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行くのやめたよ
今は病院へは行かない……
帰る……


#016 追跡者





トビラ絵は、敵スタンドであるライダーの紹介。これを見て、まずいきなり「えええッ!?」と声を上げてしまいました。なんとスタンド名が『ゴーイング・アンダーグラウンド』だったのです!元ネタが「The Jam(ザ・ジャム)」の曲名なのか、日本のロックバンド名なのか、はたまた別の何かなのか……はさて置き。じゃあ、コミックスのサブタイトルだった『ペイズリー・パーク』『ボーン・ディス・ウェイ』はどうなるんだ?そのどっちかがライダーの名前だと思ってたのに。荒木先生ったら、またやらかしちゃった?それとも、ちゃんと意味や考えがあっての事?軽く混乱しました。無理矢理こじつけるなら、どれかがバイクの名前だったりして。『ゴーイング・U』が乗る「ボーン・ディス・ウェイ号」……みたいな。バイクだけを発現させて乗ったり出来るんなら、その可能性も高くなりそう。
今回のサブタイトルにしても、#013と同じ「追跡者」でした。まあ、今回はついにライダーの本体が明らかになるワケで、#013とは「追跡者」の意味合いも変わっていますけど。それに、コミックスになる時には別のサブタイトルになるから、別にいいっちゃあいいんですが。正直、最近は「ジョジョリオン」本編以外の仕事も忙しいでしょうから、そのせいで細かい部分が忘却の彼方へ消え去ってる恐れは充分にありますな(汗)。
とにかく、トビラ絵の『ゴーイング・U』自体はとってもカッコ良かったです。顔は変テコだけど、シルエットがたまらなくステキ。


●猛然たるパワーで定助を鉄柱に叩き付けんとする『ゴーイング・U』!定助は『ソフト&ウェット』の指先に「しゃぼん玉」を出現させ、なんとか攻撃に転じようとします。ところが、『ゴーイング・U』が急ブレーキを掛けてバイクの後輪が浮かんだため、定助はバランスを崩し、一気に前輪タイヤにマトモに巻き込まれてしまいました。その時、定助はふとケータイのナビを思い出します。『ゴーイング・U』がすでに出現している今なら、何を「開け」ようが構わない。閉じてしまっていたケータイを開き、ナビを確認します。
ナビはのんきにUターンを指示していますが、現実的にそれは無理!ならばと「迂回路」を教えるように、ケータイに叫びます。すると、ナビが勝手にある番号へと電話を掛け始めました。受話器の向こうの声は「杜王タクシー」。そう、ついさっきドアを開けてしまったタクシーへと繋がったのです。定助はタクシーの運ちゃんに「ドアを閉じろ」と絶叫。次の瞬間、『ゴーイング・U』の姿は掻き消えました!不審に感じながらも、運ちゃんはドアを閉じてくれたようです。ギリギリセーフで鉄柱への直撃は免れ、吹っ飛ばされた勢いのまま、後方に転げ回る定助。ようやく止まって、改めて周囲を見渡しても、そこには誰の姿もない。辛うじて命を拾う事が出来ました。


●ズタボロになって、危機一髪の状況で助かったばかりの定助は、それでも余裕顔で「勝ったな」と宣言ッ!何故かピョンピョン跳んで塀の向こうを覗き込んだり、クンクン匂ってみたり、おかしな行動を取っています。その理由は……、さっき『ゴーイング・U』が消滅する瞬間、「しゃぼん玉」をヤツの体にくっ付ける事が出来たから。その「しゃぼん玉」の中には、バイクが出した衝撃音やタイヤの擦れる音、まき散らしたゴミの臭いなどがたっぷり詰め込まれているようです。言わば、あの時間・あの場所の定助周辺の「環境」そのものを閉じ込めたのです。
病院からさほど離れていない場所で、バイクの音が聞こえました。つまり、そこで「しゃぼん玉」が割れたという事。そこに『ゴーイング・U』が戻ったという事。そこに本体がいるという事。定助がそこへ向かうと……、ある人物が立っていました。見覚えのあるその人物は、急に発生した異音と異臭を不思議に思っている様子。生ゴミの臭いに釣られて集まって来たカラス達を見上げたりしています。――その人物は、東方家の家政婦。虹村さんだったのです!結んでいた髪を下ろしていて、ちょっと雰囲気が違いますけど、間違いなく虹村さんの姿です。どうやら書斎の掃除中、テキトーに本に挟まれていたしおりを見て、定助の行動に気付いたっぽい。定助もそこはもうちょっと慎重にやっとけよ(笑)。
定助が虹村さんの後ろ姿に話し掛けると……、振り向きざまに彼女はペンを放り投げてきました。反射的にそれを受け取った定助の手の中で、ペンのキャップが外れてしまいます。つまり、ペンが「開いた」。定助の頭上に再び出現する『ゴーイング・U』!しかし、ヤツが攻撃を仕掛けて来るよりも早く、『ソフト&ウェット』の拳が虹村さんの顔面にヒット!せっかくの美人顔もメチャクチャになり(汗)、『ゴーイング・U』も解除されました。完全に彼女の上を行った定助ッ!


●長かったバトルもやっとこさ決着!ここから定助の尋問タイムです。ところが、てっきり憲助の命令で襲って来たかと思いきや、虹村さんから語られたのは意外な言葉。
「ホリー・ジョースターの所に行ったら殺してやる」
「東方家のやつらだって つきまとって必ず始末してやる」

東方家の命令ではなく、自分の意志で定助を狙ったらしい彼女。まるで東方家が自分の敵であるかのような言動。その上、なんと彼女の左肩にも「星型のアザ」が……!深まりまくる謎。一体、彼女は何者なんでしょうか?定助がさらに問い詰めると、彼女は悲痛な面持ちで涙を流しながら、なおホリーさんと定助を会わせまいとしてきます。自分の命に代えてでも絶対に阻止してみせる、という強い強い執念さえ感じます。
そのあまりに必死な姿を目の当たりにした定助は、ちょっと考えた後、病院に行く事をやめました。ホリーさんが病気だからなのか、理由はさっぱり分からないけれど……、自分の行動が虹村さんを追い詰め傷付けてしまうのなら、そんな事はしたくない。そう思っての決断です。自分の正体は、一旦帰ってから、また別の方法で探す事にしました。う〜ん、男だねえ。定助は記憶がないゆえに無邪気で純粋で孤独で、だからこそ、人の心の痛みにも敏感なのかもしれません。


●定助の優しさに心打たれたのでしょうか。虹村さんは泣き崩れながらも、帰ろうとする定助を引き止めます。定助が振り向くと、虹村さんはすぐ目の前にいて、いきなり舌を出してきました。定助にも「舌を出して」と要求してきます。唐突すぎるけど、なんかエロティック。今にも舌を絡めてキスしそうで。
彼女はそもそも、定助が本当に記憶喪失なのかどうかすら疑っていた模様。本当は記憶があって、自分の事も知ってて東方家に来たのではと思っていたようです。なんと、虹村さんはホリーさんの娘!吉良の妹?だから「星のアザ」があり、ホリーさんと定助を会わせたくない理由もその辺にあるみたい。定助を殺そうとしたって事は、母親であるホリーさんを守りたい一心って事です。同時に、定助の正体は、ホリーさんの命を奪いかねない危険な人物って事も意味するはず。そして、東方家はホリーさん入院の原因であり、「定助」の存在を生み出した原因でもある?そのため、自分の正体を隠して東方家に潜り込み、定助の動向も窺っていた?彼女の存在が家系図に書かれていないのも、重大な秘密が絡んでいそう。家と家の因縁血の呪縛。そういった「ジョジョリオン」の核心に迫るテーマ性が、徐々に浮かび上がってきた感覚です。
虹村さんに言われた通り、舌を出してみせる定助。すると、虹村さんは定助の顔をじっくり確認し、何かを確信しました。それは「つなぎ目」。よ〜〜く見ると、定助の眼球にも舌にも境界線のような「つなぎ目」があるのです。眼球が4つ、舌が2つ。やはり定助は、吉良吉影ともう1人の「誰か」が融合した存在なんでしょうか?キンタマが4つあるのもそのせいで、チャームポイントのスキっ歯も実は「つなぎ目」の1つだったって事?ホリーさんにこそ会えなかったものの、思わぬ人物から思わぬ手掛かりが得られました。でも、知れば知るほど、残酷な真実が待ち受けていそうで怖いですね。


★今月は33ページ!依然、ページ数は少ないか……。でも、バトルが終わって、ストーリーが動き出した注目すべき回でした。まさかの事実が次々と発覚し、今後の展開にも大いに期待を抱かせてくれます。ただ、『ゴーイング・U』の頭部が露出して弱点発見!……みたいな前回のフリがまるで無視されてましたね。そーゆー部分も含めての「ジョジョ」ですし、アニーバーサリー・イヤーでいろんな仕事が来るのも分かりますけど、やっぱ「ジョジョリオン」の連載にこそ力と時間を注いでいただけると嬉しいです。
作者コメントは「超人懐っこいドーベルマンが近所を散歩してるんだけど、僕は信用してない。できるわけない。」との事。ダニーを焼き殺したりと、多くのいたいけな少年少女読者の心に傷を負わせたであろう荒木先生です。犬になんか恨みやトラウマでもあるんでしょうか?
そして、「ジョジョ」25周年の(たぶん)最後を締め括る大事件がッ!荒木先生からの、ちょっぴり早いクリスマス・プレゼントです。12月22日(土)発売の「SPUR」2013年2月号に、オールカラー読み切り短編「徐倫、GUCCIで飛ぶ」が掲載されるとの事!うおお……、またまたやってくれたぜ。さっきはああ言ったけど、「ジョジョリオン」以外の作品を読めるってのも、それはそれで嬉しい。複雑なファン心理です。徐倫のスピンオフとは予想外でしたが、「ジョジョ展 in Firenze」のキービジュアルにも描かれているんだから、当然と言えば当然か。きっとフィレンツェ展では原画も展示されるんだろうなあ。男性の露伴とは異なった、女性ならではの描写も気になるところ。いや〜、楽しみ!6部序盤でしきりに「飛びてー」「飛びてー」言ってた彼女が、ついに飛べたのも感無量ですね(笑)。



(追記)
「定助」という存在は、吉良吉影と「誰か」が融合して生まれた人間であると仮定します。……で、そもそも、今の定助はどういう状態なのか?
定助の眼球や舌、歯などには「つなぎ目」があり、2人分が繋がっているようです。しかし、吉良の死体には、恐らく眼球も舌も歯もちゃんとあったはず。無かったのはキンタマ(袋ごと)のみ。そうじゃなかったら、もっと事件性が強まって、警察も定助をそう簡単には手放したりしなかったでしょう。実際、吉良の死体に眼球らしき物も描写されていましたし。また、眼球や舌はじっくり見ないと「つなぎ目」も分からないくらいのものなのに、定助のキンタマが4つあるっていう事実は、男性経験がないらしい康穂でさえ一目で気付いています。何故か、タマ袋はしっかり融合しておらず、2つぶら下がっている状態なのです。今回の話を読み終わった後だと、このキンタマの特異性が浮き彫りになってきました。
考えられるのは、このキンタマこそが全ての始まりであるという事。何らかの手段で、吉良のキンタマが別の「誰か」の肉体に移植されました。キンタマの中では、吉良の遺伝子がたっぷり詰まった精子が作られています。自分の遺伝情報の中枢であり、新たな生命の出発点……とも言えましょう。そんなキンタマパワーによって、「誰か」の肉体を「吉良」が侵食していくのです。「吉良」の情報が、定助の肉体にどんどん上書きされていくのです。つまり、定助の肉体は、徐々に吉良へ近付いているって事。吉良の肉体へと変貌を遂げつつあるワケですね。スキっ歯部分も、じきに真ん中から左右どちらかにズレてくるでしょう。
ただ、「つなぎ目」があるのは、どうやら皮膚の内側にある内臓だけのよう。心臓や脳なんかにも、ちゃんと調べれば「つなぎ目」がありそうです。逆に言うなら、この融合は外見はほとんど変化しないって事なのかもしれません。吉良のキンタマを移植された「誰か」は、定助とほぼ同じビジュアルだったんでしょう。もっとも、定助と吉良の服のサイズがピッタリだった事からすると、体格(身長や体重等)だけは変化してしまうのか、体格が近い者同士じゃないと融合がうまくいかないという可能性も考えられますけど。
しかし、中身はどんどん吉良になっていく。口の中の粘膜から採取したDNAも、ほぼ吉良でしたしね。取り戻したがっている記憶にしても、吉良の記憶だけが少しずつ蘇ってくる恐れがあります。今の定助は、肉体的に吉良と「誰か」がちょうど半々のバランスであるため、2人が共通して持っていた知識のみが残っているのです。だから、自分に関する記憶は失われています(『ソフト&ウェット』の記憶は例外?)。この均衡が崩れ、吉良の割合が大きくなった時、彼の脳に吉良の記憶が目醒めてしまうでしょう。やがては、完全に吉良の人格と魂が「定助」の肉体を支配するのです。キンタマも吉良の物のみが残るのかも。
ちなみに、この融合は、何者かのスタンド能力によるものかもしれません。でも、吉良と定助の2人が「壁の目」の地中に埋まっていた事から、やはり「壁の目」という特殊な場所・土地が持つエネルギーを利用した現象と考えるのが自然でしょうね。


虹村さんについても、色々と予想してみたいと思います。彼女はホリーさんの娘、との事。普通に考えれば吉良の妹って事になりますが、果たしてそうなのか?恐らく吉良と同一人物であろう定助を殺しに掛かってきた点と、彼女の存在が家系図に記されていない点から、「吉良の血は引いていない人間である」と推測します。では何者なのかと言うと……、ホリーさんが吉良吉輝と結婚する前に、別の男性と作った子どもなのです。実はホリーさん、バツイチだったのかもしれません。あの家系図が書かれた目的が、東方家とジョースター家と吉良家の結び付きを記すためであれば、前夫との子どもなんてわざわざ書く必要もないでしょうし。
「虹村」という名も、もちろん偽名。もし旧世界同様、ホリーさんが「空条」という男性と結婚していたとするなら……、彼女の本名は例えば、「空条 譲(ゆずる)」とか「空条 浄瑠璃」とか「空条 星見」とか、そんな感じだったり?まあ、主人公じゃないんだから、別に「ジョジョ」にこだわる事もないんですが(笑)。ひょっとしたら、「空条 承太郎」って名前の兄がいて、さらに「アイリン」という娘もいたりするかも。
それはともかく、彼女は東方家に家政婦として潜入しました。理由は、東方家の人間への憎悪。殺意まで抱くぐらいですから、よっぽどの事情があるんでしょう。それこそ、東方家のせいでホリーさんは吉良吉輝と結婚しなければならなくなった、とか。彼女の父である空条さん(仮)が殺された、とか。いずれにせよ、ホリーさんがおかしくなってしまった原因であり、虹村さんの家族の幸せをメチャメチャにした原因なのでしょう。実際には、すれ違いや誤解があるのかもしれないけど、そういう事であれば復讐を考えても不思議じゃありません。
ただ、そうなると、東方家の人間は空条家(仮)の事も知っているだろうって事になります。虹村さんの存在にしたって、きっと知っているはず。にも関わらず、東方家にバレずに潜入できているっぽいのは何故なのか?また、今回の彼女のセリフからすると……、もし定助に「吉良の記憶」があるのなら、自分の事がバレている可能性が高いと考えている節があります。東方家にも吉良にも存在を知られているのに、今のところ、何故か正体を隠せている。しかし、何故か吉良だったら見抜ける
その理由には、これまた例の融合が絡んでいるのです。そもそも、どうして彼女は定助の「つなぎ目」の事を知っていたのか?定助の記憶がない事を疑っていたのか?……彼女自身もまた、融合によって生まれた人間だからです。「虹村」という女性の肉体に自分の卵巣を移植し、その肉体を内部から徐々に奪ってしまったワケです。見た目的にはまったくの他人になっているため、元々の彼女は社会的には死亡扱いとなっているため、今まで誰にもバレずにいられたって事ですね。
そして、「壁の目」による融合を彼女に施した人物が他にいます。それが、定助の記憶の中に現れた男。その「記憶の男」は、吉良にも同じように融合を施したのでしょう。彼こそが「ジョジョリオン」のキーパーソンであると見ています。彼の正体や目的についても、新たな事実が明かされるたびに考えていかないとなあ。




(2012年11月18日)
(2012年11月20日:追記)




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