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じゃあ オレは誰なんだ?
オレはこんな所で何をしている?


#001 「壁の目」の男





●いよいよ今月より「ジョジョの奇妙な冒険」第8部、その名も「ジョジョリオン」がスタートです!でも当サイトとしましては、特に何をするでもなく、いつも通りに感想を書いていこうと思います。それでは、改めてよろしくお願いします。
連載開始という事で、ウルジャン表紙はもちろんカラーで飾ってくれました。先月号の予告イラストと似た絵ではありますが、こうして別の絵を見ると、印象もちょっと変わります。水兵帽にセーラー服という、何故か水兵ルックの主人公。カラーリングも普通なら紺か白かってトコなのに、荒木先生はブラウンで攻めてきました。左肩部分にはハートマークも確認できます。右肩にピースマークなら、恐らくそうだろうなとは思ってました。歯に注目すると、やっぱりスキッ歯。もしやホワイト忘れか何かかな、なんて邪推したりもしてたんですが、紛れもなき見事なスキッ歯でした。
そんな彼の背後には、スタンドらしきヴィジョンが。予告イラストよりは鮮明に描かれ、なんぼかカッコ良く見えます。このスタンドっぽいヤツの「目」と同じ形が、主人公のファッションにも散見できるので、たぶんマイナスねじ的なデザインは彼のシンボルの1つなのでしょう。それが何を意味するのかは、おいおい考えていきたいと思います。


●では、本編へ突入していきます!当然、巻頭カラーですよ!――冒頭に現れたのは、可愛らしい1人の少女。年の頃は16〜17歳くらいでしょうか?花がいっぱい散りばめられたスカートが印象的。どうやら男から逃げているようで、物陰に隠れてやり過ごしています。たった1回キスしただけの男に迫られ、それが気マズくて……という理由らしい。
ページをめくると、見開きのカラートビラ絵ッ!そこには主人公&スタンドっぽいヤツと、冒頭の女の子が描かれています。彼女も「ジョジョリオン」における重要人物になりそうな気配。ようやく主人公の下半身のデザインも判明です。予告イラストでは「JOJOJOJO」と書かれたインナーを着てましたが、今回は「ORAORA」柄です。エピソードごとに柄が変わって、「DORARARA」とか「GREAT」とかになったりして?また、ベルト部分の大きなサメのバックルが目を引きます。ここまでに関係したデザインで徹底しているからには、彼と海には切っても切れない縁があるんでしょうね。ちなみに、パンツは短パンとかではなく、普通の長ズボン的なもの。
――改めて本編へ戻ります。少女が隠れていると、なんとそこには土に埋もれた謎の男がこっちを見ていました。それに気付いた彼女は超ビックリ。その男はうつろな表情で、土の中に横たわっています。彼のそばでチョロチョロと水が流れているのも確認できますね。そして、その男こそが我らが主人公!水兵帽と星のアザが、何よりの証拠です。まさかこんな初登場シーンとは……。一体、何者なんでしょうか?


●さて、ここで冒頭の少女によるナレーションが始まります。親切にも、この物語の舞台となる「場所」の解説をしてくれています。
一級河川「一小川(いちおがわ)」に架かる「萩の橋(はぎのはし)」を南から北側へ渡ると……、そこがS市紅葉区(もみじく)杜王町!町の人口は47,228人。町のマークも描かれていますが、4部の時のものとは微妙に違っています。「M」を丸くしたような形の上には、王冠のようなデザインが。これで「杜王」を意味しているのでしょう。町の名産品は「牛たんミソ漬け」。「―杜王に名品あり―」のキャッチフレーズが懐かしすぎて笑えます。そんな町の財政を支えるのは、伊達政宗の時代から続く、海岸へ広がる別荘地帯と観光、そして近年目覚ましい発展を遂げたらしいマイクロ・チップ部品製造産業。
しかし、杜王町も3月11日の大震災により、大きく傷付いていました。……っつーか、これにはガチでブッタマゲました。2011年とも、東日本大震災とも、明言はされていません。でも、大震災が荒木先生にも大きな影響を与え、それは作品にまで及んでしまったのです。震災前と後では、先生の中にあった8部の構想にも若干の変化が生じたんでしょうね。杜王町は海岸から内陸へ3km、海抜標高は15mに位置するため、津波による被害は他の海岸地域ほどではなかったようですが、それでも相当に過酷な状況である様子。比較対象として適切かどうか疑問はあるけど、「ジョジョ」29巻では1994年時点で、町の人口が58,713人。康一くんも「町の人口が53,000人もいる」と発言していました。少女が紹介してくれた人口もいつの時点でのものか分かりませんが、結構な人数が犠牲になったのではないかと考えられます。
ただ、杜王町を覆う問題は、これだけではありませんでした。地震当日の深夜、地面の下から突然、が隆起してきたのです。海岸から内陸へ数百mの地点で、予兆もなく盛り上がり、壁が出現したのです。高さは普通1〜3m、幅は5〜8m、高い所だと15mにも達する壁。それが南北へ10kmにも及び、まるで町を海から来る何かから守るかのように、そして逆に何かを阻むかように連なっているのです。道路も水も電気もガスも、その壁のせいで通る事が出来ず、なんとも異様で悲惨な光景が広がっています。その壁には無数の穴が空いており、やがて「壁の目」と呼ばれるようになりました。この「壁の目」を説明できる者は誰もいないのです。


●少女がいるのは、まさにその場所。主人公は、「壁の目」のある場所で土に埋もれていたのです。彼女が「大丈夫?」と声を掛けると、主人公はこちらに手を伸ばしてきました。しかし、彼女の本音は「病気かもしれないし、変態かもしれないから、絶対にコイツには触らない」でした(笑)。ところが、主人公の左肩には星型のアザがあり、何故かその周りに歯形がクッキリと。何者かがアザを食いちぎろうとしたかのようで、流血もしています。そのケガを見て、彼女はすぐにiPhoneっぽいケータイを取り出し、警察に電話。掛け間違いで消防署に電話してしまったものの、とにかく彼の救助を求めます。
ここでようやく、少女の名前が明らかに。彼女の名は、広瀬 康穂(やすほ)。これまたオッタマゲです。思えば、冒頭から登場し、ナレーションまでしてくれていたのだから、納得と言えば納得。そう、彼女は康一くんポジションだったのです!
珍しいモノを見たから記念に、って事なのか、康穂は主人公のアザと歯形を写メで撮影(笑)。その後、一向に口を開かない主人公に再び声を掛けると、ようやく彼がしゃべり始めました。彼は彼女の名前を確認し、周囲を見回すと……、「自分は誰なのか?」「自分はここで何をしているのか?」と問うてきました。なんと、彼は記憶喪失者だったのです!ウェザー以来だな。
すると、唐突に彼はブクブクと溺れ出しました。なんか、流れていた水が溜まっちゃってた模様です。その上、土の中は穴になっているようで、どんどん沈んでいく有様。色々とシュールな展開だなあ(笑)。目の前で溺れていく彼の姿を見て、康穂はためらいつつも覚悟を決め、彼を救い出すべく腕を掴む!「どうせもう触っちゃったし、もっと触っちゃえ!」と、彼の体を打き抱え、どうにか救出に成功。康穂は思考や行動が一般人のそれで、共感できるキャラですね。人助けなんかに積極的に関わりたくはないけど、困っている人を放ってもおけない。そんなごく普通の心理にリアリティがあります。さすが広瀬の名を持つだけはある。


●ふとケータイの写メが視界に入り、それを見る康穂。そこには、星のアザがシャボン玉のようになって、肉体から浮かび上がっている様子が撮られていました。でも、彼を見れば、今は確かに星のアザが肩にある。これは一体?彼のスタンド能力の片鱗なんでしょうか?
彼の体に注目していたせいか、助け出して余裕が出来たためか、康穂は彼が素っ裸である事実に気付きます。スッポンポンなのに、帽子だけは脱がないってあたりが承太郎に似てますね。まだ水兵帽に「手形」が付いてないけど、正装したらちゃんと付くのかな?ともあれ、康穂は男の裸体に興味津々なようで、彼の股間をチラ見。すると、何かに驚いた様子で、今度はガン見。男のブツを目撃するのが初めてで、興奮しちゃってるんでしょうか?しかし、その理由は後で分かります。
……と、そこに康穂の名を呼ぶ、1人の男が現れました。性格のねじれた、ムカつくアホお坊ちゃんって感じのビジュアルです。コイツ、康穂が逃げていた例の男でした。彼の名は、東方 常秀(じょうしゅう)。ここでまさかの東方!虹村とか矢安宮とかの方がしっくり来そうなのに(笑)。やっと男手が増えて心強いと安堵する康穂ですが、常秀の様子がおかしい。それもそのはず。自分のホレてる女が裸の男と横たわっていたのです。常秀は石を拾い上げ、主人公に向かって行きます。殺す気満々です。状況を説明しようとする康穂ですが、常秀に引っぱたかれちゃいました。その時、主人公が目を覚まし、倒れる康穂の姿を目にするのでした。
主人公は常秀に立ち向かいます。無口だけど、正義感は強そうですね。でも、腕前は大した事ないのか、常秀にあっさりやられました。常秀は感情を抑え切れず、泣きながら「お前を殺してオレも死ぬ!」と、石でとどめの攻撃!すると、主人公の星のアザが、再びシャボン玉のように浮かび上がり、常秀の近くで弾けました。次の瞬間、常秀の両目も弾けて無くなっていたのです!突然の暗闇に慌てふためく常秀。「これなら楽勝です」とばかりに、主人公は常秀にボディーブロー。能力が解除されたのか、常秀の両目は元に戻り、彼は自分の吐くゲロが見える事に安心しながら気絶。主人公もまた気絶。
唖然ボーゼンなのは康穂です。幼なじみと裸の男が自分を巡ってケンカをし、ワケわからんままに両者気絶ですからね。そこに、ようやっと救急車が走ってきました。


●再び康穂のナレーションです。――この物語は「呪い」を解く物語。これが、その始まり。「呪い」とは、遠い先祖の犯した罪から続く「穢れ」。坂上田村麻呂が行なった蝦夷征伐から続いている「恨み」。人類が誕生し、物事の「白」と「黒」をはっきり区別した時、その間に生まれた「摩擦」。様々な解釈はあるものの、とにかく「呪い」は解かなくてはならない。さもなくば、「呪い」に負けてしまうか。
う〜む、ここで言うところの「呪い」って何なんでしょうかね?いずれの解釈にしても、古来から溜まり続けてきた人々の「負の思念」という点は共通していますけど。その「呪い」が形となって現れたものが「壁の目」であり、主人公の記憶喪失なんでしょうか?いや、スタンド能力もなのかな?思えば、「SBR」でも「悪魔の手のひら」によってスタンド能力を身に付けた者は、「呪われた者」とされていましたしね。「悪魔の手のひら」と関連があるんでしょうか?
そもそも「壁の目」は、自然物とは考えにくい気がするんですよね。人為的に造られたかのような、そんな奇妙な形のオブジェ。例えば……、大昔に何者かが造り上げた、「負の思念」を封じるための装置(結界)だったりするのでは?「負の思念」は留まり続けていると、やがて悪霊のようなものになって、その土地や住人に不吉を招く。だから、あちこちの「負の思念」を引き寄せて集め、封じ込める装置を造る事で、土地を清めていた。ところが、未曽有の大震災によって、その装置に異常が発生。溜め込み続けていた「負の思念」が徐々に漏れ出してきた。(「連載開始前予想祭り」での予想を使い回すと、)凝り固まった「負の思念」はやがてハッキリと形を持ち始め、「妖怪」と呼ばれる存在と化し、人々の心身を傷付けるべく襲って来る。そして主人公達は、「妖怪」の「呪い」に苦しむ人々と町を救うため、行動していく。……とかね。
「呪い」を解く物語とは、「救済」と「浄化」と「祝福」の物語です。「ジョジョリオン」とは、「ジョジョが齎す福音」といった意味合いなのかもしれません(「エウアンゲリオン」=福音)。この物語は、被災した方々の心を救う、1つの道標として描かれるのではないでしょうか?今だからこそ描ける物語、今でなければ描けない物語。私もとくと拝見させていただこうと思います。


●最後に衝撃の真実が暴露されました。なんと、康穂が目撃した主人公の股間には、タマタマが4つもあったというのです!チンコは1本なのに、タマは4つ!どんだけ生殖能力高いんでしょうか?「SBR」のノリスケさんはヘソが2つあったけど、それどころじゃないな(笑)。これは特異体質なのか、それとも「呪い」に関係しているのか?1話目のオチに使われるくらいなんだから、かなりの秘密が隠されていそうな予感。異性の体に詳しくないという康穂ですが、見間違いなんて事もないでしょうしね。「聖なる遺体」のタマタマじゃないよな?
タマだけじゃなく、とにかく彼には謎がいっぱいです。素性も名前すら不明だし。「東方」が出て来たなら、いっそ「空条」でもいいかも。で、常秀とナイスコンビを結成し、「空条」と「常秀」で「ジョジョ」!……とか。史上初のWジョジョってのも面白いのではないかと思います。ただ、6部ラストの新世界と繋げようとすると、アイリンとの兼ね合いが出て来そう。
彼のスタンド能力は、「泡」の能力でしょうか。「水」に触れている物質を泡化させる能力、とか。星のアザも、血液という水に触れているから泡化できたのです。常秀の両目も涙で濡れていたから、泡化させ弾けさせて、目を見えなくする事が出来たって事ですね。生まれ付いての能力なのか、強力な「負の思念」に刺激されたせいで引き出されたとかなのか?
まだまだ考えがまとまりませんね〜。その分、予想のし甲斐もありますが、初っぱなからジャイロ以上に謎が多い男です。


★今月は43ページ!出来ればもうちょっとページ数を増やしてほしいところですが、杜王町が舞台なんだし、ゆったりペースで続けてもいいかもしれません。それにしても「ジョジョリオン」、驚きの連続、予想外の連続でした。まさか「SBR」から120年もスッ飛ばして、現代劇にしてしまうとは。しかも、大震災をネタにしてしまうという徹底ぶり。登場人物や地図とかを見ても、4部で描かれた杜王町ではない事は確実ですが、被災した杜王町はなんとも痛ましいものです。でも、そんな町で懸命に生き抜く人々を描き切る事で、今まで以上に力強い人間賛歌が謳われるはず!今後も期待しまくりです。
面白いかどうかと訊かれたならば、正直、まだ判断が付きません。ただ、たった3人の登場人物のやり取りだけなのに、とっても楽しめました。個性的で人間味溢れるキャラが動いてくれると、それだけで魅力的です。舞台設定も謎めいていて興味が惹かれますし、やっぱり素直に「面白かった」と言って良さそうですね(笑)。
作者コメントは「前歯が虫歯になったので主人公がすきっ歯になりました。新作よろしくお願いします。」との事。え〜ッ!そんな理由だったなんて!さすがは作品を日記代わりに描くだけの事はあります。まったく、フリーダムすぎんぜ。いつまですきっ歯が描かれ続けるか不安ですが、すきっ歯が消えた時は先生の虫歯治療が終わった時と解釈するべきでしょうかね?



(追記)
●さっそく新たに予想してみました。主人公のタマタマについてです。
まず、結論から言うと、それは金玉ではありません。鉄球なのです!彼はジョニィの血統を受け継ぐ者。ジョニィはジャイロとの絆を子孫にも伝え続けるため、男子が産まれると、玉袋に小さな鉄球を埋め込む事にしました。それがジョースター家の由緒正しき伝統。物心付く頃から、親は子に繰り返し繰り返し何度も、先祖(=ジョニィ)の物語を話して聞かせます。そしてその男子は、本当に守りたい人が、本当に戦わなくてはならない理由が出来た時、自らの玉袋から鉄球を取り出し、武器とする事が許されるのです!きっと主人公も、徐々に記憶を取り戻し、やがてはマイ鉄球で果敢に戦う瞬間が訪れるでしょう。

と、しょうもないネタはそのくらいにして、ここからマジ予想。
まず、結論から言うと、それは金玉ではありません。彼自身の「記憶」なのです!記憶そのものか、はたまた右脳と左脳の一部かは分からんけど、とにかく「記憶」が球体になって、玉袋の中に落っこちちゃったのです。だから、彼は記憶が無くなっているんです。じゃあ、なんでそんなけったいな事が起こったのかというと、それこそが「呪い」なワケですよ。
大昔からこの世に溢れる「負の思念」を一ヶ所に集め、封じ込めるための装置が「壁の目」……という予想は前述の通り。そんで、「壁の目」が地震でブッ壊れ、そこから漏れ出した「負の思念」が固まり、「妖怪」と化す……とも予想しました。あるいは、「負の思念」に取り憑かれた人間は、邪悪な心と才能を引き出されるのかもしれません。普通にスタンド使い的存在となるのか、「妖怪」的なバケモノになっちゃうのか。それはともかく、「負の思念」は善良な人々を襲い苦しめ、さらなる「負の思念」を生み出し、ばらまいていくのです。これが「呪い」の恐ろしさ。
……で、主人公も「壁の目」付近にいた時、襲われちゃったんですね。その敵は、いわゆる「河童(カッパ)」。カッパは主人公の服を破くと、左肩に不思議なアザを発見。それにガブリと齧り付きます。本来ならば、噛み付かれた者の「魂」は球体となり、肛門へと移動します。カッパはそれを肛門から引き抜き、食っちゃうワケですよ。俗に言う「尻子玉」です。ところが、主人公は思いっきり抵抗した!思わぬ反撃を受けたせいで、カッパの能力(=「呪い」)は中途半端に効果を現してしまいました。それで、「魂」ではなく「記憶」が、肛門ではなく玉袋へ移動してしまったんです。
結局、カッパはそのまま逃走。主人公は記憶を失ったまま、裸で気絶。しかも、カッパの「呪い」を受けたため、彼の眠っていた能力も発現!それがあのスタンドです。しかし、カッパは諦めていません。獲物である主人公を、虎視眈々と狙っているのです。さながら、アンジェロの『アクア・ネックレス』。つまり、カッパさえ倒せば、主人公のタマタマも2つに戻り、記憶も取り戻せるのです。

――こんな予想でした。「んなアホな」って思われそうですが、私は至ってガチです。過去からの「負の遺産」とも言うべき「呪い」から、人々を解き放つ物語。同時に、大震災という未曽有の大厄災に見舞われた人々が、未来へ歩き出すための物語。「ジョジョリオン」を応援すると同時に、被災された方々も応援したい。そう祈れるような物語になると思っています。




(2011年5月18日)
(2011年5月18日:追記)




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