、勝利を掴みました。ジャイロと共にッ!人生の大きな転機という意味で、このサウンドマンとの戦いはジョニィにとってのジャイロVSリンゴォとも言うべき価値ある死闘。主人公の精神や人生に深い影響を与える存在として、リンゴォはポッと出の敵キャラだったのに過去も信念も価値観も丁寧に描写されていました。でも今回の場合、ジョニィの過去をメインに描く必要があったため、いきなり現れた一介の敵キャラにまで回想などを用意するのも難しい。しかし、主人公の生長のキッカケになる重大な敵なのだから、それ相応の説得力やインパクトも欲しい。そうなると、サンドマンに白羽の矢が立つのも必然だったのでしょう。彼なら読者にもすでに行動の動機や熱い想いが知られているし、敵として現れた時の衝撃も凄まじいですからね。相手に取って不足は無しです。いや、やっぱ寂しいですけどね。


ホット・パンツ推参ッ!ジャイロ達の馬だけがいるのを発見し、様子を見に来たようです。ナイス・タイミング!これで一安心だぜッ!……と思ったのも束の間。なんと彼女はおもむろに紋章入りの袋を取り出します。その紋章は紛れもなくネアポリス王国の紋章。強引にジョニィから「左腕」と「脊椎」を奪い取ってしまいました!スタンド使いなら「遺体」を抜き取る事も可能なのかな?一般人のルーシーには「遺体」の引力が必要なだけで。そして、「遺体」を抱いて涙を流すホット・パンツ。一体、何が起こっているんでしょうか?
こんな展開はまったく予想していませんでした。ホット・パンツは表向きアメリカ国籍とされていますが、本当は王国の人間である事は間違いないでしょうね。もしや彼女は、「遺体」を集めるために遣わされた王国からの使者?それとも王国のお姫様で、反国王派テロリストに怯える父=国王のために勝手にレースに参加した?ジャイロをレースに差し向けた国王の使いのおっさんが、実は影で糸を引いている?まさかキリスト本人か、使徒とかマグダラのマリアとかの子孫?う〜ん……、いろんな想像が浮かんでくるけど、謎だらけです。ただ、ジャイロに「そんな聖人いないよ」って書簡が送られたと同時に、密かに彼女にも「ジャイロ達が遺体を持ってるよ。奪って来てね」って書簡が届けられていた可能性は高いですね。いよいよ王国側にも動きが出て来て、物語はますます盛り上がってきましたよ。しかし、こうなってくるとジョニィの嫁さんにはならなそうかなあ。


●ホット・パンツは偶然にも、ジョニィの脚がかすかに動く所を目撃。「脊椎」を取り込んでいた事で、彼自身の脊椎も回復しつつあるのでしょうか?ジョニィが再び立ち上がり、歩ける時が訪れるのか?これもまた目が離せない。しかし「能力まで奪う気はない」なんて彼女は言ってるけど、「遺体」を抜き取ったらスタンドも消滅するはずなんですがね。今の彼らはスタンド無しの一般人のはず。
つーか、スタンド能力は残して「遺体」だけ奪えるなんてのは、ちょっと都合良すぎだし。もし仮にそんな事が出来るとするなら、アリマタヤのヨセフの子孫って筋も考えられるかも。「遺体」をバラバラにしてアメリカ大陸に隠した張本人であろうヨセフの一族には、「遺体」を集めて復活させる宿命や、スタンド能力を残したまま「遺体」を抜き取る条件・方法なんかが伝承されていたとしても、そう不自然ではありません。しかしながら、個人的にはスタンドを失ったジャイロ達の反応や奮闘を見てみたいので、ここで言う「能力」とは「脚が動いた事」を指していると思いたい所。ホット・パンツもジョニィの脚を再び動かなくさせたり、とどめを刺したりするような鬼ではないと。
こりゃあ、次のバトルは相当厳しいでしょうね。LESSON5でもやって、ジョニィに爪以外の物も自在に回せるようにしないと!「ただ手に持っているだけでどうやって回転させるのか?」とか「回転の効果をどのように自分で選択するのか?」とか、「回転」の技術にはまだ未知の部分が多いですから。次回は5th.STAGE決着のレース展開になり、そのまま「遺体」争奪戦。そんで、「右腕」「両耳」がそれぞれジョニィとジャイロのものになり、改めてスタンド発現って感じでしょうか?ぼちぼちポコロコも絡んできそうな気配もします。
気が付けば、ホット・パンツはジョニィ達の傷を治してくれていました。ジャイロも復活!よかったー。しかも親切にイカダに乗せて、馬の待ってる向こう岸まで届けてくれてます。ついでに治しといてくれていたのか、ノリスケさんまで生きていました。その勢いでサウンドマンも治してくれていないかなあ……。あそこで死んだ方が劇的なんでしょうが、やっぱり生きていてほしいってのが本音ですよ。ホット・パンツの気まぐれに期待。


★「黄金の回転」VS「漆黒の殺意」。この戦いでジョニィは大きく生長しましたね。「回転」を会得したとか以上に、「敬意」を払えるようになった点で。ジョニィが「敬意」さえ持っていれば、ダニーを食卓に連れて来る事もニコラスが死ぬ事もなかったのです。無論、家を出る事も下半身不随の絶望に墜ちる事もありませんでした。
このエピソードにおいてダニーは「敬意」の象徴であり、「敬意」を払えなかったからダニーはジョニィの元から消え、大切なものを全て奪い去ってしまった。でも、LESSON4で全ての生命に「敬意」を払える誇り高い精神を宿し始めた事で、再びダニー(実際は別の白ネズミや幻影だけど)が姿を現し、その中に「黄金長方形」という究極の美を見る事も出来たのです。そして、結果として兄のような存在・ジャイロを守り抜けました。脚も動くようになりつつあります。
自分の過去を克服し、さらなる段階へ。きっとこの先、ジョニィは精神的にもっともっと貴族へと近付いていき、かつて失ってしまったものを少しずつ取り戻していくと思います。そして、「ジョナサン・ジョースター」という我々にとって特別な名前を冠するに相応しい人間に生長し、前世界のジョナサンが辿り着けなかった場所にまで歩んで行ける事でしょう。
正直な所、こんな道半ばでのサンドマンのリタイアと死は実に悔やまれますが、この「SBR」はサンドマンの物語ではないのだから致し方ありません……。レース上ではジャイロとジョニィの物語、レース裏ではスティールとルーシーの物語なのです。このレースは本来、馬に乗るレースなのです。そこは何とか割り切って読んでいきたいと思います。ただ、彼のひたむきな生き様がお姉ちゃんや部族のみんなの心も動かし、物語に関わってきてくれたら嬉しいですね。ジョニィとお姉ちゃんが出会ったりしたら、どんな関係になるのか気になる所です。




(2006年11月18日)




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