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「ジョジョリオン」の謎と考察・予想をまとめたよ


No.29 【 定助が「壁の目」で発見されるまでの経緯は? 】





【第3版】 (旧版)
「壁の目」の泉にて、定助は康穂と出会いました。定助には自分自身に関する記憶が失われており、自分がどこの誰かさえ分からない。
そんな定助が「壁の目」で発見されるまでの経緯や流れは、どのようなものだったのでしょうか?
……これはもう、他の全ての謎をも包括するようなドデカくってざっくりした謎と言えましょう(笑)。で、大雑把なストーリーを予想・妄想してみました。

ここんとこ過去編が続いており、空白の時間が次々と埋められていっている状況です。そのため、【第2版】を書き上げてから間もないけれど、予想の方も刷新していく必要が出て来ました。
第52話の仗世文と吉良に大感動したので、それを否定するような『バイツァ』予想も無しにします。もうこのまま突き進んで行ってほしい。そんな想いを胸に書きました。たとえ誰も求めてなくっても、自分の納得のため(笑)。




[ 吉良:負傷完治 ]
2011年8月19日、仗世文と吉良は「岩人間」達に追い詰められていた。愛唱から「ロカカカ」の枝を盗んだ事がバレ、夜露とダモカンに襲撃されたのである。しかし、吉良の機転により、どうにか逃亡に成功。逃げた先は東方家近郊。その海岸沿いの林の木に「継ぎ木」して栽培した「ロカカカ」には、実が2つ熟していた。ダモカンにやられた負傷で今にも死にそうな吉良に、仗世文は「ロカカカ」を食べさせたのだった。
……「ロカカカ」を食った吉良は、ガグガグと激しく痙攣!これできっとケガも治るはず!ところが、吉良のスタンド『キラークイーン』は、治るどころかボロボロと崩壊していく。間に合わなかったのか……?号泣しながら、必死に吉良の名を呼ぶ仗世文。すると、「うるさいな……。聞こえてるよ……。耳元で何度も叫ぶな。」と、ついに吉良が目を醒ますのだった。ケガは完治し、ケロッとしている。見た感じ、特に変化もなさそうだ。仗世文は拍子抜けし、安堵する。

さっきのヤバい状況がまだ続いている事を察した吉良。うかうかしていたら、「岩人間」達に追い付かれてしまう。しかも今頃はもう、町の至る所で監視・捜索が開始されている事だろう。ヘタに動くと逆に危険。そう判断した吉良は、残り1個の「ロカカカ」をもぎ取る。すると、松の木の根本の「洞」から東方家の「離れ」の地下に下り、その1室で勝手に休憩し始めた。
唖然とする仗世文に、吉良は言う。この「離れ」は、震災で崩れて以降、滅多に人は近寄らない。地下室には電気・水道・シャワー・トイレも完備しているし、ベッドまである。腹が空いたら、ここの果樹園からフルーツをいくつか失敬しよう。何日かは余裕で暮らせるぜ。甘い物は得意じゃないがな、と。「でも……、人のお宅でよくそんなにくつろげるね」と不安げにツッコむ仗世文に、「心配するな。親戚だよ。」と平然と返す吉良。仗世文は、吉良と東方家の関係を初めて知って驚くのだった。



[ 吉良:スタンド消滅 ]
地下室でしばらく身を潜める仗世文と吉良。しかし、何もせずに、ただ隠れているだけではなかった。地下室には電話も繋がっており、吉良はすぐさま何者かと連絡を取り合う。その相手は、吉良の古い知り合いの男で、「彼」もまたスタンド使い。と言っても、「彼」の詳しい素性も能力も知らず、信用して良いかどうかもグレーらしい。本当は手を借りるのも癪ではあるが、この状況では贅沢も言ってられない、との事。
吉良は「彼」に、作並カレラの保護を依頼。「岩人間」達は、カレラも吉良達の仲間と思っているはず。このままだと、どうせカレラは捕まって始末される。それならいっそ、本当に仲間に引き入れてしまおう。スタンド使いの戦力は1人でも多い方が良い。……程なくして、カレラも地下室へとやって来た。「彼」曰く、カレラはケータイを海に落としてしまい、のんきに新機種を買いに行ってたらしい。そこを発見したのだ。
吉良を見るなり、カレラは怒って掴み掛かってくる。完璧にブチ切れ、『ラブラブデラックス』まで発現させて吉良をブン殴る。マトモに殴られ、吹っ飛ぶ吉良。仗世文が慌ててカレラをなだめると、彼女はあっさりゴキゲンになるのであった。こうして、カレラに今までの経緯を説明する事になった仗世文だが、どうにも違和感を拭えない。今イチ、彼女と会話が噛み合わないのだ。

……その夜、カレラが熟睡した後、仗世文は吉良と2人で話をする。いくつかの疑問を吉良にぶつける仗世文。
吉良はあの時、カレラの髪に『シアーハートアタック』を仕掛け、大爆発を起こした。この爆発で、彼女は頭部に強い衝撃を受け、記憶が混濁してしまったのだ。(酒で酔っ払ってたせいもあるけど。)ここ最近の出来事に関しては、記憶もあやふやになり、現実と妄想の区別も曖昧になっている。そうなる事も計算した上での吉良の行動だった。カレラは仗世文と違い、カネで動くタイプの人間。欲に負けるタイプの人間。もし「岩人間」に捕まったら、きっと仗世文の事さえ平気で売ってしまうだろう。だが、支離滅裂な言動を繰り返すようにしてしまえば、カレラから情報が漏れる恐れも少なくなる。荒っぽい手ではあるものの、自分達の安全の確保のために必要だったのである。優れた医者でありスタンド使いであるからこそ可能な芸当と言えよう。
そして、仗世文が思った通り、吉良はスタンドを失っていた。「ロカカカ」の「等価交換」により、ケガを完治させる代わりに『キラークイーン』が消滅してしまったのだ。スタンドが見えないから、『ラブラブデラックス』の拳も無防備に喰らってしまったのだ。スタンドを持たぬ者が「岩人間」と敵対するなんて、あまりにも危険すぎる。自分を助けてくれた吉良を、今度は自分が助けなければ。仗世文はそう決心した。
(なお、後に仗世文と吉良は「融合」し、「定助」という新しい存在として生まれ変わる事になるが、仗世文のスタンド『ソフト&ウェット』はほとんどそのまま定助に引き継がれていた。この時点ですでに『キラークイーン』が消滅してしまったため、「融合」してもスタンドにはあまり影響が顕れなかったのである。)



[ 仗世文:その人生 ]
仗世文は、今まで誰にも秘密にしていた自分の生い立ちを、吉良に話し始める。


――仗世文は杜王町で生まれ育った。かつては家族で仲良く幸せに暮らしていたが、次第に両親の関係は悪化。父:貞文がしょっちゅう1ヶ月以上も家からいなくなり、帰って来ても何も語ろうとしないため、母:聖美は夫の浮気を疑うようになったのだ。なんとか両親が仲直りできるよう、仗世文は幼いなりに努力した。しかし、それが却って母から疎まれる結果となる。そして、あの夏の日、仗世文が海で溺れ死にかけた。この事件が決定打となり、両親はとうとう離婚。ちなみに、仗世文にスタンドが発現したのも、一命を取り留めた頃である。
母に引き取られた仗世文は、杜王町から遠く離れた都会で暮らす事となる。海で母に見捨てられた事は自分の勘違いだと思うようにし、母から好かれたい一心で「良い子」になろうと努めた。だが、そんなわざとらしい態度が余計に母の癇に障り、ますます避けられてしまう。ある日、母は自分の母(仗世文の祖母)が暮らす家に仗世文を預けると、それっきり姿を消してしまうのだった。その日以降、仗世文は祖母の家がある小さな離島で暮らし始める。ここでも必死に祖母に好かれる努力をしたものの、やっぱりうまくは馴染めなかった。

そして数年後、仗世文は故郷:杜王町へと帰って来た。居心地の悪い島から出て、M県S市にある大学「T学院」に進学する事にしたのだ。というのも、「帰って来い」と書かれた父からの手紙が届いたから。もう一度、父とやり直せるかもしれない。
かつての我が家を訪れると、そこには父がいた。久しぶりの再会。だが、何故か父は仗世文の帰郷に驚いている様子。不思議に思う仗世文を黙って家に入れるが、「もう私には関わるな」と態度は冷たい。そして翌朝、目を覚ますと、父はすでにどこにもいなくなっていた。ただ、仗世文が当分暮らしていけるだけの大金と、美しい「宝石」を、息子に置いて行ってくれていた。父がまったく理解できない。
仗世文は結局、自宅に1人で暮らすようになる。ここで待っていれば、父がそのうち帰って来てくれるかもしれない。学費や生活費の方は、父が残したカネのおかげで楽に支払う事が出来た。しかし、仗世文の心には、常に深い孤独と哀しみがあった。それでも、絶望したりグレたりせずにいられたのは、幼い頃に命を救ってくれたホリーの存在があるからこそ。ホリーに恩返しをする事だけが、こんな自分のせめてものレゾンデートル。そう信じた。――


それなのに、吉良を見捨て、ホリーの命を諦めかけてしまった自分自身に失望する仗世文。改めて謝り、許しを乞う。
吉良はしばしの無言の後、静かに語り出した。吉良家(ジョースター家)と東方家の繋がり、一族に伝わる「石化病」という忌まわしい宿命、「壁の目」の力、母と妹の事。そして最後に、「オレ1人だったら、きっと「ロカカカ」を手に入れる事は出来なかった。おまえのおかげだ、仗世文……。」感謝の言葉を紡ぎ、吉良はさっさと寝てしまうのだった。
ホリーだけじゃない。吉良にも、命と心を救われた。仗世文はベッドの中で、声を殺して涙を流す。自分の存在を赦され、胸の奥から希望と勇気が湧いてくる。初めてお互いの深い部分を教え合った2人は、この夜、ようやく「友」になれたのかもしれない。



[ 仗世文:ジョースターの血統 ]
あまりの疲れからか、みんな泥のように眠り、目を覚ました時はすでに夕方。とにかく、残り1個の「ロカカカ」を早くホリーに食べさせなくては。ホリーの命も、「ロカカカ」の鮮度も、いつまで持つか分からない。もどかしい気持ちを抑えながら、深夜まで待つ。そう簡単に「岩人間」達の包囲網が解けるはずもないが、周囲が暗く、人が少ない時間帯の方が見付かりにくいだろう。
スタンドを失った吉良は、いざという時にヤバい。ここは仗世文が1人で行く事に。『ソフト&ウェット』で音を「吸い上げ」、誰にも気付かれる事なく移動し、吉良の本邸への侵入に成功。家には吉良の妹:京もいたが、不意打ちで気絶させる。彼女まで巻き込む必要はない。いよいよホリーの寝室へ。……すると、そこでは岩のような体になって苦しむホリーの姿が!「石化病」が急激に悪化し、今にも死にそうになっていたのだ。仗世文は急いで「ロカカカ」を食べさせる。これにより、彼女の「石化病」の症状はひとまず落ち着き、腎臓1つ、肺の一部、胆のうを代わりに失うのだった。

残念ながら、「石化病」を完治させるだけのパワーは、あの「ロカカカ」には無かったようだ。しかし、ホリーの意識はいつになく澄み渡っていた。ホリーは仗世文の姿を確認すると、彼に詳しい事情を訊ねる。事の次第を知り、自分を責めるホリーに、仗世文は改めて幼い頃のお礼をする。全ては、あの時の恩返し
そしてホリーは、思いも寄らぬ事を仗世文に告げるのだった。それは、仗世文のルーツにまつわる話。彼の母:聖美は、なんとホリーの異母姉妹だったのだ。ホリーはあの夏の日、仗世文の肩に自分と同じ「星型のアザ」を見付け、後に素性を調べていたのである。その末、父:ジョセフの浮気と隠し子の存在が発覚。つまり、仗世文もまたジョースターの血統であり、ホリーの「親戚(甥)」だったのだ。
ホリーは仗世文の事をずっと、心のどこかで気に掛けていた。こうして再会できたのも「縁」。そして、直接話をしているうちに、誠実だけど孤独な仗世文に愛情を抱くようになった。仗世文を優しく抱き締め、自分の「息子」とまで言ってくれる。自分に流れる母の血を嫌っていた仗世文だが、それは敬愛するホリーと同じ血筋でもあったのだ。ようやく自分に流れる血を誇りに思えるようになった。初めて自分で自分を認められた事で、すっかり薄くなってしまっていた仗世文の「星型のアザ」も再びハッキリ浮かび上がる。これ以降、仗世文の「しゃぼん玉」にも星マークが刻まれたのだった。


最後にホリーは、もう1人の「息子」仗世文に、自分だけが知る「秘密」を託す決心をする。その「秘密」とは、ジョースター家に一子相伝で受け継がれるものであり、「壁の目」に宿る聖なるパワーを解き放つ方法。「壁の目」や「フルーツ」の力を失わせ、「岩人間」を普通の人間に戻し、「石化病」もこの世から消滅させる……、言わば全てをゼロに戻す方法であった。吉影と京は過激で極端な性格だから、これを伝える事だけは躊躇いがあったのだが、理知的で穏やかな仗世文になら安心して託せる。その「秘密」の方法をどう扱うかも、仗世文の決断に任せる事にした。
今のままでは、ホリーの「石化病」は近いうちにまた悪化してしまうだろう。次に悪化した時には、その「秘密」も永遠に忘れ去ってしまうかもしれない。そうなる前に、相応しい誰かに託したかった。こうして「母」ホリーの願いを聞き入れた仗世文は、泣く泣く「しゃぼん玉」で脳ごと「秘密」を吸い上げたのである。吸い上げた「秘密」は、父が仗世文に置いて行った「宝石」に吐き出して閉じ込めたのだった。父との最後の繋がりのような気がして、この「宝石」だけは売ったりなど出来ず、ずっと肌身離さず持っていたのだ。
やっと自分がすべき事をやり遂げたホリーは、この少し後に、TG大病院へ入院する事となる。



[ 杜王スタジアムへ ]
戻って来た仗世文は、ホリーから聞いた話を吉良にも正直に告げる。託された「秘密」の具体的な内容までは言わずにおいたが、仗世文にとって、吉良は誰よりも信頼できる存在。隠し事はしたくない。
それを聞いた吉良も、別段気にする風でもなく、「その「秘密」を閉じ込めた「宝石」、おまえがどこかに隠して来い。「岩人間」共への切り札に使える。」とだけ答えるのだった。

……その数日後、仗世文・吉良・カレラの3人は、変装して杜王スタジアムへ向かう。以前、愛唱を尾行・監視した結果、杜王スタジアム内に「ロカカカ」が隠されている可能性が高いと推測していたのだ。あの時は「枝」を盗むだけにしてやったが、もう遠慮はしない。宣言通り、こっちから「ロカカカ」を奪い取ってやる。復讐に燃える吉良。
推測はやはり正しかった。スタジアム内には誰も出入りしない広い部屋があり、そこの鍵を壊して入ってみると、大量の「ロカカカ」が鉢で栽培されていたのだ。まさかここまで乗り込んで来るとは思っていなかったらしく、「岩人間」は1人もいない。可能なら、これらを全部盗みたいところだが、さすがに物理的に不可能。3人は「ロカカカ」を全てメチャクチャに破壊!しまいには火まで点けてトンズラするのだった。しかし吉良は、とりわけ生育状態の良い「ロカカカ」を1つだけ、こっそり盗み出していた。
「ロカカカ」のパワーをより高める事さえ出来れば、「石化病」をも完治させる事が出来るようになるかもしれない。東方家が「岩人間」と手を組んでいるのも、恐らくそれが目的。もっとも、フルーツの栽培・改良に関しては、プロの東方家に敵うはずもない。ならば、こっちはそれとは別の角度からアプローチするべき。「石化病」そのものの由来や、「ロカカカ」を育てる「岩人間」の正体、「ロカカカ」と同じ「等価交換」のパワーを持つ「壁の目」「聖なる遺体」……、それらをもっと詳しく知る必要がある。きっと、そこにヒントがある。それらは全て繋がっている。

3人は杜王スタジアムを後にし、東方家の「離れ」に帰ろうとすると、そこに「彼」から連絡が来た(仗世文も吉良もケータイを失っているため、カレラのケータイに)。東方家周辺に今、「岩人間」が迫っているらしい。そう長いこと隠れられないとは思っていたが、もうすぐにも見付かりかねない。そこで3人は、行き先を変更。吉良が住む「マンションつつじヶ丘」へ。
仗世文が「危険すぎる」と反対するも、吉良は無視して進んで行く。204号室に入るものと思いきや、なんと勝手に別の空室に入って行った。なるほど、案外盲点かもしれない。吉良の部屋なら真っ先に見付かるが、別の部屋までは調べたりしないかもしれない。危険な事に違いないとは言え、他に隠れる場所の当てもないのだ。……吉良は皆が寝静まった頃、この部屋のキッチンにとりあえず「ロカカカ」を隠した。その様子を、偶然、目を覚ましたカレラが見ていたのだった。



[ 「壁の目」へ ]
幸い、「岩人間」には見付からずに済んだ。翌日、3人は「彼」と合流。仗世文にとっては、初めて出会う男である。仗世文は「彼」に対し、非常に物静かで知的な印象を受ける。どこか吉良とも似ている雰囲気を感じるが、しかし、吉良のような温かみ・人間味は感じられない。仗世文は本能レベルで、彼を信用し切れなかった。ただ、助けてもらった事も事実。そこは素直に感謝する。
そしてこの日、カレラは杜王町を離れる事になった。仗世文がそう促したのである。「枝」を盗んだだけでも殺されかけたのに、今回は「ロカカカ」を大量に処分したのだ。どちらかが死ぬまで戦いが続く事になるだろう。さすがにそこまで彼女に強いる事は出来ないし、何より彼女は、この期に及んで危機感が薄い。このままでは確実に殺される。仗世文は彼女にカネを渡し、なるべく遠くへ、なるべく関わりが無かった土地へ、しばらく離れるよう告げた。ちょっとした旅行気分で快諾すると、カレラは最後に記念写真を撮りたいと言い出す。本当はそんな場合じゃないが、「彼」に頼んで3人揃った写メを撮ってもらった。それを見て浮かれるカレラ。そのうちケータイを手に入れたら連絡すると約束し、仗世文達はカレラと別れる。カレラは1人、杜王駅から「ホワイトディアー長距離バス」に乗り、札幌へ向かうのだった。


仗世文・吉良・「彼」の3人は、「彼」が用意してくれたという隠れ家に移動。そこで数日間、身を潜めながら、「岩人間」との抗争の準備を進めていた。
そんな最中、吉良が1人でどこかに出掛けて行った。ところが、何時間経っても帰って来ない。心配ではあるが、「用が済んだら連絡する」との吉良の言葉を信じて待つ仗世文。実はこの時、吉良は隠した「ロカカカ」を回収しにマンションへ行っていた。しかし、その前に自分の部屋(204号室)に立ち寄ってしまった事で、予想外のトラブルが起こった。なんとつい最近、吉良に恨みを抱く笹目桜二郎が、真上の部屋(304号室)に引っ越してきていたのだ。そして、彼の仕掛けた罠とスタンド攻撃に囚われてしまったのである。無関係の女の子も一緒に囚われ、操られるがままに変態写真まで撮られる始末。
だが、吉良は桜二郎とは格が違う。僅かな隙を突いて、まんまと脱出に成功!部屋から1枚の写真を持ち出し、さらに「ロカカカ」も回収して逃げるのだった。その写真とは、吉良とホリー、そして仗世文の3人で撮った写真。かつて仗世文がホリーに会うため、吉良の本邸を訪れた際、撮影した写真。「岩人間」とのゴタゴタが起きてしまい、今まで仗世文に渡せずにいた。カレラと撮った写メを覗いて、嬉しそうに寂しそうに微笑む仗世文を見て、それを思い出したのだ。

マンションから逃げ出した吉良は、すぐさま電話ボックスから「彼」に連絡を入れる。そして仗世文と落ち合うと、吉良は「ロカカカ」を彼に預け、「あの「宝石」と同じように、見付からない場所に今すぐ隠してくれ!」と告げる。そして、吉良はそのまま帽子屋「SBR」へ。密かにオーダーメイドしていた帽子を受け取りに行く。
実はこの日、仗世文は20歳の誕生日を迎えていたのだ。そのせめてものプレゼントとして贈るつもりだったのである。あのイヤでも目立つヘアースタイルは止めさせたものの、帽子なら変装にも使えるだろう。ちなみに、吉良と仗世文の背格好がほとんど同じだった上、ホリー譲りの正確な目測により、仗世文ピッタリのサイズにこしらえてもらった。
この非常時にわざわざ面倒な事をして、余計なトラブルを招いてしまっている自分。仗世文と出会ってから、かすかに変わってしまった自分。吉良はそんな自分自身に苦笑しつつも、しかし、不思議と悪い気分ではなかった。
……3人はあらかじめ、「彼」の提案により「壁の目」で集合する約束をしていた。なんでも、そこで「彼」が吉良達に教えたい事があるらしい。吉良は「壁の目」へと急ぐ。



[ 「壁の目」にて ]
吉良から預かった「ロカカカ」を、仗世文は「ジョースター地蔵」に隠した。『ソフト&ウェット』で地蔵内部を吸い上げ、そこに空洞を作ったのである。さらに地蔵表面を吸い上げて穴を作り、そこから内部に「ロカカカ」を隠し、表面だけ元に戻せば、見た目にはただの地蔵。誰にも気付かれる事はない。ホリーの「秘密」を閉じ込めた「宝石」も、同様にここに隠していた。
一足先に「壁の目」に到着する仗世文。そこにはすでに「彼」が待っていた。「彼」は仗世文に近付くと、唐突に語り始める。仗世文のもう1つのルーツ、父:貞文の生涯についての話を。―― 1901年に杜王町に漂着した子どもが貞文である事、「岩人間」になってしまった事、東方家の養子として育てられた事、「空条 貞文」という別人になりすました事、ホリーの異母姉妹:聖美と恋をして結婚した事。そして、妻に「岩人間」である事を隠すあまり、すれ違ってしまった事。離婚後、その心の孤独を埋めるように、「岩人間」の仲間に入った事、「ロカカカ」密売に関わるようになった事。しかし2年程前、突然、「岩人間」の仲間を裏切った事。その報復として殺された事。仲間の間では「空条 貞文」とは別の名前と戸籍を使っていた事から、仗世文との関係性まで知っている者は他にはいない事。
……いきなり過ぎる話に、困惑・混乱する仗世文。それでも、「彼」の話は真実だと直感で理解できた。父はきっと、オレを危険に巻き込みたくなかったのだろう。同時に、暗黒な事に関わる自分を許せず、父親として相応しくないと思っていたのだろう。だから、あんな冷たい態度を取るしかなかった。しかし、少しでも「父親」であろうとして、オレに大金と「宝石」を渡し、ヤバい仕事からも足を洗おうとしたのだ。生きて帰って来れたら、息子ともう一度やり直したいと、そう思ってくれていたのだ。

父を想い、涙を流す仗世文。でも、どうして「彼」がそこまで知っているのか?どうやって調べ上げたのか?「彼」への疑念が渦巻く。その答えは、「彼」自らがあっさり明かすのだった。「彼」もまた「岩人間」であり、「岩人間」達のリーダー的存在だったのだ。そして、「彼」こそが父:貞文を殺した張本人!そう……、「彼」の正体は、後に定助の脳裏に過ぎった「記憶の男」その人なのである。
「記憶の男」は、自分だけの目的達成のために、出来る事なら仗世文と吉良が欲しかった。特に、本来ならば存在し得ないはずの「岩人間」と「人間」のハーフである仗世文には、強い興味を抱いていた。今のところ、普通の人間と何ら変わらないが、本人も気付かぬ無二の力を秘めているかもしれない。だからこそ、彼が貞文の名を騙って手紙を出し、仗世文を杜王町へ呼び寄せたのだ。敵対しているとは言え、彼らには死んでもらいたくはないのが本音。そのため、部下の「岩人間」達をも欺き操って、今まで両者が鉢合わせにならないように誘導していたのである。しかし、元々「岩人間」は集団行動には不向きの性質。「ロカカカ」を大量処分した事で、もはや「記憶の男」にも制御し切れないほど、「岩人間」達の怒りは高まりつつある。
そこで「記憶の男」は、仗世文に取り引きを持ち掛けた。今、ここに夜露を呼んでいる。もう間もなく着く。夜露と戦っても、おまえは決して勝てない。このままおとなしく降伏・服従し、隠して来た「宝石」と「ロカカカ」の在り処を吐けば、おまえの身の安全だけは保証する、と。もし断れば、吉良ともども、拷問に次ぐ拷問の中で無理矢理生かし続けてやる、と。……だが、仗世文にもう迷いや恐れは無かった。「岩人間」と戦い、勝って、吉良と一緒に生き残る。それだけだ。



[ 「定助」誕生 ]
ちょうどそこに夜露が到着。「記憶の男」は、仗世文を死なない程度に痛めつけて捕えろと命令し、どこかに姿を消してしまう。仗世文と夜露の激しい攻防!だが、「記憶の男」が言ったように、「しゃぼん玉」はことごとく割られてしまい、夜露にはまるで通じない。攻撃しようにも、すぐに周囲の岩石と一体化して、居場所が読めなくなってしまう。強すぎる。
これほど優れた力を持ちながら、どうして人の弱みにつけ込み、人を不幸にしてまで、自分の欲望だけを満たそうとするのか?最初はホリーの病気を治すためだけに、「ロカカカ」を求めていた仗世文だが、それだけでは無くなってきた。こいつらにはこいつらなりの事情やルールがあるんだろうし、元はと言えば、仗世文達が「ロカカカ」を盗んだ事がキッカケだ。しかし、たとえホリーの病気を完治できていたとしても、このままだと不幸になる人は増えるばかり。こいつら「岩人間」を放っておくワケにはいかない。父も同じ気持ちだったはず。和解や共存が出来ず、どうしても戦うしかないのなら、自分が決着を付けてやる。仗世文に「黄金の精神」が宿る!
ホリーから受け継いだ「秘密」を実行し、「岩人間」も「ロカカカ」も消滅させる。仗世文は、そう夜露に宣言する。それを聞いた夜露は激昂ッ!そんなバカげた事をしようとしていたとは思いも寄らず、我を失うほどにキレてしまった。「記憶の男」の命令さえ無視し、暴走。躊躇なく仗世文を殺しに掛かる!仗世文も懸命に善戦するのだが、夜露の攻撃に巻き込まれかけた1匹の子犬(後の「岩助」)をかばって、とうとう重傷を負ってしまった。『アイ・アム・ア・ロック』の能力で、岩に挟まれ押し潰されてしまったのだ。

さらに仗世文に近付き、いよいよとどめを刺そうとする夜露。だがそこへ、ようやく吉良がやって来た。スタンドは失っているが、医学に基づいた体術や手製の爆弾を駆使し、夜露を仗世文から遠ざけていく。その時、奇妙な出来事が起こった。突然、「壁の目」が激しく揺れ出し、仗世文の周囲だけが一気に隆起したのだ。おかげで、仗世文は夜露の能力射程外にまで押し上げられ、辛うじて生き長らえた。この様子を密かに目撃していた「記憶の男」は驚愕し、興奮し、歓喜する。
吉良の猛攻で深手を負った夜露は退却していった。少なくとも、仗世文は始末したも同然。そして夜露は、「おまえが死んだ後で、ゆっくり「秘密」と「ロカカカ」の在り処を探し出してやる」「おまえの知り合いにも聞いてみるとしよう」と言い残す。
夜露は目的のために手段を選ばない。ここで自分が死んだら、杜王町でただ知り合っただけの人達まで巻き込まれてしまう。仗世文は死力を振り絞り、大量の「しゃぼん玉」を飛ばす!「しゃぼん玉」は町中に降り注ぎ、無関係の者達から仗世文に関する記憶や記録のほとんどを吸い上げて消し去った。町のどこかにいる「岩人間」達も今、これを見ているはず。誰かから強引に聞き出そうとしても無駄だと、夜露も理解したはず。それを見届けると、精魂尽き果てた仗世文は意識を失うのだった。


吉良は、倒れる仗世文の元に駆け付けた。その惨状を目の当たりにする。医者じゃなくても分かる。仗世文はもう助からない。数分のうちに確実に死ぬ。
虫の息の仗世文を抱え、吉良はある決意を固める。2人で「壁の目」に埋まり、「等価交換」で「融合」するしかない。余計なノイズが混じらぬよう、お互いに裸になってから埋まる。しかし、さっき買って来たばかりの帽子だけは、仗世文に被せてやった。写真は夜露との戦いで破れ飛んでしまっていた。吉良が仗世文の「死」を引き受け、仗世文のケガは完治。吉良は心筋梗塞で死亡する。
それだけでなく、吉良は自分の「キンタマ」を仗世文に移動させ、代わりに「記憶」を封じてしまうのだった。吉良は以前から「記憶の男」と協力し、東方家や「壁の目」を調査しており、「融合」を利用した「石化病」の治療法を思い付いていたのだ。2人の「融合」をどこからか見つめる「記憶の男」は、歪んだ邪悪な笑みを浮かべていた。

吉良は仗世文に深く懺悔した。幾度もお互いに救い合う自分達の運命に、奇妙な友情すら感じている。しかし、それとはまた別に、何が何でも母を救い、一族の「呪い」を打ち破りたいという気持ちがあった。そのために、自分は瀕死の仗世文さえ利用しようとしている。
それでも吉良は、たとえ仗世文に蔑まれようと恨まれようと、「漆黒の意志」で遂行する。自分は決して、清くは生きられない。どうしても、心から他人を思いやる事が出来ない。それが自分の、この世に産まれた時からの性(サガ)。
……そして、どんどん薄れゆく意識の中、吉良は最期に思う。仗世文と1つになったなら、オレも仗世文のようになれるだろうか?辛い定めを背負った誰かを助けてやれる人間に、オレもなれるだろうか?……オレはずっと、おまえになりたかったのかもしれない。おまえが、母さんのためにオレを手伝ってくれた、あの時から……。……と。


――「壁の目」に埋まった2人。次に目覚めた時、「彼」はすでに「彼」ではなくなっていた。自分の事は何も憶えていない。目の前には、1人の女の子。こうして、物語は始まったッ!




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