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岸辺露伴は動かない (TVドラマ)





さあ、今年もやってまいりました!すっかり年の瀬の定番となったTVドラマ「岸辺露伴は動かない」ですよッ!早いもんで、今回でもう3期目かぁ~。(第一話~第三話の感想はこちら、 第四話~第六話の感想はこちら
今年は12月26日(月)~27日(火)の2夜連続、NHK総合テレビでの放送です。放送時間は、22:00~22:54。
……あれっ?いつもなら3話なのに。残念に思う気持ちもありますが、今後も長く続けていくためのペース配分なのだとしたら仕方ないのかな。あるいは、「9」という数字は今、荒木ファンにとって特別な数字。「ジョジョ」第9部スタートよりも先に「動かない」で第9話を放送するワケにはいかないぜ、という奇妙な配慮なのかもしれません(笑)。ただ、放送時間は今までより5分増えてるっぽいので、各々のエピソードはより深く濃く描かれる事間違いなしです。

今回、ドラマ化されるエピソードは、「ホットサマー・マーサ」「ジャンケン小僧」の2編!前者は今年発表されたばかりの新作エピソード、後者は「ジョジョ」本編の「ジャンケン小僧がやって来る!」のアレンジ。このかなり両極端なエピソードをどう違和感なく結び付けてくるのか、脚本の手腕にも期待が持てますね!
ここでは、そんなドラマの感想を書き記していきます。








第七話  ホットサマー・マーサ



第3期の初回を飾るは「ホットサマー・マーサ」。冒頭は毎度恒例、露伴の能力説明パートです。いつもの俳優さん2人組が、今回は代理店の人達になってます。そして、能力の説明のみならず、露伴にとっての「取材」がリアルな体験を伴うものでなければならない事も、ここで明確に打ち出されています。導入として完璧じゃない?
……で、まず言っておきたいのは、予想以上に原作に忠実で驚いたって事ですね!いろんな意味で際どい描写やセリフが多いエピソードなのに、しっかりやってくれた事に感謝します。「ホットサマー・マーサ」のデザインでちゃんとミッ●ーを想像させてくれたから笑えたし、露伴がコロナ禍における窮屈さや閉塞感で弱り果てちゃってる姿に親近感を覚えたし、露伴に迫るイブちゃんの妖しさとエロさがガンガンに出てて羨ま恐ろしかった。全体の雰囲気として、近年の荒木作品特有のしっとりジットリとした不気味さが終始漂っていましたね。それがイイ。BGMもこれまでと明らかに空気が違ってて、イブちゃんの歪んだ愛に包まれているかのよう。ホラーだったなぁ。


特筆すべきは、数字の「3」にこだわった点。これは非常に面白い着眼点です。第2期での3編を「坂」というキーワードで結び付けたように、今回は「3」で結び付けたみたいですね。神社に繋がる交差点は「四つ辻」=「4」で、縁起の悪い場所。「辻神」が現れる、この世ならざる場所。「3」は逆に縁起の良い数字で、「薮箱法師」の解決方法も、鏡を左周りで3回転させるという形に改変させています。そしてその数字は、「薮箱法師」で飛んでしまう時間「3ヶ月」にも通じ、かつ「ホットサマー・マーサ」のデザインの丸の数とも一致しているワケで、ホントに巧いよなぁ~。次回の「ジャンケン小僧」もジャンケン3回勝負だもんなぁ。
問題は、どこからどうして「3」にまつわる怪異が起き始めたのかってところです。単に今回が3期目だからってだけなのか、作中で何かしら明確な理由が存在するのか。大いに気になります。その理由如何によっては、この第3期のエピソード数が何故「3」ではなく「2」なのかもメタ的に分かったりして?

あのおにぎり宮司親子の得体の知れなさも見事に表現されてましたね(笑)。あの親子、なんであんなにコミカルなのに気味悪いんだ?見た目から言動から、ちょっと浮世離れというか、人間離れしてる感じ。俳優さん達の演技によって、さらにインパクトと癖が強烈になった!露伴とのやりとり、ついつい見入ってしまいます。
そして何より、このエピソードはイブちゃんでしょ。あれほど個性的なファッションが、不思議と画面の中では馴染んでましたね。しかし、ヤンデレっぷりは原作をも凌駕。めっちゃベタベタしてくるかと思えば、話がまるで通じないナチュラルな冷酷さもビンビンに伝わってくる。「薮箱法師」という怪異そのものよりも、イブちゃんという人間の恐ろしさがメインになってるぐらいですもんね。露伴も最後に「罪を犯さない」とキッチリ命令せざるを得なかった程の相手。古川琴音さんの独特の存在感が素晴らしかった。露伴の「本」を読みに近付いてしまうあたりも、彼女の心の揺れ動きが感じられて良かったです。


原作からの細かな変更点・追加点も、なかなかに気が利いてるんですよ。
例えば……、イブちゃんが露伴邸の庭に現れた時も、原作だと露伴は2階から応対してたけど、ドラマでは1階。より近距離になったおかげで、露伴が邸内でマスクを着ける説得力が増していました。また、イブちゃんと出会ったキッカケが動物病院ってのも、スゲー納得。そして、イブちゃんへの対策として、京香ちゃんが露伴邸に新しい鍵や監視カメラを設置するというのも、流れ的に自然でした。京香ちゃんが合鍵を持ってる理由になり、露伴が「薮箱法師」を監視カメラで確認する事にも繋がっていきます。
露伴が鏡を3回回す際に失敗してしまうのも、スタンドのヴィジョンが存在しないドラマ版では、陶器(壺)に反射した露伴の姿が鏡に映り込んでしまっていたという風に変わっていました。原作ではただの背景に過ぎなかった壺を活かしてくるってのが、さすがですよ。全てに無駄が無い
まぁ、「ホットサマー・マーサ」のフィギュアの件については、原作の唐突さ、ちゃっかり感みたいのが笑えたので、そこが改変されたのは残念。でも、京香ちゃんが当たり前にズカズカ入って来て、それを見つめるイブちゃんが怖かったから、これはこれでアリですかね。……つーかあのフィギュア、普通に発売しないかな?


―― 1年ぶりの「露伴」、やっぱり面白かったです!露伴と京香ちゃんに再会できて嬉しいし、高橋一生さんが露伴の新たな一面を演じ切ってくれた事も嬉しい。バキンちゃんも今後、レギュラーメンバーになるのかな?京香ちゃんの愛犬マロンも名前だけは出て来てくれて、忘れられてなかった事にちょっと安心(笑)。




(2022年12月27日)








第八話  ジャンケン小僧



「ホットサマー・マーサ」に続くエピソードは「ジャンケン小僧」。「ジョジョ」4部でも名バトルとして評価の高いバトルではあるものの、「運」という目には見えないものを描く戦いだからこそ、説得力を持ってそれを描き切るのは難しい。アニメ版の出来も悪かったですし。……で、ドラマ版なんですが、正直言って、こっちもちょっと微妙な出来でした。何度も見返せば変わってくるかもしれませんけど、1回しか見ていない今の段階だと、これまでの全8話中ワーストかな。原作の面白さとド迫力がいかに稀有なるものなのか、よく分かりました。
とにかく気になったのは、勝負中にあちこち移動しすぎ。ビルの屋上に上った時はてっきり、空中戦の如く描かれているハイ・ヴォルテージな原作を「高度」で再現しようとしているのかと思ったんですが……。小僧がトラックに轢かれようとする原作を、屋上から飛び降りる事で表現するつもりなのかと思ったんですが……。特にそんな事もなく、なんか普通に下りちゃった。通りすがりの京香ちゃんを使っての「運試し」が終わると、今度はまた歩き回って、工場っぽい場所へ。そこでガラスのシャワーをやって、最終決戦。う~ん……、終始落ち着きなく、これと言った必然性もなく、チョロチョロ動き回ってばかりだなぁ。テレビ番組としては画的な変化を付けたいところなんでしょうけど、「露伴、元気じゃん」って気持ちになっちゃうし、いちいち流れが途切れてしまってノリ切れませんでした。1つの場所でどっしり構えてやってほしかった。
小僧役の柊木陽太さんの演技に、ちと「重み」と「凄み」が足りなかったのも残念。ここは露伴を見習って、「子どもだから」と容赦する気はありません。ジャンケン小僧に必要なのは、まさしく歳不相応な「重み」と「凄み」だと思うからです。いや、もちろん頑張って演じてくださっているのは分かるし、小僧役は相当難しいのも確かです。それでも、だからこそ、期待してしまうんです。最初はあの演技で良いとして、どんどん急成長し、しまいには野生のトラの如き鋭く冷たい殺気を放ってほしかったんです。それが無いから、「まるで劇画」っていう根性も、己の敗北を認めた清々しさも、いまいち伝わって来なかった。全体的にジャンケン勝負が上っ滑りしていた印象。
「運試し」も、もし京香ちゃんが来たところで、小僧にとって都合の悪い事って別に無い気がする。原作での仗助&ジョセフのように、敵に回したら明らかにヤバい相手ならともかく、京香ちゃんなら何とでもなりそうだし。露伴も露伴で何を焦っているのか、よく分からん。プライドなのか、巻き込みたくないのか。そのへん、もっと丁寧に描写してほしかったですね。


でも、「ホットサマー・マーサ」からシームレスに繋がるエピソードに再構成した点は面白かった。京香ちゃんに露伴の「薮箱法師」の記憶があるのはおかしいですけど、それはさておき、「ホットサマー・マーサ」の丸が4つになったせいで始まる物語。
小僧はもともと「3」という数字が好きで、ジャンケンも「グー」「チョキ」「パー」の3すくみだから好きらしい。で、例の「四つ辻」でズッコケたら「辻神」に憑かれ、露伴への怒りが増幅。その上、ジャンケンで勝った相手のエネルギーを奪い取る力に目覚めた模様。なるほどね~。「3」は最もシンプルで安定した数字。三種の神器に、三位一体。聖なるものにも「3」は絡む。その「3」を崩した露伴が許せない。よくぞここまで上手にこじつけたな、と驚きです(笑)。
ただ、このあまりにも素晴らしい理論的な改変と、「強運」とか「心の力」とかの感覚的なくだりとが、そもそも噛み合ってない気もしました。小僧の性格自体も、丸の数で露伴に詰め寄った際の考察を見る限り、かなり理詰めな印象を受けますしね。いっその事、「3」という数字が持つ「美しさ」や「調和」を追究するための謎理論なんかを組み立ててジャンケンする……みたいな方がしっくり来たかも。だって、「ジャンケンが好き」っていう以上に「3が好き」なんでしょ?露伴に挑む動機からして、「偉大な露伴を超えたい」じゃなく、「4にした露伴が許せない」だからね。ジャンケン小僧なのに、ジャンケンそのものが純粋に大好きってワケでもなく、あくまで「3」という数字ありきみたいな感じになっちゃってる。「強運」だの「心の力」だのは「3」と無関係だから、馴染まずにどこか浮いてるっつーか、後付け・後出し感が出ちゃうんだよね。「3」へのこだわりが逆に、小僧のキャラクターの根幹を統一性・一貫性のないものに歪めてしまってるんですよ。その点は惜しい。
そして、丸4つの「ホットサマー・マーサ」を見ると、怒りで無意識的に拳を強く握ってしまうという設定。透明の赤ちゃんもいないし、どうするのかと思っていたら、まさかの解決法でした。いささか強引ではあるけど、伏線はしっかり張ってるから納得させられてしまうような……。

まぁ、色々と不満点を語ったりもしましたが、執拗にジャンケンに持ち込もうとする小僧とそれを受ける露伴のやりとりは見応えありました。どこまでも大人げない露伴、最高ッ!
屋上で互いにプレッシャーを掛け合う2人のセリフに合わせて、音が奏でられていたのも面白い演出です。2人が発する言葉に、より強い言霊が宿るかのようでした。違和感や不穏さもマシマシです。
勝負を終えた小僧に、丸3つバージョンの「真ホットサマー・マーサ」をサインしてプレゼントしてあげるというのも、これまた粋な計らいでした。
京香ちゃんが志士十五の担当編集でもある事が判明。さすがに本人の登場はなかったけど、十五も元気そうで何より。ってか、京香ちゃんはクセ強漫画家と相性いいよね(笑)。
ラストでは、「辻」にまつわるもう1つの言い伝え「辻占 (つじうら)」についてのウンチクも披露してくれました。へぇ~、「辻」「交差点」って本当に奥深いんだな。ひょっとすると、今回の「辻神」は、自身に宿す「4」という数字に反した「3」という数字を嫌っているのかもしれませんね。だから、「3」に関連する「薮箱法師」や「3」に執着する小僧を利用して災いをもたらそうとしたんじゃないかな?



―― 岸辺露伴は終わらない。最後の最後にサプライズが待ってましたよ!「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」、たぶん制作決定ッ!!おっしゃ!!
京香ちゃんが海外の話をし出した時点で、まさかという期待が芽生えました。その期待は徐々に確信へと変わり、「パリ」「ルーヴル美術館」というワードで狂喜に変わりました。だから2エピソードしかやらなかったんだ。そんな巨大な隠し玉があるんだもんね。2時間スペシャルにでもして放送するのか、それとも映画なのかは続報を待つしかないけれど、そう遠くないうちに見られそうな予感!とにかく楽しみですね!




(2022年12月28日)




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