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ここに書いているのは、スタンドの個人的な解釈に過ぎません。
原作の設定・描写をベースに、
勝手に考察・妄想しただけのものです。
正確な公式データが欲しいという方には何の役にも立ちませんので悪しからず。




アンダー・ワールド / 本体: ドナテロ・ヴェルサス
< 「地面の記録」を掘り起こす能力 >





<特徴>
生まれついてのスタンド能力である。
だが、ハッキリと目醒めたのは、2012年にエンリコ・プッチと出逢ってからであった。それまではスタンドを自覚もせず、コントロールも出来ず、半ば暴走状態にあったようだ。本体:ドナテロ・ヴェルサスの肉体や人生に悪影響を及ぼし続けていた。


人型ヴィジョンを持つ、遠隔操作型スタンド。射程距離は数十mほどと思われる。
「能力」の方にスタンドパワーの大半を費やしている事もあって、「基本スペック」は低めである。
自分の意志を持っており、まだスタンドに目醒めたばかりの本体を進んでサポートしてくれていた。ダメージは本体にフィードバックする。


頭部には鼻や口が無く、顎も見えづらく、のっぺりとしている。
目には手摺りのようなパイプが左右2本ずつ接続されており、それは頭から首の後ろに架かって伸びている。背中やふくらはぎの部分にも、同じ形状のパイプが付いている。
胸には、直線で描かれた渦巻き模様と、救急救命のシンボル「スター・オブ・ライフ」のマークがある。


ウンガロ、リキエル、ヴェルサスの3人は、母親は違えど、同じ父親:DIOの血を受け継いだ兄弟達である。この「DIOの血統の三兄弟」は、運命的に「東方の三賢者」の役割を担って産まれてきた。
「東方の三賢者」とは、新約聖書に登場する賢人(あるいは博士、占星学者)達である。ベツレヘムの星に導かれてイエス・キリストの誕生を知り、東方よりイエスの元へと訪れ、礼拝したとされる。この時、3人はイエスに贈り物を捧げた。メルキオールは「黄金」を、バルタザールは「乳香 (にゅうこう)」を、カスパールは「没薬 (もつやく)」を、それぞれ贈ったという。そして、「DIOの血統の三兄弟」もまた、プッチがDIOの生まれ変わりである「緑色の赤ん坊」と融合した事で出来た「星型のアザ」に引かれて、プッチの元に集まった。その時、ウンガロは(恐らく)「硬貨」を、リキエルは(恐らく)「指輪」を、ヴェルサスは「弾丸」を落とし、それらはプッチの足元へと転がっていったのだった。彼ら3人はプッチを祝福し、『天国』へと押し上げるために存在する。
運命の中において、ヴェルサスはカスパールの役割を担い、スタンドもそれに見合った能力となっているのだ。




<能力>
「地面の記録」を掘り起こす能力



「東方の三賢者」カスパールがイエスに贈った「没薬」とは、古代エジプトでミイラ作りの際に使用された「ミルラ」とも呼ばれる防腐剤であり、死・復活の象徴でもある。ヴェルサスの脚から零れ落ちた「弾丸」は、命を奪って生を終わらせるための物で、この「没薬」に相当する。(ちなみに、彼の全身白ずくめのファッションは、包帯や布でくるまれたミイラのようにも見える。)
また、ヴェルサスにとって、人生で最も重大な要素は「幸福」である。いかに幸福な未来へと上って行けるかが、彼にとっての生きる意味そのものなのだ。ところが、DIOの血を引く彼の人生は産まれながらに呪われており、理由も分からぬまま次々と理不尽な出来事に襲われ続けてきた。そして、身も心もヘトヘトになりながら、世を恨んで強盗に走ってしまう。彼自身の人生観に照らし合わせるならば、それまでの彼の人生は間違いなく無意味なものであっただろう。
これら「運命的な役割」と「人生観」が相互に邪悪に影響し合った事で、ヴェルサスは「過去」を甦らせ他者を「不幸」に陥れるための力に目醒めたのだった。その力は具体的に、「地面の記録」を掘り起こす能力として発現した。カスパールは「老人」とされるが……、この『アンダー・ワールド』も、多くの経験と過去を持ち、死に近付く「老人」を現した能力と言える。
(別の見方をすれば……、世界・宇宙を構成する万物を示す「天」「地」「人」のうち、「地」を司る力とも言えるであろう。)


「ジョジョ世界」はある超越的・絶対的な力で満たされており、ありとあらゆる存在がこの力を共通して保有している。『フー・ファイターズ』(が引用した天文物理学者フレッド・ホイル)の言葉を借りるなら、その力とは「知性」である。全ての物質や生物はこの「知性」に導かれて生まれ、物質や生物に宿る「知性」は自身の「情報」を絶えず記憶し続けているのだ。
そして、この「知性」は大なり小なり互いに反応し合い、影響し合い、「物質世界」において1つの巨大な流れを形作る。何者にも抗えぬ「因果の流れ」、なるべくしてなる「必然の連続」。人はそれを「運命」と呼び、「運命」を決定付ける「知性」そのもの(が持つ意志のようなもの)を「神」と呼ぶのである。
スタンド使いとはこの「知性」「運命」に選ばれた存在であり、それゆえ、スタンド能力は多かれ少なかれ「知性」に働き掛ける力を有しているという事になる。『アンダー・ワールド』もまた、地面に宿る「知性」を扱う事が出来る。


地面に宿る「知性」は、その土地で過去に起こった出来事や事実を全て「情報」として記録・記憶している。『アンダー・ワールド』の能力は、地面を掘り起こして刺激し、砂の中のミイラのように眠っている「地面の記録」を呼び醒ます。そして、過去の出来事を形にして再生・再現する事が出来るのだ。複数の「記録」を同時に再生する事も可能である。
作中では、父親に撃たれた少年マイク、墜落した飛行機や戦闘機、エンリコ・プッチ、空条徐倫(とエルメェス・コステロ)、アメフト選手のラリー・ゾンカ、エンポリオ・アルニーニョ、海水が蒸発して出来た塩、プッチとウェザー・リポート……といった、実に様々な「記録」を掘り起こしていた。
再生された過去の「記録」は、ただの映像ではない。掘り起こすと同時に本体:ドナテロ・ヴェルサスのスタンドパワーをも与えているため、実物に近い実体と力を持っている。誰の目にも見え、触れる事が出来る。「知性」の記憶の中に残っている過去のイメージに、スタンドパワーが結び付いた存在なのである。その意味において、エンポリオのスタンド『バーニング・ダウン・ザ・ハウス』が扱う「物の幽霊」や「屋敷幽霊」に非常によく似た存在と言えるだろう。スタンドに対する干渉力も備わっている。


再生される「地面の記録」は、過去に起こった結果がそのまま再現される。ヴェルサスが特に強く「再現したい」と思っている出来事は、時刻も含めて100%正確に再現されるようだ。(反面、早送りや巻き戻し、一時停止のような事は不可能。)
ただし、その他のおおまかな部分は割と適当である。例えば、ヴェルサスが再現したかった飛行機の墜落時刻は正確だったし、機外の風圧までもがしっかり再現されていた。しかし、乗員乗客については、墜落後の生死の結果は確実に再現されるが、タイミングはかなり適当で、墜落よりも早く燃えたり千切れたりしている者もいた。それに加え、人間の「記録」にはその人物の人格も再現されてはいるものの、自分がその人物本人ではなく「記憶」に過ぎないという認識も持っている。「記録」とのコミュニケーションが成立するのだ。ただ、ヴェルサスの意志次第で、人格を持たせずマネキンのように再生するといった調整は可能である。
また、過去の出来事が間違いなく正確に再現されるからこそ、決して変えられないからこそ、それを逆手に取って利用される事もあり得る。時間通りに墜落する事が決定しているという事は、言い換えれば、それまでの間はどんなに無茶をしても絶対に墜落も爆発もしないという事でもあるのだ。徐倫は戦闘機を飛行機に突っ込ませて、爆発する事もなく飛行機内へと戻って来た。


地面は地球誕生からの記録を持っているため、例えば、「恐竜の記録」を掘り起こす事も能力的に不可能ではないはずだ。もっとも、それは遥か太古の記録であるため、相当深く掘らないと出てこないのだろう。そのため、素早く攻撃などに活かしたい場合は、地面の表層にある新しい「記録」(どんなに古くてもせいぜい数十年以内)を掘り起こす事となる。
また、掘るのは必ずしも地面そのものでなくても良い。地面に近い場所であれば、地面以外の物を掘っても能力を使う事が出来る。作中でヴェルサスは、地面の上に建てられた病院内のテーブルの上にある白身魚のプリンをスプーンで掬い取り食べていたが、そのプリンに空いた穴からマイク少年の過去を掘り起こしていた。「知性」は自身の「情報」を一種の「信号」として、他の「知性」に送っている。その「信号」のやりとりによって、「運命」が自ずと形作られていく。『アンダー・ワールド』は、地面の「知性」から発せられたその「信号」を辿る事で、地面以外の場所からでも「地面の記録」を引き出せるのだ。(その場合、ごくごく最近の「記録」しか掘り起こせないのかもしれないが。)
ちなみに、再生した「地面の記録」のサイズは原寸大とは限らない。小さな穴を掘って、ミニサイズの「記録」として再生する事も可能である。実際、徐倫やエンポリオの過去の行動を再現した際には、彼女らの姿はミニサイズで掘り起こされていた。


能力射程は、本体から半径200~300km程度である。作中でヴェルサスはオーランドにいたが、フロリダ州全域にまで能力は及んでいた。
これは「地面の記録」を再生できる範囲であり、より詳しく言うなら、上記で述べた「信号」を辿って「地面の記録」を引き出せる範囲を意味する。つまり、「高さ」は地面から近い距離に限定されるが、「広さ」ではかなり広大な範囲をカバーしているという事だ。たとえオーランドにいても、遠く離れたグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所の「記録」を再生できたりもする。
そして、掘り起こしたい過去の出来事の詳細を、必ずしもヴェルサスが明確に知っている必要はない。だが、まったく知らない出来事や人物を狙って掘り起こす事は不可能である。それゆえ、名前でも顔でも曖昧な記憶でも、とにかく何かしらの手掛かりを持っていなければならないのだ。もちろん、詳しく知っている出来事ほどスムーズに掘り起こせるし、うまく利用する事も出来るため、ヴェルサスの知識量や検索力が重要となってくる能力と言えるだろう。


再生した「地面の記録」は、その出来事と関わりの深い者との間に「引力」が強く働くようである。
そのため、過去の事故や事件を再生した場合、近くにその過去の関係者がいると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性が高い。作中にて、マイク少年の「記録」が再生された時、彼が父親から撃たれた弾丸が、病院に来ていた父親自身に命中してしまったのは、その「引力」の影響である。


「地面の記録」をヴェルサス本人と重ね合わせて被せれば、身を隠したり他人になりすましたりする事も出来る。
作中では、それをプッチに逆利用され、ヴェルサスは影武者として使い捨てられてしまった。


「地面の記録」を掘り起こすに当たっての副次的な能力ではあるが、自分が地面に掘った「穴」を拡大・延長し、瞬時に巨大な「穴」を空ける事が出来る。それを繰り返せば、地中をどんどん掘り進んで行ける。その応用として、『アンダー・ワールド』のヴィジョンはモグラのように地中に潜れ、縦横無尽に動き回る事も可能。
「穴」はかなり広大な空間を地中に作り出し、そこでなら巨大物の「記録」の再生も容易となる。作中では、飛行機や戦闘機の「記録」を瞬時に原寸大で再生していた。徐倫達は過去に起こった不幸な出来事の「記録」の中に閉じ込められ、それを追体験させられる事となった。その空間はまさに「過去の世界」である。ただし、最初からロープなどを結んでおき、あらかじめ外界との繋がりを持って来たなら、完全には閉じ込められずに済む。それを辿っていけば、「記録」を通り抜けるようにして外に脱出できるのだ。徐倫も『ストーン・フリー』の「糸」を通じて、飛行機からの脱出を図った。(しかし、徐倫の想定以上に「糸」が伸びたせいか、「過去の世界」と外界の隔たりゆえなのか、彼女の声がエルメェスに届きにくくなっていたようだ。)
なお、能力を解除すると、「穴」はすぐさま元の大きさに戻る。


『アンダー・ワールド』なら、ウェザー・リポートに挿し込まれた「記憶DISC」を掘り出す事も可能と思われる。
『ホワイトスネイク』の「DISC」も、「知性」が持つ「情報」を固めて形にした物である。その意味では「地面の記録」に近い存在であるため、地面から「記録」を引き出すように、ウェザーの頭から「DISC」を無理矢理引っ張り出す事も出来るのだ。(無論、『アンダー・ワールド』自身が「DISC」を新たに作り出す事は不可能である。)


上記でも述べた通り、「地面の記録」と「物の幽霊」は非常によく似た存在ではあるが、当然、違いもある。
「地面の記録」は、地面に宿る「知性」の記憶・イメージと、ヴェルサスのスタンドパワーが結び付いたもの。「物の幽霊」は、物に宿っていた「知性」の記憶・イメージと、人々の思念、さらにエンポリオのスタンドパワーが結び付いたもの。前者は『アンダー・ワールド』の能力によって作り出されたものだが、後者は基本、自然発生したもので、それを『バーニング・ダウン・ザ・ハウス』の能力で利用しているだけである。
「地面の記録」はスケールが大きく、運命をも再現するほど強力である反面、自由に持ち運んだりは出来ない。ヴェルサスの精神力に依存する存在で、集中力が途切れれば消え去ってしまう。一方、「物の幽霊」は消え去る事なく常に持ち運べるが、結局は「便利な道具」「変わった道具」止まりのパワーしか持たない。そのような差異があるのだ。ただ、両者に優劣があるワケではなく、使い方次第でどうにでもなる。


ヴェルサスはエンリコ・プッチを『天国』に押し上げる存在であるがゆえ、『アンダー・ワールド』の能力も、プッチが最終的に手に入れる究極のスタンド『メイド・イン・ヘブン』に通じる能力となっている。「時間」に関わっているところや、覆しようのない「運命」に人々を捕らえるところなどがそれに当たる。
『メイド・イン・ヘブン』は、彼ら「DIOの血統の三兄弟」の要素・因子をも取り込んで生まれたスタンドなのかもしれない。人々に「希望」と「成長」と「幸福」を授けるための力なのだから。




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