TOP  <<#54 戻る #56>>



馬自身が 「良い」と思うように 走らせろ…
馬がこの草の上を 自然体で走って 喜ぶように………
馬自身が……… この大地と空の下に 生まれて来た事を 感謝するように…


#55 正義と邪悪A





●トビラ絵は最終決戦主要メンバー4人の、それぞれのエンブレム。ルーシー・大統領・ジャイロ・ジョニィ、4人の横顔と細やかな意匠が彫られたカッコいいエンブレムですね。でも、大統領とジャイロのデザインがほとんど一緒ってのは、何か意味があるんでしょうかね?最終的に死ぬ2人、なんつー縁起の悪い括りじゃない事を祈ります。


●大統領が待ち構える客車に近付くジャイロとジョニィ。下からのアングル、上からのアングル、と視点が切り替わり、実に映像的です。最終決戦を目前とした2人の間には、ビリビリとした緊張感が漂っています。特にジョニィは、呼吸も大きく乱れ、胸中が不安に満ちている事が窺えます。大統領の髪を抜いたという結果だけでは、ジョニィの心の闇を完全には払拭できない様子。そんなジョニィに、ジャイロは静かに助言します。
誰も見た事のない「騎兵の回転」を実現させるのならば、それはやはり「黄金長方形」しかない。馬を「黄金長方形」の「走行形(フォーム)」で走らせろ。馬自身が走る事を喜び、生きる事に感謝するような……、そんな走り。その時こそ、「黄金長方形」を作る時!――ジャイロはそう語ります。なるほど、「黄金長方形」で走るという発想はなかったなあ。たぶん、嵐の大草原でジャイロとヴァルキリーが「光の道」を走った時と同じなんでしょうね。ジョニィとスロー・ダンサーだけの「気持ちのいい道」を見付け、滑らかに走る事を純粋に楽しむ。それは「生」の喜び・「命」の美しさを体現した、究極の力になるに違いありません。
「必ず『勝てる』」。ジャイロはそう力強く断言。頼もしい男だぜッ!これは未だ「マイナス」にいるジョニィには出せない強さなのかもしれません。家族や祖国を尊敬し、誇りにしているジャイロだからこその強さ。ジャイロを根底から支える力なんでしょう。でもジョニィは、自分のせいで兄を死なせてしまったと思い込み、父親には「兄じゃなくてお前が死ねば良かった」と言われています。兄を殺した「罪」父に殺された「絶望」に縛られたジョニィには、最後の一線で自分を支えてくれるものがない。だからこそ、ジャイロがジョニィを支え、ジョニィが「自分の存在」を丸ごと受け入れて認めてほしいなあと願います。そうなりゃあ、必ず勝てる。


●そんなジャイロとジョニィの姿を客車から見詰める大統領。ギリギリで命拾いし、もう「遺体」も手に入らないと理解し、次に攻撃を受けたら敗北は確実と絶望したはず。にも関わらず、なぜ2人は逃げ出さない?戦闘態勢を取る2人をいぶかしんでいます。無敵のパワーをGETしても尚、用心を怠らない大統領はさすがと言うべきか。
後ろで物音がし、振り返ると、そこには倒れたルーシーが。体のあちこちに張り付いていたパネルのような物が全身をピッタリと埋め尽くし、その姿は光り輝いていました。いよいよ「遺体」化も最終段階なのか、ルーシーは呼吸すら出来なくなっている様子。これから聖なる「遺体」となるのだから、生きていられるはずもありません。しかし、「人間」ルーシーは間もなく死ぬが、この世の「女神」が新たに生まれる。もはや崇拝しかない。この場所に神殿を建てよう。大統領は事もなげに、ルーシーにそう告げます。
ホントにまったく、いつまでスティールはのんびり寝てるつもりなんでしょーか!?H・Pもマジに死んじゃってるんでしょーか!?最悪のピンチなんだから、ここらでイイとこ見せてちょうだいよ。


●客車のドアが開かれ、大統領が堂々とした佇まいで御登場。ジャイロ・ジョニィと対峙。ジャイロは「撃つのは一発だけだ」と、ジョニィに声を掛けます。「騎兵の回転」という切り札の存在を勘付かれ、ヘタに対策でも練られてはマズイって事でしょう。
大統領がゆっくりとした動作で客車から降り、大地に足を付けると、その瞬間、ジャイロ達は駆け出します!さあ、ついに最後の決戦の開幕ですッ!大迫力の絵が興奮をさらに高ぶらせてくれますね〜。大統領はまたも「空間のスキマ」へと潜り込む!それはなんと線路の下。地面に溶け込むように、滑るように迫って来る!どうやら「空間のスキマ」は、地面に垂直なベール状のものとは限らないみたい。地面に平行な波状のものもあるようです。垂直では前後上下にしか移動できないけど、水平なら前後左右に移動が可能。広いフィールドではそっちの方が良さそう。しかし、何のためにわざわざ地面を滑ってくるのか?疑問に思いつつも、2人は線路を挟んで左右に分かれます!
大統領はジョニィの方から仕留める気らしい。ジャイロにはすでに心臓にダメージを与えているから、後回しでも充分って判断でしょうか。自分に向かって来る大統領に焦ったジョニィ、いきなり爪弾を連発!おいおい、ジャイロの警告無視かい!ジャイロが「撃つな!まだフォームが出来てない!」と叫ぶと、大統領はその言葉に違和感を抱いた気配。つまり、ジャイロ達が何らかの具体的な攻撃を目論んでいる事を!
それでもジョニィの気持ちは焦る一方。またしても爪弾をブッ放ちます。すると、爪弾の「害悪」のエネルギーは「スキマ」を通じて、遥か遠くの地へ移動。通常の爪弾じゃ、太刀打ちできません。今度は、どこかの国で行われてるデモ(?)で人が殺されてしまいました。どうやら爪弾という攻撃自体が移動するだけでなく、爪弾によって生じる「害悪」が別の形の「不運」「不幸」として移動する場合もあるようですね。


●疾走するジョニィの目の前に、木々が迫って来ました。ルーシーの元へと引き寄せられた木々が、またジョニィの行く手を阻みます。大統領はこうやって木々の間に閉じ込めて追い詰めるために、地面を滑って移動してきたのです!しかし、このまま木と木の間を行くと心を決めたジョニィ。その時ッ!ジャイロの目には、「黄金長方形」の中にいるスロー・ダンサーが映りました!意外とあっさりだけど、やったぞ!やはり「戦う」事より「走る」事に意識を向けないとダメなのか?
スロー・ダンサーから「黄金長方形」のエネルギーを伝わらせ、ついにジョニィの「騎兵の回転」バージョン『タスク』が放たれる!!……かと思われた次の瞬間、ジョニィは近付いて来た木の枝に頭をぶつけてしまったのです!そのバランスの乱れを、その一瞬の隙を、大統領は見逃しませんでした。不敵な笑みを口元に浮かべると、『D4C』はジョニィの左腕をスパアアァァンと切断しちゃったのです!発射された爪弾は、大統領から大きく外れてしまった!一体、どうなってしまうのか?……ってところで以下次号。
やっぱりそう都合良くは行きませんね。一読者としては、大統領がそんな簡単に倒されちゃ拍子抜けなので、むしろ喜ばしい展開だったりするんだけど。もっともっとジャイロとジョニィを追い詰め、凄まじい死闘を繰り広げた上で倒されてほしいもんです。今回、外れてしまった爪弾もまた、大統領の髪か服かを引き裂いている可能性もあるし、それによって大統領もジョニィの切り札を攻略しようとしてくるかもしれないし。まだまだ先は読めません。ジャイロが心臓の負担も省みず、ジョニィを救おうとするとか。瀕死のH・Pがジョニィの腕を治すとか。目覚めたスティールが大統領に何か仕掛けるとか。ジョニィがなかなか鐙に足を踏ん張れなくて号泣するとか。いろんな要素が絡み合ってきそうなラストバトルです!


★今月は39ページ!う〜む、少ないけど正月休みもあるだろうし、仕方ないか。これでコミックス20巻(通算100巻!)の収録分もたまりましたね。記念すべき20巻は3月頭の発売になりそう。楽しみです。
作者コメントは「新年一番最初にした事は『マリオカート』でした。普通はホラー映画だけど…。」との事。ホラー映画で幕を開ける新年が普通というあたり、さすがは荒木先生です。それに比べたら健全な過ごし方ですね(笑)。『マリオカート』、スーファミではよくやったっけなあ〜。




(2010年1月17日)




TOP  <<#54 戻る #56>>

inserted by FC2 system