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「STEEL BALL RUN」 コミックス感想
6〜10巻






●第10巻● (イリノイ・スカイライン ミシガン・レイクライン)



<カバーイラスト>
初のジョニィ単体表紙ッ!ウルジャン11月号(2006年)のトビラ絵と同じ構図です。でも、両者を見比べてみると微妙な違いがあるので、そのまま色を塗っただけではないみたい。マンガのイラストというより、肖像画のようなリアルさ。紫のバックも相まって、とっても目立ちます。初めて目にする人は「何だ、こりゃ?」って興味を引かれそうですね。ジョニィの上では、チュミーちゃんとサウンド・モンスター達が楽しげにダンシングしております。
背表紙にも、サウンド・モンスターのバカラ恐竜が。ノリスケさんかドット・ハーンあたりかと思っていたので、驚きの人選でした。人じゃないけど。

<作者コメント>
水着ギャルのカレンダーのお話。これって、「マンガノゲンバ」で荒木先生の仕事場に映っていたセクシー・ガールのアレですかねえ?なんか印象に残ってる。単に「1年って早いネ!」ってだけの話らしいですが、やたらフランクな口調で水着ギャルを語ってくるもんだから微笑ましいエピソードに思えてしまいます。昔の荒木先生っぽいコメントだな〜って感じました。でも、もう11月なんだなあ……。やっぱし、1年って早いですねえ。

<内容>
ディエゴと大統領、最悪の握手!そして舞台は5th.STAGEへ。ジャイロとジョニィが謎の敵に追い詰められる内容が半分くらい占めていますが、あのヒキならコミックス派の方も続きが気になりまくって、ウルジャンを読み始めるかもしれませんね。しかも、ジョニィのあの過去が明かされる巻が、1部ゲー発売から1週間後の発売。なかなか味な事をしてくれます。毎度の事ながら、絵やセリフや擬音の修正・追加も多いですね。連載時より分かりやすくなってます。
各話の合間には、久々のラフ画!嬉しいです。ルーシーもディエゴもいいけど、今回は大統領が邪悪で美しい。本編よりも圧倒的に少なく大雑把な線なのに、それぞれのキャラクターが見事に描かれていて、新たな魅力を発見できるって所が好きです。
そして、ページ数稼ぎのオマケページも読めます。どうせなら「SBR」のスタンドの定義でも説明してくれれば良かったんですが、「ジョジョ」全体を通してのスタンド解説になっていました。 どうやら「現れ立つもの」も「立ち向かうもの」も、定義としてはほぼ同一の存在のようです。前置きの素粒子の話から考えると、「いきなりとんでもない現象を起こせるスタンドという存在も、別に不自然なものじゃあないんだよ」って事でしょうか?正直、今更って気もします。細かいツッコミ所もありますし。ただ、懐かしの面々が一堂に会するトコを見ると心が躍りますね。描き下ろしの承太郎やジョルノ、ポルナレフに『チャリオッツ』……、実にカッチョイイ!
ラスト2ページを見る限り、「石仮面」の吸血鬼化も「スタンド」の一種で、「波紋」も「回転」も「スタンド」に近付くために編み出されたとも読み取れます。「いやいや、それはないだろ」とツッコミ入れたくもなりますが、そこはそれ。吸血鬼もスタンド使いも生物進化の可能性の1つであり、「石仮面」も『矢』も生物を強制的に進化させる道具という点では共通しています。そして、柱の男や吸血鬼という人外の怪物に対抗するための「波紋」。無限の力を追い求めるための「回転」。それは、決して乗り超えられない「能力」という壁をブチ破るための「技術」、完璧なる「才能」を超えるための「努力」。高みを目指す向上心とそこから生まれる力もまた、人間の素晴らしさなのです。そういったニュアンスで解釈しておきました。つーか、それがこのオマケで最も言いたかった事なのだと思います。11巻で描かれる展開への前フリにもなっているんでしょう。

(2006年11月3日)




●第9巻● (嵐の夜がやってくる)



<カバーイラスト>
8巻の「黒」から一変、9巻は「白」。ウルジャン8月号(2006年)の表紙イラストの別バージョンです。雪が積もる白樺林でのジャイロとジョニィが描かれています。やはりジャイロはカラフルで目立ちまくり、ジョニィ&スロー・ダンサーは逆にカメレオンと化してます。遠目じゃあ見事に景色に溶け込んでて、『エアロスミス』でもないと発見できませんね。ジャイロのくねりと、スロー・ダンサーの青くつぶらな瞳が何故か印象的でした。
背表紙はルーシーです。でも、なんか微妙にルーシーっぽくない……。多分、前髪がパッツンしてるように見えるせいでしょう。つーか、リンゴォもそうだけど、そんなに気合い入れて描かれない感じがします。

<作者コメント>
この数年で面白かった映画のお話。実を言うと、私はTVも映画もあんまり見ない人間なので、荒木先生の挙げる作品も見た事ありません。でも、先生がどういう視点で作品を見ているのか、そしてどんな物語を描いていきたいのかが分かり、興味深い話でした。「善」も「悪」も超越した意志っていうのは、最近の「SBR」を読めばひしひしと伝わって来ますしね。
ここで挙げられてる作品だけでも見てみよっかな〜、とも思います。「言葉」でなく「心」で理解できるかも。

<内容>
嵐の夜の激闘・激走ッ!「SBR」も超クールだけど熱いぜッ!描き足し部分も意外とあります。ルーシーの唇のトーン、脊椎の絵、ジャイロの金歯の文字や十字のアザ、ジョニィの歯なども描き加えられてるし、「Dio!!」とか「ンッ」なんてセリフも追加されていました。後方へ遅れていくジャイロに視線をやるジョニィの顔や丸コマもプラスされてて、けっこう芸が細かい。こういったウルジャン掲載時との微妙な違いを楽しむのも乙なものです。
ついにイケメンのスタンド名が判明!その名も『オー!ロンサム・ミー』!なんかかつてないスゴいネーミングです。元ネタはカントリーらしいけど、イケメンの孤独な叫びが込められていますね。ロープの能力も、孤独を癒してくれる人を引き寄せたいという深層心理が影響していたのかも分かりません。やはり、哀しき男です……。
ブラックモアの『キャッチ・ザ・レインボー』についても少々。これは「雨を利用して自在に移動する能力」と言い表すべきなのかも。肉体バラバラも、雨と同化するように疾走していく描写も、すべては雨を使っての移動。雨粒固定も、移動する足場を作るために派生した効果。そう考えると、割とスマートにまとまりそうです。
ただ、スタンド紹介も面白いんだけど、でもどうしてもラフ画が……ラフ画が見たい……ッ!!

(2006年9月5日)




●第8巻● (男の世界へ)



<カバーイラスト>
「漆黒の意志」「ブラックモア」……という内容から、以前から8巻の表紙はぜひ黒系にしてほしいと願っていました。そしたら来ましたよ、この表紙イラストッ!全体を包む黒を切り裂く、鮮烈なる紅のスプレー文字。ホット・パンツの能力をうまく使った表現ですね。想像以上のカッコ良さと渋さで、早くも男の芳香が漂ってきます。7巻表紙を抜いて、このイラストが1番好きになりました。
背表紙にはリンゴォが登場。ホット・パンツを差し置いて出て来る程に、この物語において重要なポジションに位置しているって事でしょう。その割に、今いちテキトーに描かれてるようにも見えますが。

<作者コメント>
7巻からの続きで、「正しい道」について。荒木先生の疑問や苦悩が書き綴られています。この辺は、6部での徐倫やプッチの行動からも強く感じ取られました。そして6部は「正義の道を歩む事こそ運命」と締められたワケですが、「SBR」では「正義の道とはどんな道なのか?」「正しい道を歩んだその先には何があるのか?」という所まで思考が及んできているのかもしれません。作品のテーマが部を重ねるごとに、連続するように深まっていっていますね。
「正義」と「悪」は立場や思想によって異なってくるし、その時代時代によっても移り変わっていくもの。それでも先生は「他人を踏み台にする事だけは絶対に悪」と断言して、清らかな物語を描き続けてきました。5部ぐらいから、徐々に両者の境界がぼやけ始めてはきたものの、その大局的な根本のスタンスは決して揺らぎはしません。今もそれは揺らいでいないと思います。「SBR」では今まで以上に「正義」と「悪」が混濁し、曖昧になっていますが、だからこそ今まで以上に「正義」と「悪」の輪郭がクッキリ見えてきそうです。
そして、先生の迷いはこれだけにとどまりません。自分が納得する生き方・美学を追い求めた結果、もし大切なものを傷付けてしまったら……?「納得」・「美醜」「善悪」・「正誤」はまた別物。そこが正に「男の価値」「社会的な価値観」のせめぎ合いであり、「個」と「全」のジレンマなのでしょう。ジャイロが今歩んでいる道も、本当に「正しい道」かどうかはまだ分かりません。ジャイロ達の迷い苦しみながら、必死に生き抜こうとする姿が今後も描かれると思いますが、彼らがこのレースを通じて何を掴むのかが気になるところですね。なんか素直にハッピー・エンドでは終わらなそうな予感……。

<内容>
内容の方は言うに及ばず。最高に盛り上がっております。読み返してみると、時代に取り残された男・リンゴォの「時間を戻す能力」や「道に迷わせる効果」は、どこか後ろ向きで暗いエネルギーにも感じます。彼の存在は今の先生自身が抱える迷いそのものだったのでしょうか?色々と深読みできるエピソードです。
「男の世界 その2」ではリンゴォがジャイロ達に向かって「どうする?」と聞いているのに対し、「その3」では逆にジャイロがリンゴォに「どうする?」と聞いている事も新発見。しかも、リンゴォの場合は「決めるのは君たちだ」と続きますが、ジャイロの場合だと「おまえやオレがどう決めようとな」と続いています。リンゴォを選択の余地のない運命へと引き込んだ時点で、ジャイロは彼がいる領域に近付く事が出来たのか?この「どうする?」という言葉は、作中の世界でも現実世界においても、自分・相手・環境・時代・運命……といったあらゆるものへの重大な問い掛けとなっているのかもしれません。
今回はラフ画は無し!かなりショッキングな事実です。いつも楽しみにしてるのに。代わりにスタンド解説が載ってました。先生も唐突に思い付いたように始めるからなあ……。面白い情報としては、『マンダム』で時間を戻す際に使う腕時計は、単なる精神的なスイッチに過ぎないという事。絶対不可欠な動作・条件ではなく、時間を戻すイメージが湧きやすく、能力を発動させやすいってだけなのかも。ともかく、9巻こそはラフ画を……ッ!

(2006年5月4日)




●第7巻● (広い広い大草原の小さな墓標)



<カバーイラスト>
今回もいかにも「SBR」的な不思議テイストのイラストです。横たわり、ポーズを取る巨大ジャイロ。奇妙な形の雲からは、ぜんぜん虹っぽくない虹が何故か架かっています。地面に生える木の両サイドには、真っ直ぐにこちらを見つめるジョニィと、何かを掴み取ろうと手を伸ばすディエゴ。ホット・パンツも適当に佇んでおります。そして、虹(?)色に染まる大地を走る、ジョニィ・ディエゴ・ガウチョの3人。
蒼い空と紅い大地の鮮やかなコントラストが目を惹きます。ジャイロの真っ赤な瞳も印象的。このイラストは、1〜7巻の表紙イラストの中では一番好きですね。どことなく春らしくて清々しい感じ。

<作者コメント>
モナリザに似てると言われたせいか、ネット上でもネタにされてるせいか、とうとうやってくれました。荒木先生とモナリザの奇跡のフュージョンです。さすがにド肝を抜かされたっつーか爆笑ッ!
そんなおバカな著者近影とは裏腹に、コメントは珍しく深刻で弱気。先生は今、自分の進むべき道に迷い、「納得」を強く求めているようです。「作者が迷えば、キャラクターも読者も迷う。だから、あえて言い切る。」というスタンスで創作しているはずの先生ですが、心の中では様々な想いが渦巻いているようです。邪推かもしれませんが、「自分の故郷」とまで言っていた「少年ジャンプ」から「ウルジャン」に移籍した事で、「自分が描きたいもの」「少年読者が読みたいもの」とのズレを感じてしまったとか…?5部の頃から表現や規制に関しての不満・疑問も抱いていたワケですし。
思えば「ウルジャン」移籍後は、「遺体」を手放したくないと涙するジョニィや、「受け継いだ者」・「対応者」などと指摘されるジャイロと、主人公達の内面の弱さがクローズ・アップされているように見えます。「納得」するためにレースを続ける2人の姿は、そのまま今の先生自身の姿でもあるんですね。この長いレースの果てにジャイロとジョニィが見付けるであろう「答え」こそが、荒木先生にとっての「光輝く道」となり、「荒野を渡り切る心の中の地図」となるのでしょうか?そーゆー視点で「SBR」を読むってのも、野暮だろうけど興味深くもあります。
何にせよ、現状に決して満足せず、貪欲に上を目指そうとする姿勢は憧れます。自分なりの「正しさ」をどこまでも追求し続けられる人って、なかなかいなそうですしね。8巻に書かれる続きの文章を早く読みたいです!

<内容>
バトルにレースにサスペンスと、充実した盛り沢山な内容。次々と移り変わる、息をもつかせぬ展開。物語は中盤に突入し、いよいよエンジンが掛かって来ました。今回は描き下ろしこそありませんが、けっこう修正されてる部分があります。3rd.ゴール直後のジョニィ達の汗やホット・パンツ初登場時の顔、湖を進む馬の筋肉のきしむ音など。アナスイの初登場シーンすらそのまんまにしてた荒木先生がこんなに描き加えるとは、なんか環境や心境の変化があったんでしょうかねえ?
ラフ画の方は、野生的なジャイロとセクシーなディエゴ。セリフはありませんでした。以前も言いましたが、個人的にはあんましセリフは必要ない派だったんで別に構いません。ただ、週刊の頃はラフ画がいっぱい見れて良かったよなあ……と、しみじみ。

(2006年3月4日)




第6巻● (スケアリー モンスターズ)



<カバーイラスト>
色鮮やかな無数の鉄球の上を、ヴァルキリーに跨るジャイロとジョニィが走っているイラスト。玉乗り曲芸でもしているかのような危ういバランスが、どこかスリリングで楽しげな空気を感じさせる絵です。本編と違うチャップスをはき、銃を携えるジャイロは、いつもよりワイルドでウエスタンな雰囲気。
これまた今までにないイラストですね。「SBR」の表紙イラストは毎回毎回、独特で不思議な印象を受けます。個人的にはこのイラストはけっこう好きですが、人物が小さく描かれていると迫力は欠けますし、バックがオレンジってのも2巻と被るので、その点は残念でもあります。

<作者コメント>
荒木先生は誰に似てるか?まあ、そーゆー話です。「ハンサムを描くと自分に似てしまう」と自負していただけあって、さすがに大物揃い。分からないでもないのもあり、意味不明なのもありですが(雲?自動車?)、モナリザにはちょっとウケました。あれ、土方さんは…?

<内容>
まさにディエゴ尽くしの巻でした。連続して読むと、スピーディーで緊迫感溢れる展開に息を呑みます。ただ、コミックス派をうまくウルジャンに誘導させる作戦なのか、つい最近読んだばかりの話がもうコミックスになっているので、どうも今イチ感慨が湧きませんね。週刊時は9話収録で1話1話に山場もあったし、発売のタイミングもちょうど良かったんですが、月刊だとたった3話しかないから記憶が新しすぎるというか……。難しいところです。
さて、今回はページ数の関係で描き下ろしやオマケも充実。ラスト4ページのディエゴ・ジャイロ・ジョニィ、そして村と丘と山々の俯瞰。あの怒涛の流れから一転、無音であるが故に、余韻が一層引き立っています。
大統領の過去も明かされました。彼の名はファニー・ヴァレンタイン。乙女チックな名前です。「ヨセフの地図」はもともとイギリスの牧師が所持していて、アメリカへと持ち運んだ物らしい。ピューリタンにはキリスト再臨による「千年王国思想」もあるようですし、アメリカ大陸へと先頭を切って移住したのもピューリタン。グラストンベリーから地図を盗み出したのは、プロテスタントの誰かだったのかも。そして彼は、ピューリタン達と共にサンディエゴ付近を探索して「遺体」の心臓部を入手。それ以降、一気に大統領にまでのし上がった様子。「遺体」が持つカリスマが宿ったのでしょうか。こんな重要な情報をオマケで載せてしまうとは……。でも、描かれる度に大統領はいいキャラになっているので、このままバトル・パートにおけるラスボスになってほしいものです。
「遺体」の全パーツも判明。心臓・左腕・両目・頭部・両耳・脊髄・右腕・胴体・両脚の9つに分かれているようです。まさか「両脚」で1つのパーツで、「耳」なんて細かいパーツまであるとは予想外。どちらも大イベントの香りがしますよ。特に「両脚」は、歩けないジョニィか走りまくりのサンドマンのどちらかがGETする事になりそうです。でも、数字から見て最終STAGEにあるっぽいので、やっぱジョニィを歩かせるための設定なのかな?結局は「両脚」を手放す事になるけど、彼の脚に「遺体」の奇跡の力が残ってて、下半身の感覚だけは取り戻せると予想。最終回は、必死のリハビリの末、騎手として再デビューするジョニィの姿が見られればいいなあ。
2nd.STAGE着順と総合順位も公開。驚いたのは、やはりシゲチータルカスですね。別に彼らが本編に登場しなくてもいいんです。着順表を見て、想像を膨らませてるだけで楽しいんで。過去のパラレル・キャラばかりに注目しても仕方ないですからね。新しい物語が読みたい。それだけです。

(2005年11月5日)







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