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「ジョジョリオン」の謎と考察・予想をまとめたよ


No.29 【 定助が「壁の目」で発見されるまでの経緯は? 】





【第2版】 (旧版)
「壁の目」の泉にて、定助は康穂と出会いました。定助には自分自身に関する記憶が失われており、自分がどこの誰かさえ分からない。
そんな定助が「壁の目」で発見されるまでの経緯や流れは、どのようなものだったのでしょうか?
……これはもう、他の全ての謎をも包括するようなドデカくってざっくりした謎と言えましょう(笑)。で、大雑把なストーリーを予想・妄想してみました。

【第1版】を書き上げてから作中の状況も変化し、新たな事実も色々と判明してきているので、改めて予想し直す事にします。




[ 仗世文:少年時代 ]
今の定助を形作る「吉良 吉影」ともう1人の人物「X」。この「X」とは、「空条 仗世文 (くうじょう じょせふみ)」。彼は、かつて杜王町に流れ着いた幼児:空条貞文と、ジョセフ・ジョースターの隠し子:聖美との間に産まれた男の子である。1991年、この世に生を受けた。
しかし1998年、仗世文が海で溺れ死にかけた事件が決定的な溝となり、両親は離婚。聖美は1人、都会に出て行き、仗世文と貞文は杜王町で暮らすのだった。

そんな時、貞文は「記憶の男」と出逢う。彼は「岩人間」達のリーダー的存在であると同時に、東方家に怨みを抱く一族の末裔であり、ディエゴ・ブランドーの息子でもある男。1901年、見た事もない「フルーツ」をたまたま見付け、それを食べた事で「岩人間」になった。知的・紳士的な男を見事に演じ切っているが、実際は異常に計算高く口が巧い、冷酷で大胆な男。「岩人間」であるため人間社会で生きにくく、おカネにも困っていた貞文に、「記憶の男」は「ロカカカ」の売買の仕事を持ち掛けてきたのだった。
初めて出逢う「岩人間」の同士に、貞文は感激。なんと「岩人間」は他にも何人かおり、喜んで彼らの仲間となった。ようやく豊かで穏やかな生活を手に入れた貞文。……しかし、しばらくすると、貞文は自分の仕事に少しずつ疑問を抱き始める。「ロカカカ」を食べた者の行く先には破滅・絶望しかないと知っていながら、弱みに付け込んでそれを高値で売りさばく。人の希望や命を弄び、踏みにじる仕事。そんな犠牲の上で、息子と幸せな人生など歩めるのだろうか?
貞文は仲間達に自分の想いを訴え、もう「ロカカカ」の売買は止めようと説得する。だが、誰も聞く耳は持たず、むしろ貞文は「異端者」として孤立していった。そして、「岩人間」達が次に「ロカカカ」を売るターゲットと考えているのが東方家だと知る。貞文にとって、東方家は自分を引き取って育ててくれた大切な家。東方家まで巻き込むワケにはいかないと、とうとう「ロカカカ」を破壊して回るのだった。


大事な商品をブチ壊した貞文の勝手な行動に、「岩人間」達は激怒。今までさんざん甘い汁を吸っておきながら、急に手のひらを返した「半端者」「裏切り者」。当然、貞文への粛清・制裁が行われる。こうして2000年頃、貞文はまだ幼い仗世文を連れ、杜王町からの逃亡を図ったのだった。
どこまでも追って来る「岩人間」達。これ以上は逃げ切れないと判断した貞文は、死を覚悟し、「岩人間」達を迎え撃つ事にした。「岩人間」達の狙いはあくまで自分。息子まで執拗に捜索し、殺す事はしないはず。貞文は、仗世文に愚かで不出来な自分を詫びると、ある「宝石」を手渡すのだった。これは貞文が杜王町に漂着した時、何故か身に付けていたという「宝石」。どういう由来の物かは分からないが、自分の形見として託したのである。
さらに貞文は、仗世文の本当の名前を告げる。東方家に引き取られた貞文は、「空条 貞文」が本名ではない。「東方 常清 (ひがしかた じょうせい)」という、東方家からもらった名がある。そして息子にも、彼が密かに名付けていた本当の名前があったのだ。それは、自分の名と同じ響きを持つ「東方 浄星 (ひがしかた じょうせい)」という名前。いつか東方家に帰る事が出来たら……、その時は、自分や家族を縛り付ける忌まわしい「呪い」を浄める星となってほしい。そんな切なる願いがこめられた名前。

唐突な出来事の連続で混乱する仗世文だったが、ゆっくり理解している時間もない。最後に貞文は、仗世文に目的地を伝える。それは、母:聖美の母親(仗世文の祖母)の実家。祖母は杜王町でジョセフ・ジョースターを待ち続けたが、娘の結婚をキッカケに心機一転。杜王町から遠く離れた離島で、第二の人生を歩み出したのだ。もはや頼れる家族は祖母しかいない。
事の簡単な経緯と頼みを書いた手紙、さらに旅費と今後の生活費として必要なおカネや宝石を持たせると、貞文は仗世文を逃がすのだった。そして、追って来る「岩人間」達と戦い、死んでいったのである。



[ 仗世文:青年時代 (杜王町へ) ]
仗世文は、どうにか1人、祖母の家へ辿り着く事が出来た。祖母は正直、迷惑がってはいたが、仗世文を追い出すようなマネはせず、古い物置き小屋に匿ってくれた。「岩人間」が追って来る危険は否定できないため、あまり外にも出られず、小屋にあった物や書物で遊んだり勉強したりして孤独に過ごしていた。

そして、数年の月日が流れる。――2009年、仗世文は18歳になっていた。彼は歴史上唯一の、人間と「岩人間」のハーフ。半「岩人間」とでも呼べる存在だが、今のところ、それほど「岩人間」の要素は顕れておらず、肉体の成長速度も人間と大差ない様子。ただ、短い時間ならば、意識的に岩石化する事が出来るようである。そんな彼の住む小屋に、ある日、1枚の封筒が無造作に置かれていた。宛名も何も書かれていない。それを開けてみて、仗世文は驚愕する。
封筒の中にはパスポートが入っていた。それは「空条 仗世文」のものだった。しかし当然、仗世文が申請したワケではない。顔写真も明らかに別人の顔。これは間違いなく、かつて父を追い回し、そして恐らくは殺したのであろう「岩人間」達からのメッセージ。「岩人間」は、自分がここに隠れ住んでいる事を知っていたのだ。知っていながら、あえて何もせず、ただずっと見張っていた。パスポートには、杜王町で暮らした家の住所がこれ見よがしに記入されている。つまり「岩人間」達は、自分を「杜王町へ来い」と呼んでいるのだ。その理由は知らないが、もはやコソコソ隠れたり逃げ回ったりする意味はない。父の仇を討つべき時が来た、という事なのだ。

パスポートが入れられていた封筒も、よくよく見てみれば、TH医大病院のもの。そこは命の恩人:ホリーが勤める病院で、溺れた仗世文が搬送された病院でもある。悪い予感がして確認すると、ホリーが昨年にTH医大病院から引退している事を知る。詳細は不明だが、どうやら医者としての仕事が出来ない状態になっているらしい。
父の仇も重要だが、ホリーさんにも会いたい。彼女が困っているのなら、少しでも手助けがしたい。目的は2つになった。かくして、仗世文は杜王町へと戻って来たのだ。


……しかし、全ては「記憶の男」の計画通り。貞文を始末した後、彼は仗世文の居場所を突き止めていた。だが、半「岩人間」である仗世文は、それこそ「聖なる遺体」に匹敵するイレギュラー。自分の目的を実現するために、いずれ必要となるであろう存在。あまりに追い詰めて自殺でもされては困る。あえて放置しつつ、半「岩人間」の貴重な観察データを収集する事にしたのだった。他の「岩人間」達には、貞文によって著しく数を減らされた「ロカカカ」の栽培・増産に専念させた。
そして、ホリーに「石化病」が発病した後、いよいよ仗世文を誘い出す計画を開始。実はホリーは、ジョースター家に伝わるある「秘密」を受け継ぐ人物である。それは一子相伝の「秘密」であり、このままではホリー本人さえ「病」で忘れ去ってしまうにも関わらず、実子の吉影や京には一向に教えようとしない。
もしかすると……、同じジョースターの血を引き、息子と同じ世代でもある仗世文に教える、という線もあり得るかもしれない。ホリーの持つ「秘密」を知りたい「記憶の男」としては、どうせ仗世文を呼ぶなら都合の良いタイミングにしたってワケである。



[ 仗世文:青年時代 (杜王町にて) ]
数年ぶりに杜王町へと戻って来た仗世文。かつての自宅へ行くより、ホリーを捜すより先に、父とよく見に行った杜王町の海が見たくて港を訪れていた。ふと腹が減り、近くのラーメン屋で食事を取る。そこで偶然にも、ホリーの息子:吉良吉影と遭遇したのだった。仗世文の命を救った時から10年ほどの歳月が経ってはいるが、吉良にとっても印象深い出来事で、当時の面影も残っていたため、仗世文である事になんとなく気付けたようだ。
仗世文と吉良はこうして知り合い、自分の深い部分はお互いに隠しながらも、徐々に仲良くなっていった。その間、仗世文は、吉良が語りたがらないホリーの現状を調べ、何らかの難病に侵されているらしい事を知る。仗世文の自宅の方はと言えば、当時のまま残されていたし「岩人間」サイドからの動きもまだ見られないが、さすがにそこで暮らすのは危険が大きすぎる。たまに吉良のマンションに寝泊まりさせてもらいつつ、以前から興味があった大学に入学。その寮で暮らすようになった。
一方、吉良は東方家と「ロカカカ」の関係をもっと詳しく知ろうと、家長である憲助と直に接触。憲助は、ジョースター家の「長子」である吉良が生き永らえている理由に薄々勘付いてはいるが、それでも親戚の彼を快く迎えてくれた。そんな東方家との交流で、家系図だけでは分からない、お互いの家の歴史や現実を知り合うのだった。しかし、憲助は「岩人間」も「ロカカカ」も知らない様子。「ロカカカ」輸入に携わっているのは、憲助ではないのかもしれない。真相に至るためには、東方家のさらに奥深くへと入り込まねばならない。

そして2010年。吉良と仗世文の2人は大年寺山愛唱から「ロカカカ」の枝を盗む計画を立て、実行に移すのだった。仗世文は「ロカカカ」の存在を知ると、それこそがかつて父が売っていたと話していたフルーツそのものと直感。つまり「ロカカカ」を追えば、ホリーの治療法にも父の仇にも辿り着けるはず!決意を新たにする仗世文。
何度か愛唱に見付かりそうになりながらも、どうにか枝のすり替えに成功!ところが、いざ枝を「接ぎ木」して育ててみても、そこに実ったのは明らかに失敗作の「ロカカカ」。どうやら元々の樹木でなくては、「ロカカカ」は正常に育たないようだ。フルーツのプロである東方家と組んでいるのに、わざわざ樹木ごと輸入しているのも、すでに「接ぎ木」を試して失敗した上での事なのだろう。途方に暮れる2人。
さらに悪い事に、「ロカカカ」の重量などを細かくチェックしていた愛唱は、枝のすり替えにも気付いてしまった。これまでより警戒が強まり、もはや手が出せない。ジョースター家に残る記録やホリーの現在の体調から考えると……、ホリーの命はあと1〜2年といったところ。吉良はそう診断した。悔しいが、今はほとぼりが冷めるまで待つ時。


――1年後、2011年。ようやく愛唱の警戒もやや薄れてきたため、吉良は改めて計画を練り直す。
「接ぎ木」による「ロカカカ」栽培では失敗作しか成らなかったが、逆に考えれば、栽培の条件次第でもっと強い「ロカカカ」が育ち得るという事かもしれない。「岩人間」が東方家と組んだのも、それを期待しての事なのだろうか。そもそも初代憲助がフルーツ屋を始めたのも、きっと偶然じゃない。吉良にとっては「石化病」の治療法だけが重要で、東方家の職業や商売なんぞに興味はまったく無かったのだが、両者には密接な繋がりがあったのだ。フルーツ栽培に関しては、プロの東方家に任せておく事にした。万一、理想とする「ロカカカ」の栽培・改良に成功したならば、東方家にも持ち込まれるだろう。それを奪い取れば良い。
その一方で、吉良は別の推測もしていた。(枝からもぎ取るだけでもパワーが落ちていくようだし)「ロカカカ」がそんなにも不安定で個体差が大きいフルーツなら、出来の良い「ロカカカ」は表でホイホイ売りさばいたりせずに、どこか裏側で大切に保管されているはず。「岩人間」から盗むべきは、商品としての「ロカカカ」ではない。貴重な研究材料としての「ロカカカ」。……「岩人間」達のホームに飛び込む事になるワケで、愛唱個人から盗むより遥かに危険だが、やる価値はある。

吉良と仗世文は、再び愛唱を尾行。やがて愛唱は、初めて「取り引き相手」ではなく「商売仲間」らしき複数の人物と接触した。その仲間の中には、作並カレラの姿もあった。カレラは自分達を探る2人の存在に敏感に勘付き、戦いとなる。結局、仗世文達が勝利した。カレラを拷問してから殺そうと提案する吉良だったが、仗世文はそれを制する。穏やかで優しい仗世文に、カレラは恋に落ちてしまうのだった。
カレラは「岩人間」の中でも扱いが低く、現状に不満を持っていた。2人は「ロカカカ」を盗む目的は隠したまま、「そんな危険で暗黒な物は消し去るつもりだ」と話す。カレラはそれを信じて、あっさり「岩人間」を裏切った。仗世文がそうしたいのなら手伝いたいし、他の連中が大損するんなら「ザマーミロ」的な気分になってスカッとする。彼女はあくまで、「今」の自分の心にだけ従うのだ。
こうして「岩人間」の協力者も得た仗世文達。カレラから情報をもらい、いよいよ「ロカカカ」の保管場所へ潜入。ここにある「ロカカカ」は全て、パワーの強いものらしい。カレラが見張り番を引き付けている隙に、吉良は「ロカカカ」を1つゲット!そして仗世文は、それ以外の「ロカカカ」をマジで焼却処分してしまうのだった。仗世文にとっては、父:貞文の意志を継ぐ宣言の意味もあった。計画は成功し、3人は吉良のマンションへ。仗世文とカレラが疲れて寝ている間、吉良はキッチンに隠しておいた「ロカカカ」を確認。その様子を、ふと目を覚ましたカレラが目撃していたのである。



[ 仗世文:青年時代 (ジョースターの血統) ]
仗世文は、吉良に頼まれ、盗んだ「ロカカカ」を別の場所に隠した。それは「ジョースター地蔵」。仗世文のスタンドで地蔵の内部を吸い上げ、空洞を作る。半「岩人間」の力を使い、石に溶け込む事で、地蔵の内部に「ロカカカ」を収納してしまったのだ。
当然、「ロカカカ」をすぐにホリーに食べさせるワケにはいかない。吉良には、東方家や「岩人間」とは別の方法で、この「ロカカカ」のパワーを高める算段があるらしい。今はそれを信じるほかない。そう……、たとえ「壁の目」を使ってホリーさんを救ったとしても、この「病」は終わらない。必要なのは、病気の「治療」ではなく「根絶」。この「呪い」を解いてこそ、初めてジョースター家は安らかで幸せな日々を得る事が出来るのだ。

ちょうどこの時期、ホリーの病状も悪化し、とうとうTG大病院に入院してしまったらしい。今まで彼女は自宅療養しており、仗世文も気遣って直接会いには行かずにいたが、もうそんな余裕はない。「岩人間」達にバレぬよう、夜にこっそり病院に向かい、彼女の病室へ。……海で溺れたあの日から、実に13年ぶりの再会。突然の来訪者に驚くホリーだったが、彼女も仗世文の事はよく憶えており、再会をとても喜んだ。ホリーはあの日、仗世文の肩に自分と同じ「星型のアザ」を見付け、後に素性を調べていたのである。その末、父:ジョセフの浮気と隠し子の存在が発覚。「親戚」の仗世文の事をずっと、心のどこかで気に掛けていたのだ。
話をしているうち、ホリーは、誠実だけど孤独な仗世文に愛情を抱くようになった。自分と仗世文の血縁を明かすと、仗世文は唖然ボー然。しかしホリーは、仗世文を自分の「息子」とまで言ってくれる。自分を見殺しにしようとした母の血を嫌っていた仗世文だが、それは敬愛するホリーと同じジョースターの血統でもある。ようやく自分に流れる血を誇りに思えるようになった。初めて自分自身を認められた事で、これ以降、仗世文の「しゃぼん玉」にも星マークが刻まれたのだった。
そしてホリーは、もう1人の「息子」仗世文に、自分だけが知る「秘密」を託す決心をする。その「秘密」とは、「壁の目」に宿る聖なるパワーを解き放つ方法。「壁の目」や「フルーツ」の力を失わせ、「岩人間」を普通の人間に戻し、「石化病」もこの世から消滅させる……、言わば全てをゼロに戻す方法であった。吉影や京は精神的にかなり危ういところがあって、これを伝える事だけは躊躇いがあったが、仗世文になら安心して託せる。その「秘密」の方法をどう扱うかも、仗世文の決断に任せる事にした。
こうして仗世文は、「母」ホリーの頼みを聞き入れ、泣く泣く「しゃぼん玉」で脳や臓器ごと「秘密」を吸い上げたのである。吸い上げた「秘密」は、仗世文が肌身離さず持っていた父の形見の「宝石」に吐き出して閉じ込め、これもまた「ジョースター地蔵」の内部に隠したのだった。


翌日、母の病室を訪れ、異変に気付いた吉良。母はすっかり別人に成り果て、脳や臓器の一部まで失われていた。こんなマネが出来るのは、アイツしかいない。仗世文を問い詰めると、昨夜の出来事を(話せる範囲で)話してきた。
吉良は仗世文に対して奇妙な友情や信頼を感じてはいるが、母が一族の「秘密」まで託してしまったのは納得できない。いや……、それさえ仗世文が言っているだけで、本当は無理矢理奪い取っただけなのかもしれない。「何でも命令してくれ」などと言っておきながら、自分や母を出し抜こうとしたのかもしれない。何より、どんな理由があれ、母をあんな姿に変えてしまった仗世文の行動は許せない。吉良の心に密かに灯る仄暗い炎。この時点で、仗世文と吉良の関係には亀裂が入り始めたのである。



[ 仗世文:青年時代 (大震災) ]
仗世文は、ホリーから託された「秘密」の方法を実行する決意を固め、1人で行動を開始する。だが、吉良とカレラは協力を惜しまず、仗世文もそれを受け入れた。カレラはともかく、吉良はすでに表向き協力しているだけ。腹の中では、その「秘密」の全容を突き止めようと目論んでいた。自分が「秘密」を知れれば良いだけで、その実行まではさせるつもりもない。最終的には仗世文を邪魔し、阻止しようと考えていた。
そんな時、仗世文達3人の前に八木山夜露なる「岩人間」が現れた。彼は、仗世文が持つ「秘密」の内容を吉良同様に知りたがっている「記憶の男」が送り込んだ、言わばスパイ「自分も「岩人間」のやり方には疑問を抱いていた」だの「「ロカカカ」を処分してくれた君達の助けになりたい」だの、テキトーな事を言って、うまく味方として潜り込んだのだった。東方つるぎを引き込んだ時もそうだが、夜露は人を騙す事にかけては用意周到で長けているのである。同じ「岩人間」には親身で優しい男だったので、カレラも夜露の言う事をすんなり信じてしまった。こうして、この4人が行動を共にする事になる。
仗世文は夜露と親しくなった。彼は、仕事で使わせてもらっているという東方家の「離れ」の地下室に仗世文をこっそり招き、よくダベッたりしていた。時には、地下室の1室に仗世文を泊めてやったりもするのだった。そして、すっかり夜露を信用し切った仗世文は、ホリーから託された「秘密」が「石化病」も「岩人間」も消し去るものである事も、それを閉じ込めた「宝石」を隠している事も教えてしまう。ずっと孤独で友人もいなかった仗世文は、他人の優しさを信じ込みやすかったのだ。


とうとう仗世文の目的を知った夜露。「ロカカカ」を処分しただけでは飽き足らず、あまりに畏れ多い事をやろうとしている仗世文に、内心、殺意と憎悪が燃え上がる。彼はすぐさま仲間の「岩人間」達にもそれを報告。今までは「記憶の男」の命令もあって、仗世文達をあえて放っておいてやっていたが、そういう事なら話は別。「岩人間」の存在そのものに関わる事態に、彼らが押さえ続けてきた怒りもとうとう爆発する。
そして、奇しくもその日、3月11日未曾有の大震災が東日本を襲った。杜王町の被害もまた深刻なもので、町中が大混乱。それに加え、「岩人間」達の執拗な追跡のせいもあり、仗世文達は散り散りになってしまった。「記憶の男」の説得・誘導で、「岩人間」達の勝手な行動はどうにか沈静化。ところが、夜露だけは止まらなかった。彼は「岩人間」の中でも特に、我が強く欲深い男なのだ。
深夜、「二本松」の近くで、仗世文は夜露と再会。お互いの無事を喜ぶ仗世文に、夜露は突如襲い掛かる。震災の混乱に乗じて仗世文を殺そうと、「記憶の男」の命令を無視して暴走したのだ。夜露が自分を騙していた事実にショックを受け、その隙を突かれて、まんまとやられる仗世文。「しゃぼん玉」も全て割られ、まるで通用しない。夜露の能力にハマり、集まって来た岩に挟まれて死にかけるのだった。(いくら半「岩人間」と言えど、他人のスタンド能力の支配下に置かれた岩までは「通過」できないらしい。)
その時、なんと吉良が現れ、夜露と応戦。夜露は仗世文がすでに死んだものと思い込み、さっさと姿をくらましてしまう。

仗世文は辛うじて生きていた。吉良の助けのおかげもあるが、何故かいきなり地面が隆起し始め、仗世文を夜露の能力射程外まで押し上げてくれていたのだ。そのため、岩に押し潰される直前、ギリギリで能力は解除された。
仗世文は薄れゆく意識の中、死力を振り絞って大量の「しゃぼん玉」を飛ばす。先ほど夜露は、「おまえを殺した後で、ゆっくり「宝石」の在り処を探してやる」「おまえの知り合いにも聞いてみるか」と言っていた。夜露は目的のために手段を選ばない。杜王町でただ知り合っただけの人達まで巻き込まれてしまう。「しゃぼん玉」は町中に降り注ぎ、無関係の者達から仗世文に関する記憶や記録のほとんどを吸い上げて消し去った。それを見届けると、仗世文は意識を失うのだった。



[ 仗世文:青年時代 (「壁の目」へ) ]
目を覚ますと、仗世文は見知らぬ男に匿ってもらっていた。その男こそ「記憶の男」。彼は吉良の古い知り合いらしい。もっとも、彼が「岩人間」である事や、「岩人間」達のリーダー的存在である事は、吉良さえも知らない。仗世文は、自分の面倒を見てくれた「記憶の男」に感謝する。
ケガの方は、吉良が迅速かつ適切な手当てを施してくれたようだ。ここに吉良の姿は見えないが、心の中で吉良にも感謝する。とは言え、普通の人間ならとっくに死んでいるほどの重傷。休養に専念しても、完全回復には半年近い月日を要したのだった。

無論、吉良と「記憶の男」が仗世文を助けたのは、まだ死んでもらっては自分が困るからである。
「壁の目」の隆起を引き起こしたのは、間違いなく仗世文の存在。また、本来は割れやすく射程が短い仗世文の「しゃぼん玉」も、あの時だけは大量に町中へ飛ばせるほどに強まっていた。もしかすると、仗世文と「壁の目」は敏感に反応・共鳴し合い、互いにパワーを高め合っていたのかもしれない。さすがは「聖なる遺体」並みのイレギュラー。ならば、もう数百年は力を取り戻せないはずの「二本松」が、再び「生命の樹」「知恵の樹」として「果実」を実らせる事もあり得る。そうなったら、自分の計画は一気に最終段階へ進める。予想以上の結果に、「記憶の男」はそんな期待を抱くのだった。
そして「記憶の男」は、吉良に仗世文との「融合」を提案。仗世文を「壁の目」と接触させれば、さらなる反応を示すかもしれない。それに、もし「仗世文」とも「吉良」とも違う新しい人間になったとしたら、今よりもっと都合良く利用できるようになるだろう。
吉良からしても、仗世文と「融合」すれば、自分自身が仗世文になれる。仗世文だけが知る「秘密」も全て自分のもの。また、東方家との交流の中で密かに閃いた、東方家とジョースター家の分かれた血筋を1つに戻すという目論見にも合致する。これぞまさしく渡りに舟。利害が一致した吉良も、「記憶の男」の提案にあえて乗ってやるのだった。


この半年の間、吉良は「岩人間」から身を隠すためもあり、船医の仕事でしばらく海の上へ。カレラは、震災直後の「岩人間」達の追撃を何とかかわしたが、仗世文達を捜して合流する余裕もないまま、1人で北海道へと逃亡。
「岩人間」達も、仗世文の「しゃぼん玉」のせいで手掛かりを失い、仗世文が隠した「宝石」を発見する事は未だ出来ずにいた。

……ようやくケガも治り、自由に動けるまでになった仗世文。この頃には、伸びまくった髪の毛をバッサリ切って、彼の独特なヘアースタイルも普通の短髪になっていた。そして、「記憶の男」と共に「壁の目」を訪れる。やがて、吉良までも姿を現した。実はこの数日前、吉良は笹目桜二郎に捕われてしまっていたのだが、辛くも脱出に成功。どうにか「壁の目」まで辿り着いたのであった。
すると、仗世文は突然、気を失って眠りこけてしまう。なんと「記憶の男」が、彼に睡眠薬を盛っていたのだ。吉良と「記憶の男」は、この日を「融合」の実行日と決め、落ち合う約束をしていたのである。「等価交換」に余計なノイズが混じる可能性を極力排除するため、「記憶の男」は仗世文の服を全て脱がせ、吉良もまた裸になる。さらに吉良は、「融合」後の自分を「自分」へと導くべく、手首に「本屋のマーク」を描き、ついさっき買って来たばかりの帽子を仗世文にかぶせた。そのまま、仗世文と吉良は「壁の目」の土に埋まってしまうのだった。
その様子を見届ける「記憶の男」。今後しばらく、彼は身を潜め、仗世文達(=定助達)と「岩人間」との争いに不干渉となる。夜露が勝手な行動を取り、仗世文を死ぬほどまでに追い詰めた結果、予期せぬ事態が起こったのだ。ここはあえて何もせず、流れるがままにしても良いのかもしれない。当分は誰にも何にも関わらず、ただじっと観察を続けよう。「運命」の流れが大きく変わるその時まで――


――「壁の目」に埋まった2人。次に目覚めた時、「彼」はすでに「彼」ではなくなっていた。自分の事は何も憶えていない。目の前には、1人の女の子。こうして、物語は始まったッ!



(追記1)廃止
第51話にて、仗世文達が愛唱から「ロカカカ」の枝を盗む事に成功すると、場面は一気に転換。時間は10ヶ月以上も経過し、なんと2011年8月19日に。この日、仗世文と吉良は、ダモカンと夜露に見付かってしまいました。……しかし、この展開には正直、かなり違和感があります。今まで断片的に明かされてきた情報と合致しない気がするんです。
まず、死ぬ間際に夜露が言っていた、「(仗世文は)震災で「壁の目」の隆起がなければくたばっていたんだッ!!」というセリフ。私はてっきり、仗世文と夜露が、震災の日の深夜に死闘を繰り広げ、その途中で「壁の目」が隆起したものと思っていました。ところが、8月19日って事は、震災はとっくに起こっています。さらに、仗世文達はまだカレラと接触すらしていません。でも定助と逢ったカレラは、「震災で色々あって、札幌からやっと戻って来れた」だの震災から半年も経ったから、ほとぼりが冷めたと思ってた」だのと話していました。エイ・フェックス兄弟も、カレラについて「よく半年間も持ちこたえていたな」と言っています。また、カレラは吉良のマンションで、吉良が隠し持つ植木鉢の「ロカカカ」の樹を1本発見。しかも、「他の樹は処分した」とも話していました。しかし、今のところ、そのような出来事は一切起きてはいません。
まあ、この程度ならいくらでも解釈しようがあるし、無理矢理こじつける事も可能ですけど……、あえてこう予想しましょう。吉良は『バイツァ・ダスト』を発動する、と。



ダモカンに追い詰められる吉良と仗世文。そこに現れたのは、なんと作並カレラ!片想い中の仗世文を助けてくれると思いきや、彼女はダモカンからカネを受け取るのだった。実はカレラも「岩人間」の仲間で、たまたま仗世文のそばにいた吉良の情報を仲間に売っていた。たとえ仗世文まで巻き込まれるとしても、接した事すらない男より目先のカネの方が大事なのだ。いよいよ大ピンチの2人。
瀕死に陥った吉良は、隠された第3の爆弾『バイツァ・ダスト』を発動ッ!仗世文に仕掛けられた『バイツァ・ダスト』は、時間を爆破し、仗世文は過去へと遡る!――時が巻き戻った先は、2010年10月3日。仗世文達が愛唱から「ロカカカ」の枝を盗んだ日。この日から、仗世文は2周目の時間をやり直す事となった。
この『バイツァ・ダスト』は4部の『バイツァ・ダスト』とは別物であり、ルールもかなり異なっている。発動時に巻き戻る時間が全然違うだけでなく、1周目の時間の記憶がどんどん失われていくのである。しかも、1周目の時間について話したりメモしたりすると、それを行なった者自身(=仗世文)が爆死する。「過去」をやり直すという事は、「運命」を上書きするという事は、それほどまでに厳しく困難な事なのだ。

こうして仗世文は、誰にも真実を告げられぬまま、そしてその真実さえ忘れていきながら、2周目の時間の中で孤軍奮闘する。
仗世文が1周目と異なる行動を取れば、連鎖的にその後の「運命」も自ずと少しずつ変化していく。1周目の記憶が完全に消え去る前に、仗世文はより多くの「異なる行動」を取るのだった。その結果が、このページに書かれた内容なのである。1周目では、今生きているホリーの救出を優先するあまり、「岩人間」に遅れを取ってしまった。しかし2周目では、ホリーの救出と父の仇討ちを同時進行!カレラとも早い時点で接触して仲間に引き入れ、貴重な「ロカカカ」をも大量処分するなど、「岩人間」に対して先手を取っていくのだった。
盗んだ「ロカカカ」の隠し場所も変化している。1周目は、枝を「二本松」に継ぎ木していた。実は「二本松」は聖樹であり、その秘められた聖なるパワーゆえに、「ロカカカ」も順調に生育できたのだ。仗世文はその事実を知らないし、何となく直感でそこにしただけだったのだが、運命的に互いに引き合うものがあったのだろう。もっとも、それでもホリーの「石化病」を治すには「ロカカカ」のパワーが弱く、食べさせるにはリスクが高すぎる。
2周目では、盗んだ枝を別の樹木に継ぎ木した結果、栽培に失敗。その代わり、「ロカカカ」の生態について推察でき、より強いパワーを持つ古い世代の「ロカカカ」の存在にも辿り着けた。今度はそれを盗み出し、「ジョースター地蔵」の内部に隠したのである。(仗世文は、仲間達にも誰にも隠し場所は教えずにいた。それどころか、逆に「岩人間」の目をも欺くため、「二本松」周辺に隠したかのような素振りをあえて見せていた。仗世文の協力者を装っていた夜露もそれに騙され、東方家近辺を探し続けていたのだ。)

また、1周目では震災後、多少の地面の隆起や沈下はあったが、ただのそれだけだった。しかし、2周目ではなんと、「壁の目」の隆起という予期せぬ事態をも引き起こす事となる。それによって、「運命」はなおも変わり続け……、1周目の危機こそ回避できたものの、今度は別の危機が訪れるのであった。信頼すべき仲間だったはずの吉良の裏切り、謎の「記憶の男」の暗躍、そして「壁の目」での「融合」。
――仗世文はとうとう1周目の記憶どころか、自分の記憶を全て失い、「東方 定助」という別人になってしまうのである。




なお、最新版はこちらに置いときます。 最新版




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