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良しッ!! 600万ドル確認したッ!
本物だッ!!


#003 豪邸にあるダイヤを探せ





●今回のトビラ絵は、ジョディオ達チーム4人。 それぞれの顔が描かれています。ジョースター兄弟は真っ正面を見据え、パコとウサギ先輩は視線を逸らしてる。ポーズも含め、4人の個性が表れているように感じますね。
そして中央には、フードを被って両手を上げたジョディオをモチーフにした、エンブレム的なシンボルマーク。警察に追い詰められた犯罪者の姿を思わせます。ジョディオの服やスタンド、あとはパコの両腕にも見られる白黒模様の三角形がここにもありますが……、これは「ビーティー」でも多用されたマークですし、「無邪気さ」と「邪悪さ」を合わせ持つ魔少年の象徴なのかもしれません。そういう意味では、彼らはまさしく魔少年グループ!精神的貴族には程遠いけどな!


●さて、まさかの登場で全世界の読者のド肝を抜きまくった岸辺露伴先生でしたが、さすがに魔少年ジョディオの肝は座ってます。決してうろたえる事もなく、泳ぎに興じる露伴の横を悠々と歩いていくのでした。アオリ通り、慎重かつ大胆ッ!まったく気付かず泳ぎ続ける露伴、ピヨピヨチュンチュン鳴いてるスズメ達……、あまりにもさりげなく日常に溶け込んで犯罪が行われている。目に映る光景の平和さと、やってる事の物騒さがアンバランスすぎる。開始早々、めっちゃクールで面白いなぁ。
プールサイドのイスの影に隠れ、露伴のiPadを盗み見るジョディオ。そこには「ピンクダークの少年」の描きかけのデータがあるもんで、目の前にいるのがマジモンの岸辺露伴だと確信して大感激!犯罪は平気なクセに、これには緊張のあまり指先が震えてますよ(笑)。まだ読者の誰も目にしていないであろう貴重な絵が見られて、「今日はこれだけで幸せな一日だ」とか思ってるくらいです。こういうトコは年相応の少年だよね。ちなみに……、描かれている「ピンクダークの少年」の絵、随分と等身が上がったな~。もはや青年やん。この世界の露伴のスタンドも『ヘブンズ・ドアー』であるのなら、やっぱこのビジュアルなのかね?
と、まぁ、「岸辺露伴」に感動するのはここまで。ここからは、あくまで「ターゲット」です。彼が600万ドルのダイヤを持ち込んだ、優雅なバカンス中の金持ちって事には変わりはない。ジョディオも「少年」から「犯罪者」へとスイッチを切り替えました。


●一方、正面玄関では、ドラゴナが『スムース・オペレイターズ』を使ってドアを開錠!なるほど。鍵穴をズラしてしまえば、内部から鍵を開けられるってワケね。こりゃ便利。やっぱ能力的には『ダイバー・ダウン』に近そう。今まで沈黙を守っていた『スムース・オペレイターズ』も、今回は「イシッ」とか「ウッショ」とか掛け声を出しながら一生懸命作業してたので、一気に親近感が湧いてきたなぁ。
周囲を見張るパコとウサギ先輩。1匹の猫が前回同様、別荘の周りをウロついているぐらいで、人の姿はありません。ドラゴナはジョディオと連絡を取り、問題ない事を確認すると、いよいよ潜入開始ッ!……でもジョディオって、チームでの行動中、基本的にドラゴナとしか話さないよね。一番下っ端のパシリと自覚しているからか、質問されればそれに答えるだけ。みんなの会話には混ざらず、黙って見てるだけって感じ。それもまた、ジョディオなりに「メカニズム」を重んじるがゆえの行動なのかな。自分の「役割」に徹するプロフェッショナルです。いや、単にそーゆー性格なだけかもしれんけど。
だだっ広い豪邸内を物色して回る3人。とは言え、狙いはダイヤただ1つ!余計な物まで盗んでたら、空港警備へのリスクになって、ヘタすりゃ島から出る事なく捕まっちゃいますからね。それを他の2人に注意するドラゴナでしたが……、振り返ってみると、2人はナチュラルに絶賛盗っ人中。パコは財布や腕時計や置き物を、ウサギ先輩はワインやキャビアを、しこたま持ち帰ろうとしてました。この悪ガキ共……(笑)。ドラゴナが全部元に戻させ、金庫の在り処だけを探すよう念押し。しかし、ウサギ先輩はリビングのデッカい絵を切り裂いて調べるわ、パコはこっそり現金をくすねるわで、もうやりたい放題。目立つ証拠を残しまくりだけど、大丈夫か?


●ドラゴナが奇妙な部屋を発見。あちこちにが転がり、机には様々な実験器具。明らかに異様です。ジョディオもiPadから奇妙な写真を見付けました。火山や溶岩、地図、冷えた溶岩などの写真。しかもその場所は、入山が禁止されている危険な場所らしい。さすがは露伴、ハワイに来ても、好奇心のために法を犯してる様子。っていうか、ここでハッキリと名前が「岸辺露伴」と明言されましたね。
ビーカーでヤベぇクスリでも精製してるのかと疑うパコ達でしたが、ウサギ先輩がいきなりドヤ顔で解説!ビーカーは分量を計るための道具であって、ここで使われている道具は熱を加えたり冷やしたりするためのフラスコ。そして、そのフラスコの中の岩は、ゴツゴツ尖って固まったアア溶岩。先輩ってば、意外と博識じゃん。ただ、何のための実験なのかは見当も付かないようで、パコからは軽くあしらわれちまいました(笑)。こういうやり取り、マジで好き。
……それはともかく、この怪しすぎる実験室は一体、何なんでしょう?一目見た時の直感では、「岩生物」絡みかなって思いましたけど。「岩生物」も溶岩も、動く岩という部分では共通してます。その辺の発想から、火山の島であるハワイに調査にやって来て、「岩生物」のルーツや生態に迫ろうとしていたのかもしれません。「岩生物」はケイ素生物。一方、ダイヤモンドは炭素のみで出来ている宝石。なんだか意味深……。ひょっとしたら、露伴にとってダイヤは単なる実験材料の1つに過ぎず、「岩生物」の細胞に炭素を加えるとどうなるのか……みたいな事を試そうとしてるのかも?


●iPadからはさらに、犬の写真が。こ、このプリティードッグはバキンちゃん!あまりの可愛さに、ジョディオも思わずにっこり(笑)。未だにこの露伴が「動かない」シリーズの露伴と同一人物なのかは断定できませんが、少なくともこの世界でもバキンと出逢えたようで何より。……まぁ、そもそも「動かない」シリーズは年代と年齢のつじつまも合わないから、完全にサザエさん時空なんだと「ホットサマー・マーサ」で確信したワケなんですけども。もっと言ってしまえば、もはや露伴という存在自体が、作品をクロスオーバーできる唯一無二の自由な存在になってる気もしますよ。深く考えず、露伴は露伴ってくらいに思っとけばいいのかな。
すると、そこにやって来たのは1匹の猫。ジョディオを気にするでもなく屋根に上っちゃいましたが……、露伴のペットが犬だってんなら、さっきからウロついてるこの猫はどこの猫なのか?うおぉ~、この猫が重要だったとは予想外。俄然、ミステリアスな展開になってきました。その上、このタイミングで露伴がプールから出て来た!彼も猫に気付き、「まさか誰かの猫か?」と怪しんでいます。この発言にジョディオも違和感を覚えているみたいですけど、「どこの猫?」じゃなく「誰の猫?」ですからね。明確な意志で露伴邸に刺客を送り込んでくるような人物に心当たりがある、って事なのかも。
いずれにせよ、緊急事態!このままでは露伴とみんなが鉢合わせ。その時点で罪状は強盗罪に変わり、強いレベルでハワイ島中を追われるハメになる。後日、改めて出直す事にし、今は逃げの一手です。


●ところが、こんなギリギリで本棚の裏に金庫を発見!ここまで来たら、露伴が来る前に金庫を開けるっきゃない!ドラゴナも覚悟を決めました。その決断に、ジョディオも『ノーベンバー・レイン』でサポート。プールサイドに「雨」を降らせ、邸内に入った露伴を引き戻します。iPadや本がズブ濡れになったら困るもんね。iPadを回収しようとすると、露伴の指にサボテンの棘(トゲ)がチクッと刺さります。恐らく、露伴に対する時間稼ぎの一環として、ジョディオが仕掛けたんでしょうな。
露伴邸の金庫は、扉の中に5本の鉄棒が入ってるタイプ。非力な『スムース・オペレイターズ』にとっては、なかなかの重労働らしい。必死に頑張ってます。そこへ現れたのが、またもや例の猫。何喰わぬ顔で歩き、廊下を通り過ぎていきます。ウサギ先輩が訝しんでいますが、パコは「吠えなきゃどうでもいい」と無関心。
そして、ついに金庫が開いた!中には予想通りダイヤモンドがありましたッ!すぐにパコが鑑定し、本物と確認。へぇ~、そんな知識と技術も持ってたのね。ただ、金庫の中にはダイヤと一緒に謎の「石」が入っていました。これも冷えた溶岩なのか?ドラゴナがちょっぴり気にしています。ムムッ、これこそが「岩生物」の破片なんじゃないの?この世界の露伴も杜王町に住んでるとしたら、東方家から「岩生物」に関する情報を色々と得ている可能性もあります。こんな未知の生物、露伴の好奇心が刺激されないはずがない。前述した「刺客の心当たり」も、「岩人間」の勢力だったり?自分達の存在を調べまくり、あまつさえ漫画のネタにして世界中に発信しかねないんだから、「岩人間」的には露伴は邪魔すぎるよね。
気になる事は多いけれど、ダイヤをゲットした以上、さっさとトンズラしないとヤバい。ダイヤをパコのリュックに入れ、露伴邸を脱出です。……ところが、ここで異変が起こるッ!


●パコの足首に、「糸」のような物が巻き付いたのです。そしてそれは、ひとりでに結ばれ、足首をキツく縛り上げる!同じような糸が、ドラゴナの手首にも巻き付き、今度はウサギ先輩をも狙う。先輩はジャンプしてどうにか交わしたものの、明らかに異常事態です。半透明の「糸」が宙を漂い流れて、触れた物に巻き付くっぽい。「糸」はどんどん締め付けてきて、パコとドラゴナは血を流しています。
パコは新しいセキュリティ・システムの製品かと疑ってますが、そんな物が在るワケない。ウサギ先輩はすぐさまスタンド能力と気付き、さっきの猫の攻撃と推察!廊下を通った時、この「糸」を張ったのではないか、という事です。パコよりもドラゴナよりも鋭い先輩が意外。実はスタンドバトルの経験もあり?とりあえず、ダイヤを奪ったパコ達を襲ったからには、猫の狙いにはダイヤも含まれているのでしょう。仮に「岩人間」勢力だとしたら……、誰かが金庫を開けるのを待ち構え、「岩生物」の破片は回収して証拠を消し、ついでにダイヤも入手して金儲け!という一石二鳥プラン?
猫の正体としては……、スタンドと高い知能を持つ「岩猫」なのか。あるいは、仲間の能力で猫に化けた「岩人間」か。はたまた、変身能力は自分のスタンドで、あの「糸」は「岩昆虫」だったという線もあり得るか。「岩人間」絡みじゃなかったとしても、それはそれで様々な可能性が考えられます。あの猫は実はメリル・メイだったとか、前回のDEAのお姉さんだった……とかね。でも、ここで裏切りだのスパイだの内部のゴタゴタを描いても、無駄にややこしくなるだけだしなぁ。「岩人間」絡みにまとめた方がスッキリする感じはします。
そして、さらに悪い事に、露伴は何者かの侵入に気付き始めていました!猫の存在とは別に、さきほどジョディオが降らせた「雨」について。iPadを置いたイスを狙ったかのような降り方で、自然現象にしてはどこか妙。しかも、サボテンの棘の事もあります。人の意志の介在をそこに感じたワケですね。これにはジョディオの警戒心もMAXになりました。フードを被って顔を隠し、チームのみんなにも警告。そう……、露伴もまた、「メカニズム」が見えている人なのです。


★今月は43ページ!第3話で通常のページ数になりましたが、読みごたえは十分!露伴にバレるかどうかってサスペンスを軸に、キャラクターの魅力を目いっぱい引き出しつつ、岩石や猫の謎まで散りばめられ、終始ドキドキハラハラワックワクでした。「ジョジョランズ」はとにかくキャラクターとキャラ同士の掛け合いが魅力的。それゆえに生まれる軽妙な空気感も最高なのです。
作者コメントは「今年はお花見ができました。華やかで幸福感があっていいね。」との事。荒木先生が健康で幸福であるなら嬉しいです。私も先日、お花見ではないけど、桜並木を眺めてきました。大変、心癒されました。桜の花を見るという行為は、我々日本人のDNAに刻み込まれた特別な行為なのかもね。
次号はウルジャンの表紙を飾ってくれるようです!どんな絵が観られるのか楽しみッ!チーム4人の絵だったら嬉しいな~。「ルーヴル」劇場版公開間近だから、露伴も描かれる可能性高そう。





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 5月号(2023年)
180ページ


今月は、ここぞとばかりに盗みまくってるパコ。カッコイイとか美しいとかそういう絵ではないんですが、なんかこのコマ、大好きなのよね。パコの欲をかきがちな悪ガキっぷりが素晴らしく現れてる、微笑ましい絵じゃないですか。正直、ジョディオやドラゴナ、ウサギ先輩の濃ゆさに比べると、パコにはそこまで突出した個性は感じられずにいたんだけども……、このコマで一気に好きになったまである。
パコはチームの中では最年長だし、図体も大きいもんで、一応リーダー的立場にあるようです。しっかり方針や作戦を決めて、ミッションを成功に導かなきゃいけない事も分かってるんでしょうけど、こういうふとした瞬間に素が出るっていうかね。とにかく盗みが大好きだから、我を忘れて没頭してるところが面白い。チームの4人とも愛嬌があって、なんか可愛いっスよね。実際はろくでもない犯罪者なのに、憎めないどころか好きになってしまう。荒木先生の描写の恐ろしさですよ。




(ちょっと追記)
●今回のラストで、ジョディオが露伴を「見えている人」と評していました。これを「ジョディオは露伴がスタンド使いだと気付いた」という意味に捉えている方が多いようですが、私はそうは思っていません。「見えている」というのは、スタンドではなく「メカニズム」の事だと思います。いや……、露伴がスタンド使いである事自体を疑ってはいませんけど、文脈的にジョディオが言いたいのは「メカニズム」の方だろうな、と。
「メカニズム」とは、広い意味で言えば、この世の現象や運命の真意。なぜその現象が起こったのか、なぜその形になったのか。それらの原因・原理を示します。つまり……、物質の動きや形を見て、原因や原理を探り、その裏に隠された「意味」「意図」を正しく読み取れる者。それこそ、「メカニズム」が見えている人なワケですね。露伴はまさに、雨やサボテンの棘の動きから、不自然さをキャッチし、その奥に在った何者か(=ジョディオ)の意図を感じ取りました。スタンドが見えているかどうかは、ここでは一切関係ありません。(そもそも『ノーベンバー・レイン』の雨は一般人にも見えるし。)
「メカニズム」を正しく見るためには、豊富な知識、冷静な観察、柔軟な発想、大胆な行動なんかが必要だろうと思われます。大人気漫画家である露伴には、それらが揃っています。そして彼は、ストーリーの必然性にだって常にこだわって漫画を描いているはずなので、「文脈」を読み解く力にも長けている事でしょう。この世の仕組みが見えていれば、それをうまく利用する事も容易ですし、富も名声も自ずと集まってきます。露伴が大富豪の1人として扱われるのも、当然と言えますね。




(2023年4月19日)
(2023年5月13日:ちょっと追記)




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