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人の「怒り」は増幅する…………
そんな 事が簡単に済めばいいがな……


#39 真の力(パワー)B





●トビラ絵はディエゴ……というか、3ページに渡ってのオールスターの紹介となっています。それぞれの思惑が交錯する現況を見直すにはちょうど良いですねッ!
穏やかな笑みが逆に不気味なディエゴ。彼の年齢は20歳との事。でも、老婦人と結婚したのが20歳の頃だとジョニィが言ってましたよね。その半年後に婦人が死んだ、とも。つい最近の出来事だったみたいです。SEXYに寝そべるルーシーは、よく見るとお腹がぷっくり膨らんでおります。お腹の子はスクスク育っています。大統領の年齢は48歳。若く見えて、意外といい歳でした。人間に限定すれば、史上最高齢のラスボス的存在。いつも以上にキレのあるポーズで決めてくれているウェカピポ31歳。やはり妹のいる祖国に帰りたいという想いも抱えているようですね。スティールは相も変わらずブッ倒れ中。
ホット・パンツ23歳。久々の登場なのに、なんか不細工。もっと大きく美人に描いてあげればいいのに。そして、我らが主人公のジャイロ・ツェペリ。次の誕生日で25歳になり、死刑執行人としての任務を引き継ぐという設定がちゃんと憶えられていた様子。最後は我らがジョジョ、ジョニィ・ジョースター。4年半程前に発売された「青マルジャンプ」19歳との設定が載っていましたが、作中で明示されたのは初めてですね。


●ジャイロ&ジョニィ、7th.STAGEゴールから8分後。彼らより45分も先にゴールしたはずのディエゴが、まだフィラデルフィアから出ようとしていない事を突き止めました。ジャイロが馬糞を味わって。このジャイロ登場の一連のシーン、映像的なカメラワークで美しいんですが、やってる事はレロレロレラ。誰の馬の糞か、何分前に出されたかまで見極めてしまうジャイロ。いつの間にそんな技術を……。ブチャラティの汗舐めよりイヤな特技です。
ディエゴの不審な動きに、大統領と取り引きして「左眼」を渡すつもりかとジャイロは焦るものの、ジョニィが冷静に性格分析。ディエゴの目的は「全て」を手に入れる事。レースの優勝だけではなく、「遺体」の総取りも含まれているのです。「左眼」を渡すようなマネをするはずも無し。やっぱディエゴはそうでなくてはいけません!相手が大統領であろうと誰であろうと、対等な取り引きなんぞを本気でするワケがないですよ!他人を出し抜き、踏み台にし、のし上がって行ってこそDio
恐竜相手だからと風下から追跡したり、怪しい足跡を発見したり、大統領が「頭部」を見付けた可能性に気付いたり、ジョニィはえらく冴え渡っていますね。宿命のライバルを前に、感覚も研ぎ澄まされているのかも?


独立宣言広場にて。子どもから老人まで、多くの市民で賑わう憩いの場。赤ちゃんを抱く母親と、その双子の姉妹っぽい女性がちょっと怖いけど。……と、そこに噂のディエゴが出現!手下の恐竜からルーシーの情報を入手し、すぐさま彼女のいる独立宣言庁舎へ向かったようです。大統領暗殺を企てているのか、ルーシーから「右眼」を奪って「眼球部」の力を完全にしようとでも目論んでいるのか。
ディエゴをハサミ撃ちの形で追い詰めようと考えるジャイロ達の目に、今度はウェカピポの姿が!ディエゴにルーシーの事がバレた今、ウェカピポのターゲットはディエゴとなっています。それがルーシーを護る事に繋がるのです。しかし、そんな事情など知る由もないジャイロ達。見当も付かないけど、とにかく自分達もディエゴを追う事が最優先と結論!ウェカピポも一緒なら、きっとディエゴもタジタジです。


●ところが、ディエゴを追う直前にジョニィとジャイロの間に不協和音が……?「左眼」を奪い取るためならディエゴも躊躇いなく殺すつもりのジョニィと、自分達はテロリストじゃないんだから不要な殺人は絶対するなというジャイロ。
今まで散々、敵をブッ殺しまくっといて、ジャイロもいきなり何を言い出すのかと思ってしまう所ですが、アクセル戦で見たジョニィの本質に不安を拭い切れないでいる様子。何せ、目的のために自分の命すら一度は捨て去ったジョニィです。このままだと自分の知る「ジョニィ・ジョースター」が消えてしまうと予感しているのでしょう。それを止めるため、「ジョニィ」を守りたいがため、厳しい言葉をぶつけているのでしょう。しかし、そんなジャイロの説得も効果はないようで……。口先だけでは「分かった、殺さない」と言ってはいますが、心では「都合良く事が運べばね」くらいにしか思っていません。ジョニィの瞳には依然、漆黒の炎が滾っているのです。
「気高き飢え」「漆黒の意志」「光輝く道」「敬意」「男の世界」。今、ジョニィが歩んでいる道は「正しい道」なのでしょうか?決して他人を踏みにじったり利用したりする事なく、自分の信じるものを貫くために「悪」にさえなれる覚悟。ジョニィにもそれは確かにあると思いますが、今の彼に最も欠けているのは自己愛なのかもしれません。何というか、「自分を誇りに思える自分」に生まれ変わりたい一心で、「今のあるがままの自分」を殺そうとしている印象さえあります。彼の生長は危うさも孕んでいて、どこか歪んだものを感じさせますね。過去の経験から、自分が生きている事自体に罪の意識を抱いているジョニィには、自分自身への敬意こそが必要なのかも。
ただ、コミックス15巻の感想でも触れたように、最終的にはジョニィがイエス様に選ばれると私は勝手に思っております。一度死んで、「罪」が清められて蘇ったのも、その布石なんだろうと。だから、ジョニィはもう殺人を犯す事はないと予想しています。ディエゴを始末すべく、ジョニィがとどめの一撃を放った時、ジャイロが身を挺してディエゴの命を救うのです。その行動でジョニィは自分が「誤った道」を進んでいた事を自覚し、ディエゴも殺し合いじゃなくレースで決着を付けたいと思い始める……とかね。
スゴく難しいテーマですよね。ジョニィが間違っていたとしても、じゃあジャイロは正しいのかと言うと、それも良く分からないし。ジャイロもジャイロで、「飢え」がちょっと足りない気もしますから。今後はそこら辺も見所になりそうです。


●ディエゴを追おうとするジャイロの背後から、謎の男が近付くッ!高貴な雰囲気を帯びたダンディお兄さんです。ファッションから髪から顔からヒゲから、全身で只者じゃないオーラを発していますよ。どう見ても凄腕の敵スタンド使い。めっちゃカッコイイ!左腕のデザインが特に気になりますね。そーゆー服だと言われればそれまでですけど、もしかして義手とか?あるいはスタンドのヴィジョンだったり?ディエゴを追っていた大統領サイドの刺客はコイツ?
しかし、ジョニィの瞳は更に衝撃的な人物を写しました。ヴァレンタイン大統領です!なんと大統領まで来ちゃったよ!まさか直々に自分から向かって来ようとは予想外。そこまでしてジャイロ達を完璧に葬り去りたいのか?ディエゴを始末しようと思ってたらジャイロも見付けたんで、ついでに殺っちゃおうって事か?やはりスタンドのデザインもステキです。もっと黒い部分も多ければ、更にもっと私好みではありましたが。大統領御自身もますますカッコ良く色気たっぷりになってらっしゃいます。「遺体」部位が揃うごとに頭身も増え、体型も顔付きも凛々しく雄々しく変化する仕様になってんの?
結局、ハサミ撃ちにされたのはジャイロの方!慌てまくりのジョニィに対し、当のジャイロは随分のんき。「え?どうかした?」って感じのとぼけた顔してます。まったく気付いてねえ!7th.STAGEゴール直後の3人の雑魚共は話し込みながら余裕で倒してたんだから、これはむしろ大統領を称えるべきでしょう。足音も気配も完璧に絶っているという事です。クロス・アウッ(脱衣)した辺りから、大統領の存在感は一気にデカくなったなあ〜。
ところで、前から疑問に思ってたんですけど、大統領は現在、「遺体」を体内に所持してるんでしょうかね?スタンドも出してるし。ジョニィの例もあるとは言え、「遺体」を奪ってスタンド能力を使えなくするためにルーシーは危険を冒してまで潜入したのですから、ジョニィだけが超例外と受け取るべきなのかな。じゃないと、ルーシーの頑張りが無意味って事に。そう考えると、ラテン語の暗号もずっと刻まれていたし、今も「心臓部」くらいは体内に宿しているのかもしれませんね。


●この危機的状況にジョニィはジャイロの名を叫ぶ!その声に広場の人々も気付く!例の姉妹、やっぱり不気味だ!そして、ジャイロを助けるために爪弾を発射しようとするジョニィ。そこに不意に誰かの人影。あまりに唐突にジョニィは顔面を銃で撃ち抜かれてしまいました!なす術もなく倒れたジョニィ、果たして生きているのか?この敵は一体、何者なのか?
私が読んだ時の直感は「L.A.!?」でした。「おまえ…」というジョニィの言葉も、知っている人間への反応に感じられたので。アリゾナ砂漠「悪魔の手のひら」に置いてきぼりにされたL.A.ブンブーンが再登場したのではないかと思ったのです。親父を殺したジョニィへの復讐心、動機は充分。そういう意味でなら11人の最後の生き残りという線も考えられますが、L.A.の方が面白くなりそうだし。ジョニィ達への憎悪を生長のエネルギーに変え、別人のように強く冷酷になって舞い戻って来てほしいです。「悪魔の手のひら」から2度も生還した事なども影響して、スタンドもチューン・ナップされてると燃えるなあ。
……で、今回の冒頭でジョニィが言っていた「Dioを追跡してるヤツ」とは、このL.A.と予想。追跡していたのではなく、L.A.もマジェント同様、ディエゴと手を組んでいたのです。チーム「ザ・リベンジ」です。ディエゴと行動を共にしていたから、追跡していたかのように見えたと。もしくは、ジャイロに近付いているのは大統領の能力で創り出した過去の「幻影」で、ジョニィを撃ったのが本物の大統領かダンディお兄さん……なんて可能性もありますが。これで単なる新キャラだったらズッコケますね。
ジャイロの目の前にダンディお兄さんが現れる直前、ジョニィが目撃した馬。あれはダンディの愛馬とかではなく、ゲッツ・アップと予想します。そう……、フィラデルフィアにはすでにホット・パンツも到着していたのです!孤独に戦うルーシーを手助けし、大統領から「遺体」を奪い返すために独立宣言庁舎近くまで来ていたのでしょう。きっとジョニィの叫び声を聞いて駆け付け、瀕死の彼を肉スプレーで救ってくれますよ!アクセル戦からジョニィとの関係に変化はあるのかな?
もしもこれらの予想が当たっていたとしたら、今まで以上に複雑な展開になりそうですね。レギュラー陣も過去キャラも新キャラも入り乱れて、あちらこちらで同時に行われる激闘!ジョニィ VS L.A.!ジャイロ&H・P VS 大統領&ダンディ!ウェカピポ VS ディエゴ!三次元中継でお送り致します。このまま「遺体」も全て揃って、ラストバトルに突入なんて事にはそうそうならないとは思うんですが、想像を超えた状況に興奮必至です。


★今月は33ページ!う〜ん、少ない……。9月にコミックス16巻が発売される事から、今回で16巻収録分が終了したと考えるべきか?コミックスのページ数の調整のために必要だったとか?毎年9月号はお盆休みのためか確実に減ページなのに、今月も少ないとは……。残念です。絵というか、線も荒れ気味でしたし。
ただ、内容の方は盛り沢山で楽しめました。33ページしかない割に、こんなに感想も長くなっちゃいました。正直、まだ「真の力(パワー)」編が続くとは思ってなかったので、タイトルだけで驚きましたよ。8th.STAGE、レースはちゃんと描かれるのかな?あまりフィラデルフィアで時間を食ってると、ポコロコやノリスケさんにまた1位を取られるから、早めに終わらせないと!もう短距離コースしかないんだし。まあ、だからこそ今の時点で「遺体」絡みの決着を付けてしまって、あとはレースをひたすら描くつもりなのかもしれませんが。
あと、大統領の2人の側近はいつになったら再登場するんでしょうね?カンザス以降、どこに行ってしまったのやら。忘れ去られたのでなければ、何か意味があって登場しなくなったのかも。例えば、ネアポリス王国の偵察・調査とか何かで、実際に王国にまで渡っていたりして?それとも「遺体」の番人をしたり、大統領の代わりにお仕事やったりしてるだけ?彼らが再登場した時、物語が終焉に向かって大きく動き出す気がするぜ!
そんなワケで、今月もとりとめもなく感想を書き綴りました。早く来月号が読みたいです。



(追記)
●ジャイロとジョニィのすれ違いについて少々。他の方々の感想や意見なども読み、自分なりに考えをまとめてみました。なんか観念的になっちゃいましたけど、こういう考え方もあるって事で。
まず、「SBR」での重要ワードでもある「漆黒の意志」「気高き飢え」の定義から改めて(無粋かもしれませんが)。「漆黒の意志」とは、自分が正しいと信じる目的のために必要ならば「悪」にでもなれる覚悟、と解釈します。逆に、確固たる信念も無く、他者を踏み台にする事自体が目的となっているのがドス黒い意志。続いて「気高き飢え」とは、正しい「過程」を経て、なんとしても目的に到達しようとする想いです。過程や方法なぞどうでも良く、とにかく「結果」だけを追い求めようとする想いは獣の飢えに過ぎません。そして、ドス黒い意志を「漆黒の意志」へ、獣の飢えを「気高き飢え」へ高めるために必要なものこそが「敬意」だと思うのです。自然へ、運命へ、神へ、相手へ、そして自分自身へも「敬意」を払えるなら、決して道を外れる事はありません。その道は「光輝く道」となり、真の勝利へと繋がってゆくはず。
このように定義付けると、今のジョニィは「敬意」を欠いてしまっているせいで、非常に危うい状態にあると言えるでしょう。「遺体」を強く求めるあまり、手段を選ばなくなってきています。奪うために殺す。これが前提になっていては、ディエゴやサンドマンと何も変わりません。テロリスト同然です。今のジョニィは己の人間性や命までも含めて、全てを捨てられる男。しかし、捨て去る事差し出す事は違うのです。捨て去る事とは、「繋がり」を断ち切って殺す事。アクセル戦でも描かれたように、「過去」という闇の中へ永遠に葬り去ってしまう罪深い行為です。やがては相手も自分自身さえも殺し、消し去ってしまうでしょう。一方、差し出す事とは、「繋がり」を違った形に変えて生かす事。自分が不利になり、相手を有利にさせてしまっても、あえて手放すという正々堂々たる行為です。一時的には失われても、やがては巡り巡って戻って来て、自分自身をも生かしてくれるでしょう。
「罪」が「罰」となって返って来るように、自分の意志も行動もやがては自分に返って来る。これが因果や運命の流れ。全てを捨て去る者は全てを失い、全てを差し出す者は全てを得る、という事です。近道をして、真実を見失いかけているジョニィは、今のままだと何も手に入らないでしょう。むしろジャイロの方が、よほど正しい道を歩んでいます。レース優勝が目的であるジャイロにとって、「遺体」集めは本来必要ないもの。しかし、3rd.STAGEでの苦い敗北を機に、「遺体」集めを自分の生長のために、真の勝利のために必要不可欠な、正しい「過程」と捉えるようになったのでしょう。運命の流れがジャイロを味方し、選ばれた「奇跡」を起こした事も、ジャイロの進む道の正しさを証明してくれました。ウェカピポを殺さずに生かした事もまた、勝利への道をさらに拓いてゆくでしょう。
「結果」を求め過ぎて道を誤りかけているジョニィですが、「過程」を重んずるジャイロというパートナーがいる事が幸福です。信頼すべき友がいるという事。これが、孤独に戦い続けるディエゴやサンドマンとの最大の違いですね。今は微妙なすれ違いが見られる2人も、2人だからこそこれからも互いに道を正して行けるはずです。彼らがどのようにして真の勝利を手にするのか、最後の最後まで見届けたいと思います。




(2008年7月18日)
(2008年8月6日:追記)




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