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あなたは心を落ちつけて受け止めること……
真実なのだから……


#017 家政婦の虹村とホリー・ジョースター





トビラ絵は康穂&定助!ちょっぴりアンニュイな表情の康穂、体の下の部分が徐々に「地図」になっていってます。彼女の影から発現するっぽいスタンドと、彼女本体の肉体が融合していくかのような描写。なんとも奇妙で面白い絵です。思えば、彼女は第1話冒頭から「『場所』とは重要だ…」と語っていました。まあ、これは「ジョジョリオン」の舞台である杜王町と「壁の目」の説明に繋げるためのモノローグではあるんですが……。まさしく、その「場所」を象徴するかの如きスタンド能力に、彼女は目醒めたワケです!
一方、定助は康穂の後ろで、どこかをじっと見つめているだけ。このトビラ絵を見る限り、今回は定助よりも康穂がメインになりそうな予感がしますね。


●ホリーさんの病室で騒ぎを起こし、警備員に外へと追い出された康穂。せめてもの抵抗か、彼女はウソ泣きしてみせるものの、警備員達はまったくノー・リアクション(笑)。そそくさと立ち去ると、向こうに定助の姿を発見!定助はタクシーのすぐそばで何かしている様子。康穂も定助のところへ向かおうとしますが、例の足首の傷が痛み出し、思わずしゃがみ込みます。バイ菌でも入っちゃったのか、と不安げな康穂。そして、顔を上げると、さっきまでいたはずの定助の姿は消えていました。代わりに、タクシーのドアだけが開いている。……そうです。これは、定助がタクシーのドアを開けちゃって『ゴーイング・U』に押し込まれている、まさにその時。同時刻、康穂サイドでも重要な出来事が起こり始めていたのです。
康穂のすぐ後ろで、口を切って緊急搬送された患者さんがフラフラと勝手に歩き出していました。そのため、患者さんを迎えに来た看護師さんは、康穂がその患者さんと勘違い。搬送用ベッドに康穂を寝かし、タオルで彼女の口元を覆います。再び現れたさっきの警備員達も、顔が隠れた康穂には気付きません。結局、無事にそのまま治療室へ!この異様な事態は、もちろん康穂のスタンドによる現象。こうなる直前、彼女は「ホリーさんが何の病気か、あたしには調べるのが難しそう」と呟いていました。つまり、「ホリーさんの病気を調べたい」という康穂の願いを叶えるため、スタンドが彼女本体をナビゲートしてくれたって事でしょう。やはり彼女のスタンド、偶然・因果・運命といった領域にまで及ぶスゴい能力を宿していそうですね。
彼女はケータイを落っことしてしまっていますが、きっとこれも必要だからそうなった事のはず。今、定助と連絡が取れなくなる事に、何か意味があるのでしょう。まだ定助と再会できない事に、何らかの必然があるのでしょう。


●康穂が運ばれた治療室からは、ちょうどホリーさんの病室が見えました。すぐに戻るからと看護師さんも退室している今こそ、ホリーさんを調べる大チャンス!
病室では、ホリーさんがドクター達と会話中。なんて事のない日常の会話……と思いきや、なんか違和感が。ホリーさんはしきりに、ナースの背中を足でグイグイしまくってます。マッサージでもしてるようにも見えますけど、ホリーさんは「このブーツ、小さくて入らない」なんて言ってるんです!さらに、ドクターの白衣をペラペラめくって「またこのエロ雑誌」とも言ってます。なんと彼女は、人間が物に見えているらしい。さっき康穂とも会話していたし、今もドクターと話しているのだから、常に全ての人間が……ってワケではなさそうですが。
この信じ難い症状には、信じ難い理由がありました。彼女の脳は、一部分が不自然に失われていたのです。まるで、人為的に「奪われた」かのように。それだけではなく、腎臓1つと肺の一部、胆のうまでもが失われている様子。しかも、手術跡などまったく無く。……これはもう、病気なんかじゃありません。何者かの意図が働いているはず。それも、強い悪意……!?ドクター達は、証拠が何もないから警察にもおいそれと言えない状態ですが、我々には心当たりがあります。何かを「奪う」スタンド能力を持つ人物に、心当たりが……。一連の会話を盗み聞きしていた康穂は、果たしてそれに気付けるのでしょうか?


●場面は一転ッ!病院の外で虹村さんのそばにいるのは……、何かを「奪う」スタンド能力を持つ人物。東方定助
自分の正体に繋がる大きな秘密を知っているであろう虹村さんに、定助は詰め寄ります。彼女はもう、定助を敵とは思っておらず、意外とすんなり知ってる事を色々教えてくれました。まず、彼女は吉良の妹でした。吉良の家で生きているのは、彼女とホリーさんだけらしい。しかし、彼女さえも知らない「秘密」が東方家にはあり、それを探るため、そして母:ホリーさんを守るため、東方家に「家政婦の虹村さん」として潜り込んでいるようです。つまり彼女は、ホリーさんがああなってしまったのは東方家が原因だと確信しているって事ですよね。彼女の存在が家系図に書かれていない事も含め、虹村さんの過去が超気になるぜ。
ところが、虹村さんの過去より自分の正体の方が大事な定助。街中では誰が聞いているか、誰が見張っているか分からない。虹村さんは場所を変えます。――そこは、やはり全ての「始まりの場所」。定助が埋まっていた、あの湧き水の場所。2人は「壁の目」へとやって来ました。近くには、石ノ森章太郎先生が根本で瞑想したといわれる松の木があり、その向こうに広がるのは東方家の敷地。
虹村さんは、持って来た「レモン」と「みかん」を地面に埋め、再び取り出します。そして、それらを半分に切る。その断面を見ると……、なんと「レモン」の中に「みかん」の実が、「みかん」の中に「レモン」の実が、それぞれちょっとずつ混じっていたのです。これこそが「壁の目」という土地が持つエネルギー。この土地の地面に埋めたモノは混ざり合い、「融合」してしまうのです!彼女がこの事実に気付いたのは、震災の日以降。「壁の目」が隆起して以降。しかし、東方家の誰かは、ずっと前から知っていた。先祖代々、この事実を伝承してきた。
正直、「融合」は予想してたけど、こんなにお手軽だとは驚きです(笑)。もっと儀式っていうか、秘術っていうか、いくつかの工程を踏まないといけないものだと想像してました。ただ、「融合」の度合いは、埋まっていた時間によって変わったりするのかな?「レモン」と「みかん」は数秒程度で実が2個ずつ入れ替わってたけど、人間だと数時間かけてやっと半分ずつ「融合」できる……とか?


●知りたがっていた自分の正体。でも、真実はあまりにも残酷。実が混じり合った「レモン」と「みかん」を目の当たりにし、自分の身に起きた事を悟った定助の目から、涙が溢れ出します。自分は自分。ここにいて、考えている自分は、間違いなく自分。自分は自分以外の何者でもない。そんな、この世の誰にとっても当たり前の事が、定助の中で崩れ落ちていきます。自分は自分……じゃない?その孤独と絶望たるや、この世の誰にも想像できないでしょう。必死に「自分」を保とうとする定助の哀しい姿に、虹村さんも涙を堪え切れません。
「オレはいったい誰なんだッ!?」「答えろォオオオォォ―――――――ッ!!」
定助の涙混じりの絶叫が響き渡ります。これは切ないです……。マイナスからゼロに向かうジョニィも切なかったけど、定助はその「ゼロ」すらどこにあるのか分からないんですからね。どんな形であれ、自分だけの人生を歩んだ積み重ねは「自分」という最後の拠り所になり得ます。全てが白紙のままの定助には、「自分」を支えるものも、その「自分」さえも形作られていないのです。定助にあるのは「空白」のみ。歴代ジョジョの中で最も過酷な境遇に立たされているのは、間違いなく定助でしょう。だからこそ、彼の運命を最後まで見届けたいと思うし、彼の心の幸福を祈りたいです。


●定助の正体は、2人の人間の融合体でした。そのうちの1人は、虹村さんの兄である吉良吉影。血の繋がる妹だからこそ、虹村さんは感覚でそれを確信している様子。そして同時に、肉体のみならず、心まで「融合」している事も確信しています。その理由は、定助のスタンドにありました。精神の形であるスタンドが、吉良のものとは異なっているというのです。スタンドも「融合」している、という事。よく見れば、「しゃぼん玉」にも「つなぎ目」がありますよ。『ソフト&ウェット』という名も、2つのスタンドが合わさっている事を暗示していたのか〜。
虹村さん曰く、吉良のスタンドは触れると爆発する「しゃぼん玉」!そのヴィジョンは、まさしく『キラークイーン』!異次元のディエゴ然り、歴代のボスキャラは新世界においても非常に存在が近いんでしょうね。運命とか精神とか性格とかっていうより、とにかく「存在」の力が強すぎる。もっとも、新世界の吉良のスタンドは、触れた物質を爆弾にする能力は持っておらず、「しゃぼん爆弾」を放つだけの能力っぽいけど。……で、もう1人の方のスタンドこそが「奪う」能力だった可能性は高そうです。とすると、ホリーさんをあんな状態にしたのも、実はそいつの仕業?う〜ん、まだまだ謎は多い。
その肝心の「もう1人」の正体は何者なのか?どこから来たのか?それもきっと東方家が知っているはず!次に定助がする事は、その「もう1人」を突き止める事ッ!定助の「空白」を埋める冒険は続きます。


★今月も33ページ!ページ数は少ないものの、やっぱストーリーが動く時は濃密濃厚です。めっちゃ盛り上がったし、最高に面白かった!けっこうテンポ良く謎が解かれているのにも関わらず、全体像はまるで見えて来ず。謎が謎によって包まれていて、物語への興味が刺激されまくりです。何か良さげな予想でも思い浮かんだら、また追記したいなと思います。
作者コメントは「藤子A先生のところに遊びに行った。優しい先生。ああなりたいなあ。」との事。「ジャンプSQ.」1月号(2013年)の「PARマンの情熱的な日々」によると、A先生も「ジョジョ」が大好きとの事。それまであまり接点がなかったようですが、件のパーティー以降、お2人に繋がりが出来たのはファンとして嬉しいですね。
12月22日に発売される「SPUR」2月号(2013年)に掲載予定の、「徐倫、GUCCIで飛ぶ」広告ページ。初公開のカラーイラストが2点!どちらも美麗ですが、「ジョジョ展」フィレンツェ展のキービジュアルで着ていた服のイラストは要注目です。徐倫の可愛さももちろん、彼女の背後に佇む子どものユニコーンっぽいスタンド(?)は何者なのか?さらに、徐倫のイラストが世界各国のGUCCI直営店のウインドーデザインとして使用されるらしい!いろんな面で、絶対に見逃せない作品です!



(追記)
●では、また色々と予想してみたいと思います。イヴの夜に何やってんだお前、ってCOOLなツッコミは無しの方向で。


@「もう1人」の正体は?
「定助」の元となった、吉良吉影と「もう1人」の人物。その「もう1人」の正体は誰なのか?最も順当な仮説なのかもしれませんが、空条家の人間って事にしときましょうか。主役を張る人物として申し分ないし、ラッシュも「オラオラ」ですしね。で、空条家だとすれば、やっぱりホリーさんの息子でもあるって設定にした方がしっくり来ます。吉影と半分くらい似ていて、見間違えられてしまう程ってのも、(「融合」している事に加えて)異父兄弟であるならば頷けましょう。
「壁の目」による「融合」は、外見はほとんど変わらない様子。つまり「もう1人」は、今の「定助」とほぼ同じ外見であったはず。「定助」は推定19歳。作中での年代は2011年。これをそのまま当てはめれば、彼は1992年生まれと推測されます。ホリーさんが彼を妊娠したのは、恐らく1991年。1991年とは、ホリーさんの夫である吉良吉輝が死亡した年でもあります。これらはきっと無関係ではないでしょう。もしもホリーさんと吉輝の間に愛情がまったくなく、未亡人になったホリーさんの前に魅力的な男性が現れたとしたら、その人に心惹かれたとしても不思議じゃありません。あるいは、吉輝の死因にすら何か関係があったりして?
いずれにせよ、ホリーさんは「空条」という男性と出会います。世界ツアー中のミュージシャンか、フィールドワーク中の海洋学者かは分かりませんが、とにかくホリーさんは彼の仕事に専属の医師として同行。その間に関係が深まり、やがて子どもを授かったってワケです。その子が「もう1人」の人物。名前はそのものズバリの「承太郎」か、はたまた「情太郎」とか「浄太郎」とか?「呪い」を解く物語なんだし、ここは仮に「浄太郎」とでも呼んでおきましょう。……しかし結局、2人が結婚する事はなく、息子「浄太郎」は空条さんが引き取ります。そのため、1つの土地に落ち着いて生活する事もなく、他人と深く関わらない人生を歩んでいたのかもしれません。行方不明の彼を捜索する者がいないのも当然です。
一方で、ホリーさんが空条さんと同行中、吉良兄妹は遠い親戚の東方家に預けられます。そこで吉影は、東方家をこっそり探り回って、自分の血筋や「壁の目」の「秘密」について調べていったのかも。この時点で、吉影は9歳。東方家の長男・常敏は12歳。「融合」に常敏も関わっているのなら、2人の繋がりはこの時に出来たのでしょう。東方家のあちこちに刻まれた本屋のマークも、この時、2人が彫ったのです。こんなガキの頃から、2人は「融合」で何かを企み、合言葉のようにマークを使っていたのでしょう。
ちなみに、長女・鳩さんはまだ4歳なので、この時の記憶はほとんど残っていません。逆に、東方家の連中が虹村さんの正体に気付いていないのも、2歳そこらの彼女しか知らないからです。(あるいは、さすがにまだ幼い虹村さんはホリーさんと同行していたのかも。東方家には吉影1人だけが預けられた、と。だとすれば、東方家はそもそも彼女の存在自体、知らないままという可能性もありますね。)

A吉良吉影の目的は?
#011の「もっと追記」での予想をちょいと流用する形になりますが……、実は、吉良家はもともと東方家だったのです。初代・憲助さんにはがいて(名は「憲吉」とか?)、その血筋です。閉鎖的・保守的な考えの彼らは時代に取り残され、次第に落ちぶれていきました。その末裔が吉良家。対して、開放的・革新的な考えの憲助さんの血筋は、「東方ふるうつ屋」を繁盛させ、土地の名士にまでなりました。本来なら東方家の繁栄と名声は自分達のものだったはずなのにと、吉良家は東方家に強い恨みを抱いています。
吉良吉影の目的とは、東方家を本来あるべき「正しい形」に戻し、それを自分達のものとする事にあるのです。
東方の血は現在、東方家とジョースター家、そして吉良家の3つに大きく分かれてしまっています。と同時に、代々受け継いでいた「壁の目」の「秘密」までも、その3つの家系に散らばってしまっているのです。初代・憲助さんは、遠い異国アメリカに嫁入りする愛娘・理那さんに、東方家が古来より大切に守って来た「秘密」の一部を伝えていました。そして、これらの「秘密」の中にも、長い時間に少しずつ失われ、それぞれの家系にのみ残って伝わっていった箇所もありました。つまり、3つの家系の「秘密」を合わせて初めて、東方家に本来伝承されていた内容になるという事。あまりに危険な「秘密」だからと、東方家の祖先達が意図的に分けた部分もあるのかもしれません。
分かれた「血」と「秘密」を1つに戻す。そのために、吉輝はジョースター家の血を引くホリーさんに近付き、子どもを産ませました。そして吉影は、ジョースター家に伝わる「秘密」を母・ホリーから受け継ぎ、東方家の女に子どもを産ませようと企んでいたワケです。最終的には、その自分の子に「東方」の全てを受け継がせ、支配させたいと願っていたのです。それこそが吉良家の復讐。「壁の目」それ自体に、大して興味はありません。
「秘密」は代々、それを知るに相応しいと判断された子どもが30歳になった時に、親から教えられる。それが本来の正しい掟でした。ところが、吉影が「秘密」を教えてもらう前に、ホリーさんの様子がおかしくなってしまったのです。脳や臓器の一部が失われ、「秘密」の事など何も憶えていない。しかし、吉影は不自然さを感じ取り、ホリーさんの身辺を調べまくった結果、「空条家」の存在に気付きます。「浄太郎」は、触れたものから「何か」を永続的に奪い取るスタンド能力を持っていました。吉良家の穢れた野望に勘付いてしまったホリーさんは、密かに息子「浄太郎」を杜王町に呼び付け、自分が知る「秘密」を彼に託していたのです。そこで吉影は、空条の血をも自らに取り込もうと企てました。「壁の目」によって「浄太郎」と「融合」する事で、彼が持つ「秘密」を自分のものにしようとしたのです。
ちなみに、吉影の妹である虹村さんは、兄に関する事情は詳しく知りません。それでも、東方家に対して敵意と嫌悪感は抱いており、母の異常や兄の「融合」等は東方家のせいと思い込んでいます。母を元に戻すため、東方家の「秘密」を探っています。実際、東方家も決して無関係じゃないので、結果的に当たらずとも遠からずですが。

B東方憲助の目的は?
未だ姿を見せた事のない彼の妻・花都さん。そして、幼いのに何故かグラサンをかけている孫・つるぎちゃん。この2人が大きく絡んでいるのです。なんと、この2人も「壁の目」によって「融合」しちゃっている状態なのです。3月11日、2人は近所を散歩中に震災に見舞われ、生き埋めになってしまいました。間もなく救出されたものの、この時、2人は偶然「融合」してしまったのです。グラサンを外したつるぎちゃんの目にも「つなぎ目」があるし、花都さんは東方家の別棟で隔離されています。
東方憲助の目的とは、「融合」してしまった妻と孫を元の姿に戻す事なのです。
最愛の妻と、目の中に入れても痛くない孫。2人のためならば、憲助は他人を犠牲にする事も厭いません。そのために「定助」を引き取り、彼を利用しようとしているのです。あいにく、東方家の「秘密」が3つに分かれてしまっている事実を、憲助は知りません。東方家でそれを知るのは常敏だけ。また、東方家に伝わる「秘密」だけでは、「融合」したものを元に戻す方法も分からない。
ただ、「定助」が吉良吉影と「誰か」が「融合」した存在って事は知っています。憲助にとって、「定助」は人体実験用のサンプル。妻と孫と同じ状態になっている「定助」に、様々な事を試し、その反応を観察すれば、元に戻す方法も発見できるかもしれない。しかし憲助は、さらに恐ろしい事を考えています。定助1体だけじゃ心もとないので、もっと多くのサンプルを用意したい。どこかの誰かをさらって「融合」させ、実験を繰り返したい。その実行を「定助」にやらせて、最後は彼に全ての罪を被せ、自殺させよう……と目論んでいるのです。そのためには、むしろ余計な記憶を取り戻させる事なく、身も心も自分達の奴隷にするべき。記憶のない無垢なままで洗脳し、どんな命令も疑わずに実行する奴隷に。そう考えているのです。

C東方常敏の目的は?
まず彼は、吉影との関わりも深く、「秘密」についてもけっこう知っています。もちろん、吉影の本当の目的は知る由もありませんが、吉影の協力者として暗躍しています。まあ、吉影からは「いろんな人から恨みを買っていて危険だから、別人として生まれ変わりたい」程度にしか聞かされていないんでしょう。常敏は、そのために「壁の目」の使用に協力する代わり、吉影にも見返りを求めています。「融合」による生まれ変わりが成功したら、知っている「壁の目」の「秘密」を全て教えろ……と。
母・花都さんと娘・つるぎちゃんの「融合」を解こうとしているのではありません。むしろ彼は、跡継ぎになれない女の子であるつるぎちゃんに対しては、まるで無関心。非常に優れた能力を持ち、長男としての責任感とプライドが高い彼にとっては、とにかく「家」を守る事こそ最重要事項。しかし、運命の悪戯か、つるぎちゃんが産まれて程なくして、彼はインポテンツになっちゃったのでした。どうしても治らず、彼はついに最後の手段を思い付きます。それが「壁の目」による「融合」
東方常敏の目的とは、「融合」を繰り返して生まれ変わり続け、東方家を自分が永遠に守っていく事だったのです。
優秀な自分がずっと生き続けられるなら、東方家は永遠に繁栄していくに違いない。そのためには、「壁の目」の全てを知り尽くす必要がある。自分の精神や記憶をほんの少しも失う事なく、永遠に引き継がせる方法。それを知るには、吉影が握る「秘密」を手に入れる以外にない。……だからこそ、吉影に協力しているのです。今は憲助が妻と孫のために我を失っているので、とりあえず不干渉・静観の立場。でも、いざとなれば、彼は「定助」の記憶を取り戻させるために動くでしょう。

D「記憶の男」の正体と目的は?
桜二郎とのバトル中、「定助」の記憶の中に過ぎった謎の男の正体は?……なんと、ディエゴ・ブランドーの子孫なのです。名前は、例えば「汐華 初流斗(しおばな はると)」とか?ディエゴはまさにスティール・ボール・ラン・レースの真っ只中で、初代・憲助さんの応援に駆け付けていた日本人女性を妊娠させていたのです。その子孫こそが「記憶の男」。
血筋ゆえか、彼も先祖譲りの強い上昇志向と野望を持っています。表向きは、杜王町で地質学だか民俗学だかの大学教授を務めており、東方家とも代々親しい家柄。しかし、ディエゴの血が混じってからの、この100年余り。彼の祖先が少しずつ、東方家の「秘密」に迫っていたのです。彼はすでに東方家のみならず、ジョースター家と吉良家の内情についても調査済み。吉影や常敏とも接触しています。狙いは「壁の目」。彼らには「研究者としての純粋な好奇心」とか何とか言って協力しているものの、もちろん真の目的はまったく違うところにあります。
「記憶の男」の目的とは、「壁の目」を完全にコントロールし、この世を統べる力を得る事にあるッ!
「壁の目」は、言わば「融合装置」。どんなものでも「融合」し、「新しいもの」を生み出す事が出来ます。しかし、もしそのパワーを逆に使ったとしたら、「分解装置」にもなり得るはず。あらゆるものを剥離・分裂・分解し、消滅させる事も出来るはず。つまり、全てを「1つ」にする力でもあり、同時に全てを「ゼロ」にする力でもある。「有」と「無」を支配する力。無敵の力。それこそが彼の求めるもの。そのためには、東方家・ジョースター家・吉良家の人間を利用し、「壁の目」の全ての謎を暴かなければならないのです。

E吉良吉影と「もう1人」を埋めたのは誰なのか?
ここまでの予想で書いたように、常敏と「記憶の男」吉影の協力者です。まず吉影は「融合」当日、自室にて桜二郎に囚われてしまっていました。しかし、どうにか脱出・逃亡に成功。その後、帽子屋「SBR」で、オーダーメイドの帽子を購入しました。そしてその日の深夜、「浄太郎」を人気のない場所に誘き寄せ、彼に襲い掛かります。吉影に意識が向いている隙を狙い、常敏と「記憶の男」は「浄太郎」を攻撃して気絶させました。
そのまま「壁の目」に移動し、吉影と「浄太郎」を土に埋めます。余計な情報が残らないよう、2人とも素っ裸に。(「浄太郎」が杜王町に持って来た荷物も全て回収し、処分しておきます。)唯一、吉影が購入した帽子だけ、「浄太郎」に被せておきました。また、吉影は自分の手首に本屋のマークを書き残した上で、スタンドで自分の心臓を止めてしまいます。「融合」後の自分を、「吉良吉影」という名前と「東方家」の存在へと誘導するために。
ちなみに、吉影の目的はあくまで、吉良家による東方家への復讐にあります。「融合」したとは言え、遺伝子までゴチャ混ぜになってしまっては意味が薄れてしまう。だからキンタマだけは、他の臓器とは異なり、半々ではなく丸々「浄太郎」の肉体へ移動させました。東方家と吉良家に伝わる「秘密」を合わせれば、そのくらい「融合」も自在に行えるワケです。そして、吉影の精神や記憶も同じように、丸々「浄太郎」の肉体へ。そうする事で、「融合」後も外見以外の全てが、吉良吉影のままで引き継がれる事になるのです。今はまだ、それが完全に目醒めていないだけ。
……2人が土に埋められた翌日、常秀と康穂がその場所を訪れました。それも偶然ではなく、常敏や憲助が「康穂ちゃんでも誘って恋人岬でデートして来い」と、常秀をけしかけていたからです。何も知らない常秀の方が、「定助」の発見者としては怪しまれずに済むはず。結果的に、それは狙い通りになりました。ただ、「定助」が康穂に懐いてしまい、康穂も「定助」に惹かれるというのは予想外のアクシデント。自分の居場所も進むべき方向も分からない「定助」にとって、康穂は「地図」となり「道標」となってくれる存在。これが果たして、吉影達の企みにどう影響してくるのでしょうか?


――このように、各々の思惑と血統が複雑に絡み合う人間模様が描かれるのではないか、と予想します。




(2012年12月18日)
(2012年12月24日:追記)




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