「ジョジョリオン」の謎と考察・予想をまとめたよ
No.41 【 「明負 悟」と「透龍くん」は何者なのか？ 】
【第3版】
TG大学病院の院長として登場した明負 悟 （あけふ さとる）。彼は、同じ病院で医師として勤める下里 良（アーバン・ゲリラ）、プアー・トム、羽 伴毅の3人の「岩人間」と共に、「新ロカカカ」を追い求めています。その目的は、「新ロカカカ」のデータから「不死産業」を確立し、それによって人間社会を牛耳る事。
一方、そんな明負院長とほぼ同時期に登場したのが透龍 （とおる） くん。彼はTG大学病院でバイトをしている医学生。なんと、高校時代の康穂の元カレでした。康穂と再会してからというもの、ヨリを戻そうと彼女にアプローチし続けています。
外見も身分もまるで違う、本来ならば、なんの接点も無さそうな2人。しかし、作中では「こいつら、絶対に何か関係あるだろ」と思うような意味深な描写が目白押し。登場のタイミングもそうだし、透龍くんは孤立する康穂のところに決まって現れるし、何故か院長の顔写真を持ってるし。院長のスタンド能力に襲われた康穂からのSOSにも、対応にいちいち怪しい表情や間があるし……。そして、ついに満を持して、透龍くんが「岩人間」である事、院長こそが透龍くんのスタンド『ワンダー・オブ・U』である事が明らかにされたのでした。
第1版では院長＝透龍くん＝「記憶の男」説、第2版では透龍くん＝院長の息子説を唱えてきた私ですが、残念ながら大ハズレ。「壁の目」での「融合」も特に関係なさそうです。
第102話にて、康穂の過去エピソードが語られました。それによると透龍くんは、『ペイズリー・パーク』の片鱗を無意識的に発現させていた幼い康穂に興味を持って近付いてきた模様。成り済ますのに相応しい人間を捜していたところ、康穂が能力で「明負
悟」という人物をたまたま見付けてくれたのです。恐らくその後、透龍くんは「明負 悟」がいる茨城県の介護施設に向かい、彼の姿や知識を『ワンダー・オブ・U』に写し取り、本人を殺害。以降、『ワンダー・オブ・U』が「明負
悟」として人間社会で暮らしていく事となったのでしょう。つまり、明負と透龍くんはまったく無関係な他人って事。
ただ……、透龍くんが「岩人間」と「人間」のハーフであるという予想は継続しておきたいところです。
その方が、「岩人間」の女性と「人間」の男性との間に子どもが産まれるって設定をわざわざ書いた意味もあるってもの。逆に、「岩人間」の男性と「人間」の女性との間に産まれた子どもが仗世文、と私は予想しております。（⇒ No.38 【第3版】参照） 定助と透龍くんは、キャラデザインが対照的だし、それでいて康穂との深い関係性という意味では共通する部分もあるので、真逆・対極のイレギュラーな存在であってほしいなぁ、と。
まぁ、それはさておき、第104話の作者コメントで「『ジョジョリオン』も大詰めですよ」と荒木先生がおっしゃっていました。判明していない謎も未消化のキャラも多く残されたままなので、正直、まだまだ続くものと思ってましたよ。この調子だと、普通に透龍くんがラスボスで終わっちゃいそう。もしかすると、色々な物事が第９部へと引き継がれるのかもしれません。
だとしても、「ジョジョリオン」の中で矛盾と思われる出来事が残ってしまう可能性はあります。例えば……、第83話で描かれた、「新ロカカカ」収穫13分前のエピソード。東方家団欒のひと時、そして、2階の書斎にて意識の無い憲助さんを引きずるつるぎちゃん。常敏が死に、常秀が右腕を失った今、ハッキリ言って、もはやこのシーンに帰結するような余裕など完璧に無くなっちゃいました。あれはどう考えるべきなのか？
しかし、矛盾を矛盾で終わらせず、理由をこじつけるのがこのコーナーの醍醐味。すでに答えは用意してありますとも。その答えとは、『ワンダー・オブ・U』の能力。
『ワンダー・オブ・U』の「厄災」の能力には、「運命」を捻じ曲げて変化させる力も備わっているのです！「因果」の流れや「条理」の繋がりを利用して「厄災」が起こるワケですが、時に、それを逆説的に利用する場合もあるのです。どういう事かというと……、必然性・連続性を無視した形で「厄災」が唐突に起こり、その起こった「結果」から逆算して、それが起こるべくして起こる「原因」が存在したっていう過去に変わってしまうのです。「因果」や「条理」が強固だからこその現象。意図しては使えないとしても、これは運命や歴史の改竄に他なりません。
そう考えると、一見矛盾に思える描写も、書き換えられる前の本来の「運命」における出来事と、「厄災」によって「過去」との脈絡を無視して書き換えられた後の出来事であり、読者がそれだけを見せられたがゆえの齟齬だったのかもしれません。「新ロカカカ」収穫13分前の描写も、恐らくは「厄災」の連鎖に見舞われなかった場合の本来の流れの中で起こるはずだった未来の出来事なのでしょう。他のいろんな疑問にしても、『ワンダー・オブ・U』による改竄って事で強引に説明できるものもありそうです。
なお、旧版はこちらに置いときます。 ⇒ 第1版へ ⇒ 第2版へ
（2020年5月6日：【第1版】更新）
（2020年7月23日：【第2版】更新）
（2021年1月23日：【第3版】更新）