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ジョニィ・ジョースターは
愛する人のために
「遺体」を掘り起こした


#021 カツアゲロードの秘密





●ウルジャン今月号は「ジョジョリオン」が表紙&巻頭カラーです!表紙イラストは、承太郎ばりの指差しポーズを決める定助!人差し指の先には「しゃぼん玉」がくっ付いています。とってもカッコイイんだけど、承太郎のようなビシッとした感じがなくて、どこか愛嬌があるのが定助らしい。そして、定助の背後には康穂の後ろ姿。普段とは違うファッションがまたオシャレですね。カラーリングも全体的にブルー&ホワイトで統一されており、近付いてくる夏に向けてピッタリの涼しげな絵となっています。
続いて、トビラ絵は定助・康穂・常秀・大弥ちゃんの4人。それぞれSEXYなポーズで魅せてくれます。女性陣に至っては、ファッションも一新ッ!大弥ちゃんの蠱惑キューティーなエロス、康穂のCOOLビューティーなエロス。うむ、どちらも甲乙付け難しッ!そんなSEXY合戦の中、定助だけはポケットに手を突っ込み、どっか明後日の方向をボケ〜ッと眺めています。まあ、天然・純朴というか、のんびりマイペースというか……、こういうトコが定助の魅力でもありますね。


●さて、本編。いよいよ現れた常秀のスタンド!そのヴィジョンも明らかになりました。その能力が示す通り、全身ネジだらけの人型スタンドです。腕は『ソフト&ウェット』並みに細く、パワーはあまり強くなさそう。でも、その能力によって、トリッキーに立ち回れるであろう事は間違いなし。個人的には、能力もヴィジョンもスゲー好みですよ。全スタンド中でもトップクラスに好き。残念ながら、スタンド名はまだ不明ですが、今後に大いに期待できますね!
そんな常秀のスタンドにより、手をボドンッと地面に落としちゃったチンピラ。それでもなお、常秀に襲い掛かるものの、「ネジ」は彼の体をもっとバラバラに分解してしまうのでした。あまりのパニックっぷりに「PANIC!」なんて擬音まで出て来たし(笑)。その上、2乗4乗……と、どんどんPANICもデカくなってる。なんだ、こりゃ(笑)。なんともシュールな状況ですが、この混乱に乗じて常秀はトンズラ成功。能力射程外になったからか、チンピラの手も元通り。……かと思いきや、手が左右逆にくっ付いちゃった!まあ、コスズルい小悪党だし、因果応報ってヤツですかねえ。


●まんまとカネをせしめ、ちょっと離れた公園まで逃げ込んだ常秀。「ネジ」が自身の能力である事を早くも自覚し、大金も見事ゲット!勝利の余韻に浸って、余裕ぶっこいてます。これで定助は逮捕され、しばらくオサラバとなるワケで、ちょっぴりセンチな気分にもなっている様子?
人の家でふんぞり返ってる上に記憶もないとは気持ち悪いヤツだけど……、意外と心が真っ直ぐでいいヤツだったな、と。けっこう一緒にいて面白いし、育ちも良さそう。罪を償って、いずれシャバに戻って来たら、駅前の広島風お好み焼きでもおごってやろう。――涙を流しながら、笑ってそんな事をつぶやいています。ホント、ロクでもねえ野郎だな(笑)。でも、浮かれて調子に乗ってるだけとは言え、少しずつ2人の関係性も変化しつつあるように思えます。一度、共通の目的に向かって協力し合えば、一気に打ち解ける・か・も?


●ところが、常秀の思惑通りにハメられるほど、定助は迂闊ではありません。なんと、常秀がくすねたはずの札束がない!代わりに封筒の中に入っていたのは、銀杏の葉っぱ!さらに、葉っぱは常秀の服の中にも!一方、警官に取り押さえられた定助サイドはと言うと、例の包みの中に麻薬……ではなくて、キャンディが入っている事が発覚。それもそのはず。所詮、定助達は「囮」に利用されただけ。そんなヤツにガチでヤバいブツを預ける理由などないのです。そして定助、いつの間にか30万円程の大金まで持っていました!もちろん、これは常秀から奪ったもの!
定助は常秀が逃げ出す際、『ソフト&ウェット』の「しゃぼん玉」を銀杏の葉っぱにくっ付けていたのです。葉っぱ程度の物なら、「しゃぼん玉」で浮遊させる事が可能みたい。無数の葉っぱはフワフワ漂いながら、定助と常秀を繋ぐ空中のレールとなりました。あとは、カネが勝手に定助の元へ滑って移動して来るのみ。
定助はゲットした大金で、さっきのペットショップに弁償しに行く模様。律儀よのう〜。その場を立ち去るついでに、「勝ったのはオレです」と宣言!しかし、それだけでは満足できなかったのか、もう一度「勝ったのは… オレです!」と勝利をたっぷり大宣言ッ!満足気にドヤ顔してます(笑)。結局、「カツアゲロード」の連中よりも、警官よりも、常秀よりも、誰よりも上手だったのは定助でした!さりげに公務執行妨害もうやむやになり、晴れて無罪放免です。


●これにて「カツアゲロード」編は終了!どうやら銀杏の葉っぱのスタンド、本体らしい本体はどこにもいないらしい。謎は謎のまま。「不思議な場所だ」の一言で流されちゃってますが、この設定が後に布石として活きてくるのかもしれません。
大金と一緒に、ちゃっかり常秀のケータイまでいただいていた定助。さっそく康穂に電話です。しかし、なんと常秀は康穂に着信拒否されてました(笑)。運命はなかなか2人を引き合わせてはくれないようですね。ちなみに、定助って康穂の事を「康穂ちゃん」って呼ぶようになったのかな?「康穂」と呼び捨ての方がしっくり来るんだけど、定助なりの親愛を込めた呼び方なのでしょうか?
――当の康穂ちゃんは、ただいま大学で受講中。クリップで「あめんボ」を作って水に浮かべて遊んでます(笑)。銀杏の葉っぱのスタンドにも似てる形だけど、最近、荒木先生はこのフォルムが流行中なの?そして、講義そっちのけでケータイまでいじり出す始末。着信拒否してるとストーカー化するし、優しくすれば図に乗るし、常秀のあしらい方を考えあぐねているようです。でも、意外とまんざらでもないようにも見えますね。乙女心は複雑だぜ。


●さあ、今回はここからが本番です。これから先の展開は凄まじいですよ!……ケータイのナビ機能で、常秀(のケータイ)の現在位置を知る康穂。そこはご存知「カツアゲロード」。そして、「カツアゲロード」には驚きの名を持つ場所があったのです。その名も「ジョースター地蔵」。検索して調べてみると、その地蔵はなんとジョニィ・ジョースターの鎮魂碑であるとの事。
その時、康穂は「ジョースター」という聞き覚えのある言葉の意味を思い出しました。東方家の家系図!そこにあった名前。また、ホリーさんが康穂に「家系図を調べて」と話していたみたい。でもそんなシーン、読み返してみてもありません。コミックス4巻に追加されたりしてるのかな?こっちだとコミックスは1日遅れで発売なので、まだ読めてないんスよねえ(汗)。(※後記:思った通り、やっぱそのセリフが追加されてましたね。)
さらに康穂は検索を続けます。すると、表れたのは明治時代の新聞記事。1901年(明治34年)11月13日の新聞。そこに書かれていたのは、まさに驚愕の事実ッ!――11日夕刻、来日中のジョニィが杜王町を馬で歩いていたところ、何者かに岩で撲撃されて死亡。その遺体頭部には、巨大な岩石が置かれていた。そして、重要参考人として、ジョニィの妻・理那さんが取り調べを受けた。……12月7日の新聞(「杜北新報」)には、ジョニィの死は落下した岩石による事故死と断定され、理那さんが釈放された事が書かれていました。さらに翌年5月23日の新聞には、ジョニィの死を悼んでお地蔵様をお祀りする事が記されていました。
康穂は講義を抜け出し、定助を捜しに出掛けます。なんとなく目に留まった「ジョースター地蔵」の文字。そこからホリーさんに、東方家に、繋がった。そして、定助にもどこかで繋がる?これは決して偶然ではありません。彼女自身のスタンドの導きなのです。全ては必然。嵐が来る前のような胸騒ぎを感じる康穂。果たして、今度こそ定助と再会できるのでしょうか?


●お互い求め合っているのに、出会えない定助と康穂。定助は件の「ジョースター地蔵」を発見します。すると、そこにペットショップのジジイ現る。もう定助をカツアゲするつもりはないらしく、ただ世間話をしに来ただけとの事。こうやって話すと、ジジイも普通の人っぽいですね。
地蔵は定助と同じ帽子をかぶっていました。だからこそ、定助の目に留まり、興味を惹いたワケです。どうやら近所の人達が地蔵の面倒を見ており、その帽子も例の帽子屋「SBR」がかぶせた物のよう。そして、かつてこの場所で死んだジョニィも同じ帽子をかぶっていたらしい。いつもの星まみれの帽子(バンダナ?)の上に、さらにまた帽子をかぶるとは……、ジョニィもなかなかハイセンスだぜ(笑)。ともあれ、ジジイ……、いや、ジイさんはジョニィ・ジョースターの伝説を語ってくれました。
――ジョニィと理那は、大西洋を渡る客船の上で知り合い、恋に落ちた。2人は愛し合い、牧場で幸せに暮らしていた。やがてジョニィは、騎手として国家から認められる存在になっていった。だが、何年かが過ぎた頃、理那を謎の「病」が襲った。それは原因不明の病気で、初めは「記憶」が少しずつ無くなり、思い出したり忘れたり……。そのうち、皮膚が固くなってデコボコに線が入り、命に関わる程に重くなった。そこでジョニィは、理那を日本に帰す事にした。生まれ故郷で残りの日々を過ごさせたいと思っての事だった。
そして、思い悩んだジョニィは、ついに「やってはならない事」を決断した。ニューヨークの地下深く眠っている「聖なる遺体」を掘り起こしたのだ。「遺体」の偉大な力があれば、愛する妻の「病」も取り除けるはず。――


●いや〜、まさかの展開にブッタマゲました!正直、「遺体」は「ジョジョリオン」には関わらないものと思ってましたから。つーか、「遺体」争奪戦は「SBR」でお腹いっぱいなんで、そういう方向には向かわないでほしいところ。でも、つくづく荒木先生もやってくれますねえ。結局、ジョニィも短命だったのか〜……。幸せに暮らしていてほしかったなあ。ジョニィの姿を見てて、なんとも言えない切ない気持ちになりました。
「先祖の犯した罪は、子孫にも受け継がれるのか?」というテーマが「ジョジョリオン」にはあります。まさに今回は、その始まりを描いたワケですね。ジョニィが犯した「罪」。それは「呪い」のように、今もなお、ジョースター一族を苦しめているのでしょうか?しかし、安易にジョニィを責める事は出来ません。愛する気持ちゆえに、「道」を誤ってしまっただけなのですから。あの自分勝手なジョニィが、誰かを心から愛し、その人のためになりふり構わず行動した。そう思うと、ちょっと泣けてきます。
話を「遺体」に戻すと……、まず、「聖なる遺体」はやっぱり地下シェルター内に安置されていた事が確定しましたね。「ジョジョ」という物語として考えれば、ディエゴの死体も同じく安置されていて、そのせいで2つの「遺体」が融合してしまっていたりしたのかも。その封印を解いてしまったため、「呪い」が始まったのです。ジョニィの遺体頭部に岩が置かれていたってのも象徴的。首なしになったディエゴの死体そっくりです。
また、「病」に倒れたはずの理那さんが、ジョニィの死について普通に取り調べを受けていた事から、彼女は健康体に戻っていた可能性が高い。「遺体」は彼女に取り込まれたのかもしれません。そして「遺体」と「呪い」は、ジョースター家が代々受け継いでいった?この分だと、ジョニィの子孫達もいろんな災難に遭って、短い人生を送ったっぽいよなあ。どんな世界でもハードな血統だよ……。「遺体」そのものは流れ流れて、現在、定助の中にあったりして?
理那さんの「病」自体も謎が多い。これは「遺体」とは無関係でしょうし。むしろ東方家や杜王町の歴史に起因する、別の「呪い」なのかも。東方家の血を継ぐ者は、長期間、杜王町から離れるとかの条件が揃うと「病」が発症するとか?固くなった理那さんを見て、なんとなく「壁の目」っぽいなとも感じました。最終的には、生きた「土地」と化してしまう「病」なのでは?「壁の目」の力も、「カツアゲロード」のスタンドも、そんな生きた「土地」に発現した能力なのかもしれません。あるいは、生きた「土地」と「遺体」が出会った事による現象?だとすれば、そういう不思議スポットに「遺体」の各部位が埋まっているのかな。


★今月は47ページ!ページ数もようやく安定してきた上に、今回は衝撃的な内容すぎて、考えるべき点が多すぎます。これはもうちょっと煮詰めてから、改めて予想をまとめてみようと思います。今はとりとめもない感じになっちゃってる(汗)。ただ、やっぱ「ジョジョリオン」は、「ジョジョ」は面白いッ!これだけは確かに言えます。
作者コメントは「打ち合わせ時の飲物はジンジャーエール氷なし。コーヒーは後で眠れなくなるからなあ。」との事。さすがは規則正しい荒木先生。飲み物1つに至るまで、こだわりを持っているのか。
特報として、ついに「ジョジョ展 in フィレンツェ」の情報公開です!6月28日〜7月14日の期間らしい。短いな!杜王町展の時並みじゃん。これは早いとこ予定を決めてしまわないと……。



(追記)
●というワケで、新たにガッツリ予想&妄想してみました。めっちゃ長〜〜くなっちゃいましたけど(汗)。


@理那さんの「病」とは?
そもそも理那さんが「病」に罹らなければ、ジョニィと2人で末永く幸せに暮らしていけたはず。言わば、全ての元凶がこの謎の「病」。一体、これは何なんでしょうか?
前述の通り、東方家や杜王町の歴史に起因する「呪い」と予想しておきましょう。ずっとずっと大昔、この土地の神様の怒りを鎮める「人柱(ひとばしら)」となる事を宿命付けられた一族があり、それが東方家の先祖。以来、この土地に災いが起きるたび、東方家の女性が「人柱」に捧げられてきました。そして実際、災いは鎮められてきました。現在の杜王町の発展は、東方家の尊い犠牲の上に成り立っているのです。
本当に神様が存在するかどうかはともかく……、その神様が「東方家の女を捧げろ」と命じた、とする伝承が残っているワケです。そのためか、東方家は代々、女性が多く生まれる家系となっています。東方家の女性は、杜王町との結び付きが異常に強い。杜王町という土地に縛られている、と言っても過言ではない程に。杜王町に災厄が訪れた時、東方家の女性の誰かに異変が起こるのです。それが例の「病」。記憶や自我が徐々に失われ、肉体も岩石のように固くなっていく。やがて、まるで夢遊病者のようにフラフラと歩き出し、自ら土に穴を掘って埋まってしまうのです。そして、なんと土地そのものと一体化してしまうのです。それはあたかも、この杜王町と、引いてはこの土地の神様と添い遂げるかのよう。
「人柱病(ひとばしらびょう)」とでも言うべきこの「病」。恐ろしいのが、一度発病したら二度と治らないという点。そして、杜王町から長い期間(数年程?)離れていると、必ず発病してしまうという点。そのせいで、理那さんは発病してしまったのです。もちろん、彼女の嫁入りの際、一族の中にも大反対する者はいたはず。しかし、彼女のジョニィへの愛の強さと、単なる言い伝えに過ぎないという意見により、結婚が許されたのです。……が、結局は、言い伝えは正しかった。一族にも衝撃が走った事でしょう。

Aジョニィの「死」の真相は?
にわかには信じ難いですが、ジョニィは杜王町で死んだと伝えられているようです。幾多の修羅場をくぐり抜けてきたジョニィが、岩を頭にぶつけてあっけなく死んじゃうとは。これは果たして、「事故」か「殺人」か?はたまた、実はあの死体はジョニィではなく、彼は密かに生きていた?
私としては、警察の発表通り「事故」であると予想します。とは言え、ただの偶然の「事故」ではない。ジョニィが「聖なる遺体」を掘り起こした事によって、ジョースター家に降り注ぐ事となった「呪い」なのです。「病」が発病した理那さんを救うため、ジョニィはニューヨーク・トリニティ教会地下に眠る「遺体」の封印を解きました。「遺体」は、ジョニィに語り掛けます。何を願い、何を捧げるか。「幸福」と「不幸」のバランスが保たれているように、「奇跡」には「代償」が必要なのです。藁にもすがる想いのジョニィは、「妻を救ってくれるなら、ぼくの何を犠牲にしても構わない」と必死に祈りました。
結果として、「遺体」は理那さんの「病」を取り除いてくれました。「病」に罹る前の状態にまで回復し、すっかり健康に。しかし、本来なら決して治らないはずの病気を治した「代償」は、想像以上に大きかったのです。その「代償」は、ジョニィの「幸福」。そして、ジョニィの血を引く者の「幸福」。例えるなら、『ラブトレイン』の逆です。「吉良」なるエネルギーを理那さんの「病」を治すために使いまくり、「害悪」なるエネルギーを引き寄せてしまうようになったのです。つまり、ジョニィの死は、彼自身が引き寄せた「害悪」であり「不幸」。ある意味、必然とも言える事故だったワケです。
ただし、ジョニィ1人が死ぬだけならまだ良かった。ジョニィの愛と祈りにより、彼の血を引く子孫達まで「害悪」を引き寄せてしまう事に。そのせいで、子孫達もまた、波瀾万丈で苦難だらけの人生を歩みました。この世界のジョースター家も短命の一族になりました。これがジョニィの「罪」であり、ジョースター家の「呪い」

B「遺体」の在り処は?
当然、「遺体」は日本・杜王町に運ばれた事でしょう。しかし、詳しい在り処までは分かりません。理那さんの肉体に取り込まれた可能性もありますが……、「遺体」を取り込んで自ら「遺体」化していったルーシーを見ているジョニィは、それを本心では望まないはず。そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、「遺体」は次の事をジョニィに告げたのです。「遺体」を再びバラバラにして、杜王町を取り囲むように各地に埋めろ、と。
お告げに従い、ジョニィは「遺体」の各部位を、杜王町のあちこちに埋めました。「遺体」による「結界」が生まれ、その中でなら、理那さんは普通に生きられるようになったのです。しかし、「遺体」が眠る場所には不思議な力が宿り始めました。「悪魔の手のひら」のように。
「ジョジョリオン」でも、すでに不思議な力を持つ場所が描かれています。そう、「壁の目」「カツアゲロード」です。前者には、埋めたモノ同士を「融合」する力が。後者には、落ち葉に触れたモノを「高速滑走」させる力が。そして、両者には共通点もあります。この2つの場所には、「木」が存在しているのです。「壁の目」には、瞑想の松。「カツアゲロード」には、その能力にも関わる銀杏の木々。これらはきっと偶然ではないと思います。「遺体」は、その「木」の下に埋められていると予想します。今後も似たような不思議スポットが登場し、その場所には必ず何らかの「木」が描かれる事でしょう。その「木」こそが、スタンド能力の本体とも言うべき存在。

ちなみに、「カツアゲロード」のスタンド(正確には「守護聖霊」か?)には、「11」という数字が書かれていました。これは、11月11日にこの場所でジョニィが死んだ事と無関係ではありません。ジョニィの死を悼む人々の想いに呼応するかのように……、突然の落石からも逃れられる「高速移動」の能力が生まれました。と共に、その死を象徴する数字「11」が、スタンドにも刻まれたのです。
そして、「壁の目」の瞑想の松周辺は、「人柱病」に罹った東方家の女性達が埋まっている場所なのです。「壁の目」に立ち入った者に刻まれる「歯形」、それはこの地に宿る「人柱」の女性達の噛み跡と言えるでしょう。この世への未練や無念・怨念が凝り固まり……、「壁の目」と一体化している彼女達は、この地を訪れた者に噛み付くのです。噛まれた方からすれば、いつの間にか土や岩で体が傷付いているってワケですね。「遺体」によって「悪魔の手のひら」化している土地なので、結果的に『矢』と似た役割を果たし、噛まれた者はスタンドが目醒める事に。また「融合」の力も、土地そのものに、杜王町の一部になった彼女達を、どこか象徴しているかのようにも感じられます。

Cホリーさんの「過去」とは?
ホリーさんは現在、入院中。彼女が入院に至るまで、過去に何があったのでしょうか?
東方家に連なる女性はみな「人柱病」に罹る可能性があります。そのため、ジョースター家も基本、杜王町で暮らすようになりました。そして、ホリーさんは同じ医者である吉良吉輝と出会い、結婚しました。実はこの吉輝、どこからか「人柱病」の事を知り、彼女に近付いたのです。医者としてこの奇病に興味を抱き、彼女を研究材料として利用しようとしたのです。この病気の謎を解き明かして発表すれば、センセーションが巻き起こるに違いないと。
吉輝はホリーさんを杜王町から連れ出して、あちこち仕事に飛び回るようになりました。やがて彼女は、吉輝の目論み通り「人柱病」を発病。ただ、東方家に属してもおらず、東方の血もだいぶ薄れているため、病気の進行は非常にゆっくり。……しかし、初めこそ私利私欲で彼女に近付いた吉輝も、純粋な人柄の彼女に次第に心惹かれるようになっていました。
吉輝は自身の罪滅ぼしと、お互いの先祖の友情から、生涯を懸けてホリーさんの治療をする事を決意。吉良家は代々医者の家系であり、血筋を遡ると、遠い異国の医者の一族に繋がるのです。それは、ツェペリ家。なんとツェペリ家は、ネアポリス王国の王政廃止後、日本に渡っていたのです。死刑執行人の任務がなくなり、「鉄球」の技術も失われてはいますが、伝承された医術は確かなもの。(「黄金長方形」の手のひらも遺伝し、だから吉影の手も美しい。)
ところが皮肉な事に、息子である吉影が、吉輝の言動をすでに怪しみ始めていました。いろいろと調べていくうち、東方家にまで辿り着き、父の目的を察します。吉影は危険な人間ですが、母と妹にだけは優しいのです。このままでは、父は母に何をするか分からない。吉輝の心変わりなど知る由もない吉影は、ついに父を殺してしまったのです。こうしてホリーさんの症状は徐々に進行し続け、入院を余儀なくされてしまう事に。

D定助の「正体」とは?
定助は2人の人物の融合体。吉良吉影と、「もう1人」の人物。その両者について、改めて予想してみます。
吉良吉影の目的は、自身に纏わり付く「呪い」から逃れる事でした。ジョニィの血を引く者達は、実は「ある人物」から強い恨みを持たれています。それは、ルーシー・スティール。「遺体」の正統な所有者。ジョニィが「遺体」を奪って行った事で、彼女の人生は大きく狂ってしまいました。本来、享受するはずだった「幸福」が失われ、愛する夫のスティーブン・スティール氏は何者かによって暗殺。彼女はジョニィを憎み恨み続ける事でしか、悲しみを忘れる事が出来ませんでした。そんなルーシーの怨念が、ジョニィに向けられる「害悪」や「呪い」の根源なのです。そして、ジョニィがあっさり事故死したぐらいでは晴れない怨念は、子孫の代にまで受け継がれるのでした。スティール夫妻の子孫は、ジョースターの子孫を根絶やしにしようと、幾度となく襲って来たのです。そんな不毛な闘いの歴史から、「害悪」まみれの宿命から、吉良は逃れたかった。だから、「自分」ではない「別人」になろうとしたのです。
もちろん、この「呪い」を解こうとしたのは、吉影だけではありませんでした。しかし、先祖達の試みのほとんどは失敗に終わりました。ただ、ジョセフだけは、この世界でもやっぱり例外だったのです。なんと、スティール家の女性と恋に落ち、浮気して子どもまで作っていたッ!その子はやがて「空条」というパートナーと出会い、結ばれ、息子が生まれます。それが、定助の中の「もう1人」の正体。つまり吉良は、毒をもって毒を制しようとしたワケです。スティール家からの怨念ならば、自らもスティールの血統になれば良い。そして、「呪い」の外側に出てしまえばこちらのもの。自分のみならず、母や妹までも苦しめる「遺体」を見付け出し、破壊する事も可能なはず。

では、「もう1人」の方の目的は?#017の追記で書いた予想を流用し……、彼の名を、仮に「空条浄太郎」としましょう。彼は生まれてからずっとアメリカで暮らしていました。しかし、最近になって母親が死亡。父親もとっくに死んでいます。スティール家の親戚はいるものの、憎きジョースターの血も引いている彼は、異端児として疎まれる存在。行く当てのない彼を心配した母親は、死の間際、自分の異母姉妹であるホリー・ジョースターに会いに行くように言い残します。そうして浄太郎は、日本・杜王町へ。そこでホリーさんと吉影に出会うのでした。
吉影は、この思い掛けない男との出会いから、彼との「融合」を思い付きます。一方、ホリーさんは吉影の思惑も知らず、浄太郎にある事を託しました。彼は「何かを奪うスタンド能力」を持っていたため、自分の脳の一部を、記憶の一部を「奪って」もらったのです。ジョースターの血を引く者は代々、「遺体」の隠し場所を子に伝えてきました。しかし、吉影や京(虹村さん)に教えるのは危険な予感がする。かと言って、このままでは「人柱病」によって、記憶が失われてしまう。だから、理知的で穏やかな性格の浄太郎を信頼し、「秘密」を託したのです。一緒に腎臓や肺、胆のうも「奪った」のは、カムフラージュのため。

E他の人々との関係性は?
最後に、ここまで触れられていない人々の行動と目的も考えてみたいと思います。
まず、憲助さん。彼の目的は、ジョニィと同じです。彼の妻・花都さんも今、「人柱病」を発症しているのです。3月11日の大震災、未曾有の大災害。東方家の女性が「人柱」になるべき時が訪れてしまいました。しかも、これだけの災厄、1人だけで足りる保証はありません。愛する妻のみならず、娘や孫まで発病しないとも限らない。家族を護るため、「人柱」の宿命から解き放つため、彼は「遺体」を求めているのです。そして、その在り処を突き止めるには、「遺体」を隠したジョニィの子孫の協力が不可欠。彼が定助を引き取ったのは、そのためです。
次に、常敏。彼の目的は、東方家の繁栄。女(「人柱」)がいる限り、東方家は栄えていく。繁栄に多少の犠牲は仕方ないと割り切る、大統領的な考え方の男です。家と町を護るという役割と責任を重んずるあまり、それに縛られ、最も身近な家族を顧みない男。密葉さんとの結婚も、家の繁栄のために良家の娘をもらったに過ぎず、初めから愛情などない。娘のつるぎちゃんにも興味ありません。ただ、「遺体」にも特に関心は持ってはいないものの、「壁の目」の「融合」の力にだけは注目しています。「融合」を繰り返せば、自分が永遠に生きられる。永遠に東方家の当主となって、家と杜王町を護っていける。そう考えています。とにかく彼は、「呪い」も「遺体」も今の状態を維持したい。そのためには何でも利用するし、邪魔するヤツは消す。
そして、「記憶の男」。定助の記憶の中に過ぎった謎の男。これまた#017での予想をちょっと流用します。彼はディエゴ・ブランドーの子孫。ディエゴは「SBR」レース中、ノリスケさんの応援に来ていた杜王町の娘さんを孕ませちゃってたワケです。「記憶の男」の目的は、言わばディエゴの復活。「遺体」は、共に封印されていたディエゴの死体といつしか一体化。その邪悪な意志や魂も、わずかに宿してしまっていました。「遺体」がジョニィを通じて日本に渡ったのは、ディエゴの意志による部分もあるのです。大きな運命の流れに導かれるように、「記憶の男」は自分の先祖や「壁の目」、「遺体」の事を知り、それらの力を求めます。「遺体」と融合し、彼自身がディエゴ・ブランドーとして新生しようと企んでいるのです。神に等しい存在となり、この世を思い通りにする。実にオーソドックスな野望の持ち主です。


――誰かを愛する想い、何かを大切に思う気持ち。それゆえに生まれる、憎しみと悲しみとすれ違いの連鎖。その因縁こそ、「呪い」なのかもしれません。
しかし、「希望」もあります。ジョースター、東方、吉良、そしてツェペリ、スティール、空条……、その全ての血を宿す唯一の存在。それが定助です。あらゆる「呪い」を断ち切れる存在。宿命に翻弄され、抗おうとする者達に、「福音」を齎す存在となるのです。




(2013年5月17日)
(2013年5月21日:追記)




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