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いつだって どこにだって 敵は居るけれど…
きっと勝つよ
勝つのは いつだって東方家なんだ


#091 危険な追跡 その③





●今回のトビラ絵は、これまた『ソフト&ウェット』でオラオララッシュをかます定助。不意を突かれて焦っているようにも見えた前回よりも、定助の表情はキリッとしております。鋭い眼差しに、食いしばった歯。顔や体には負傷の治療跡を覆うテープも貼られていて、覚悟の違いを見せ付けられますね。『ソフト&ウェット』の方も、今回は真っ正面を向いてラッシュしています。ピタリ静止している腕と、勢い良く繰り出される無数の拳が同時に描かれる事で、スピード感も増したように思えました。
そして、アオリもイイですねぇ。前回は「抗い進め――」、今回は「貫き進む――」。命令なんぞされるまでもなく進んだるぜ!っていう、定助の強い意志がひしひしと伝わります。


●降り出した雨が強まる前に家の中に入ろうと、康穂に声を掛ける透龍くん。ってか、康穂の家に普通に上がり込む気だな(笑)。しかし、康穂はそれどころじゃありません。透龍くんが持っていた、院長と密葉さんの2ショット写真。一体、なぜこれを透龍くんが持っているのか?
「たまたま院長に会ったから記念に撮らせてもらった」と、康穂の疑問に彼はあっさり答えます。「この時は院長先生の診察の前だったのかなあ」とも言ってはいますけど……、84話で病院の受付のおっちゃんが「院長は名誉職に就き、現在は医療行為は行っていない」と明言しているので、診察前なんかじゃ無いはず。透龍くんは逆に、康穂の力になりたいからと、彼女らが何を目的に行動しているのか訊ねます。それでも頑なに口を閉ざす康穂。う~ん……、やっぱり一連のやりとりを見ても、透龍くんを怪しく感じちゃうな。
羽先生との死闘よりも前から、密葉さんは院長を知っていた。きっと院長も羽先生と同じく、「新ロカカカ」を狙って密葉さんに近付いた。密葉さんに会いに行かなくてはッ!そう決めた康穂、『ペイズリー・パーク』を電線に潜り込ませ、彼女自身も透龍くんの配送車に乗せてもらって東方邸へ急ぐ事に。そんな2人の背後には、けたたましいサイレンを鳴らすパトカーと救急車が通り過ぎます。負傷した定助が病院に運ばれているのでしょう。


●場面は変わって、東方邸。桜二郎とマコリンの死亡記事を目にしたつるぎちゃん。まさかこんな結果に繋がるとは思わず、「パパも誰も悪くない」と自分に言い聞かせています。そんな過度のストレスのせいか、彼の顔はまたもや「石化病」で歪んでしまっていました。慌てるように姿を隠す息子を見て、密葉さんは不安そう。
つるぎちゃんが読んでいた新聞を広げてみると、密葉さんもようやく事態の重大さに気付きます。マコリンの死、定助への殺人容疑。……思い返せば、夫:常敏の様子も何か変だった。ミナちゃんの鉄門事故……、マコリンの娘はミナちゃんの親友……。様々な要因が、偶然の何かが、どこからか繋がって連続している?
ちなみに、密葉さんは「ミワちゃん」と盛んに言ってますが、「ミナちゃん」の誤りですね(汗)。こりゃあコミックスでの修正案件だな。それと、マコリンの娘がミナちゃんの取り巻きの子だった事実に、うかつにも気付いてませんでしたよー。読み返してみると、確かに……!


●その時、密葉さんがふと外に目をやると……、本降りになった雨の中で、窓のそばに佇む院長の後ろ姿を発見!なぜ東方家の敷地にいる?ミナちゃんの鉄門事故の時も、夫:常敏が棚に「何か(=新ロカカカ)」を隠していた時も、院長の姿を見た。一体、彼は何をしている?
そう思った次の瞬間、料理の最中だった密葉さんは、包丁で指をザックリ切ってしまいました!ぐえっ、これはゾッとする。日常でも起こり得る怪我なだけに、リアルに想像できてヤバイ。今にもポトッと落ちてしまいそうなほどの深手を負った、左手の中指と薬指。しかし、すかさず『アウェイキング・Ⅲリーブス』を発現し、千切れそうな2本の指先に「矢印」をペタリ。切断面側に「矢印」を向けておけば、指先が常に押さえられて固定されている状態になるワケですね。見事な応急処置!
ところが、焦ってこぼしてしまったオイルが、火の点いたコンロに流れていきました。そのせいで火力が一気にアップし、鍋が倒れ、中の熱湯が密葉さんを襲う!ここでも彼女は冷静に「矢印」を駆使。右手にもう1つ「矢印」を出し、さっき指先に貼った2つの「矢印」と合わせて3つ。この3つの「矢印」を熱湯側に向けると、熱湯は「矢印」のエネルギーに弾かれ、密葉さんは無傷のまま。やっぱ『アウェイキング・Ⅲリーブス』好きだな~。めっちゃカッコイイし、使い勝手も良い、万能スタンドですよ。


●辛くも危機は回避できたものの、この唐突な出来事は何なのか?包丁と熱湯が襲って来たようにも見えるし、ただの偶然だったようにも見える。でも、連続している。何か「パワー」が繋がっている。密葉さんはそう感じたのでした。院長の姿はまだそこに在ります。
―― そこに現れたのは、つるぎちゃん。「石化病」の症状は一応収まっている模様。大きな音がしたから、ママが心配になって様子を見に来たらしい。すると、「矢印」で弾き飛ばした熱湯の水滴が天井から落ち、つるぎちゃんの鼻にポタリ。その部分が弾丸で撃たれたかのように抉られ、彼は倒れ込んでしまいました。密葉さんの絶叫が響く。
そう、これは紛れもなく院長のスタンド能力。ただ、定助達に対しての攻撃とは明らかに異なる点が1つ。院長への「追跡」の意志の有無です。密葉さんはまぁ、院長の姿を目撃して不審に思ってたのだから、多かれ少なかれ「追跡」と見なされるだけの意志はあったのかもしれません。包丁や熱湯が「激突」するのも理解できます。しかし、つるぎちゃんはどうでしょう?院長を追うどころか、姿を見てもいないはず。にも関わらず、水滴が「激突」して来たのです。こいつは、自動的な攻撃ではなく、院長自身の意図的な攻撃なのではないでしょうか?「新ロカカカ」を使わざるを得ない状況にまで追い込み、そこを奪い取る算段……なのか。首を折って死んだ男のように、つるぎちゃんも密葉さんのとばっちりで攻撃を喰らった可能性もあるにはありますが。
そして、今回しきりに使用されているワード「繋がり」 「連続」。これも気になりますね。院長の能力の本質、と言えるのかも。これらのワードを「ジョジョ」的に考えると、「縁」とか「運命」とか「引力」とかを連想させられます。院長の能力とは、ざっくり言えば「局地的な運命操作」なのかもしれません。万物の「繋がり」や「縁」を操るパワー。それによって「運命」の流れを変え、院長自身の命と正体を自動的に護る。院長を追跡する者、あるいは院長がターゲットに選んだ者は、「引力」が強められて何かが「激突」し続ける。回避した「激突」のエネルギーは、近くにいる者に巡って行ってしまう。……メチャクチャ迷惑で厄介な、究極の自己中能力!


●院長の姿は消え去っていました。しかし、水滴の「激突」によるダメージとストレスが引き金になったのか、つるぎちゃんの肉体に急激な異変が発生。なんと、彼の体が「折り紙」になっていったのです。折り鶴のような形に変異していったのです。つるぎちゃんは病気だよ……」と言ってるけども。いやいや!確かに5巻で、理那さんの皮膚が「折り紙」のように線が入って固くなったっていう「石化病」の説明はあったけど、「折り紙」そのものになってるよコレ!
つるぎちゃんはさらに、「これからスタンドが暴走する」とも話しています。つまり、「石化病」が本格的に発病した極度のストレスにより、スタンドまでもが暴走するって事だと受け取っておきましょう。病気+スタンド暴走のダブルパンチ。病気=スタンド暴走なら、憲助さんは体がパズル状になって砕け散ってるし、常敏は体が熱せられて溶けちゃってるはずですからね。ただ、11歳だから時間切れ」と言ってるけど、設定上、彼はまだ9歳です。87話でも思いましたが、いつの間にか11歳って事になってない?
それはひとまず置いといて……、息子の身に起こったあまりの出来事に悲鳴を上げる密葉さん。それでもつるぎちゃんは、「泣いたり… 心配したりしないで」 「大丈夫」 「勝つのは いつだって東方家なんだ」と気丈に振る舞っています。その痛々しい姿を苦しげに見つめていた父:常敏。そして、つるぎちゃん達の元に集まる憲助さん・鳩ねーちゃん・常秀・大弥ちゃん。この時点で家族勢揃いとは予想外です。


●ほんの2日後には、何事も無かったかのように、みんなでおバカな日常風景を見せてくれる事になるとは考えにくい流れになってきてますな。こうなっちゃうと、憲助さんは「壁の目」のパワーを使って、何が何でも自分に「石化病」を移させようとするはず。つるぎちゃんと常敏は、何が何でもそれを止めようとするはず。ひょっとすると、憲助さん vs 常敏なんて展開もあり得るか?
憲助さんの死体が黒い布でくるまれていたように見えたのも……、実は憲助さんの肉体が「折り紙」化していた描写だったりして。戦いの末、常敏を退け、「壁の目」によってつるぎちゃんの異常を全て自分で引き受けた憲助さん。で、つるぎちゃんは父:常敏に逆らってでも、「新ロカカカ」で憲助さんを救おうと考え始めるとか。そうなれば、つるぎちゃん vs 常敏もまさかの勃発?
家族のみんなは、何か知らんけど、つるぎちゃんの異変が治って一安心。憲助さんの不在も、わずかに残ったスタンドパワーで『ペーパー・ムーン』を使い、別の物を憲助さんと認識させてごまかす。こんな感じなら、2日後の結果にも繋がるでしょう。


●場面はまた変わり、TG大学病院の定助へ。意識を取り戻した定助が目を覚まし、脱がされていた帽子に手を伸ばす。つーか、帽子を取った頭は絶対に描かれないよなぁ(笑)。
窓から外を見下ろすと、ちょうど院長が車から下り、講演の会場である記念堂に入っていくタイミングでした。記者達が普通に写真を撮ってます。明らかに存在を認識されてますよね。天気や時系列を考えれば、さっき東方家の敷地に現れたのとほとんど時間差なく登場している事になるはず。この同時多発院長、何なんでしょう?実物の院長と、幻像の院長が別々に存在しているのか?院長という存在自体が幻影に過ぎないのか?それとも、「局地的な運命操作」による現象なのか?依然として謎だらけです。
定助が目覚めた事に気付いた警官が1人、病室に入って来ました。体中、包帯やテープだらけの定助の様子を確認し、声を掛けます。寝てるフリをしていた定助、パチリと目を開けると、すかさず警官の耳元で「しゃぼん玉」発動ッ!「しゃぼん玉」が破裂した衝撃なのか、いきなり気絶して倒れる警官。計画通り院長に近付けた事を確信した……ものの、院長の能力はトコトン恐ろしく執拗だったのです。今度は倒れ込んだ警官の体が「激突」!警官の手が強烈に胸に食い込み、定助は苦痛の叫びを上げる!あくまでも、どこまでも、「追跡」は不可能!?


●なお、院長の講演はやっぱり本日らしい。もっと言うと、本日11:00から。現在時刻は10:52。間もなく開演時間です。それは良いんですが、もし単なるミスや変更だったなら、細かい設定はちゃんとコミックスで統一して修正しといてほしいですね。今日・明日の2日間、講演やる予定だよって。
あと、89話冒頭の天気予報の時間表示も直しておいてほしいところ。あれだと雨が降り出す現在時刻が12時って事になっちゃうんで……、そっちを10時にするか、もしくは病室の時計を12:52にし、開演時間を13:00にするか。うまい事やってください。


★今月は41ページ!院長を中心に回り続ける3者3様の異常事態。非常に面白い!康穂と透龍くんが東方邸に向かうところだし、つるぎちゃんはTG大学病院に搬送されるかもだし、回り回って主要人物全員が病院に集結する可能性も出て来ました。この先の読めなさ、最高です。コミックス22巻は是非ともここまでの収録にしてほしいな。
作者コメントは「コミックフェスでイタリアへ行きます。仕事だけどイタリア旅行は嬉しいな。」との事。とっくにご存知の方も多いでしょうが、イタリアのルッカで開催されるフェスティバル「Lucca Comics and Games (ルッカ・コミックス・アンド・ゲームズ)2019」の事です。荒木先生は10/30(水)・31(木)に登場ッ!トークショーや生ドローイングなどが予定されています。私もこのイベントに参戦すべく、敬愛する荒木先生にお会いすべく、実に5年ぶりにイタリアへ行って来ます。ついでに、今回はネアポリスやカプリ島、ポンペイにも聖地巡礼するつもり。相変わらずの1人旅ですし、治安があまりよろしくないらしいネアポリスは不安がいっぱいではありますが、こいつはカネと命を懸けるに値する一大イベント。無事に帰って来れたら、レポートで詳細を書きます。もしサイトの更新が止まったら死んだと思ってください。では!





< 今月の1コマ >


出典:ウルトラジャンプ 11月号(2019年)
396・397ページ


今月は、突然「折り鶴」の形へと肉体が変異していくつるぎちゃん。密葉さんが包丁で指を切るコマなんかも捨て難いけれど、このコマは本当に「エッ!?」って思ったので。
「激突」と「石化」しか頭に無かっただけにね。思いも寄らぬ変形、肉体と「折り紙」の融合、その恐ろしさとおぞましさと驚きが集約された絵ですね。大きい絵じゃないのにインパクトがスゴい。




(2019年10月19日)




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