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最初は「飛び魚」だったそうだ
南の海の『飛び魚』が これの「始まり」


#049 二年前、洋上にて。





●2ヶ月振りの「ジョジョリオン」!待ちに待った甲斐あり、今回はウルジャンの表紙を飾ってくれました。
中央には定助が描かれ、薄い青紫色の背景には「しゃぼん玉」がいくつも配置されています。失われた「記憶」への手掛かりを求め、町を駆ける定助……といったところでしょうか。そして、一際大きく目立って描かれているのが『ソフト&ウェット』。全身が美しい七色に塗られ、まさしく「虹」と化しています。……そう、この絵はなんと、「岸辺露伴は動かない 〜エピソード7 月曜日-天気雨〜」のカラートビラ絵の連作となっているのですッ!作品の垣根を超えての連作ってのは珍しいですね。
しかも、同時期に発売されたコミックス11巻のカバーイラストもまた、同様に連作なのです。ほぼ同じ構図だけど、それぞれに味わいが異なるので、どの絵が一番好みか考えてみるのも楽しそう。


●表紙だけでは飽き足らず、今回のトビラ絵もカラーで拝めちゃいました!しかも、なんとビックリ。これまた連作でした。おいおい、怒涛の4連作かよッ!
当然、構図はほとんど一緒なんですが、虹色に染まっているのが『ソフト&ウェット』ではなくダモカン。スタンドじゃなく生身の人間だと、ファンタジックって言うより、なんかサイケデリックだな(笑)。ともあれ、定助はこのダモカンを超えない限り、求める「真実」には辿り着けません。往け、定助ッ!


●冒頭は唐突に「飛び魚」のお話。この「飛び魚」こそが、全ての始まりらしいのです。「なんのこっちゃ?」って感じですが、この話が今回のキモ。「偶然」は連続して「必然」となり、「必然」は連続して「運命」となるのです。
まだ自分の過去を何一つ思い出せない定助。しかし、その手掛かりはすぐそこにあります。大弥ちゃんが持って来た、「空条 仗世文」のパスポートのコピー。ダモカン=空条 仗世文!?この謎を解けば、きっと失われた過去に大きく近付けるはず。……ところが、大弥ちゃんの肉体も溶解し、ピンチはますます激化ッ!
一方、リビングには憲助さんと鳩ねーちゃん。そして、2人を黙って見つめるダモカン。彼はそっと鳩ねーちゃんの顔に触れると、東方の家と家族を褒め称えます。鳩ねーちゃんはちょっとテレながらも、2年前にこの家が建て直された事、有名な建築家:八木山 夜露の設計である事を話しました。前に憲助さんは、東方邸の新改築を「3年前だったか」と言ってましたが、どうやら正確には2年前っぽいな。それを聞いたダモカン、意味深な表情を浮かべると、彼女に「玄関まで行って、大弥ちゃんが持っているFAXを持って来てくれ」とお願いするのでした。何も疑う事なく、それに従う鳩ねーちゃん。


●1人、リビングでシャンパーニュを飲む憲助さん。その時、異変が起こりました。シャンパーニュを口に含むと、憲助さんの顔のあちこちが突起状に盛り上がったのです。おおう、これはキモい。背後にはダモカンが立っており、憲助さんの口はグラスの硬さと重さに耐え切れず、どんどん変形。両足もトロトロに溶けています。そう……、憲助さんもすでにダモカンの餌食になっていたのです!さっきの顔の突起も、シャンパーニュから立ち上る炭酸の泡に、顔が引っ張られて変形しちゃっていたワケです。
ダモカンは再びソファに腰掛け、憲助さんに語ります。「物事は複合的だ」「繋がってて 動機や目的がひとつだけとは限らない」……と。ダモカンが東方家にやって来た理由も、3つの問題を一度に解決するためだそう。鳩ねーちゃんの事も、「すでにオレの言いなり」「オレのもの」と言い放ち、憲助さんは目に涙を浮かべます。やっぱりダモカン、ゲス野郎だったか。事実を知ったら、鳩ねーちゃんは何を思うんだろう?
そして、ダモカンはさらに続けます。彼の3つの目的のうちの1つ。それは、相次いで失踪した夜露、愛唱、エイ・フェックス兄弟の4人を捜し出す事。もし彼らが死んでいたのなら、その犯人を見付け出して「消滅」させる事。ダモカンが「岩人間」である事も、ほぼ確実となりました。仲間意識なのか、利害関係なのか、とにかくダモカンにとって「岩人間」の4人は大切な存在みたいですね。
残り2つの目的は、吉良に盗まれた「ロカカカ」を取り戻す事と、自分の思い通りになる「家」と「家族」を手に入れる事……とかかな?


●ダモカンの殺意ゆえか、彼の背後にスタンドのヴィジョンも現れます。『死神13』や『ブラック・サバス』なんかにイメージが近いかも。シルエット的には、『キング・ナッシング』にも似た頭部のデザイン。その顔や両の角には、大きな「手型」が描かれています。気になるスタンド名は『ビタミンC』。ダモ鈴木氏が所属していたロック・バンド「CAN(カン)」の曲「Vitamin C」が元ネタです。その名の通り、「C」の文字もスタンドに散りばめられています。恐らく、胴体や下半身に明確な形は無く、無数に伸びた「手型」になっているっぽい。本体の割にカッコいいスタンドだなあ。
どうやら『ビタミンC』の能力は、生物を「軟化」させる能力のようです。「軟化」の度合いを調整して「弾性」や「粘性」を持たせる事も出来るし、究極まで軟らかくすれば液状に「溶解」したかのようにもなる、と。命を持たない物質は「軟化」できない様子なので、『スパイス・ガール』とも差別化できますし。ターゲットをじわじわと行動不能にしてしまえる、実にいやらしい能力です。むしろ『オアシス』に近いかも。
そうして行動不能に陥った憲助さんに、質問の答えを迫るダモカン。夜露達の失踪に、東方家の誰かが関わっているであろう事を推測したようです。実際、「岩人間」との繋がりが薄い憲助さんは、とばっちりもいいトコですが(汗)。しかし、ダモカンは「吉良 吉影」の名を出し、吉良と親しかったらしい憲助さんから情報を聞き出そうとするのでした。東方家と吉良家(ジョースター家)との関係って、今まであまり語られていなかったけど、憲助さんと吉良は親交があったようですね。憲助さんのパソコンにも吉良の情報が入っている事を、すでにダモカンは突き止めていました。「岩人間」と東方家を結ぶ線が、吉良なのでしょうか?


●吉良の名を出されたところで、憲助さんもダモカンの正体が分かりかけてきたらしい。そして、ダモカンも冒頭の「飛び魚」の話をし始めます。南の海に「飛び魚」がいたから始まった。ダモカン曰く、憲助さんもその話を知っているようなのです。
――ここから時間は2年前に巻き戻ります。西暦2009年。なんと、吉良の過去話がスタート!27歳の吉良は、貨物船の船医を務めていました。巡回中の職員が「飛び魚」に激突され、驚いて足を滑らせ落下。頭に大ケガをしてしまった模様。そんな状況でも、吉良は実にマイペース。別段慌てる事もなく、淡々と的確な判断を下します。この時、職員が落下したコンテナからひっくり返った積み荷の岩石を見ると、なんと欠けた部分から血が流れている事を発見!それが吉良と「岩人間」との邂逅だったのです。一連の話を(丸々全部じゃなくとも)、憲助さんは吉良から直接聞いていたのでしょうね。たぶん半信半疑で、今まで思い出す事さえなかったんだろうなぁ。
吉良は怪しさMAXの岩石に興味を抱き、密かに調べ始めました。岩石は造園用という名目で、パプアニューギニアの首都:ポート・モレスビーの港から運び込まれた物。依頼主は、まさかの「東方フルーツパーラー」!しかも、この岩石の他にフルーツの樹も積載しており、あまつさえ何度も輸入していたとか。普通に考えれば、常敏が怪しいですよね〜。常敏は思っていた以上に「岩人間」と深く関わっていそう。
さて、こうして生前の吉良の姿がじっくり描写されるのは初めてですが、やっぱ4部の吉良とはまったくの別人ですね。目立たず穏やかに過ごすどころか、かなりクセが強く、好奇心も旺盛な性格してます。切れ長の目と垂れた前髪が、印象的でカッコイイですね。


●日本に着いた吉良は、杜王港のカフェで船から降ろされる積み荷の様子を偵察。愛唱が荷物を運び出し、車に乗せている姿も盗撮しています。愛唱の表向きの素性も調べ上げ、彼が「岩人間」という別種の生物である事も確信しました。
その上、自分自身は岩石化で密航しておいて、フルーツは堂々と輸入。かと思えば、売買はわざわざ隠れて行なっている事実。それも、東方家と組んで。税関検疫を合法に通過しているからには、麻薬成分とかは無い。つまり、それ以上の何かが……、企業や国がまだ気付いていない、とてつもない「利益」と「理由」が……、そのフルーツに内在しているはず。フルーツを1個奪い取ってやる。吉良はそう決心したのでした。
そして、さらなるサプライズも!港のラーメン屋には、なんと懐かしの「笹目 桜二郎」の姿ッ!めっちゃ日焼けしてて、若い女性とのんきにラーメン食ってる(笑)。「海の人間」か「陸の人間」かハッキリしない桜二郎がムカついてしょうがないらしく、吉良は彼にカラみ始めます。桜二郎は吉良に怯えまくってて、「しゃぼん爆弾」を顔に埋め込まれると、大慌てで逃げちゃいました。この態度からして、自分の指を食った後のようにも思えるけど、でも何故か指はあるんだよな〜。義指なんでしょうか?それとも、この時点まで吉良は、桜二郎と出会う度にネチネチとイジめ続けてただけだったのかな?この後、桜二郎が再三の注意も聞かずに「海岸」へやって来たもんだから、とうとう吉良も我慢の限界。いよいよ精神的にトコトン追い詰め、自分の指を喰わせてやった……って事?


●逃亡する桜二郎は、お客さんの1人にぶつかって行きました。そのお客さんは、ぶつかった衝撃でラーメンにコショウをごっそり落としてしまいます。ところが、彼がラーメンに手をかざすと、何かがパチンと割れました。次の瞬間、彼の手から大量のコショウが出て来て、テーブルの上に落ちる。ラーメンにはコショウの影も形も無し。何事もなかったかのように、ラーメンを食べ続けます。そのお客さんは、カレラが「セッちゃん」と呼んだ例の少年ッ!あの写真とは違い、サイドにも一応、髪はあるみたい。正直、ほとんど仗助です。
彼のスタンドが、『ソフト&ウェット』に極めて近い事も分かりました。「しゃぼん玉」でラーメンからコショウを奪って閉じ込め、テーブル上で解放したってワケです。まぁ、さすがに『ソフト&ウェット』そのまんまって事はないでしょうから、何かしらの違いはあるはず。「しゃぼん玉」の射程はごく短く、一度に複数のものも奪えない反面、能力の自在性や持続力は優れている……とか、そんな具合に。
ともあれ、この「セッちゃん」はまだ気付いていないけど、吉良は彼の事を知っていました。果たして、2人はどのように出会い、どんな関係を築いていったのか?2年前から「セッちゃん」が杜王町に来ていたとは予想外。過去編の続き、超気になる!


●――時は再び2011年。ダモカンの言う事を聞いて、東方家の玄関にやって来た鳩ねーちゃん。定助は必死に鳩ねーちゃんに危機を伝えます。「指紋」に触れたり踏んだりしてはいけない。東方家の全員が襲われている。ダモカンはキッチリ準備を整えて、東方家に入り込んだ。……彼女にとって残酷な事実をド直球で教えました。
家から無事に脱出するため、植木鉢をドアに投げ付ける!しかし、「手型」「指紋」はツルツルで、鉢も滑ってしまいます。そこら中を滑り回った挙げ句、ついには植物も「軟化」して溶解してしまいました。それに触れてしまった定助の肩も徐々に溶解していきます。ここに至って、ようやく鳩ねーちゃんもヤバい状況を認識した様子。自分の愛する彼氏が、自分の大事な家族を狙っていた。この最悪のシチュエーションの中で、ついに彼女もスタンド能力を発現させるのでしょうか?そして、恋人と家族、どちらの愛を選ぶのでしょうか?


★今月は46ページ!今年最後も通常のページ数で楽しめ、一安心。やっぱり面白いッ!思い掛けず過去編まで読めて興奮しましたよ。今年の「ジョジョリオン」はだいぶ謎の核心に迫った感じで、大いに盛り上がりましたねえ。この分なら、来年ももっともっとエキサイティングな展開が期待できそうです。
作者コメントは「今年は有名人の結婚とか、そういうのがある意味面白かった。」との事。今年だけが異常に結婚ラッシュだったのかは分かりませんけど、確かにそういうのが続いた印象のある1年でした。特に印象深いのが、荒木先生も言及していた福山雅治さんのご結婚かな〜。世の女性達は、複雑な感情で枕を濡らした事でしょう。来年はどんな方々が、幸せな姿を我々に見せてくれるのでしょうか?




(2015年12月19日)




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